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いつの間に二月終わったんだ?
スペシャル!『検品作業はしっかりと』
しおりを挟むアルファポリス内で作品を書いている『まこさん』の子たちを借りて書いた話です。
篠田さん(攻め)
未南さん(受け)
くすぐり・機械姦・拘束などが含まれます。苦手な方はご注意ください。
アダルトグッズなどを作る会社に勤めているが、世間は夏休み。
学生の時ほどがっつりした休みはないが、俺の会社もそろそろ長期休暇に入る。俺が旅行雑誌などを眺めていると後ろから誰かがひょいと覗き込んできた。
「みーなみさん。旅行行きたいんですか?」
「……」
目を向けなくともこいつだと分かっていた。この会社で俺にこんなゼロ距離で話しかけてくる人類はこいつしかいない。
後輩の篠田。頭が良く、俺のたくらみなどはすぐに見抜いてしまう。俺限定かも知れないが人懐っこい性格なのに、割といじめっ子気質。相反するような性格が同居しているような奴だが、見た目はいい。なので、何もせずそこで立ってろ。
「変わった場所から話しかけてくるな」
「いや~。未南さんソファーで優雅に足組んでいるから。前から近寄りづらくって」
笑顔のままつんつんと頬をつついてくる。
……こいつには恥ずかしいところをたくさん見られている。よって、一周回って開き直って接するようにした。
突いてくる指を掴んでそっと下す。
「海に行きたいと思っているんだけど……、ガキの頃以来、行ったことがなくてさ」
もっと未南と話したいのか、身を乗り出して顔を覗き込んでくる。隣に座れば?
「どうしてです?」
未南は深刻な顔で旅行雑誌を閉じる。
「サメ映画を観てしまってな……。あれは怖かった」
「……」
篠田くんの顔を思い切り鷲掴みにした。
「馬鹿にしただろ?」
「いえいえいえ! とんでもない。ンッフフ。サメ映画で、う、海が駄目になってしまうンググ……未南さんが可愛いなんて、思ブフッってませんよ?」
声震えてるんだよ。
「なんだお前! 海でサメに囲まれても平気だからって調子乗りやがって!」
「どこ情報ですか⁉ さすがにテンパりますって」
雑誌をパァンとソファーに叩きつけてムキになる未南を頑張ってなだめる。
「ふん。話すんじゃなかった」
どかっとソファーに座り直す。未南が落ち着いてくれたので篠田も回り込んで隣に座った。
「可愛い顔なのに気が強いんですから……。じゃあ、僕と一緒に行きます? 海」
じろっと横目で睨んでくる。
「やだよ。お前どうせ、サメのふりして俺をビビらせる気だろ」
すっかり疑心暗鬼になってしまわれている。
「しませんよ。それに海が苦手なら無理に入らなくてもいいじゃないですか? 入り江で洞窟探しとか楽しいですよきっと。お腹空いたら海の家で焼きそば食べましょう~」
にこにこ笑っている篠田に、つられて未南も苦笑を浮かべる。
「ま、まあ。一人で行くのは寂しいと思っていたから。連れて行ってやろう。ペット枠としてな」
「ペット枠なの? なんで⁉」
だって微妙な関係だし。友人? 恋人……ではないな。
ここ数年。クーラーのよくきいたオフィスで仕事に没頭する毎日だったため、油断していたかもしれない。そう、甘く見ていたのだ。
夏の暑さを。
「……」
「クーラー、強くしますね」
喋らなくなってしまった俺を心配してか、篠田がクーラーのスイッチを操作する。車に備わっているクーラーがブオォと涼しい風を吹き出してくれるが、俺に届くまでにぬるくなってしまう。
俺は額の汗をハンカチで拭う。
「ごめん……。篠田くん。途中のパーキングまでは俺が運転する予定だったのに」
涼しそうなシャツ姿の篠田はしっかりとハンドルを握る。
「いいですって。僕元気いっぱいですし」
渋滞。
夏休みということもあり、凄まじい車の数だ。ちまちま進むため普段より集中しなくてはならない。慎重さが求められる場面でヘロヘロになっている俺は戦力外だった。二十分ほど前に運転を交代したのだ。そこからはずっと篠田くんが頑張っている。
不甲斐ないが、俺は車内に容赦なく差し込む太陽光に負けないよう必死だ。クーラーも頑張っているが、車内の気温は恐ろしいほど高い。
「篠田くんは? 大丈夫?」
「はい! 昨日十時間ほど寝ましたので」
肌がツヤツヤしている。
羨ましい。俺は遠足前に眠れなくなるタイプだ。あれ……? これだと俺がこいつとの旅行を楽しみにしていたみたいじゃないか。
違う違う! 海を、海が楽しみだったんだ。
ということは、俺のこのだるさは寝不足も原因なのか。
「篠田くん。悪いんだけど、ちょっと目を閉じてていい? 眠い、かも」
運転変わってもらったくせに、さらに助手席で寝るなんて、駄目だろうか?
