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瞽女唄、別伝『赤猫口説』

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            ごぜうた べつでん あかねこくどき

 鈴虫が鳴いていた。
 今宵も寝苦しく、夜中に目が覚めてしまった。
 おいそは、かわやから戻る途中、庭石に腰掛け、夜空を見上げた。
 満月であった。
 どうりで明るいわけだ。
 月に照らされた蔵の漆喰壁が、青白く光を放っている。
 おいそは、庭を見渡した。
 猫が一匹もいないではないか、とふと思ったからである。
 特に、茶トラの「アカ」が見当たらないのが気にかかった。
 いつもなら、こういう眠れぬ夜に、必ずと行っていいほど、通りががった庭の葉陰から顔をのぞかせ、おいそを見ているものである。
「アカ、ツゥッ、ツゥッ、ツゥッ」
 呼んでも、アカは現れなかった。
 何度かそうして諦めかけたときだった。
 裏木戸がガタガタと音を立てるのが聞こえた。
 おいそは木戸のほうを見やる。
 見た目には異変はない。
 しかし、音が再び。
 押し込みではあるまいか。おいそは、恐る恐る木戸の方に、忍び足で近づいていった。
 そうして結局木戸のすぐそばまで来たが、音は止んだようだった。
 通りすがりの酔っ払いかもしれない。
 戻りかけた、おいその後ろで、今度は声がした。
「お頼み申します。お頼み申します。水を飲ませてください。水を一杯」
 まだ、若さが残る男の声だった。
 おいそと同年代と思しき青年の。
 一瞬身構えたおいそであったが、なぜか吸い寄せられるように木戸に戻って行くと、木戸の鍵を外して、戸を開けた。
 侍の姿である。
「夜分に済みませぬ。旅の者でございます。この先のお堂を今夜の宿にしておりますが、暑さゆえ、喉が乾きまして、清水を求めて、辺りを探しましたが、どこにも見当たりません。仕方なく戻りかけました時、このお屋敷の前を通り、人の気配を感じましたので、木戸を鳴らしてみたのです」
 若い侍は、そう説明しながら、おいそに近づいてきた。
 旅の若侍は、ご浪人であろうか。
 いや、もしや仇討ちの旅の途中やもしれない。
 月明かりに照らされた侍の顔を、おいそは、ふと見上げて、はっとした。
 まるで、絵草紙から飛び出してきたような、色白の美男である。
「どうぞ、お入りください」
「かたじけのうごうざいます」
 おいそは侍を庭石に座らせ、自分は母屋に行き、湯呑を取り、湯冷ましを汲んで戻ってきた。
「どうぞ。足りなければ、継ぎ足して参ります」
 一息に飲み干すと、おいそが思い込んでいたのとは裏腹に、若侍は、湯冷ましを味わうように、ちびりちびりと少しずつ、時間を掛けて味わうのであった。
 その姿が、なぜかおいその胸を打った。
「お侍様は、どちらに向かわれているのですか」
「はい、まだまだ修行の身。特に決まった宛があるわけではございませんが、江戸の方を目指しております」
「そうしますと、まだまだ旅の途中でございますか」
「はい、されど、吉野は歴史が深いところ故、このまま通り過ぎるのは勿体ないと思い、しばらく探索をいたそうか、と考えております」
「さようでございますか」
 うつむいたおいその表情は、なぜかホッとしている。
「宿は、お堂に」
「そうなりましょう。なあに、寒さを凌ぐ必要がある季節ではございませんので」
 そういうと、若侍は、残りの白湯を飲み干し、立ち上がった。
「夜分に、かたじけのうございました。助かりました」
「お役に立てて、何よりです。いつでもお寄りください。わたくしは、と申します」
 おいそは、若侍の先に立って、木戸まで歩いていく。
「よろしければ、お名前をお聞かせください」
「はい、キノシタ、カズマと申します」
「カズマ、さま。お気をつけて」
 それから、カズマは毎晩おいその元を訪れることになった。

