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心からの謝罪
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力の限り蹴りつけるも人形は固く、素足に痛みが走る。
「うっ」
「じっとしていないと、怪我するよ?」
ベッドに押し付けられ、暴れないように両手首を掴まれる。人形の腕力は凄まじくピクリともしない。
抵抗している間に自分に馬乗りになる男を睨む。
「……私のことも殺す気か?」
「へ? いやいや。話聞いてたぁぁ? 君が欲・し・いって言ったの」
男はタコのように唇を突き出すと、ゆっくりと近づけてきた。
「やさしくしてあげるからね~ぇぇぇ。詩蓮」
「ぎゃああああっ」
魂が凍るようなおぞましさに、足の痛みを忘れ男の下半身を蹴り上げた。
「おほっ」
無様な体勢で男はベッドから落ちたが、二体の小型人形が這い上がってくる。
大きなリボンで飾られたツイン人形は、詩蓮の足を押さえる。小型ながらこちらもすごい力だ。
「……んふふふ。良い蹴りだぁぁぁ」
股間を押さえ、男はゾンビのように復活してきた。
「……死ねっ!」
「死にそうだったよぉぉもおおおっ。詩蓮はあれかな? 優しくされるより、酷くされたい方なのかな~?」
カリッと強めに胸を引っ掻かれる。布越しとはいえイッたあとの身体には容赦なく響く。
「あんっ」
屈辱だった。こんな畜生以下の男の手で……
「あはっ。可愛い声。そっかぁ! 詩蓮は酷くされる方がいいのかぁぁ」
「いっ、んあっ! やあっ、ンやめ……!」
コリコリと左右の胸をいじめられる。
「いひひひひひっ。いいよおいいよぉ詩蓮。もっともっと鳴いてねぇ?」
「触るな! このクソ、野郎……んんっ」
「あははぁ。きれいな子が汚い言葉を使っていると滾る……っ」
ビクッと詩蓮の身体が跳ねる。足を押さえている人形が、空いている手で足裏をくすぐり出したのだ。
虫が這うような悪寒が、脳裏に駆け巡る。
「ああいやああっ! あはっやめ、やめてああ、いやああっ!」
暴れたいのに人形はビクともしない。胸と足裏に与えられる刺激に、ソレに熱が溜まっていく。快楽を覚えた身体は疼き、淫らに欲しがってしまう。
調子に乗った男は両手で肋骨や横腹を執拗にくすぐる。嫌だと泣き叫ぶ少年に顔をぐっと近づけ、その表情をじっくりと味わう。
「あああっ。ああ、やめ! やめろ、んああっ」
「あははっ。おじさんでしか満足できない身体にしてあげるからね? 楽しみにしててね? 詩蓮」
獣のような息が顔にかかる。
嫌なのに、頭の中は真っ白になっていく。助けて。助けて欲しい。
早くこの刺激から解放されることしか、頭に残っていない。
(たすけ、て……。誰でもいい。晶利。紗無。……師匠……)
お前は天才だと、誰よりも褒めてくれた。魔法の師。
植物のこと、好きか? え? そ、そう……。植物使いはたいがい好きって言うんだけどな……。ああ、いや。なんでもない。その力があれば言うことを聞かない植物はいないだろうが、やさしくしてやるんだぞ? なんでってお前。言うこと聞くならやさしい奴の方が、お前だっていいだろう? ……お前、ドライだな。まあいい。彼らのことを兄弟だと思え。彼らは本当に優しいから、お前ならいずれ「こっち側」に来れるさ――
自分と同じ金の髪に、頭を乱暴に撫でる細い指。
もう会えない師の言葉。
師匠。私は彼らと仲直り、できるでしょうか? 謝罪を受け入れてもらえる……かな?
砂嵐の中、再生される晶利の言葉。お前にとって植物とは何か?
震える唇を開く。
「……ごめ」
「ん? どうしたんだい? 詩蓮」
「……ごめん、なさい……兄弟」
最初に咲かせることが出来たのは、初心者用の種だった。
「はぐっ?」
目を剥いた伊雪は、恐る恐る目を後ろに向ける。横腹に、細い針金のようなものが深々と突き刺さっていた。
「な、なんっ!」
「……?」
それはよく見ると根っこのようなものだった。頼りない根が床を通り扉の向こうまで続いている。扉の隙間から入ってきたのだ。音もなく。
緑の瞳だけは、それの正体を捉えていた。
(初心者用の、植物の根……?)
