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第12話・ターゲットを尾行せよ!①
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校舎裏。
授業をどうどうとサボって校舎の壁に背を預ける様にして座り込み、スマホを弄っている一人の男子生徒。
退屈そうな表情でスマホをぽちぽちと弄っていたが、やがてLINEか何かの着信音が鳴り、内容を確認すると、男子生徒は眉根を潜めると。
「チッ…!!」
苛立たし気に舌打ちすると、立ち上がって足早にどこかへと立ち去って行った。
それから数十秒後。
ガサリッと音を立てて茂みから顔を出したのは、俺、陽斗と時雨と友成である。
演劇部で借りてきた作られた茂みのお面被り、両手に茂みの葉の形をした手袋を付けて。
「あいつが斎藤先輩の幼馴染の高間 浩太か。クラスは確か1-Bだったか?」
「ああ、そうだな。俺の得た情報からすると、かなりの問題児みたいだぜ。授業はこうして堂々とサボるし、他校の生徒との喧嘩も絶えないみたいでな。学園側も頭を抱えているらしい」
「意外だ。凄く意外だ。あの斎藤先輩の幼馴染だっていうから、品行方正で穏やかな人物を想像していたのに…こんな朝から堂々と授業をサボるとはけしからん奴め」
「まあ、俺達も同じようにサボっているのだがな。こんな奇妙な格好をして」
「……おい、友成。俺があえて触れようとしていなかったところに触れるなよ。…だが、なあ、陽斗。何故俺達はこんな格好をする羽目になったんだろうか?」
何だか情けない表情で問いかけてくる時雨に、俺はさも当然のように返す。
「何言ってるんだ。尾行と言えば擬態だろう?ターゲットに気づかれては意味がないんだからな。現にこの完璧な擬態のおかげで全く気が付かれていなかったしな。流石は俺だ」
両腕を組んでうんうんと満足げに頷く俺の姿を、時雨と友成は何とも言えない表情で見てきていた。
俺達は今、斎藤先輩と幼馴染を仲直りさせるために、まずは幼馴染みの事を良く知ろうとその人となりを探るため、尾行ミッションを遂行している最中だったりする。
律樹が此処にいないのは、サボってしまった俺達の代わりに授業を受けてノートを取ってくれる役目を担ってくれているからだ。
と言いたいところだが、恐らくはこの格好をしたくなかったせいだろうとは思っている。
現に律樹まで巻き込んでやろうと声を掛けた時雨は。
「は?この俺にそんな格好をしろと?」
との冷たい一言と共に絶対零度の冷え切った目で見下されて凍り付いていた。
「まあ、それはそれとしてだな。この後はどうするんだ?」
「それは勿論、追いかけるぞ」
「え、やっぱ追いかけるのか?この格好で?」
「当然だろう。これだけでは外見しか分かってないからな」
「えー…」
「っと、大分距離が開いてしまったな。気配を消しつつ追いかけるぞ」
それだけ言って、俺はターゲットである高間の後を距離を取って追いかけていく。
木の茂みに擬態したまま。
そんな俺の姿を複雑そうな表情で見つめていた時雨達も仕方がないと言うように溜息をついて俺の後に続いてきた。
俺達の完璧な擬態のおかげか、高間は後をつけられている事には全く気が付いていない様子で、不機嫌さを隠さないままに校門を出て行く。
「校門を出たな。家に帰るのか?」
「いや、情報によるとここ数週間家には帰ってないみたいだぜ?」
「なら、一体何処に…。誰かに呼び出された感じではあったが」
「なあ、陽斗。やっぱりこのまま追いかけるのか?この格好で?」
「当然だ。見失う前に俺達も追いかけるぞ!」
それだけ告げて、俺は高間の後を追いかけるため校門から外へと出て行く。
「あっ、おい陽斗!……はぁぁ」
「まあ、仕方ないな。ああなった陽斗は律樹でないと止められん。行くしかなかろう」
「だな。…どうか道中で誰も知り合いと出会いませんように」