不安になったが、篠田はどうぞどうぞと笑ってくれた。
「僕の運転が寝れるほど安心できるってことですよね? 嬉しいです」
(いいやつだな。こいつ……)
ペットボトルの蓋を開け、しっかり水分を補給してから目を閉じた。
寝つきはいい方なので、驚きの早さで闇に沈む。
「ん……?」
目を開けると変わらず車の中だった。しかし窓の外は車が何台もとまっているので駐車場だと思う。
フロント部分は車用のサンシェードがかけてあり、陽射しから守ってくれている。クーラーはつけっぱなしで、横を見ると……運転席は空だった。
「篠田くん?」
目を擦りながら後部座席も確認する。が、荷物が積んであるだけで誰も乗ってない。腕時計を見ると、あれから四十分も経過していた。
(寝すぎた……)
車が来ていないか確認してからドアを開ける。表情が消えそうになるほどの灼熱の空気が出迎えてくれた。
「……あっつー」
車内に回れ右しかけたが、背伸びして篠田の姿を探す。めちゃくちゃ眩しい。
「篠田くーん? 篠田ー?」
ちゃっかり呼び捨てで呼んでみるが返事はない。トイレだろうか?
ペットボトルの中身はすっかりぬるくなってしまっている。俺も自販機で何か買いたいが、車を放置して行くわけにも……。
「あ」
「未南さん。起きたんですね」
缶ジュースを二本持った篠田が小走りで駆け寄ってくる。人がたくさんいるのにこいつのことはすぐに分かった。外見が良いと見つけやすいな。
「熟睡した。ごめん」
「謝らないでください。はいこれ。ペットボトルのお茶ぬるくなってると思って、買っときました」
水滴の付いた缶ジュースを押し当ててくる。ちょ、冷てぇ!
「冷たいって。目が覚めただろ!」
「良かったじゃないですか」
引っ手繰るように受け取ると、篠田はさっそくプシュッと開けてごくごくと飲みだす。
「ふう」
「いくらだった?」
「はい?」
「缶ジュース」
「そのくらい奢りますって」
運転変わってもらってジュースを奢られる。俺は何様なのだろうか。
「いいから受け取れって」
胸ポケットに小銭を押し込む。
「わっとっと。……真面目なんですから」
篠田が買ってきてくれたのはポカリだった。
「はぁー。冷たい」
「どうです? 元気出ました?」
「ああ。元気元気。こっからは俺が運転変わるから。篠田くん、寝てていいよ」
「全然眠くないんですよねー」
パーキングを出るとそこそこ快適に走ることが出来た。渋滞からは抜け出せたようだ。寝ている間の出来事を話していた篠田だったが、静かになったなと思えばすかーっと眠っていた。
うんうん。海で遊ぶんだし。車の中では眠っておいた方が良いと思う。
彼の寝顔にクスッとほほ笑み、未南はなるべく段差などを踏まないように運転した。
何年ぶりだろう。
目の前にはどこまでも続くエメラルドグリーンの海。白い砂浜。人、人、人。
開いている場所を見つけるのに二十分くらい駐車場を徐行していたときは気が遠くなるかと思った。
鞄を持ち、ビーチサンダルに履き替え、ふたりして砂浜まで走って行く。
「まっぶしー……」
「いい天気で良かったですね。人多すぎて笑えます」
せっせとビーチパラソルを設置していく。シートを広げ、荷物を重石代わりに置く。
暑い。早く冷たい水に飛び込みたい頭から。
そわそわと身体を揺らす。
「泳ぐしかないな」
「準備体操しないと、ですよ? 未南さん」
「……ラジオ体操なんてもう覚えてないぞ」
「日焼け止め持ってきてますよー」
んぐぐ。やることが多い。波打ち際まであと少しだというのに。ひとまず海パンに着替え、強い陽射しから肌を守るためにパーカーを羽織る。
うろ覚えラジオ体操を並んでしていると、とあるものが目についた。
「……なんだか。テント多くない?」
山キャンプなら分かるが、砂浜にテントは見慣れない。
「んー? ああ。流行りましたからね。例のウイルスで。個室空間が。僕も持ってきてますよ?」
「へえ~。ちょっと、テントに入ってみたいかも……」
アウトドアが好きなわけではないが、テントの中というものは引きつけられる。何があるわけでもないのに、入りたくなる。それがテント!
俺がワクワクしている間に篠田がちゃちゃっと立派なテントを組み建ててしまう。
「あれ? テントって、もっと、一時間くらいかからなかった?」
「すげー時代に置いてかれている発言してますよ。未南さん」
テント組み立て速度にわなわなしながら中を除く。三角形ではなくドーム型で可愛い。色も落ち着いている。
「えー……めっちゃいいじゃん。俺、帰ったらテント作ってる会社に就職するわ」
「嘘でしょ⁉」
俺がテント内で感激していると篠田も入ってくる。おお。男二人並んでも余裕がある。
「やるなー。篠田くん」
上機嫌で彼の頭を撫でると、何故か篠田はテントの入り口のチャックを閉めてしまう。
「どうした? 閉め切ったら暑い……」
「未南さん。見てください。また機械を作ってみたんです」
そう言って彼が見せてきたのは……見たこともない形の……なんだ? 袋に入っているからよくわからん。
長さ的に。
「孫の手か?」
「自動日焼け止めクリーム塗り機です」
「……なんでそれを作ろうと?」
「背中とか、一人では濡れない場所を塗ってくれるんですよ~」
「へえ? ああ。なるほど。いいじゃん。はた迷惑なウイルスのせいで人に頼みづらくなってる昨今だし」
袋を中身を見ようと意識をそっちに集中させていると、カシャンと音がした。目を向けると俺の足首を篠田が拘束している。
「え?」
「はい。こっちも」
呆けている間に押し倒され、頭上で手首まで拘束された。
会社での嫌な出来事を思い出し、冷や汗が噴き出る。
「えええええっ? ちょ……篠田くん?」
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