晶利がこれで練習しろと、渡してくれた植木鉢。その中で眠っていた種のものだと。
「なんだこれはぁっ!」
男が根を振り払う。簡単に千切れたが、男の傷は浅くはなかった、じわじわと血が衣服に広がっていく。
「し、詩蓮? あ、あれ、君、魔法を使えないんじゃ……?」
動揺が伝わったのか、拘束する人形の力が緩む。男の喉元を殴りベッドから逃げ出す。
「……くも。よくもやってくれたなあああ、詩蓮んんっ!」
咄嗟の一撃はたいしたダメージにならなかったらしい。すぐに捕まえようと恐ろしい形相で迫るが、根っこは一人でに動き、男の手のひらを切り裂く。
「ぎゃあっ」
「! お前……」
明らかに詩蓮を庇うような動きだった。
己の手のひらを見つめた男の表情が昏く沈む。
「鬱陶しい植物が…………踏みつけろおおぅあああ!」
成人男性サイズの人形が足を上げ、根っこを踏みつけようとする。過去の自分の仕草と重なり、詩蓮はそれを、細い根っこに覆いかぶさって庇っていた。無意識だった。
「ああ、詩蓮!」
人形が少年の頭を踏み抜こうとする。人形使いが止めようとするが間に合わない。
ドッ……っと家が軋んだ。
地震か? と思う間もなく、床一面を突き破り無数の木の根が突き出してくる。
「なんっ」
何か言いかけた男が、人形が、詩蓮が。飲み込まれるのは一瞬だった。根は部屋を覆い尽くし天井を破り屋根を破壊し、みるみる大きな樹木へと成長していく。
それは庭に生えていた元低木をも飲み込み、どこまでも枝を広げ、超巨大樹へと姿を変える。
遠くから見れば、キノコ雲のように見えただろう。晶利の家は跡形もなく消滅した。
「うっ」
「じっとしていないと、怪我するよ?」
ベッドに押し付けられ、暴れないように両手首を掴まれる。人形の腕力は凄まじくピクリともしない。
抵抗している間に自分に馬乗りになる男を睨む。
「……私のことも殺す気か?」
「へ? いやいや。話聞いてたぁぁ? 君が欲・し・いって言ったの」
男はタコのように唇を突き出すと、ゆっくりと近づけてきた。
「やさしくしてあげるからね~ぇぇぇ。詩蓮」
「ぎゃああああっ」
魂が凍るようなおぞましさに、足の痛みを忘れ男の下半身を蹴り上げた。
「おほっ」
無様な体勢で男はベッドから落ちたが、二体の小型人形が這い上がってくる。
大きなリボンで飾られたツイン人形は、詩蓮の足を押さえる。小型ながらこちらもすごい力だ。
「……んふふふ。良い蹴りだぁぁぁ」
股間を押さえ、男はゾンビのように復活してきた。
「……死ねっ!」
「死にそうだったよぉぉもおおおっ。詩蓮はあれかな? 優しくされるより、酷くされたい方なのかな~?」
カリッと強めに胸を引っ掻かれる。布越しとはいえイッたあとの身体には容赦なく響く。
「あんっ」
屈辱だった。こんな畜生以下の男の手で……
「あはっ。可愛い声。そっかぁ! 詩蓮は酷くされる方がいいのかぁぁ」
「いっ、んあっ! やあっ、ンやめ……!」
コリコリと左右の胸をいじめられる。
「いひひひひひっ。いいよおいいよぉ詩蓮。もっともっと鳴いてねぇ?」
「触るな! このクソ、野郎……んんっ」
「あははぁ。きれいな子が汚い言葉を使っていると滾る……っ」
ビクッと詩蓮の身体が跳ねる。足を押さえている人形が、空いている手で足裏をくすぐり出したのだ。
虫が這うような悪寒が、脳裏に駆け巡る。
「ああいやああっ! あはっやめ、やめてああ、いやああっ!」
暴れたいのに人形はビクともしない。胸と足裏に与えられる刺激に、ソレに熱が溜まっていく。快楽を覚えた身体は疼き、淫らに欲しがってしまう。
