クズとグラブジャムン

水無月

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用が済んだら帰りやがった……ッ

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 チンコが苛々する。

(こういう時に限って遊びに来ねぇな、あいつ)

 コツコツと爪先で机を叩くが、人が来る気配はなし。ため息の一つもつきたくなる。
 だからといってじっとしていても何も解決しない。
 へにょっとした笑みを思い浮かべながら、伸一郎は腰を上げた。









 チャイムを鳴らすと掃除機を持った藤行が出迎える。

「おっ。伸一郎さん」

 顔を見ただけで口角が上がった。
 後ろで無理矢理縛った髪は黒で、先週の農作業のせいか人並みに焼けている。これで人並みなのだから普段そうとう白かったのだと、新たな発見をした。そういやキスマーク付けた時も、赤がイイ感じに映えていたっけ。

 無言で回れ右したくなる手足があるちくわの絵がプリントされたTシャツに、動きやすそうなベージュズボン。細い体型を隠したいのか、ダボッとしていてあまり似合っていない気がするが、Tシャツのインパクトがでかくてほとんど気にならない。

 レトロ感漂うデカい掃除機を引きずっており、掃除の最中だったと知れる。

「珍しいじゃん。伸一郎さんの方から来るなんて。あがってよ」
「おう」

 ポッケに手を入れたまま堂々と玄関を上がる。野郎しか住んでいないとは思えないフリルの付いた玄関マットに、季節の花が揺れる花瓶。ふわりと漂う香り。上品なマダムの家と言われても、誰も疑わないだろう。

(今日もオカンしてるな)
「ごめん。掃除中で。散らかってるけど……」

 「勝手に履け」でいいのに急いで客用スリッパを出し、揃えて置いてくれる。
 こいうところに心を鷲掴みにされる。新妻みたいでいいな。

「……」
「……忘れてた」

 足がでかくてスリッパに収まらねぇ。無理やり押し込むとスリッパが悲鳴を上げている気がした。

「チッ。お前のケツ穴くらいにちいせぇな」

 スリッパで殴られた。
 クラッカーの紐を引いたようないい音が鳴る。

「事実じゃねぇか」
「次言ったら掃除機で殴るぞ! さっさとソファーを元の位置に戻せよ」

 こいつ。一度怒ると丁寧な部分が引っ込むんだよな。こういうところがなー……

「えっ? 何? びっくりした……」

 後ろから抱きしめると大きな瞳で振り返ってくる。

「なんでエプロンしてないんだ? お前」
「は? 料理用のエプロンならあるけど、掃除用のは無いよ。伸一郎さんの家を掃除した時のは捨てたし。謎の汚れが落ちなかったんだ」
「裸エプロンで掃除してろよ。気が利かねぇな……」
「もう帰れよ」

 腕の中から逃れようとするが、はっきり言って腕の太さが違いすぎる。

「ちょっと! 掃除中! 邪魔!」

 ソファーを指差し怒鳴ってくる。こいつは掃除を終えないとすっきりしないんだろうな。
 このままさっと掃除を手伝って終わらせるか、自分の欲を優先するかで二秒ほど悩んだが、藤行の股間に手を伸ばした。

「――ひゆっ⁉」

 やんわりと握り込むと同時に、ピクンと小さく跳ねた。足の間に手をねじ込ませ、バラバラに指を動かしてやる。

「ちょ、おい! ……んっ、何しに、来たんだよ」
「あー? チンコがむしゃくしゃしてんのに、お前が来ないからだろうが」
「勝手に一人でしてろよ……っ!」

 なんとか左腕を引っこ抜いて俺の腕を剥がそうとするが、非力だな。もう片方の手も使えばいいのに、しっかりと掃除機を握っている。

「伸一郎さ……っ。いまは、ぁう。掃除して、る、ん、から……」
「おう。しとけしとけ」

 さっさと発情してほしいので胸も同時に揉み解していく。

「うわぁ! 馬鹿! おまっ、人の家で、んぁ」
「じゃあ俺の家に来ればいいだろうが。……他は? 居ないのか?」

 家の中を見回すが誰の姿もない。足音もしない。
 腕の中でビクビク震える恋人の顎を掴んで、顔を上げさせる。身体を触っている間は喋れないようなので、いまだけ動きを止めてやった。

「答えろ」
「あっ、あ……。ん。もう……! あ、青空は友達のとこ。親父は、仕事だって」
「ほーん。じゃあ。好き勝手しても問題無いな」
「あるわ! 手を離せ熊野郎」

