全種族の男の子、コンプリートを目指す魔女っ娘♂のお話

水無月

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双子

25 処世術

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 よしよし大丈夫だよっと、ぎゅーっとアクアを抱きしめる。ファイアも負けじとエイオットの膝に乗り、アクアの背中に抱きつく。
 せっかくなのでエイオットは二人纏めて抱きしめる。二人とも体温高めなのでポカポカする。お客さんたちがちらっとエイオットたちを見ては「ふふっ」と笑っていく。

 アクアは人差し指で隣の頬をつつく。

「怖くねーけど……なんであいつ、怒らないんだよ……」
「? あいつって? お兄ちゃん? 今日ずっと怒ってると思うけど……?」

 それどころか洋館でも眉を逆立てている。心から笑っているなぁと思うのはごっちんと会話しているときだけだろうか。

 アクアはむにむにと隣の頬を伸ばす。

「俺のせいで、ずぶ濡れになったのに……」

 殴ってこなかった。大きな手のひらは頭を撫でてきた。嫌悪の目で見てこなかった。呆れたような目だったが声は優しかった。大人とは自分たちを苦しめてくる存在なのに。何かすれば、暴力を振るってくるのが当然で――
 声は小さく次第にもごもごしていくが、狐耳はばっちり拾ってくる。

「うー……ん。お兄ちゃんもゴンドラさんも怪我はなかったんだし。アクアが反省してるのは分かったから、じゃない?」
「べ! ……つに、反省なんてしてねーし……」

 とは言うが、耳は未だにぺたんと倒れ、ファイアがせっせと髪をなでなでしている。

「これでアクアが反省してなかったらお兄ちゃん怒ってたと思うけど……。んー、よく分かんないや。お兄ちゃんに聞けばいいよ」
「……むぅ。だから、違うって……」

 その後もアクアをふたりで撫でていると、キャットが奥から早足で出てきた。

「おい。全員いるか⁉」

 走り回っているとでも思ったのか、息を切らせ、金の瞳が忙しなくちびっ子の人数を確認している。三人が大人しく座っているのを見て、胸を撫で下ろしていた。
 戻ってきたキャットは特に代わり映えはなく。金カフスの付いた灰色のシャツに黒いズボンと、少しだけ華やかさが足された服装になっていた。
 シャワーを借りたのか、あの水臭さは洗い流され髪がしっとりしている。

「お兄ちゃん。お帰りー」
「……むむぅ」
「おかえり、なしゃい……」

 二人を抱きしめているエイオットの頭を撫でる。

「見ててくれたんだな。助かったぞ」
「え、あ……そんな。ふたりとも大人しかったよ」

 照れたようにうつむき、双子で顔を隠してしまう。その双子を預かると、今度はエイオットを追いかけてきた店員に預ける。

「ほら。好きな服を見てこい」
「うん。って……違うじゃん! お兄ちゃんが選んでって言ったよね?」

 「チッ。覚えていたか」と苦い顔を逸らすキャットに渾身のぷくーぅをお見舞いする。

「わかった。わかった。どうなっても知らんからな」

 降参するように両手をあげるとエイオットはにこっと笑い、腕にしがみついてくる。

「ほらほら。いっぱいあるよ」
「んあ~」

 またぐいぐい引っ張って行かれるキャットのあとに、アクアとファイアもついて行く。

「お前に似合う服か~……さっぱり分からん」

 顎に指をかけ、じいっと商品を眺めていく。
 参考にしようにも店内にあいにく子どもの姿はなく。そもそも他のガキがどういった服装だったのかも覚えていないしよく見ていない。

(中性的な服はアウトだ。変態しか喜ばない)

 腹の立つ顔を思い出してしまい、頭の中で殴っておく。

「好きな色とか……」

 ちらっとエイオットを見るも、ぷいっと顔を背けられる。……あくまでキャットのセンスで選べということか。

(まあいい……。適当な服を選んでおけば、もう二度と俺に服を選ばせようなど思わなくなるだろ)

 服など自分で選んだことがない。朝起きて突っ立っていればメイドがてきぱきと着せてくれたし、洋館に来てからは投げ渡された燕尾服に袖を通しているだけ。

(……駄目だ。分からん! どれも同じに見えてきた)

 目が回りそうになる。
 腕にエイオット。背中にアクア。左足にファイアをくっつけたまま店内をさまよう。子どもたちは何をしているのかと言うと、暇なのでぶら下がっているだけである。

(ああ駄目だ! 頭痛くなってきた。というか、エイオットの服を選ぶのに、エイオットを見ないでどうする……)

 じっと見下ろすと、助言がほしいと勘違いしたエイオットがまたもやぷいっと顔を背ける。だが、大きな手に顎を掴まれ、目線を合わせられた。

「え? なに?」
「……」

 角度を変えてじろじろ観察される。何をしているのかと狸っ子たちも見てくる。

「なに?」
「んー……小麦色に合う色か……。黒はなんでも合うが、お前にはちょっと似合わないか?」

 顎から離れた指がさらっとエイオットの髪を掬うようになぞる。くすぐったくて片目を閉じる。

「んぅ……。こしょばいよ」
「ああ、悪い。きれいな髪だ」
「……」

 そう言われては何も言い返せない。心が籠ってなかったけど褒められるとにやけそうになってしまう。
 蟲人店員が口出ししたそうにじりじり近寄ってくるが、お姉さん店員に首根っこを掴まれ引きずられていく。
 キャットは適当な服を手に取る。