調子に乗った男は両手で肋骨や横腹を執拗にくすぐる。嫌だと泣き叫ぶ少年に顔をぐっと近づけ、その表情をじっくりと味わう。
「あああっ。ああ、やめ! やめろ、んああっ」
「あははっ。おじさんでしか満足できない身体にしてあげるからね? 楽しみにしててね? 詩蓮」
獣のような息が顔にかかる。
嫌なのに、頭の中は真っ白になっていく。助けて。助けて欲しい。
早くこの刺激から解放されることしか、頭に残っていない。
(たすけ、て……。誰でもいい。晶利。紗無。……師匠……)
お前は天才だと、誰よりも褒めてくれた。魔法の師。
植物のこと、好きか? え? そ、そう……。植物使いはたいがい好きって言うんだけどな……。ああ、いや。なんでもない。その力があれば言うことを聞かない植物はいないだろうが、やさしくしてやるんだぞ? なんでってお前。言うこと聞くならやさしい奴の方が、お前だっていいだろう? ……お前、ドライだな。まあいい。彼らのことを兄弟だと思え。彼らは本当に優しいから、お前ならいずれ「こっち側」に来れるさ――
自分と同じ金の髪に、頭を乱暴に撫でる細い指。
もう会えない師の言葉。
師匠。私は彼らと仲直り、できるでしょうか? 謝罪を受け入れてもらえる……かな?
砂嵐の中、再生される晶利の言葉。お前にとって植物とは何か?
震える唇を開く。
「……ごめ」
「ん? どうしたんだい? 詩蓮」
「……ごめん、なさい……兄弟」
最初に咲かせることが出来たのは、初心者用の種だった。
「はぐっ?」
目を剥いた伊雪は、恐る恐る目を後ろに向ける。横腹に、細い針金のようなものが深々と突き刺さっていた。
「な、なんっ!」
「……?」
それはよく見ると根っこのようなものだった。頼りない根が床を通り扉の向こうまで続いている。扉の隙間から入ってきたのだ。音もなく。
緑の瞳だけは、それの正体を捉えていた。
(初心者用の、植物の根……?)
晶利がこれで練習しろと、渡してくれた植木鉢。その中で眠っていた種のものだと。
「なんだこれはぁっ!」
男が根を振り払う。簡単に千切れたが、男の傷は浅くはなかった、じわじわと血が衣服に広がっていく。
「し、詩蓮? あ、あれ、君、魔法を使えないんじゃ……?」
動揺が伝わったのか、拘束する人形の力が緩む。男の喉元を殴りベッドから逃げ出す。
「……くも。よくもやってくれたなあああ、詩蓮んんっ!」
咄嗟の一撃はたいしたダメージにならなかったらしい。すぐに捕まえようと恐ろしい形相で迫るが、根っこは一人でに動き、男の手のひらを切り裂く。
「ぎゃあっ」
「! お前……」
明らかに詩蓮を庇うような動きだった。
己の手のひらを見つめた男の表情が昏く沈む。
「鬱陶しい植物が…………踏みつけろおおぅあああ!」
成人男性サイズの人形が足を上げ、根っこを踏みつけようとする。過去の自分の仕草と重なり、詩蓮はそれを、細い根っこに覆いかぶさって庇っていた。無意識だった。
「ああ、詩蓮!」
人形が少年の頭を踏み抜こうとする。人形使いが止めようとするが間に合わない。
ドッ……っと家が軋んだ。
地震か? と思う間もなく、床一面を突き破り無数の木の根が突き出してくる。
「なんっ」
何か言いかけた男が、人形が、詩蓮が。飲み込まれるのは一瞬だった。根は部屋を覆い尽くし天井を破り屋根を破壊し、みるみる大きな樹木へと成長していく。
それは庭に生えていた元低木をも飲み込み、どこまでも枝を広げ、超巨大樹へと姿を変える。
遠くから見れば、キノコ雲のように見えただろう。晶利の家は跡形もなく消滅した。
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