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マハロブ市街戦
第二百六話 クラリーナとディナー③
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「えっ、そうなの……」
僕はそうつぶやくしかなかった、ま、まあ、男女が夕食を共にすると、そういう関係になっちゃうこともあるらしいけど、まさか、この世界では女性とディナーすることはベッドインという重要な意味とは。
だって、相手は僕だよ、しかも彼女は超美女のクラリーナだよ、そんなの思ってもみなかった……。
僕は彼女を改めてみると、逆に冷静になって恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にして、クラリーナはジト目でにらみつけてくる。
……か、可愛い……。改めてみるとクラリーナ可愛いなあ、そんな娘とまさかベッドイ……。いや、ちょっとまて、もしかして彼女は僕でokってこと? えっ、ええ。僕に抱かれて……いいってこと。そ、そうなんだ……。
「はははは……」
「……佑月さん、何笑ってんですか。何か言ってくださいよ!」
「ははは……」
照れ笑いしかできない、そうか、だからこんなスケスケのドレスを着てたんだ。なるほど、僕を誘ってんだ、そうか、なるほど……! ──よし、飲もう!
僕は杯のワインを一気飲みした。クラリーナはまんまるい胸を強調しつつも怒った。
「ちょっとなんか言ってくださいよ! 私、どうすればいいんですか!」
「うんOK!」
「はあ?」
「飲もう! とにかく飲もう!」
「あ、あの……」
「良い酒だなあ、夜空もきれいだし、美しい女性も隣にいて僕は幸せだ──」
「あの、もしもし?」
顔を赤らめたクラリーナを見て、僕の視線を下にやる。大きいなあ……、いいなあ! その下を見ると足を組んだ彼女の白い太ももが煽情的だ。おお、すばらしい、うん見えそうで見えない、最高―!
「すみません、無言で変なとこ見ないでください!」
そう言った彼女は恥ずかしがって実にキュートだ。いいねえ。女の子っていいねえ。最高! あははは。
「もういいです! 私の勘違いだったんですね、着替えます!」
「まってまってまて、着替えなくていいよ、似合ってるじゃない」
「え……、着替えなくていいんだ……」
「もちろんだよ、そう、うん、綺麗だよ、クラリーナ!」
「そうだったん……ですか、そうですか! そうですよね! そうじゃなきゃ来ませんよね! 良かった……思い切ってこのドレス着て……!」
「うん、素晴らしいね、君がそんなに魅力的なら隠さなくていいのに……」
「あっ、やだ。佑月さん、私のおっぱい見てる──」
「誰だって見るよ、男でも女でも。君くらいなら」
「だから、隠してるんですよ」
「ん、どうして……」
「だって、恥ずかしいですもん、特に男の人に見られると……」
「えっ、そんなに立派なものがあるのに……」
「大きかったっていい思いするわけじゃないですよ、胸が重いし、肩凝るし、動くと痛いし、みんなからかうんですよ、私の胸を見てね。すっごいからかわれました、子どものころ……」
「それは大変だったね……」
僕がじっくり見ると彼女は目をそらした。
「そんな熱っぽい目で見ないでくださいよ、佑月さん……」
「クラリーナ……!」
「はい……!」
「……肉食べたいんだけど……」
「……、わ、わかりました……!」
彼女は拳を震わせている、どうしたのかな、あははは。彼女はまた肉を切り分け僕の口元へ持ってきた。
「はい、あーん」
「あーん」
その途端、彼女はナイフについた肉をひっこめた、僕は勢いのまま彼女の柔らかいおっぱいの中に顔うずめてしまった──!
「きゃっ!? 佑月さんのえっち!」
「あはは……」
やわらけえ、やわらけえ、おっぱいって柔らかくていいなあ、いいなあ!
「あの佑月さん……」
「あっ、ごめんつい……」
「もう、佑月さんったら……このヘンタイ!」
そう言って彼女はデコピンをした。
「あいた!」
「もう、罰ですよ……、しょうがない人……!」
「あはは、でもねえ、すごいねえ……」
僕はそう言って自分がうずめた胸を見た、すげえよなあ、これに、今、僕の顔が……。あったけえな……! あはっはは。
「ちょっとじっと見すぎです!」
「ご、ごめん!」
「……触りたいです?」
「え! いいの!?」
「どうしよっかなあ……」
うわあ、彼女が髪の毛をいじりながら、女性の顔をし始めて色っぽいよ、つやっぽく頬を染めてパープルアイの瞳を輝かせて。いやあ、これは……! 僕は自然と彼女の肩をつかんでいた──
「クラリーナ……!」
「はい……!」
「お酒……他にないかい? もう、空なんだ……」
「──ああ……はいはい、わかりました……」
そう言ってクラリーナは他のワイン瓶を持ってきた。
「このワインはですね、クマ殺しという異名がある、すっごい酒の強いワインなんですよ……」
「ええ、そうかい! 飲んでみたいな!」
「もちろん飲んでいってくださいね……!」
そう言って彼女は僕の杯になみなみと酒を注ぐ。
「かんぱーい!」
「かんぱーい!」
そして僕は一気にワインを飲んだ! うわあ、これは来るねえ!
