ケモノな彼氏

水無月

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プロローグ

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 育ての親は俺を愛してくれなかった。

 家にいるのに構ってくれず、邪魔者を見る目を向けてくるばかり。

 自分の子じゃないから、仕方ないのかもしれないが。

 一人になった俺を、引き取ってくれた親戚の家。幼い俺は不安でいっぱいだった。勇敢とは程遠い性格になったのも、この環境のせいだろう。環境のせいにしたかった。

 悩みを相談しようにも、声をかければ「あー! 知らない知らない。自分で何とかして」と耳を塞いでヒステリックに叫ぶ。

「おばさん……」

 髪を振り乱し「嫌だ嫌だ!」と叫ぶ大人という存在を見て、自分の居場所はここじゃないと思うようになったのはいつからか。期待しなくなったのは――。

 俺の家はいつもぐちゃぐちゃだ。掃除しようとすると家の人が暴れ出す。

「何してるんだ。おい、お前! 金を盗む気か⁉」
「卑しい子! 誰がご飯を食べさせていると思ってるの⁉」
「いえ。掃除を……しようと」

 言い訳するなと箒で散々叩かれた。

 庭に植えてみた小さな花も、翌日には踏み潰されている。

 夜、疲れて帰ってくれば、

「金。金! 渡しなさいよ! まだ隠しているんでしょ⁉」
「今月分渡したよ」
「あれじゃ足りないのよ。もっと稼いできなさいよ。居候の分際で!」
「ごめん……ッ!」

 爪を立てて服を引っ張ってくる。

 鞄ごと引っ手繰られた。

 こんな生活が一生続くのかと思うと耐えられなくて。高校卒業と同時に家を出ようと決意する。ずっとあの人と一緒に暮らすのは気が狂いそうだったから。

「いって……」

 与えられたのは押し入れの隅。ここが俺の部屋。唯一落ち着ける場所。

 赤いマニキュアが塗られた爪を思い切り突き立ててくるため、袖に赤が滲んでいた。何枚目かの絆創膏を貼る。

「……寒い」

 敷毛布一枚しかなく。近づいてくる冬の足音に身を震わせる。

 月は冷たく、空っぽの俺を見下ろしていた。







 卒業と同時に家を飛び出したが、待っていたのは解放感ではなく――

『誰がそこまで育ててやったと思ってんだ! 金を振り込め! 怠るなと言っているだろう。それと家を掃除しに来いッ。役立たずが!』
「……おじさん」

 金の無心やらの連絡が延々と来る。

 どこか寂しさを感じていた俺は、そんな人たちの連絡先を消すことも出来ずに、握りしめた金を振り込み続けた。そうしなければ電話が鳴りやまず、考えるのも億劫になっていったから――







 そんな俺が、連絡先を消すことができたのは『彼』のおかげだった。

 数年後――

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