「では、これとこれを……。買う前にまず試着してこい」
「はーい」

 服を受け取ったエイオットが嬉しそうに店員さんの元へ走って行く。試着室へ案内されているので、キャットたちはその近くで待機する。

「お前らは服、いらないのか?」

 よじ登ってきて勝手に肩車のように肩に座っているアクアと、左腕にコアラのようにぶら下がっているファイアに声をかける。なんだこいつら。なぜ床に立たない?

「俺は……。それよりパンツがほしい」
「ぼくも……」

 そうだった。うっかりしてた。サスペンダー付きのズボンでいいか。それならそこに置いてある。

「好きな色を選べ」

 二人はぴょんと飛び降りる。

「俺はこれ! 緑のやつ」
「ぼくも。……あれ? ない……」

 アクアと同じ色のズボンを探すが、あいにく見当たらない。

「……うえぇ」

 じわっと涙を浮かべる片割れに、アクアは緑のズボンを差し出す。

「泣くなって。ホラ。緑が良いんだろ? 譲ってやるから、泣くな」
「……ちがうぅ……。アクアと、うえ、お、おぞろいが、いいのっ」
「おそろいー?」

 アクアは緑のズボンを丸めてファイアの頭に置くと、緑が無いか探し始める。その後ろでキャットがくしゃくしゃに丸められたズボンを畳んでいた。

 アクアが近くを通りかかった店員に声をかける。

「おい! おばさ」

 神速でキャットが口を塞いだ。

「んんんん?」
「?」

 店員さんが一度こちらを見たが、ちょうど商品でアクアが見えなかったらしく首をかしげて去っていく。
 白手袋に包まれていない手を引き剥がし、しゃがんでいるキャットを睨みつける。

「にゃにすんだよ!」
「いいか? 年上の女性には「お姉さん」と呼びかけてみろ」
「……はあ? なんで?」
「処世術だ。いいから。エイオットみたいにあざとくやれとは言わん。言うだけ言ってみろ。お前なら出来る」
「……?」

 よく分からなかったが出来ると言われたのでやってみよう。
 とことこと、店員の足元まで歩いて行くと、大きめの声を出した。

「おねーさん!」
「! あら。どうしたの?」
「こ、このズボンの緑色。もう一着出せ出せ!」
「……かわいい」

 「ちょっと待っててね」と小さく手を振ると、お姉さん店員は店の奥へ消えて行く。

「よくやった」

 キャットが手を叩いている。よく分かっていないがつられてファイアもパチパチしている。
 ちょっと照れた顔で、頭の後ろで手を組む。

「おばさんじゃ駄目なのかー?」
「長生きしたかったら「お姉さん」または「奥様」と話しかけろ。それで命を落とす確率は減る」
「そんな命にかかわることなのか⁉」

 んがっと口を開けて驚いている。ファイアも覚えておかなきゃと顔を青くしていた。今は年齢的に許されるかもしれないが、大きくなれば拳が飛んでくる可能性があるぞ。

 するとそこで、シャッと試着室のカーテンが開く。

「ねえ、お兄ちゃん。どうかな?」

 出てきたエイオットはすっかり洋装にチェンジしていた。
 白い長そでのシャツに、黒と緑のストライプ模様のベスト。膝上のバルーンズボンに白ソックスと、顔貌が整っていることもあり貴族の子息と言われても納得してしまいそうだ。
 ボタンは艶のある大きめの丸ボタンで、子どもの指でも穴に通しやすくなっている。

「まああ。とっても良くお似合いですよ。色も髪と瞳に合っております」

 獣人ではない蟲人店員は色の組み合わせを褒めてくれる。リップサービスと分かっているがエイオットは得意げに手を腰に当てる。

「ねえねえ。お兄ちゃんも褒めて褒めてー?」
「あー似合う似合う」
「もっと気合い入れて褒めて!」
「……めんどくせぇ」

 適当に言葉を吐いているとお姉さん店員が戻ってきた。

「ありましたよ。緑のズボン」
「おい。しつじ。あれ買え。あれ!」
「……おそろい」

 店員を無視して喜ぶ双子の頭を押さえると、頭を下げさせた。自分も低頭する。

「探してくださり、ありがとうございます」
「むぎゅー」
「なにすんだよー」
「あ、いえいえ! そんな、いいんですよ」

 しゃがんでいるせいで土下座に近くなっている保護者に、店員は慌てて手を振り立たせようとする。幸いにも、青年の方はすっと立ち上がってくれた。

「試着してこい」

 ぺぺいっと双子もカーテンの向こうに放り込む。

「エイオット。着方が分からないかもしれん。手伝ってやれ」
「任せて」

 鼻歌を奏でながらエイオットはカーテンの隙間から頭を差し込む。

「着方分かる?」
「……?」
「……?」

 分からないようだ。アクアはズボンを見て難しそうに唸って、ファイアはどうしてかズボンを頭から被って前が見えなくなっている。
 スカートを取っ払い、ズボンを足先から履かせる。尻尾を穴からふわんと出し、ぱちんと金具を留めて完成。