「かあっ!」
「どうです、クマ殺しの飲み心地は」
「最高だよ! うんうん! あっつうう!」
「そうですね……、熱いですよね。何だか私、ほてってきちゃった……!」
そうして彼女は胸元のドレスをパタパタと引っ張ったりした。ち、乳首がみえ……!
「……なーに見てんです……!?」
「いや、その……!」
やばい、にやけ顔が止まらない、あはは、いいねえ。彼女も熱っぽくこちらを見ながら、何度も足を組み替える。うわ、うわっ、見え……!
「気になります……? この先が……」
「この先……だと……!」
そして僕は杯に酒を自分で注いで一気飲みをした!
「くはあっ!」
「まあ、佑月さんたら、たくましい……!」
「クラリーナ……!」
「はい……!」
そのまま、彼女の肩をつかみそして──
「いけないことだとはわかっている……」
「はい!」
「……でも、好きなんだ……!」
「……はい!」
「──日向さんのことが……!」
「……はあ?」
「彼女はね……僕の母親だったんだ……」
「……はあ……」
「僕はね、家庭環境に恵まれていなかった、愛されていなかったんだ、親に……」
「……そ、そんなことないですよ」
「いや、本当なんだ! 僕は人の愛情を感じたことはなかった。……そう、日向さんと会うまでは……」
「そう……ですか」
「日向さんは僕に教えてくれたんだ、命がどれだけ尊いか、人生がどんなに楽しいか、世界がどんなに喜びであふれていたか……」
「……そうですか」
「彼女は太陽だった、僕の光だった、女神だった。彼女を僕は本気で愛していたんだ……」
「……なるほど」
「でも、僕にはつらかった、彼女と一緒にいることが……」
「──えっ!?」
「彼女があまりにもまばゆかったからだ。僕にはとても手の届かない存在だった。彼女の側にいると、どれだけ自分が小さくて弱い人間か思い知らされた」
「そんなことないですよ、だって……」
「いや、そうなんだ! だから彼女の気持ちにこたえることはできなったんだ、どうしても……!」
「あれ、日向、ひゅうが……日向直子さんの事でしょうか?」
「そうだ、彼女だ」
「でも、その人って……!」
「ああ……、僕が殺したよ……」
「えっ!?」
「彼女は健気でね、一人ぼっちで戦っていたんだ。途方もない時間だったろう。優しい彼女が、こんな孤独な世界で生きてきたなんて、あまりにも可哀そうだった。すぐさま抱きしめてやりたかった。二人で昔の話を語り合いたかった、でもね……僕には……」
「……メリッサさんがいたんですね、貴方には」
「そうだ! すでに僕はメリッサを選んでしまったんだ! 日向さんよりも先に! 本当は彼女を救いたかった、でも、彼女はそれを望まなかった! 僕に殺してくれって言ったんだ! 僕に! この手で!」
「佑月さん……!」
「彼女を失ってから思い知ったよ、どれだけ彼女を愛していたか、求めていたか……。でも、ダメなんだ! 彼女をこれ以上ラグナロクなんて辛い戦いの道を進んでほしくない! もう休んでほしかった。彼女は疲れてたんだ、戦いに! それを僕は慰めることはできず……ただ……首をしめる……ことしかできなかった……」
「佑月さん涙が……!」
「馬鹿な男だろ、僕は……。人を愛する資格なんてないんだ!」
「そんなことないですよ、そう、そんなことないですよ、貴方は立派です……」
「クラリーナ、少し泣いていいかい……?」
「はい……」
そうして彼女の豊かな胸に顔をうずめた。クラリーナは僕の頭をそっと抱きしめてくれた。
「う……日向……さん……!」
「はい……佑月さん……」
そう言いつつクラリーナは僕の頭を優しくなで始めた。それが気持ちよくて心地よくて、そして──
「ぐー」
「……あっ──」
彼女の深いため息が聞こえた後、僕は眠りに落ちてしまった。
──────────────────────────────────
主人公が寝てしまったので視点を移す。クラリーナは佑月の頭を抱きしめながらひたすら彼の頭をなでていた。ぐずってしまった赤ん坊をあやすように。
そこに様子を見に来たメイドが中に入ってきた。
「──しっ!」
クラリーナの言う通りにメイドは静かにクラリーナに近寄ったのだった。
「想いは遂げられましたか……?」
「いえ、残念ながら……」
「そうですか……」
だがクラリーナは母のように微笑んだ。
「でもいいんです。彼が私の胸で泣いてくれたから、それだけで十分なんです。もうこれ以上、神様にわがままは言いません」
「クラリーナさま……」
「……ほんと、馬鹿な私……、でもしょうがないですよね、愛してしまったのだから……佑月さんを……」
そうやって佑月の頭を抱えながら、静かに二人の時が流れた。時間が経ち、日が昇り始めた。彼女は召使いに馬車を用意させた。それに佑月を乗せたあと、静かに召使いは言った。
「お嬢様、夜が明けてしまいます……」
「ええそうですね……」
佑月を名残惜しそうに見つめるクラリーナ、召使が馬に出発を伝えた瞬間、クラリーナは言った。
「待って!」
そして彼女は、馬車へと乗り込み、佑月の唇へと彼女の柔らかな唇を押し付けた──!
