クロロの大冒険〜田舎の少年が組織に入り”オーラ”を習得、葛藤や紆余曲折を経て大人になり親になり、やがて星を救う物語〜

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組織(ハウス)見習い編

ー 25 ー ファースト・ミッション④

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ゴゴゴ…

見上げるような灰色の壁に囲まれたレビオラ本部ー。
チャップマンのオーラ弾により、本部ビルは半壊…、詰めかけていた幹部、構成員は皆逃げ出し、広大な敷地には、黒い煙を噴き上げる無人兵器の残骸が散らばるのみだ…。
ガランと静まり返った空気が辺りを満たしている。

そんな重い空気を引き裂くように、白く輝くが2本、立ち昇る!!!

クロロとコン太だ!

死への覚悟を決めたと同時に、堰を切ったように溢れる光のオーラが、クロロとコン太の体中から迸っていた!

ミッションの直前、モーリーがこう言っていた…


……
………

オーラを使う経験が、オーラそのものの成長に直結します。
そして、よりリスクのある実戦の方が、成長スピードが早い。特に、を遂げます。のです

………
……



もちろん、2人にはモーリーの言葉を反芻するような余裕はなかったが、獣人キメラ・オーグと向き合えるほどの気力が、クロロとコン太の体に漲っていた!

「…」
獣人が目を細め、2本の光の柱を見つめる。
(…唐突に、ガキどもの”質”が変わった…。この変わり様、なんやよう分からんけど…)

ベロリと舌なめずりをする。

「それがっ、どうしたっ!!!」

ドンっ!!!
光のオーラを飲み込むような、禍々しい黒紫のオーラが獣人から噴き上がる!

ギュンッ!!!

そのままコンクリートの地面を吹き飛ばし、2人に向かって飛び出した!


「いくぞっ!!!」
「うおぉっ!!!」

ギュギュンッッッ!!!!!

獣人と同じタイミングで、クロロとコン太も一気に飛び上がる!!!

2つの光のオーラと、黒紫のオーラが尾を引き、一点でぶつかろうとしている!!!

ゴゴゴ…!

3つのオーラが激突する間際、獣人がに飛び上がった!!!

「!!!」

クロロとコン太の真上に躍り出た獣人は、次の瞬間、両手をハの字のように振り下ろし、間髪入れずに両掌からオーラ弾を放った!!!

「ばっ!」
ドドン!!!

2人の頭上に漆黒のオーラ弾が迫る!!!

「!!!くっ!」
「あぶないっ!!!」

直撃寸前のところで、上空に飛び上がる!!!

「ふうっ、あぶな…」
メキっ!!!

コン太の脇腹に獣人の踵がめり込んだ!!!
あまりにも強烈なクリーンヒットだ!!!
そのまま隕石のように吹っ飛び、本部ビルに突っ込む!!!

ズドドドン!!!

壁を突き破り、柱を薙ぎ倒しながらビル内に吸い込まれていく…!
衝撃で窓ガラスが砕け、破片が陽の光を受けながら散らばり落ちる!

「くくっ、あっけな。一丁上がりや」
獣人が牙を剥き出しながら、ニタリと笑う。


「このヤロー!!!」

クロロが怒りのオーラを噴出し、獣人に飛びかかる!
空中で、上段下段と素早く拳と蹴りを打ち分けながら、獣人の体に一気に叩き込む!!!

「ふん、パワーはあるが、荒いわ!そんなん当たるか!」
下卑た笑みを顔に貼り付けたまま、クロロの打撃を捌いていく!

「うおおっ!!!」
オーラを凝縮した、クロロ渾身の右ストレートが、虚しく空を切る!!!

「ガラ空きやな!もらい!」
「!!!」
獣人が両手を頭上で組み、隙だらけになったクロロの背中へ打ちつける!

ズドン!!!

「うぐわっ!!!」

強烈な一撃が体を貫き、一気にコンクリートの地表に叩きつけられた!!!

「ぐうっ!」
上体を起こし、頭上の獣人を睨みつける!
…が、いない!?

「こっちや」
!?

ズドン!!!

獣人のローキックがクロロの胴体に炸裂し、無人兵器の残骸へと吹き飛ばされた!