 やっと掃除機から手を離した藤行を引きずって、壁に押し付ける。逃がすつもりは無いが、万が一、逃げられないようにな。

「し、伸一郎さん!」

 ぐっと身体を押し付ける。

「なんだ?」
「なんだ? じゃない! もうやめてってば……」

 向かい合い壁ドンみたいな体勢になると、後頭部を掴んで唇を奪う。

「んっ……」

 ぷるぷると背伸びしているのが可愛い。膝を足の間に差し込んでいるから、強制的に背伸びさせているんだがな。

「は、ぁ……。馬鹿っ」
「なんだよその顔。自分の家で犯されるのは抵抗があるってか?」

 ニヤニヤ笑いながら見下ろす。
 悔しそうに睨んでくるが、美人にそうされても股間が熱くなるだけだ。

「伸一郎さん。俺のこと、せ、セフレだと思ってる?」

 胸板を両手で押し離そうとしてくるが、軽く膝を上げてやればすぐ力が抜ける。

「やっ」
「セフレ? お前は嫁だろ」
「こ……恋人じゃないの?」
「いや、ババアが白無垢かドレスか、どっちがいいか聞いてこいって言っててな」
「なんの話⁉」

 服の中に手を入れ、小粒の乳首をきゅっと摘んでやる。

「あ、やめ!」
「わりぃな。玩具のひとつも持ってこなかったわ。お前、バイブとか持ってねぇか?」
「ひう。そ、そんなとこ、触らな……ンッ」
「返事しろって」

 乳首を引っ張ってやると、膝に体重がかかるのがわかった。

「ああっ」
「もう立ってられなくなったのか? お前、どんどんやらしい身体になってきてるな」
「誰のせいだと……」

 ポッケを漁っていると硬いモノに指先が触れる。

「おお。あったわ」
「はっ⁉」

 家のカギだと思ってたら大人の玩具が出てきた。

「なにそれ。バイブ……?」

 見たことのない形状のモノに、藤行が首を傾げている。
 カプセルを半分に割ったようなものと、指輪のようなリング状のモノ。シリコン製でふにふにしている。

「な、なななに、なにそれ」

 鼻先に垂らしてやるとわかりやすく青ざめた。壁際に追い詰めていなかったら高速で後退っていただろう。
 吊り上がった口角が下がってこない。

「先端と根元だけを刺激するバイブ。根元と先っちょだけが震えるから、イけなくて長~く遊べるんだと。楽しみだな?」
「へ、へー? そういうの、どういう顔で買ってんの?」
「二十%オフだった」
「聞いてない!」

 ズボンをずり下げようとしたら渾身の力で手首を掴んでくる。

「やめてって!」
「はあ? 何がそんなに嫌なんだ?」
「急に家に来たやつに変なバイブ付けられる俺の身にもなって⁉」

 身にもなって、と言われたので二秒ほど考えてやる。

「俺はお前がバイブ持ってきたら興奮するが?」
「……ッ!」

 言いたいことが山のようにありそうだったが気にしないでおく。

 ズボンをずり下げるとビンタが飛んできたので直撃する前に手首を掴んだ。

「お前結構、好戦的だよな」
「こんなことされたら、誰でも……! 拳じゃないだけ感謝しろよ」

 暴れ出そうとする両腕を頭上で纏めると片手で縫い留め、苦戦しながらももう片方の手でバイブをセットした。根元までリングを通し、先端に半カプセル状のモノをはめる。

「これでよし」
「何も良くない!」

 がるるるっと吠えるがちっとも怖くない。むしろ屈服させたくなる。
 手を離すとズボンを引き上げた。

「え?」
「掃除したいんだろ? 藤行。この状態で掃除しろよ。見ててやるから」
「はっ? ……は?」

 わなわなと震える恋人に、バイブのスイッチを見せつける。

「勝手にバイブ外したらどうなるか……分かるよな?」
「お、おい。し、伸一郎さん」






 
 〈藤行視点〉

 伸一郎さんから会いに来てくれたことに喜んだのも束の間。
 性欲オバケに押さえつけられたかと思うと、変な玩具を装着された。しかも取ったらバイブ付けたまま縛って放置すると言われた。
 放置は嫌だ。

(青空たちにそんな姿、見られたくないっ)

 熊男はソファーでふん反り、我が家のようにくつろいでいる。時折それを睨みつけながら、掃除機をかけた。青空の帰る家だ、きれいにしておきたい。
 ヴヴヴヴッと股間にある物が振動を始める。

