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第7話・悲しげな横顔の理由①
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「全く、律樹も時雨もさんざん馬鹿にするだけして相手にもしないんだからな…」
翌日の放課後。
俺はぶつぶつと文句を言いながら生徒会で処理し終えた案件の書類の束を顧問の足立先生に渡すため、職員室へと足を運んでいた。
「失礼します。足立先生いますか?」
「おっ、来たなヒーロー」
「はい?」
「いや昨日は大活躍じゃないか。飛び降りようとした生徒を身を挺して救ったんだろう?いや、俺も出張じゃなかったら見れたんだがなぁ」
なんて目の前で豪快に笑うのは、生徒会顧問であり生活指導も務める足立先生である。
生活指導ながら話の分かる先生で、生徒の立場に立って話などを聞いてくれる上、これがまたかなりの男前系イケメンなものだから、憧れている生徒は少なくない。
俺も恋愛感情でではないけれど、足立先生とは何となく気が合うし、色々と相談にも乗ってくれるので信頼はしている。
「いや、笑い事じゃないですよ。こっちは死にかけたんですから」
「けど助けに行ったのはお前自身だろう?」
「まあ、そうですけれどね」
「お前の説得のおかげで斎藤ももう馬鹿な真似はしないって深く反省していたからな。本当によくやってくれた」
「いえ。って、昨日の先輩の名前斎藤っていうんですか?」
「ん?ああ、そうだ。斎藤 柚希。2年B組だな」
「2年B組の斎藤 柚希。よしっ」
思ってもいなかったところから先輩の情報を得られて、俺は思わず軽くガッツポーズを取ってしまう。
斎藤 柚希先輩、か。
柚希、柚希か…うん、良いな。
名前も可愛い。
先輩によく似合っている。
なんて思わずにやけそうになっていると、足立先生が不思議そうに問いかけて来た。
「なんだ、直接聞いていなかったのか?」
「昨日は学園長まで出てきてバタバタしてましたから、それどころでもなかったですしね」
「ははっ、まあ、確かにお前に何かあったら一大事だからな。だが本当に感謝してるぞ、お前のおかげで大事な生徒の1人を失わなくてよくなった。俺の方でも気に掛けてはおくが、お前達もよければまた何か思い悩んでいそうなら声を掛けてやってくれ」
「はい、勿論です」
足立先輩の言葉に俺はしっかりと頷いて見せる。
先輩に対して好意を抱いているという理由とはまた別に、死にたくなってしまうほど辛い思いをしている人間がいるなら誰でも力になりたいと思ってはいたから。
そんな俺の様子を見て、足立先生は満足気な笑みを浮かべて頷いてくれた。
そのまま資料の束を足立先生に渡した後は、一礼して職員室を出ると少し思案する。
「さてと、どうするかな。律達はもう先に帰ってるだろうし、俺も帰るかな……って、あれ?」
言いながらふと、窓から上を見上げた途端。
「はあああ!?またかよ!?」
なんて大声をあげながら俺は廊下を走りだしていた。
屋上のある東校舎へと。
そう、窓から見えたのは、誰かは分からないけれど、また誰かが屋上のフェンスをよじ登っている姿がはっきりと見えたから。
一難去ってまた一難である。
「全く何なんだ!こんなのは流行らなくていいんだからな!」
悪態をつきながらも全速力で廊下を走り抜け、昨日と同じように東校舎へと入ると一気に屋上に続く階段を駆け上がる。
そのまま大きく扉を開けてフェンスの方へと駆け付けた俺は、大きく目を見張る事に。
フェンスによじ登っていたのは、斎藤先輩その人だったから。
「斎藤先輩!?」
何でだよ!?
昨日、思い直してくれたんじゃなかったのか!?