「くっそー!」
兵器の破片を跳ね上げながら、残骸の山から飛び出し、眼前でほくそ笑む獣人と向き合う!

「はあっ、はあっ!」
肩で息を切る。一撃が重い…!鈍く、深い痛みが、クロロの全身を軋ませている。


「ほほお、タフやの」
黒々とした顎の毛を撫でながら、目を細める。


(くそ…、生半可な攻撃じゃびくともしねえ!だったら…!!)
クロロが右腕を背中側に引き上げる。

「…3…!2…!」
右の掌にオーラの光が集まり、膨らんでいく…!


「!!!これは!」
獣人の毛がゾクっと逆立つ!

これは…!あのの攻撃とは比べもんにならへん!…このパワー、や!


「…1っ!!!」
ドンっと、光が弾け、クロロの周囲を煌々と照らす!!!

「ファイアー!!!」

掛け声とともに、引いた右腕を一気に突き出した!!!
クロロの掌から爆炎が噴き上がり、衝撃波と共に巨大な光弾が飛び出す!!!

「んが!ごっつ速い!!!」
体ごと動かして避ける暇はない!!!

瞬く間に眼前へと迫る光弾に対して、辛うじて首を横に倒す!!!

「ぐうっ!」

ズオオオっ!!!!!

獣人の尖った左耳を掠め、灼熱の光弾が通り抜ける!
そのまま上空へと弧を描き、藍色の空に吸い込まれていった!

「ち、ちくしょう!は、外れた!」
クロロが右腕をだらりと下げる。

「…ぐ、ぐぬおお…」
獣人の左耳にビシっと激痛が走った!

ゆっくり手を伸ばす…
耳の半分が削り取られ、生暖かい鮮血が指を濡らした。

…あ、あれをまともに食らったらヤバイちゅうもんやない!


「はあっはあっ…!」
クロロが鋭い瞳で獣人を睨みつけている!

「なめやがって!くそガキがあっっっ!!!」
咆哮と共に、鋭く尖った人差し指をクロロに向ける!

「!!!」

ピッ!

獣人の指先がキラリと光った!
その瞬間!クロロの右膝を激痛が走り抜ける!

「うぐっ!!!」
な、何だっ?

「ふん、これでまともに動けんやろ。次も足がいいか?それとも腕にしたろか?」

クロロが右膝に目を向ける…!
痛々しい鮮血とともに、黒い煙が立ち上っている…!

(あ、あの光…!攻撃だった!?そ、そうか、チャップマンを消したのと同じ技…!お、か…!?)

ジンと痺れるような、深く重い痛みが右足に広がっている…!

くっ…ま、まずい!こ、これじゃ動けねえ!
あ、あの攻撃…!
あまりに速い!避けるどころか、反応すらできなかった…!

苦しむ様子をニタニタと嗤いながら、獣人が指先をクロロの上半身に向ける!

「決めた!妙な技できんように、腕からいてまうわ!」
冷たい目を細め、狙いを定める!

「や、やべっ!」



その時、本部ビルの瓦礫が音を立てて吹っ飛び、一つの影が飛び出してきた!

「!?」
獣人が思わず振り向く!

「こ、コン太!?」

「つえりゃー!!!」
オーラを纏った空手仕込みの手刀が、獣人の腕に直撃する!

「ぐおっ!!!」

手刀の衝撃で獣人の指先から光線が放たれ、クロロの手前のコンクリートを削り飛ばした!!!

「たあっ!!!」

バランスを崩した獣人の懐に、コン太の鮮烈な上段蹴りが炸裂!

毛むくじゃらの巨体が粉塵を巻き上げながら、本部ビルの壁に突っ込んでいく!

「や、やった!!!」
ふ、不意打ちではあるけど、強敵相手にここまで芯を捉えた攻撃を入れれたのは初めてかも…


コン太がクロロの元に駆け寄る!

「こ、コン太!ぶ、無事だったのか!」

「あ、ああ!何とかな…!だ、だがクロロ、おまえその足…」

クロロの右足が腫れ上がり、黒い大きな染みが滲んでいる…

「だ、大丈夫だ…いちち!で、でも、すばしっこくは動けねえかも」
クロロがシャツを破り、傷口をキツく縛り付ける。


ドドン!!!