「ひぎゃあ! 馬鹿ッ。動かすなよ」
「ははっ。掃除頑張れよ。重たい物などは運んでやっから」
「……ぐぐう」

 下唇を噛みながら股間をズボンの上から押さえるが、止まることなく振動が手のひらにも伝わる。

「もっ、ちょ。こんなの、無理だって!」

 根元もだが、先端は特に敏感だ。そこをすっぽり包み込まれ、集中的に小刻みに叩かれる。

「んんんっ。と、止めて」
「手が止まってるぜ、藤行ちゃん。さっさと掃除しろよ。掃除が終われば可愛がってやる」
「何様だ。このやろ……ッ」

 怒りで掃除機を掴み、スイッチを入れた。レトロ風味な見た目なだけで最新の掃除機だ。音は静かなのによく埃を吸い込んでくれる。
 ヴウウウウンと一段振動が強くなった。

「んっ、ん!」

 下唇を噛んで耐える。なるべく声を上げたくない。あの野郎を喜ばせるだけだ!

 内またになりながら意地で掃除機を滑らせる。

「ぐうう、ん」
「いいなぁ? 毎回、これで俺の家も掃除してもらうか」
「こんなんで掃除、がっ、でき、んっ! んん」

 たまに振動が止まるので、そのうちに部屋中を走り回った。



「はあっ、はあっ……。う、も、止めて」

 普段の五倍くらい疲れた。ラグの上でへたり込むと、背後で足音がした。

「ひい」
「そんな怯えるなって。俺しかいないんだ。お前ももっと楽しめよ」

 カチッという音がして、振動が止んだ。ホッとしてから目一杯怒鳴る。

「伸一郎さんと二人っきりだから怖いんだって!」

 おかしい。普通、恋人と二人っきりって、もっと甘くて幸せな気持ちになるんじゃないの? 背筋寒いんだけど。

「どんな具合だ?」
「なにが……ちょ」

 肩に太い腕を回され抱き寄せられると、もう片方の手がズボンの中に突っ込まれる。

「おい! ……あっ、触」
「んー? ははっ。トロトロじゃねぇか」
「は、はあ……ん。アッ」

 カプセルを外し、股間の濡れ具合を確かめられる。ごつい指が熱いトコロを執拗に、指先で幹をなぞり、蜜を絡めてズボンから引き抜く。リングは外してくれなかった。

「ほら。見ろ。お前のここ、こんなに蜜を垂らしてるぞ」
「いちいち、見せんなっ……」

 てらてら光る液が付いた指先から顔を背ける。彼はそんな様子を笑いながらべろりと舐め取った。

「あめぇ」
「そんなもん舐めるなよ」
「ああ? お前だってうまそうに舐めてただろうが。旅行の時」
「きっ記憶にないのでノーカンですうう!」
「んな真っ赤な顔で言われてもな……」

 ちゅっと耳にキスされる。

「ほぎゃあ! どこに、変なとこにキスすんな」
「ほーん? じゃあ、どこが良いんだ? ここか? ああ?」
「あ、やめ」

 服を捲り上げられ、立った乳首にむしゃぶりつかれる。

「んう、あっ!」

 髪を掴むが同時にリングがヴウウッと振動を始め、腕の力が抜けた。

「アアア、ああ、ああんッ! ああ、ああ、う、あ」

 駄目だ。気持ち良い。

「はあ、あ、うう」

 くち、くちゅ、と乳首を吸われ、股間は強い振動が与えられる。

 何分経過しただろうか。もう自分で座っていられず、彼の腕に支えてもらっている状態となった。

「やめ、て。伸一郎さ、あっ、アア……ぅ」
「どうした?」
「ひうっ!」

 下歯が乳首に触れ、ビクンとのけ反る。

「あ、はあ」

 ぐったり脱力すると、横抱きで持ち上げられた。その間もバイブは揺れ続けるので、彼の腕の中でびくびくと小さく跳ねてしまう。
 イきたいのに、根元の刺激だけでは熱を発散できない。

「ン……」
「部屋行くか。お前の部屋どこだ?」

 たんたんと階段を上るのを、ぼうっとした頭で聞く。教えなくとも子どもの頃に作ったプレートが扉にかかっているので、気づけばベッドに座らされていた。その時に服も脱がされ、靴下だけにされる。

「なんで、部屋に?」
「俺のチンコの苛々を鎮めてもらおうと思ってな」

 「やっと目的を果たせそうだ」とぼやくと、伸一郎はズボンを脱ぎ、ベッドに腰掛けた。
 すでに硬くなっているブツを見て、藤行は無意識に生唾を飲み込む。

「はい。頑張ってー」
「う、うん……」

 素直に従いベッドから降りる。
 床で膝立ちになり、彼の両足の間に身体を入れた。
 顔の前に伸一郎さんのものが……においが、する。脳がとろけるにおい。

「舐めて、いいの?」
「おう」
「……ん」

 赤い舌を出し、ちろちろと舐めていく。
 伸一郎は暇そうに室内を見回す。雑誌でも読もうと思ったのだろうが、どこを見てもアロエちゃんとやらと目が合う。ポスターとフィギュアアロエちゃん。アロエちゃんぬい。手足のあるちくわアクリルスタンド。