「お嬢さま。旦那様がお呼びでございます」
 カズマが来るようになって、三日目のことであった。
 夕餉ゆうげの後、おいその父、寅蔵がおいそを自室に呼んだ。
 おいそは、悪い予感を感じながら、寅蔵の部屋の襖を開けた。
「お父様、参りました」
「おう、何やら、このところ覇気が無いように思うが、どこか優れないところがあるのか」
「いいえ、大事ありません」
「そうか、なら良いが。ところで、呼んだのは、他でもない、お前に縁談の話があっての。お前も十六になった。そろそろだ、と思っての。相手のお方も、さるお武家の二男。武芸もさることながら、読み書き算盤そろばんも達者だということだ。私も会ってきたが清々すがすがしく闊達かったつで、全く、婿には不足がない。一度、会ってはどうか、と思うての」
 ついに来たか、であった。
 母、おひさが、先だってから、そういう空気を出しているのが、おいそには分かっていた。
 おいそは、悩んでいる風に見せて、答えた。
「少し、考えさせてください。大事なこと故。お願い申します」
「そうか、あい分かった」
 その後、おいそは色よい返事をせず、時は過ぎていった。

 夜半、いつになく激しく鳴く猫の鳴き声に、おいそは起こされた。
 猫に盛りがきたのか、とおいそはふと思いかけ、すぐに別のことを考え始め、心にさざなみが立つのが分かった。
 縁側を歩いていくと、下弦かげんの半月が見えた。
 今夜、カズマがやってくれば、七晩続きとなる。
 果たして、これまでと同じように、カズマは裏木戸からやってきた。
 しかし、訪れ方はいつもと変わらないだけで、その夜のカズマは確かにいつもと違う、とおいそは感じた。
 そして、そのいつもと違う何かによって、おいそは自身の心が少しずつのが分かった。
 気が付けば、どこからか、流れてきた厚い雲が月に掛かり、そのうちに黒い闇夜に変わっていった。
「まだ、夜が明けるには時があります。カズマ様、私の自室へいらして、話の続きをお願いいたします」
 この後、二人は結ばれた。
 ごく自然の流れだった。
 しかし、カズマは去り際に、信じられない話をしたのだった。
「おいそ様、こうなったからには、わたくしは、本当のことを打ち明けないといけません。どうか、落ち着いて聴いてください」
 カズマが居住まいを正して、そう前置きをし、話しだした。
 おいそは、固唾を呑んで、カズマの言葉を待った。
「わたくしが旅の途中の侍だと言ったのは、あれは偽りにございます。どうか許してください。わたくしは」
 カズマは、少し言いよどんだ。
「わたくしは、おいそ様よりも一つ歳上の十七になります。人であれば、十七と言えば、年頃なのでしょう。おいそ様もお年頃。お美しくお成りになりました」
 ふとカズマが、まるで妹を見るような優しい眼差しをおいそに向け、すぐにまた寂しい表情に変わり、障子に目を戻し、話を続ける。
「しかし、猫にはとっては、もはや寿命。わたくしは、もう長くはありません」
 おいそには、にわかに意味が分からない。
「およそ十年前、わたくしは、おいそ様、あなたさまに、恋をしたのでございます。それは、大変に罪深く、掟破りのことなのです。されど、その気持ちをどうにかして振り払おうとすればするほどに、どうしたものか、その気持は強くなる一方なのです」
 気付けば、カズマはうつむき、泣いているようであった。
 思わず、おいそは膝を寄せて、カズマの背中に手を当てた。そうせずには居られなかったのだ。
「旦那様には、大変な御恩がございます。捨て猫同様のわたくしを大変にかわいがって育ててくれました。にもかかわらず、わたくしは、その御恩に背くように、畜生にはあるまじき心をあなたさまに寄せてしまったのです。その結果、このような化け猫になってしまったのです」
 化け猫。
 アカ。
「そのようなことはございません。カズマ様は、化け猫ではありません。わたくしの大切はお方です」
 おいそは、不思議な力に動かされるように、そう言った。
「いや、そのようなことを申されてはなりません。わたくしの正体を知られたからには、もはや、ここに来ることはできません。しかし、わたくしには悔いはございません。こうしておいそ様に、本当のことを打ち明けられた、それだけですでに余りあることなのでございます。本当に、長い間、お世話になりました」
 カズマは、再び向き直ると、深々と頭を下げた。
「それでは、これにて。おいそ様、達者で」
「ちょっと、待ってください。駄目です、行っては。わたしを置いて行かないでください」
 おいそは、カズマの手にすがった。
 カズマは抗うことはしなかった。
 長年かわいがってくれた飼い主に、そのようなことはできなかったのだ。
 夜が明けるまで、カズマはおいそを抱いていた。