本部ビルの壁が崩れ落ち、獣人が怒りの形相で現れた!!!

「なめよって、クソガキども…!」
目の奥にドス黒い殺意が煮えたぎっている。

「くそっ!さっきのコン太の一撃も効いてねえのかっ!た、タフだな…!」

「…」

コン太が振り向き、ぐっと口を結んで、クロロに目をやる。

「!?」

「く、クロロ!おまえ、さっきの、まだ撃てるか!?」

「!? あ、ああ!あと一発ってとこだがな…だ、だけどあいつを吹き飛ばすには目一杯オーラを溜めねえと…!」
クロロがぐっと拳を握りしめ、歯を食いしばる。

「な、なんとかボクが、あいつを引きつける!その間にオーラを最大限溜めろ!」

「え?ひ、引きつけるっておまえ…!」

「て、天狗の時だってうまくいっただろ!オーラを溜め切ったら、隙を狙って放つんだ!じゃないとあいつ…倒せないぞ!」
獣人は怒りで震える体を押さえ付けるように、ゆっくりと向かってきている。

「だ、だけどよ…」

「頼んだぞっ!!!」
クロロの言葉を待たずに、コン太が飛び出した!!!

「あっ!!!」
思わず腕を伸ばす!

「くっ!あいつ!」
コン太の背中がみるみるうちに小さくなっていく…

こ、コン太!…あいつ、本気だ!

クロロが唇を噛み締める。

「わ、わかったぜ!コン太!フルパワーでやってやる!死ぬんじゃねえぞ!」

ぐぐぐっと拳を握り締め、全身のオーラを右腕に集中させていく…!



ー   死闘   ー



コン太の眼前に、獣人が迫る!

(あ、あのオーラの光線…!とにかくあれだけは気をつけなきゃならない…!よしっ!!!)

コン太が両手のにオーラを集める!

「はあっ!!!」

ボボボン!ボボボボボン!!!
散弾銃のように細かなオーラの弾が空中に弾ける!!!

オーラ弾がぎゅんっ弧を描き、光の雨のように降り注ぎながら、周囲のコンクリートに突き刺さる!

「!!!なんのつもりや!」

粉塵が巻き上がり、一帯が茶色い砂煙に包まれる!

「煙幕だっ!これでオーラの光線もうかつに撃てないだろう!その隙に…!」


「子供だましがっ!」
獣人が太い腕をブンっと薙ぎ払う!!!

ギュオっ!!!

台風のような突風が煙を攪拌し、吹き飛ばしていく!

ボンっ!!!

煙がかき消えるより早く、茶色の煙幕を突き破り、コン太が正拳突きを叩き込む!

ドカン!!!

獣人がとっさに両腕でガードする!

ビリビリっ!
衝撃が獣人の毛皮を揺らす!

「このガキっ!腕がしびれたやないかっ!!!」

空気を切り裂き、丸太のような膝蹴りがコン太の鳩尾を捉える!

「うぐわっ!!!」

直撃の勢いでコン太の体が浮き上がる!
その背を、今度は体重を乗せた肘打ちが襲う!

「ぐはあっ!」

ドンっと、コンクリートに叩きつけられる!衝撃で、地表に蜘蛛の巣状の亀裂が走る!

「こ、コン太っ!」
クロロが思わず声を上げる!

「だ、大丈夫だ!で、でも早くしてくれ!」

そう言いながら、うつ伏せの状態から素早く体を捻り、円を描くように獣人の両足に払いをかける!

バキン!!!

足を取られ、獣人がバランスを崩す!

「このっ!!!鬱陶しいのう!!!」
殺意が燃えたぎる瞳をコン太に向ける!

「ううっ!も、もう無理かもっ!」
コン太が泣き出しそうな顔で獣人から距離を取る!


「よしっ!い、いま溜め切ったぞっ!!!」
クロロが残ったオーラを絞り切り、一気に右手に込める!

グオッッッ!!!!!
直径2メートルはあるだろう巨大な光の塊が、クロロの右手で渦を巻いている!!!


