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第51章 そして私は、人生の謎解きを、はじめる
ありのままに メール 47
しおりを挟む※ 前章のメールの続きです。
7/4 7:49
お時間のある時に読んで下さい。
I先生へ
おはようございます。
昨日私は、先生に主人の事をメールに書いていた為、ある事を思い出しました。主人は、メトロポリタン美術館で、フェルメールの『眠る女』を見た後くらいより、体調不良となり発熱を催し、私達は、ニューヨークで日本語が通じる病院を見つけ出し、主人は診察を受け、薬を処方して頂きました。病院名は忘れましたが、日系人の医師により、病状を診て頂きました。
主人が熱を出した為に、私は、美術館で、最も楽しみにしていた、フランク・ロイド・ライトの建築、『リトル・ハウスの居間』を観る事ができず、とても残念でした。しかし、それも、運命により仕組まれた事だったのかもしれません。私は美術館にて、その後、沢山の美術品を鑑賞する時間を与えられていたら、フェルメールの『眠る女』を心に留める事なく、忘れてしまっていたかもしれないのです。主人がタイミング良く?熱を出してくれた為、帰国した後で、フェルメールの絵画が、一番気になる作品となったのです。
私は、改めて、メトロポリタン美術館ガイドの本を読んでいました。私は、以前、I先生へのメールにて、(少女の絵は、背景こそ黒ですが、モナ・リザの時を思い出して、父は私を描いてくれました。)という文章を送った事があります。似たような記述を解説書にて見つけました。
フランス人の批評家トレが「女性を描いた肖像画の中で最も謎めいているレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》を思い起こさせる」と言った作品である。
私にとって、この文章は、とても嬉しい解説でした。過去世の父フェルメールは、私が病気で亡くなる事が分かり、『モナ・リザ』の時を意識的に思い出して私の肖像画を描いてくれたのだと思いました。やはり、父フェルメールは、自分がダ・ヴィンチの生まれ変わりである事を知って生きて、芸術活動をしていたのだと思います。
話は変わりますが、日本人のガイドさんが、フェルメールの作品の中で何故『眠る女』を選んで紹介してくれたのかを疑問に感じていました。あの作品は、画家自らが奥の鏡を塗りつぶした為に、美術評論家達に失敗作品のような目で捉えられてしまった絵画です。小林頼子さんの解説にも、(期待されるような遠近感が出ていない。) と厳しく指摘してありました。
日本人のガイドさんは、売れない画家さんのようなイメージでした。きっと、このガイドさんは、『眠る女』の本質を理解し、鏡の効果が分かっていたのではないでしょうか?しかし、黒く塗りつぶされてあるのは何か意図的なものではないか?と、私に疑問を投げかけてくれていたようにも思えます。
客観的に見て、メトロポリタン美術館に展示されてある、フェルメールの全作品の中で、一番、画家らしさのでた代表的な作品は、『水差しを持つ女』だと思います。窓から差し込む光を受けて、女性の何気ない仕草をまるで、写真で捉えたように描写してあります。画家が、最も好んで得意としていた構図の作品を、残念な事に見せられる事は、ありませんでした。やはり、私は、メトロポリタン美術館では、『眠る女』のみを見る必要があったのかもしれません。
お忙しい所、申し訳ありませんでした。
応援ありがとうございます!
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