なんて思いから、名前を呼ぶ声も一際大きく咎めるものになってしまったのだけれど。
俺の声が聞こえたらしく、斎藤先輩は慌てて俺の方を見下ろす。
「え!?赤城君!?ち、違うんだよ、これは飛び降りようとしているんじゃなくて…うわっ!?」
「危ない!」
誤解されると思ったのか、斎藤先輩は慌てて手を振って否定しようとするものだからそのまま体勢を崩して足を滑らせ背後から落ちそうになるのを、慌てて駆け付け危機一髪のところで抱きとめて救出する事に成功する。
翌日の放課後。
俺はぶつぶつと文句を言いながら生徒会で処理し終えた案件の書類の束を顧問の足立先生に渡すため、職員室へと足を運んでいた。
「失礼します。足立先生いますか?」
「おっ、来たなヒーロー」
「はい?」
「いや昨日は大活躍じゃないか。飛び降りようとした生徒を身を挺して救ったんだろう?いや、俺も出張じゃなかったら見れたんだがなぁ」
なんて目の前で豪快に笑うのは、生徒会顧問であり生活指導も務める足立先生である。
生活指導ながら話の分かる先生で、生徒の立場に立って話などを聞いてくれる上、これがまたかなりの男前系イケメンなものだから、憧れている生徒は少なくない。
俺も恋愛感情でではないけれど、足立先生とは何となく気が合うし、色々と相談にも乗ってくれるので信頼はしている。
「いや、笑い事じゃないですよ。こっちは死にかけたんですから」
「けど助けに行ったのはお前自身だろう?」
「まあ、そうですけれどね」
「お前の説得のおかげで斎藤ももう馬鹿な真似はしないって深く反省していたからな。本当によくやってくれた」
「いえ。って、昨日の先輩の名前斎藤っていうんですか?」
「ん?ああ、そうだ。斎藤 柚希。2年B組だな」
「2年B組の斎藤 柚希。よしっ」
思ってもいなかったところから先輩の情報を得られて、俺は思わず軽くガッツポーズを取ってしまう。
斎藤 柚希先輩、か。
柚希、柚希か…うん、良いな。
名前も可愛い。
先輩によく似合っている。
なんて思わずにやけそうになっていると、足立先生が不思議そうに問いかけて来た。
「なんだ、直接聞いていなかったのか?」
「昨日は学園長まで出てきてバタバタしてましたから、それどころでもなかったですしね」
「ははっ、まあ、確かにお前に何かあったら一大事だからな。だが本当に感謝してるぞ、お前のおかげで大事な生徒の1人を失わなくてよくなった。俺の方でも気に掛けてはおくが、お前達もよければまた何か思い悩んでいそうなら声を掛けてやってくれ」
「はい、勿論です」
足立先輩の言葉に俺はしっかりと頷いて見せる。
先輩に対して好意を抱いているという理由とはまた別に、死にたくなってしまうほど辛い思いをしている人間がいるなら誰でも力になりたいと思ってはいたから。
そんな俺の様子を見て、足立先生は満足気な笑みを浮かべて頷いてくれた。
そのまま資料の束を足立先生に渡した後は、一礼して職員室を出ると少し思案する。
「さてと、どうするかな。律達はもう先に帰ってるだろうし、俺も帰るかな……って、あれ?」
言いながらふと、窓から上を見上げた途端。
「はあああ!?またかよ!?」
なんて大声をあげながら俺は廊下を走りだしていた。
屋上のある東校舎へと。
そう、窓から見えたのは、誰かは分からないけれど、また誰かが屋上のフェンスをよじ登っている姿がはっきりと見えたから。
一難去ってまた一難である。
「全く何なんだ!こんなのは流行らなくていいんだからな!」
悪態をつきながらも全速力で廊下を走り抜け、昨日と同じように東校舎へと入ると一気に屋上に続く階段を駆け上がる。
そのまま大きく扉を開けてフェンスの方へと駆け付けた俺は、大きく目を見張る事に。
フェンスによじ登っていたのは、斎藤先輩その人だったから。
「斎藤先輩!?」
何でだよ!?
昨日、思い直してくれたんじゃなかったのか!?
なんて思いから、名前を呼ぶ声も一際大きく咎めるものになってしまったのだけれど。
俺の声が聞こえたらしく、斎藤先輩は慌てて俺の方を見下ろす。
「え!?赤城君!?ち、違うんだよ、これは飛び降りようとしているんじゃなくて…うわっ!?」
「危ない!」
誤解されると思ったのか、斎藤先輩は慌てて手を振って否定しようとするものだからそのまま体勢を崩して足を滑らせ背後から落ちそうになるのを、慌てて駆け付け危機一髪のところで抱きとめて救出する事に成功する。
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