「コン太っ!離れろっ!」
クロロが叫び、コン太が素早く地面を蹴りつけ空中に飛び出した!!!

「今度は外さねえぞっ!!!」
クロロが獣人を睨みつける!!!

しかし!!!

ビッ!

「!!!」

獣人の掌から光が弾け、同時にコン太が一瞬で本部ビルに吸い込まれていった!!!


爆発と共に本部ビルが完全に倒壊し、衝撃波が敷地内を貫いた!!!

「そ、そんなっ!」
クロロの心臓がドクンと波打ち、冷や汗が吹き出す。

「はははっ!ドアホがっ!」

ビッ!ビビビッ!!!

コン太が突っ込んだ位置を狙い、追撃の光線を執拗に放っていく!

いくつもの爆炎が煌めき、真っ黒く煤けた瓦礫が幾重にも積み重なっていく…!

「ふはは!ジ・エンドってやつや!」

そう言って唐突にぐるりとクロロの方を振り向く!

「!!!」

「…その光…!おまえ…!煙で見えん間に、えらいこと企んどったな!」
クロロの右手を覆うオーラを見つめて顔を顰める。
そして間髪入れずに掌をクロロに差し出した!

「く、くそっ!ばれたっ!い、今から必殺を放っても、ま、間に合わねえ!」

「ふはは!残念だったな!その光の塊をぶつけるつもりだろうが、俺の引き金のほうが速いわ!黒髪っ!おまえもあの世に行きや!」

ぜ、絶体絶命ってやつか!?せ、折角コン太が作ってくれたチャンスが…!

クロロの頬を冷や汗が伝う。

い、いや、最後まで諦めるな!!!諦めた瞬間、負けになるぞ!


ピカッ!!!

そんなクロロの意志を踏みにじるかのように、容赦なく獣人の掌が光った!!!


ドン!!!

光の刹那、クロロもろともかき消すように、猛烈な爆炎が高く噴き上がる!!!



………………
……………
………
……



視線の先、

!?

何が起こったのか、分からなかった。
10

そして、その更に先で、黒々とした煙が渦を巻いて立ち上っているのだ…



極めて不可思議なことに、位置関係は正にその通りだった。

先ほど、クロロが立ち尽くしていた場所に黒煙が上がり、、獣人の背後にクロロが移動している!

まるで、獣人の後ろにテレポーテーションしたかのように…!

一体どうしてそうなっているのか、その理由を考えようとして、止めた。

!!!

クロロの右手には、先ほど溜め切ったオーラが、眩いほどに輝いている!

クロロが右腕を上げる!!!


しかし!!!

それよりも早く、獣人が振り向いた!!!
獣の本能が、強烈なクロロのオーラを捉えたのだった!!!

「黒髪っ!いつの間に!?」

獣人の目が驚きで一瞬見開かれたが、すぐに獲物を狩る獣の光を宿す!

「そんな瞬間移動みたいな隠し球があったとはな…だが、どこに逃げようが結果は変わらんぞ!」

獣人の掌がクロロを捉える!

!!!

その時!!!

獣人の後方からオーラの弾が飛び出し、後頭部で弾け、炸裂した!!!
獣人が反射的に頭を抑える!


!!!!!

「だあっーーーーー!!!!!」

クロロが渾身の必殺技を放つ!!!
爆発的な光の奔流が敷地内を白く染めていく!!!

ズッ…!!!

巨大な光の塊が獣人の目前に迫る!!!

「し、しまった!!!ぐおーっ!!!」

咄嗟に、光の塊に向かって、光線を放つ!

バシュッ!!!

しかし、圧倒的なオーラの塊の前で、光線は紙屑を吹き飛ばすかのこどく、かき消された!

「ち、ちくしょーーー!!!」

灼熱のオーラが獣人の体を包む!!!
毛皮が燃え尽き、塵となり、オーラの激流に消えて行く…!!!


「うぐわーーー!!!」

断末魔の叫びがレビオラの敷地にこだまする!そして…


ドーーーーーン!!!

鼠色の壁を揺るがす衝撃波が駆け抜けた!!!