「…………はぁ~」

 見事に萎えたので、藤行にのみ集中することにした。
 スイッチを押すとビクンと震え出す。

「あ、ああ……」
「イきそうな顔しちゃって。でもリングだけじゃイけないだろ」
「う、うん」

 股間を押さえて快楽に耐えているところ悪いが、

「舌が止まってるぞ」
「ひゃん!」

 さぼった罰として爪先で藤行の股間をぐりっと押してやる。想像以上に可愛い声を出したのでぐりぐりと遊んでやった。

「ひゃああ、だめぇ。だめぇ……」
「へっ。そんなに気持ちいいかよ」

 ひっくり返った猫のように、腹を上にして床に寝そべる。股間をつついている伸一郎の足に細い足を絡めてくるので、チンコが痛いほど張り詰めてきた。
 腕を掴んで引きあげ、藤行の口を開けさせる。

「おら。しっかり咥えろ」
「んん……ああ」

 目がとろけているので、言葉を理解しているのかも妖しい。
 小さな口に自分のブツをねじ込む。

「おぐ……。ん、お、あ」
「しっかり喉使え。喉」

 バイブが動いているので、可愛く尻を振りながら舌を動かす。

「んっ、んんん」

 見た目は煽情的だが、舌遣いはイマイチだ。

(もっと頻繁に練習させねーと駄目か)
「ん、ふう。ん。んん……」
「俺がイったら、お前もイかせてやるよ。イきたきゃ頑張れよ」
「んうっ!」

 無防備な背中をくすぐってやると大きく身体が跳ねた。

「んん! んうう」
「なんだ。そんなに背中が気持ちいいか?」
「ん! うう!」

 首を振っているのだろうが、大きな杭を咥えているせいで髪が微かに揺れただけとなる。
 伸一郎はニタニタと笑う。

「そうか。否定しないってことは、もっと触ってほしいんだな?」
「うんんっ! んん、んうう」

 逃げられないよう後頭部を鷲掴みにされると、ツゥーッと背中をなぞられる。

「ンン! んんう」
「ははっ。すげえ蜜。垂れ流しすぎだろ」
「んんん……んふうう」

 太ももを伝う蜜が床に溜まっていく。
 バイブ音に卑猥な水音。苦しいのにがっちり頭部を押さえられているせいで、言葉を話すことも出来ない。

(くるしい……のに。きもちが、いい)

 吐きそうな気持悪さと、達したいのに達せない酩酊感。忘れた頃に背中を愛撫され、意識を飛ばすことさえできない。ぬるま湯を泳いでいる感覚。

「んっ、んん⁉」
「あー。我慢できねぇ」

 突然、頭を掴んでいた手が上下し始める。頭を、掴んだまま。

「ん、んぐ、おおお! おぐ、んぐ、おおっ、おお」

 喉の奥を、硬いブツが殴りつけてくる。とんでもない不快感と同時に、道具のように扱われていることへの興奮が、さらに蜜を溢れさせた。

(なんで、こんなことを、うれしく、感じ……るの)
「出すぞ。飲めよ。……――アッ。くう」
「おご、うぐうう」

 喉に直接熱いものをかけられ、咳き込みそうになった。溢れんばかりに吐き出された熱い液。震えながらこぼさないように耐えると、振動が止まった。
 ようやく手が離れ、ペニスから口を離す。

「う、ん」

 気づけばこめかみに汗がにじんでおり、顎はくたくたになっている。
 見上げると彼は、すっきりしたような笑みだった。それが、妙に、嬉しい。

「ん、ん……」
「飲め」
「う、ん」

 口内にある大量の、ねばつく液。呑み込もうと頑張るが、なかなか、身体が受けつけない。
 飲みたい。受け入れたい、のに。

「うっ、ひぐっ」
「あー。泣くな泣くな。ほら。出せ」

 大きな手のひらが差し出される。一瞬、強がって呑み込もうとしたが、吐き出してしまった。

「……ェエ。……ッ、うええ……」
「よしよし。いい子だ」

 片方の手が髪をかき混ぜる。正直、彼の手のひらに収まりきらず、床に零れてしまったが。口がホッとしたことで、彼の足にもたれかかる。

「んっ……。やくそく、でしょ? イかせて、よぉ」

 伸一郎の膝に頬を擦りつけながら彼を見上げる。何か良かったのか彼のモノが再び勃起した。

「お前、わざとやってんのか?」
「……?」

 伸一郎は何かを飲み込んだように、手の甲で口を拭っている。あれを、飲んだの……?

