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第三十三話・おススメの時間帯
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怒りで立ち上がりかけたが、まだボスが掴んでいたのでがくっとよろける。
離してくださいとうるさい子分から顔を背け、リーンを見やる。
「星影が崇める神のようだが。貴様の口ぶりからして、さほど敬ってはいないようだな?」
「ぎくっ」
痛い指摘に、リーンは「あはは」と乾いた笑みを浮かべつつ目を逸らす。
「俺は……アリストライオス様より、アキチカ様派なんで」
オキンは目を丸くする。
だが、すぐに合点がいったように頷く。
「ああ。確かにな。たわけた神使だが、実際に貴様に手を差し伸べたのは星神ではなくあのちゃらんぽらんだったな」
「アキチカ様になにか恨みでもあるんですかっ?」
酷い言い草に非難の声を上げるも、オキンからすればまた丁寧に言ってやった方だ。
ボスの腕を取り払えなかったベゴールは諦めて項垂れる。
「くっそ、取れない……。流星群と言っても毎回大量の星が流れるってわけでもないですからね。その辺は分からないんですか?」
「ああ?」
また教えないという意地悪をしてやろうかと思ったが、他の方々もわくわくそわそわしながらリーンを見ているので、すっと目を畳に向ける。こっち見ないで、照れる。
「今回のアリスコーヒー流星群は、そこそこ流れますよ。見ごろは深夜二時から五時あたりがおススメです。この時間帯に三百の星屑が流れます。俺やボスみたいな目の持ち主なら、その倍は見えるでしょうね」
「三百っ?」
ざわめきが上がる。
「去年は十三個で、その前はたった四個だったのに⁉」
「なんで今年はそんなに? なにかあんのか?」
疑問が飛び合うが、リーンは顔をしかめてそっぽ向いた。
「ちょ……」
ベゴールが何か言いかけたのを、ボスが制止する。
「構わん。言いたくなったら言うがいい」
優しい声音だった。リーンはぱちりと瞬きする。
「……無理矢理聞き出さないんですね」
「父親は。子どもを信じてどっしり構えていればいい。ワシは勝手にそう思っている」
口を開けて固まっていたリーンだが、やがて肩の力を抜いたようにふっと笑う。
「黒羽織だけでなく、街のヒトからも頼られる理由が分かりますね」
「ワシは分からんが? それに無理くり聞き出すのはキャッチの仕事なのでな」
さらっと言われた言葉に、場が静まり返った。
「……」
気温も下がった気がする。二の腕を摩りながらリーンはオキンの耳元で囁く。
「あの。そのヒトの名前出すといつもこういう空気になるんですけど、どういうお方なんですか? キャッチ……さん?」
「拷問のプロだ。興味があるなら詳しく話そう」
「お邪魔しました」
リーンは逃げ出した。
離してくださいとうるさい子分から顔を背け、リーンを見やる。
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オキンは目を丸くする。
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「ああ。確かにな。たわけた神使だが、実際に貴様に手を差し伸べたのは星神ではなくあのちゃらんぽらんだったな」
「アキチカ様になにか恨みでもあるんですかっ?」
酷い言い草に非難の声を上げるも、オキンからすればまた丁寧に言ってやった方だ。
ボスの腕を取り払えなかったベゴールは諦めて項垂れる。
「くっそ、取れない……。流星群と言っても毎回大量の星が流れるってわけでもないですからね。その辺は分からないんですか?」
「ああ?」
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「今回のアリスコーヒー流星群は、そこそこ流れますよ。見ごろは深夜二時から五時あたりがおススメです。この時間帯に三百の星屑が流れます。俺やボスみたいな目の持ち主なら、その倍は見えるでしょうね」
「三百っ?」
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疑問が飛び合うが、リーンは顔をしかめてそっぽ向いた。
「ちょ……」
ベゴールが何か言いかけたのを、ボスが制止する。
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「……無理矢理聞き出さないんですね」
「父親は。子どもを信じてどっしり構えていればいい。ワシは勝手にそう思っている」
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「……」
気温も下がった気がする。二の腕を摩りながらリーンはオキンの耳元で囁く。
「あの。そのヒトの名前出すといつもこういう空気になるんですけど、どういうお方なんですか? キャッチ……さん?」
「拷問のプロだ。興味があるなら詳しく話そう」
「お邪魔しました」
リーンは逃げ出した。
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