………
……



「はあっ、はあっ…」

頬を撫でる風が、少しずつ煙を剥がしていく…。

コンクリートが抉り飛ばされ、茶色い土が剥き出しになった地面には、の構成員がうめき声をあげながら倒れていた…。
変身が解かれたその体には、もはや闘うためのオーラは残っていないようだ…。

「へ、へへ…や、やったぜ!」


ガラガラ…
倒壊した本部ビルの瓦礫を押しのけ、ボロボロになったコン太が姿を現した。

「コン太!!!無事だったか!」

「や、やったな、クロロ!!!」
コン太の右手から光のカケラが溢れている。オーラ弾の名残だ。

「そ、そうか!獣人の頭を狙ったオーラ弾…コン太だったのか!」

「な、ナイスアシストだっだろ?」

そう言ってコン太が親指を上げる。

「へへ、最高だぜ!」

クロロも親指を突き出し、とびきりの笑顔を見せた。

………
……


獣人との激戦の名残で、静まり返った敷地には所々で黒煙が上がっている…。

一方で、鳥のさえずりが時折耳に届き、青い空には雲がゆっくりと流れている。
先程までの死闘が嘘のようだ。



「いや、しかし驚いたな。クロロ、おまえ一体どうやって、一瞬であの構成員の後ろに行ったんだ?」
コン太がヨロヨロとした足取りでクロロの隣に腰を下ろしながら、本部ビルの瓦礫の隙間から見たシーンを呼び起こす。

…獣人の掌から光線が放たれたその瞬間、クロロが消え、獣人の背後に移動していたのだ!

「い、いや、オレも実は分かんねえんだ…しょ、正直言って、何がどうなったのかも分かってねえ…」

クロロの腕が震える。

あの瞬間ー。
言葉で言い表すのが難しいほど、不思議な体験だった。
獣人の手が光ったと同時に、走った。
そして、一人称視点の映画で場面が切り替わるかのように、それまでとは全く別の視界が広がっていたのだ!


「まっ、でもよ!あのやばいやつを倒せたし、結果オーライってことだな!」

ははは、と笑いながら、コン太に目をやり、ギョッとする。

「お、おい、コン太!なんだ、その?」

「ふ、服?」
コン太が自分の体に視線を落とす。

!!!

コン太の体を、のような薄い膜が覆っていた!
それは、首から上と手首から先だけを残して、体中に広がっているようだった。

「お、おまえ、そんなみたいなの、着てたっけ?」

「い、いや、そんなはずはない!な、なんだこれは?」
手に触れてみるが、まるで皮膚と一体のように貼り付いている。


「も、もしかして…が守ってくれたのか?」

獣人との死闘を思い返す。
自分でも不思議だったのだ。

初っ端に食らった、骨がメキッと軋むような蹴り…、胴体を貫いた光線…
どう考えても、

改めて、黒いボディ・スーツのようなものに、目をやる。

「…な、なあ、おまえの瞬間移動みたいな出来事とか、この黒いスーツって、もしかして…」

クロロとコン太が顔を見合わせる。

?」



その時、甲高い音がキィーンと空気を貫き、ドンっという衝撃が足元を揺らした!!!

「う、うわあっ!」
「なな、なんだっ!?」


シュウウ…

超スピードによる空気の摩擦なのか、全身から蒸気を上げた、片膝立ちの人の影が陽炎のようにゆらめいている…。

風がゆっくりと蒸気のベールを剥がしていく。

それは、真っ白な詰襟のロングコートに身を包み、マスクのようなプロテクターで口元を覆った、黒い短髪の大男だった。

切れ長の瞳から、鋭い視線をクロロたちに向けながら、徐に立ち上がる。


先ほど死闘を繰り広げた獣人のような禍々しさはないが、突き刺すように冷徹で、氷壁のような威圧感を放つオーラを投げかけている。

「お、おい…は、ハウスの人…かな?」
「…だ、だったら、あんなはいらねえよな…」
大男が放つオーラは、友好的どころか、殺意混じりの物々しいものだ…

「う、うそだろ…て、ことは…チャップマンの研究…?も、もう一人いたってことか?」

「ま、まいったな…足がやられて、オーラもすっからかんだってのに…!」

クロロたちに向かって、マスクの大男がゆっくりと足を踏み出した…!


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