「なに? ……早く。イかせて。頑張ったでしょ?」
「……」

 顔を背けるが、うす暗い部屋でも彼の耳が赤い。
 がしがしと髪を掻く。

「あーはいはい。そうだったな」

 ひょいと抱き上げられ、膝の上に座らされる。

「んっ……。お尻に当たってる」
「しょうがねーだろ」

 シリコン状のリングが外され、自分のモノが大きな手で包まれる。

「はっ。びちゃびちゃだな」
「はや、くう……」
「どうしてほしいんだ?」

 彼は悪童のように笑っていたが気づかなかった。

「動かして。手を、動かして……」

 伸一郎の手に擦りつけるように、自ら腰を動かしてしまう。だが、彼の手はすっと離れていく。

「あっ。どうして」
「どこ触ってほしいんだ?」
「……ん。あ。その」

 触ってほしい。早く、イかせてほしい。触って。触ってよ。

「あ、あ……」

 真っ赤になってうつむくが、顎に伸びた手によって上を向かされる。

「あぅ……」
「なんだその顔。口にしねーと分からないぜ? 藤行ちゃん」
「んっ、んぅ」

 キスで口を塞がれ、ピンと尖った突起をこね回される。

「ん、ふう」

 イってしまう。胸だけで。

(そんな……)
「どうする? このまま胸でイけるようになってみるか? 俺は全然構わないしなぁ?」

 いじ、わる……。

 藤行はきゅっと下唇を噛んだ。

「ん……。触って。俺の、……」
「ああ? 聞こえねーな」
「っ」

 カアアッと、自分でもわかるほど顔が熱い。

「ん、ん。……チンポ、触って。伸一郎、さん」
「はい。よく言えました」

 伸一郎の指が震える先端をあやすように何度かつつくと、ようやく大きな手で包み込んでくれた。
 上下に扱かれると、脳内で花火が弾けるほど気持ちが良い。

「ああ――あ! あ……イ……く」

 ぐちゅぐちゅという音も聞こえない。藤行は炸裂する快感の中で精を放った。





🐻





 どたどたと階段を降りると、リビングでは飯の用意がされてあった。作った覚えのない料理に驚く。

「え? なんで?」
「お。兄ちゃん。大丈夫?」

 机の上を眺めているとエプロン姿の青空が台所から顔を出した。

「あ、青空? これ、お前が作ったのか?」

 弟は少し言いづらそうに頬を掻く。

「んー。帰ったら伸一郎さんがいて驚いたよ。遊びに来たのかなと思って聞いたら『お前の兄貴気絶させた』って言われてさ……」

 弟にナニをしていたのかがバレていることに床を転がって悶絶した。

 ――青空にさらっと話してんじゃねぇ! あの熊!

「だからまあ? 罰としてさっきまで、伸一郎さんと一緒に飯作ってたの」
「熊野郎は⁉」
「飯作ると帰っちゃったよ。五分くらい前かな?」
「そっか……」

 がっくりと肩を落とす。なんだか物凄く疲れた。

 でもあの伸一郎さんに飯作り手伝わせている弟が何気に強い。

「伸一郎さん。嫌々やってただろ」
「えー? いや別に。手伝ってって言ったら笑って了承してくれた。すげー機嫌よかったよ。伸一郎さん」

 青空が同情の瞳で見つめてくるのが辛い。ああああああっ。ただただ恥ずかしい! というか、本当に性欲を満たしに来ただけかよあいつ! 用が済んだら即、帰りやがって。いや別に居てほしいわけじゃないけどぉぉ……。

 葛藤していると、苦笑気味に脱いだエプロンを背もたれにかけた。

「さ、飯にしよう。俺と伸一郎さん作だから、そこまで美味しくないとは思うけど」
「何言ってんだ。美味しいよ!」
「まだ食べてないだろ」

 青空と伸一郎さんが作ってくれた料理、か。俺の大事な人たちが作ってくれた……。

「なんか、胸いっぱいだわ。これ、永久保存できないかな?」
「食べてよ」

 大きさもバラバラで肉と野菜を炒めただけの薄味料理だが、胸がぽかぽかと温かくなった。

「美味しい」
「良かった。親父のはラップしておけばいっか」






【おしまい】
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