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第175章 迷子伝説
みずいろの雨のB面の曲は、「目覚めたときに」
しおりを挟む八神純子さんの、「みずいろの雨」が収録されたレコードのB面の曲は
「目覚めたときに」
勿論、B面の曲は、聴いたことがないから、どんな曲なのか分からない。
だけど、私が書いている小説「眠る女が目覚める時」とタイトルがシンクロしていたのが、妙に嬉しかった。
時は、反対回りに、ぐるぐるぐるぐると回転しはじめた。
スクリーン(映画)の場面が、
どんどん巻き戻されるみたいに…
幼いあの頃に帰っていく。
確かに、私は、あの日、
時の迷子になっていた。
※ 『眠る女が目覚める時』からの転載
(こちらでも、書いているとは思いますが…)
小さい頃、「犬のおまわりさん」の歌をよく歌っていた。
そう。あの日も、私は、その歌を歌った。
「ここはどこ? 私は誰?」
記憶喪失になったドラマの主人公じゃないんだけど、
まさに、そのような感覚!
夢みて目覚めた私は、自分でも信じられないような行動をしたから。
私は、全身が幸せに包まれるような感覚で、天国的な夢を見ていた。
私は、椅子に座っている男の人の後ろに立っていた。
その人は、ビロードの服を着ている。
その服は、柔らかで、滑らかで、温かくて、
まるで雲の綿菓子のようのように
ふんわりと、幸せな気持ちになる肌触りだった。
髪は、やや長く、もじゃもじゃな髪質
夢の中の私は、その人を「お父さん」って、
甘えていた。
冷静になって考えてみたら不思議である。
現実の父とは、全く違う、その人を、お父さんだと慕っているのだから。
その男性は、変わったデザインの洋服を着ていた。
シマウマみたいに縦方向に、縦長の隙間が幾つか空いていて、私は、その隙間に指を通していた。
右手の指を右から左へと、
今度は、左手の指を左から右へと…
編み物をするみたいに、指を入れていたのだ。
その夢を見た後、私は突然目覚めた。
気が付くと父親はいない。
私は悲しみでいっぱいになった。
そうだ。どこかに木靴があるはず。
木靴を探そう。
そう思って私は木靴を探して走りだした。
実際に、私は自分が寝ていた部屋から、廊下へと走り出し、玄関へと向かった。
当然のことながら、木靴などなかった。
「ここはどこ?
何故私は、こんな場所にいるのだろう?」
泣くつもりはないのに、自然と涙が出た。
再び潜り込んだ布団のなかで、私は、泣きながら
犬のおまわりさんを歌った。
迷子の迷子の子猫ちゃん
あなたのお家はどこですか?
お家を聞いても分からない
名前を聞いても分からない…
私は、まるで迷子の子猫ちゃんみたいだ。
じっと天井を見上げた私。
四角い形の蛍光灯がある。
和室にある、見慣れたその形に違和感を感じた。
夢の中では、豪華な形だったはずなのに…
実際に、木靴を探したこと、その後、涙が止まらなかったこと。
色々な想いが交錯しているなかで、天井から何者かの声が聞こえてきた。
『貴方は、今日の夢を忘れてはダメよ。
大人になって本にしなきゃいけない大事なことだから…。』
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