 翌夜、カズマは前夜のおいそとの約束を守り、変わらず、おいその元にやってきた。
「カズマ様、わたくし決めましたの。お父上に、カズマ様のことを話します」
「旦那様に、それは」
 おいそが、カズマの言葉を遮った。
「いいえ、大丈夫です。その御姿であれば、だれが気づきましょうか。明後日は、蔵王権現様(吉野山の金峯山寺きんぷせんじ)の祭礼がございます。観蓮節かんれんせつでございます。ご存知でしょう。そちらに、わたくしはお父上、お母上と三人で参ります。そのときに、カズマ様をご紹介申し上げます。蔵王権現様の観蓮節の言い伝えを、カズマ様はご存知ですか」
「いいえ、存じません」
「そのむかし、大和やまとの奥田にある池のほとりに、刀良売とらめ様という大層お美しいお方が住んでおられました。あの有名な役行者えんのぎょうじゃ様のお母上にあたるお方です。長患いをなされ、池の蓮が咲く頃になると、池で水浴びをして療養をされていたのだそうです。池のそばに小さきやしろがございました。水浴びの後、刀良売様は毎日、その神社にお参りをなさっていたそうにございます。ある朝、いつものようにその社に参ったところ、社の横の池に、いつもとは違う白い蓮が花を咲かせていました。見れば、その花びらの上に、なんと金色のカエルが載っていたのだそうです。刀良売様は、何気なく、そばに生えていた篠萱しのかやを一本引き抜いて、金の蛙に投げつけたところ、それが運悪く、蛙の目を突いて、片目が潰れてしまい、それのせいで普通の蛙に戻り、池に帰っていったそうにございます。もともと、その池に咲く蓮は、一本の茎に花を二つつけるそうで、それがめでたいということで、朝廷に献上されるほど有名で、その池は捨篠池すてしのいけと呼ばれていたそうにございます。この蛙の言い伝えのもっと前にあったことで、もう一つの伝説がございます。むかし吉野山で修行をなさっていた山伏を、決まって通りがかりに罵声を浴びせる愚か者が居たそうにございます。その男は、歳をとってやがて亡くなるのですが、現世のそのような行いによって、来世は蛙になったのだそうです。今日の蔵王権現の蓮華会の祭礼は、この二つの蛙にまつわる言い伝えが元になっております。お祭りの一番の盛り上がりは、蛙跳びの儀式です。権現様の高層のお一人が、法力ほうりきによって蛙を人に戻すというものです」
 布団の中で、カズマに背を向けて話していたおいそは、ここで話をようやく区切り、向きを変えて、カズマを見つめた。
「蔵王権現様のお力添えによって、きっと、あなたさまも」
 おいそは、この儀式にあやかって、カズマも本当の人になれるだろうと、信じて疑わないのであった。

