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CIA 絡みの色々なこと。
正力松太郎を操ったCIA局員の人生|NEWSポストセブン ※続きの文章
しおりを挟むワトソンが柴田に相談した結果、原子力の負の面である水爆実験が引き起こしたネガティヴな反応を打ち消すため、原子力が平和利用できること、この方面でアメリカは日本を援助するというポジティヴなことを宣伝するメディアキャンペーンを張ることになった。
その目玉として、アメリカのジェネラル・ダイナミクス(*4)の社長ジョン・ジェイ・ホプキンスを日本に招待し、アメリカが日本の原子力平和利用を援助するという主旨の講演会を日本各地でさせ、それを読売新聞と日本テレビで宣伝する計画を立てた。
【*4:世界初の原子力潜水艦ノーチラス号を建造し、原子炉の輸出に乗り出そうとしていたアメリカの軍産複合体】
これは1955年の5月に実現し、絶大な効果を上げた。同じプロパガンダの一環として同年11月に開催された原子力平和利用博覧会(*5)で来場者にアンケート調査を行ったところ、次のような結果が出た。
(1)「生きているうちに原子力エネルギーから恩恵を被ることができると考える人」 76パーセントから87パーセントへ増加。
(2)「日本が本格的に原子力利用の研究を進めることに賛成な人」 76パーセントから85パーセントへ増加。
(3)「原子力平和利用が長足の進歩を遂げたと思う人」 アメリカについては51パーセントから71パーセントに増加。ソ連については19パーセントから9パーセントに減少。
(4)「アメリカが日本と心から原子力のノウハウを共有したがっていると信じる人」 41パーセントから53パーセントに増加。
【*5:USIA(アメリカ情報局、その下部機関がUSIS)と読売新聞の共催で東京の日比谷公園で開催され、当時長蛇の列ができた】
この結果は、当時の反原子力・反米世論が、ワトソンの工作によって抑えられたばかりか、原子力利用推進・親米の方向に転じていたということを示しているといえる。
◆親米化プロパガンダの成功
この後2年にわたって朝日新聞はもちろんのこと、広島に本拠を置く中国新聞まで読売新聞の顰に倣って原子力平和利用推進キャンペーンを張った。当のメディアが意識していようといまいと、これは強力な親米化プロパガンダとして働いた。
しかし、CIAは、これだけ正力を利用しながらも、原発を与えることはなかった。日本が核武装することを恐れたからだ。正力はイギリスからそれを輸入しなければならなかった。
一方、正力もさるもので、アメリカの反対をはねのけて導入したコルダーホール型原発は、プルトニュウム(原爆の原料)生産が主で、発電が従というものだった。実は正力と産業界のトップは、これを足掛かりに原発と核兵器を生産し、輸出することを目指していたのだ。今日この目標の半分が実現をみている。正力(そして本シリーズの日本人主人公)は、ただ利用されて終わる男ではなかった。
その後、ワトソンは、1957年にパキスタンのカラチに異動になり「中東アメリカの友」(*6)という民間友好団体の職員というカバーのもとで、中東の親米化を目的とする非公然プロパガンダに従事した。中東は地政学的にも重要で、アメリカの石油利権と深く関係しているので、またも重要ポストを任されたといっていい。
【*6:American Friends of the Middle East, INC.】
その後、1965年にメキシコ・シティに移り、やはり非公然プロパガンダを取り仕切る。アメリカと政治・経済的にも深く関係しているこの隣国のメディアと国民を親米化することは極めて重要なので、CIAの本部も彼の能力と功績を高く評価していたということだ。その証拠に1967年には管理職の副支局長に昇進する。そのかわり、ケース・オフィサーとして現場で情報提供者や協力者をリクルートするという仕事からは退いていたと見られる。すでにこの世界では面が割れてもいた。
そして1977年下院暗殺問題調査特別委員会の証言要請に応じ、陰の世界から出てくることになる。
●ダニエル・スタンレー・ワトソン/CIA局員。ワトソンの名前は1996年にアメリカ下院JFK暗殺記録特別調査委員会に提出されたCIA文書(2003年公開)で公に知られることになる。柴田秀利は自著で「D.S.ワトスン」と呼ぶ「この決して肩書きを明かさない」男がCIA局員ではないかと疑っていたと書いている。
【PROFILE】ありまてつお/早稲田大学社会科学部・大学院社会科学研究科教授。著書に『「スイス諜報網」の日米終戦工作』(新潮選書)、『原発・正力・CIA』(新潮新書)、『アレン・ダレス』(講談社)など。
※SAPIO2016年9月号
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