切実な願いを零しつつ時雨と友成も俺の後を追いかけて来たのだった。
授業をどうどうとサボって校舎の壁に背を預ける様にして座り込み、スマホを弄っている一人の男子生徒。
退屈そうな表情でスマホをぽちぽちと弄っていたが、やがてLINEか何かの着信音が鳴り、内容を確認すると、男子生徒は眉根を潜めると。
「チッ…!!」
苛立たし気に舌打ちすると、立ち上がって足早にどこかへと立ち去って行った。
それから数十秒後。
ガサリッと音を立てて茂みから顔を出したのは、俺、陽斗と時雨と友成である。
演劇部で借りてきた作られた茂みのお面被り、両手に茂みの葉の形をした手袋を付けて。
「あいつが斎藤先輩の幼馴染の高間 浩太か。クラスは確か1-Bだったか?」
「ああ、そうだな。俺の得た情報からすると、かなりの問題児みたいだぜ。授業はこうして堂々とサボるし、他校の生徒との喧嘩も絶えないみたいでな。学園側も頭を抱えているらしい」
「意外だ。凄く意外だ。あの斎藤先輩の幼馴染だっていうから、品行方正で穏やかな人物を想像していたのに…こんな朝から堂々と授業をサボるとはけしからん奴め」
「まあ、俺達も同じようにサボっているのだがな。こんな奇妙な格好をして」
「……おい、友成。俺があえて触れようとしていなかったところに触れるなよ。…だが、なあ、陽斗。何故俺達はこんな格好をする羽目になったんだろうか?」
何だか情けない表情で問いかけてくる時雨に、俺はさも当然のように返す。
「何言ってるんだ。尾行と言えば擬態だろう?ターゲットに気づかれては意味がないんだからな。現にこの完璧な擬態のおかげで全く気が付かれていなかったしな。流石は俺だ」
両腕を組んでうんうんと満足げに頷く俺の姿を、時雨と友成は何とも言えない表情で見てきていた。
俺達は今、斎藤先輩と幼馴染を仲直りさせるために、まずは幼馴染みの事を良く知ろうとその人となりを探るため、尾行ミッションを遂行している最中だったりする。
律樹が此処にいないのは、サボってしまった俺達の代わりに授業を受けてノートを取ってくれる役目を担ってくれているからだ。
と言いたいところだが、恐らくはこの格好をしたくなかったせいだろうとは思っている。
現に律樹まで巻き込んでやろうと声を掛けた時雨は。
「は?この俺にそんな格好をしろと?」
との冷たい一言と共に絶対零度の冷え切った目で見下されて凍り付いていた。
「まあ、それはそれとしてだな。この後はどうするんだ?」
「それは勿論、追いかけるぞ」
「え、やっぱ追いかけるのか?この格好で?」
「当然だろう。これだけでは外見しか分かってないからな」
「えー…」
「っと、大分距離が開いてしまったな。気配を消しつつ追いかけるぞ」
それだけ言って、俺はターゲットである高間の後を距離を取って追いかけていく。
木の茂みに擬態したまま。
そんな俺の姿を複雑そうな表情で見つめていた時雨達も仕方がないと言うように溜息をついて俺の後に続いてきた。
俺達の完璧な擬態のおかげか、高間は後をつけられている事には全く気が付いていない様子で、不機嫌さを隠さないままに校門を出て行く。
「校門を出たな。家に帰るのか?」
「いや、情報によるとここ数週間家には帰ってないみたいだぜ?」
「なら、一体何処に…。誰かに呼び出された感じではあったが」
「なあ、陽斗。やっぱりこのまま追いかけるのか?この格好で?」
「当然だ。見失う前に俺達も追いかけるぞ!」
それだけ告げて、俺は高間の後を追いかけるため校門から外へと出て行く。
「あっ、おい陽斗!……はぁぁ」
「まあ、仕方ないな。ああなった陽斗は律樹でないと止められん。行くしかなかろう」
「だな。…どうか道中で誰も知り合いと出会いませんように」
切実な願いを零しつつ時雨と友成も俺の後を追いかけて来たのだった。
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