 果たして、この二日後。
 弘化三年(一八四六年)、六月二十四日、観蓮節。
 おいそは、白無垢に緋縮緬ひぢりめんを合わせ、天鵞絨ビロードの帯締め。島田に結い、錦紗きんしゃ上緒あげお、銀のかんざし。流行りの縮緬手拭いをふわりと被る。足元はさらしの足袋に、紅絹裏もみうらの草履。
 寅蔵にすれば、これも可愛い一人娘に、良縁があるように、との願いが込められており、それゆえに大層気合を入れ、これらの衣装に財を注ぎ込んでのことである。
 それは、参道の誰もが振り向くような美しい出で立ちだった。
 中でも、山門横の茂みに隠れて見ていたアカは、着飾ったおいそに見とれ、自らも気合を入れ直して化けた。
 白無垢に綸子りんず。その上に黒羽二重くろはぶたえ。流行りのななこ帯を三四みよに廻して、後ろに止める。二尺二寸の刀を差して、今か今かとその時を待った。
 そして、蛙跳びの祭礼が終わった後、おいそは満を持して、寅蔵に願い出た。
「お父上、実は、ぜひお会いしていただきたいお方がございます。どうか、お願い申し上げます」
 寅蔵は身構えた。身構えたが、愛する娘のたっての願い。無下にはできなかった。
 カズマがすっと現れ、寅蔵の前に進み出て、片膝で地面に伏し、頭を下げた。
「土佐の浪人、キノシタ、カズマと申します」
「なに、浪人だと。士官の宛があって、この地に参ったのか」
「いいえ、剣術の修行に江戸に参ります」
「なに、江戸とな。ならぬ、どういうつもりか知らぬが、娘はやらぬ。もっとも、刀を捨てて、この家に入る覚悟はあるのか」
「それは」
 カズマは勢い、言いよどんだ。
 そういった類の話は、おいそとしていなかったのである。
「お父上、それはこれからのお話でございましょう。ひとまず、今日はご紹介ということにございます」
「いいや、話はこれまでじゃ。どこの馬の骨とも知れない浪人とこれ以上話しても無駄じゃ」
「お父上、まだ、お会いしたばかりでは」
 すっかり頭に血が上った寅蔵は、聞く耳を持たなかった。
「ならぬと言ったらならぬ。どうしても、と強情をはるのであれば、勘当じゃ」
 寅蔵も、ついつい口が滑った。
 この言葉に、流石に食い下がる者はなかった。
 話はそれで収まった。
 しかし、それは、その場だけのことであった。
 おいそは、反旗を翻すどころか、姿を消した。
 翌朝になって、寅蔵は、その大事を知らされた。

 駆け落ちの後、カズマはまるで憑き物が落ちたように、日に日に弱っていった。
 無理もなかった。
 カズマ、いやアカにとって、長年世話になった飼い主の元を離れたのである。
 そして、逃亡から十二日目の朝、カズマはおいそに告げた。
「わたくしは、もう長くありません。刀良売様にあやかり、こうして捨篠の池のほとりに隠れ住み、毎日療養をしてきましたが、やはり、寿命には抗えません」
 おいそは、その言葉にしばらくして、何かに諦めるように言った。
「わたくしは、あなた様と、こうして幸せな日々を送ることができ、もはやこの世には未練はございません。カズマ様が亡くなるということでしたら、わたくしもご一緒いたします。ここまで二人でやってきたのですから」
「いや、それはなりませぬ。おいそ様、あなたは、お父上の元にお帰りなさい。寅蔵様は大層悲しんでおられます。これ以上の不義はできません」
 そうやって、何度押し問答をしても、おいそは気持ちを変えなかった。
 ついにカズマの方が折れた、ように見えた。
 翌早朝、カズマは、小舟を一艘探してきて、捨篠池に浮かべた。
 二人は、白無垢姿である。
 カズマは、短刀を脇に差し、舟を漕ぎ出した。
 舟は時間を掛けて、ゆっくりと水面みなもを進んでいった。
 蓮の花の時期はまだ終わっていない。
 しかし池には、季節外れの朝霧がたっていて、蓮が見えない。
 しばらくして、おいそが池の水面を見やると、白い蓮華が霧の中から顔を出した。
「珍しい」
 おいそは、思わず声を上げた。
 二人は、しばらくの間、白い蓮華に見とれていた。
 その時が止まったようなひと時に、互いは何を思っていたのだろうか。
 あるはずのない奇跡を願ったのかも知れない。
 しかし、何も起こらなかった。
 カズマが沈黙を破った。
「おいそ様、これにておさらばでございます」
 そう言うと、カズマは短刀を引き抜き、さやを抜いて、まっすぐおいその腹を目掛けて突き刺した。
 いや、突き刺したと見せつつ、その実は、拳でおいその鳩尾みずおちを突いた。
 おいそは、気を失った。
 カズマは、おいそを押さえ、舟に横たえた。
 もう一度、その美しい姿を、カズマは見る。
 目に焼き付けるように。
「おいそ様。長い間、ありがとうございました。来世で会いましょう」
 カズマは、短刀を喉まで持っていき、裂き切った。
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