「うわー。似合うよ。ふたりとも」
「そうか!」
「……おそろい」

 えっへんと胸を張るアクアにくっついているファイア。

「どうだ?」
「あ、お兄ちゃん」

 キャットもカーテンの隙間から上半身をねじ込む。店員はともかく、双子はあまり注目を浴びさせない方が良い。人気店なのか客が多いのだ。
 エイオットにも緑が入っているので、三人並ぶと統一感がある。

「いいんじゃないか?」
「すーすーしないぞ!」
「……そう、だね」

 カーテンから頭を引っこ抜き、店員にお金を払う。
 四人分なので結構な出費だが、これもふざけた服しか用意しないあのアホが悪いので気にしない。
 着ていた元の服は適当に布にくるんでもらった。

「また、よろしくねー」

 明るい声に見送られながら次の店に向かう。そろそろ帰りの時間が迫ってきている。ちんたらしていられない。キャットは主夫並みに忙しいのだ。

 土産物店に顔を出す。ここでアクアに心ゆくまで好みのオーシャンドーム(スノードーム的なモノ)を選ばせればいいと店の隅で待機していたが……

「ながっだ……」

 半泣きのアクアと手を繋いだファイアが戻ってきた。兄代わりとして店員に聞いていたエイオットも耳を下げて戻ってくる。

「……売り切れだって。人気商品だから、昼前にはなくなっちゃうって」

 楽しい思い出で上書き作戦が早々に砕け散った。あとは甘いものを買うくらいの時間しかない……と、そこでキャットの頭上に豆電球が灯った。

 しゃがんでアクアと目線を合わせる。

「無いものは仕方ない。俺が料理でオーシャンドームとやらを作ってやろう」
「え? え? 作れるのか?」
「ああ。食べられるオーシャンドームを作ってやる。……どうだ?」

 そんなのやだ! と言わてはお手上げだが、泣き止んでほしい一心でアクアを見つめる。

「……う、うん」

 ずびっと鼻をすすりながらごしごしと目を擦っている。目を擦るなと言いながらハンカチを渡す。ひとまず頷いてくれたことにホッとした。

「どんな料理なの?」

 一足先に元気を取り戻したエイオットが興味津々で訊ねてくる。その頭を撫でて、ひとまず店から出る。

 空は曇っており、暑さが和らいだ気がした。
 行列に並びワップルという人気菓子を購入した。夕食が入らなくなっては駄目なので一番大きいサイズをひとつ。ワッフルコーンを器に見立て、その中にサイコロ状のパンケーキと酸味の強いジャム。四種の果物が乗ったなんとも華やかな見た目。それをゴンドラ内で、甘くないクッキーで出来たフォークで突いている子どもたち。お菓子を食べているからか、ずいぶんと大人しい。
 タライサイズのそれを一心不乱にむしゃむしゃと食べている。その姿に少々モヤッとする。そんなものより、俺の作る菓子の方が……
 むすっとの他者作の菓子に対抗心を燃やしていると、エイオットが寄ってくる。

「お兄ちゃん。はい。あーーん」

 ふやけてきたクッキーフォークに刺したパンケーキを、差し出してくるエイオット。なんだこれは。このまま食えと言うことか。

「おい……。それは行儀があがっ⁉」

 注意しようと口を開けたら突っ込まれた。
 驚きのあまりフォークごと噛み砕いてしまう。

「うごご……」
「あーん。フォークが折れちゃったぁー」

 口元を押さえ咽るのをこらえている保護者をよそに、エイオットはぽっきり半ばから折れたフォークを見つめ、眉を八の字にする。

「エイオットお兄しゃん。はい。あーんちて?」

 ファイアがふかふかの笑みで、刺した果物を口元に近づけてくれる。

「え! いいの?」

 ぱくっ。
 ふりふりと狐尾を振って喜びを表すエイオット。さっきと同じ果物なのに、美味しく感じる。つい、ファイアを抱きしめて頬ずりしてしまう。

「ふわふわー」
「えへえへ……」
「おい! ふぁいふぁひふぁにふぃへんはよ!」

 ほっぺがパンパンで何を言っているのか分からないアクアも抱きしめる。

「ふわふわ倍増~」
「ふぉふぁ! ふぉふぉふぇふぉ」

 本当に何を言っているのか分からなかったが、照れていると言うことは理解した。顔が赤くなっている。それとズボンになったからか、思う存分じたばたしている。

(あーー。ごっちん様の顔が見てぇ……)

 曇り空の下、ゴンドラはゆったりと進む。





 帰宅するなりお子様ーズはエイオットのベッドで丸くなるとすよすよと眠ってしまう。夏場だったので身体を拭かせ、着替えだけは済まさせた。半分寝ていたので苦労した……。
 キャットはため息をつきながら洗濯物を纏め、吊りスカートのプリーツが全滅しないよう丁寧に手洗いするのだった。



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