「ん……んん……」
彼女は少し胸の恋の切なさに酔いしれた後、不意に我に返った。
「いけない……!」
クラリーナは急いで手袋を脱ぎ棄て、それで口紅が付いた佑月の唇を拭いた。
「……貴女からは想い出だけをもらいます。だから、今日だけは、ごめんなさい……メリッサさん……」
「よろしいですか?」
召使の言葉にクラリーナは寂しそうに言った「ええ、行って……!」そう告げた後、彼女は馬車が自分のもとから去るのをただ眺めることしかできなかった。
「──ばいばい、佑月さん……」
僕はそうつぶやくしかなかった、ま、まあ、男女が夕食を共にすると、そういう関係になっちゃうこともあるらしいけど、まさか、この世界では女性とディナーすることはベッドインという重要な意味とは。
だって、相手は僕だよ、しかも彼女は超美女のクラリーナだよ、そんなの思ってもみなかった……。
僕は彼女を改めてみると、逆に冷静になって恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にして、クラリーナはジト目でにらみつけてくる。
……か、可愛い……。改めてみるとクラリーナ可愛いなあ、そんな娘とまさかベッドイ……。いや、ちょっとまて、もしかして彼女は僕でokってこと? えっ、ええ。僕に抱かれて……いいってこと。そ、そうなんだ……。
「はははは……」
「……佑月さん、何笑ってんですか。何か言ってくださいよ!」
「ははは……」
照れ笑いしかできない、そうか、だからこんなスケスケのドレスを着てたんだ。なるほど、僕を誘ってんだ、そうか、なるほど……! ──よし、飲もう!
僕は杯のワインを一気飲みした。クラリーナはまんまるい胸を強調しつつも怒った。
「ちょっとなんか言ってくださいよ! 私、どうすればいいんですか!」
「うんOK!」
「はあ?」
「飲もう! とにかく飲もう!」
「あ、あの……」
「良い酒だなあ、夜空もきれいだし、美しい女性も隣にいて僕は幸せだ──」
「あの、もしもし?」
顔を赤らめたクラリーナを見て、僕の視線を下にやる。大きいなあ……、いいなあ! その下を見ると足を組んだ彼女の白い太ももが煽情的だ。おお、すばらしい、うん見えそうで見えない、最高―!
「すみません、無言で変なとこ見ないでください!」
そう言った彼女は恥ずかしがって実にキュートだ。いいねえ。女の子っていいねえ。最高! あははは。
「もういいです! 私の勘違いだったんですね、着替えます!」
「まってまってまて、着替えなくていいよ、似合ってるじゃない」
「え……、着替えなくていいんだ……」
「もちろんだよ、そう、うん、綺麗だよ、クラリーナ!」
「そうだったん……ですか、そうですか! そうですよね! そうじゃなきゃ来ませんよね! 良かった……思い切ってこのドレス着て……!」
「うん、素晴らしいね、君がそんなに魅力的なら隠さなくていいのに……」
「あっ、やだ。佑月さん、私のおっぱい見てる──」
「誰だって見るよ、男でも女でも。君くらいなら」
「だから、隠してるんですよ」
「ん、どうして……」
「だって、恥ずかしいですもん、特に男の人に見られると……」
「えっ、そんなに立派なものがあるのに……」
「大きかったっていい思いするわけじゃないですよ、胸が重いし、肩凝るし、動くと痛いし、みんなからかうんですよ、私の胸を見てね。すっごいからかわれました、子どものころ……」
「それは大変だったね……」
僕がじっくり見ると彼女は目をそらした。
「そんな熱っぽい目で見ないでくださいよ、佑月さん……」
「クラリーナ……!」
「はい……!」
「……肉食べたいんだけど……」
「……、わ、わかりました……!」
彼女は拳を震わせている、どうしたのかな、あははは。彼女はまた肉を切り分け僕の口元へ持ってきた。
「はい、あーん」
「あーん」
その途端、彼女はナイフについた肉をひっこめた、僕は勢いのまま彼女の柔らかいおっぱいの中に顔うずめてしまった──!
「きゃっ!? 佑月さんのえっち!」
「あはは……」
やわらけえ、やわらけえ、おっぱいって柔らかくていいなあ、いいなあ!
「あの佑月さん……」
「あっ、ごめんつい……」
「もう、佑月さんったら……このヘンタイ!」
そう言って彼女はデコピンをした。
「あいた!」
「もう、罰ですよ……、しょうがない人……!」
「あはは、でもねえ、すごいねえ……」
僕はそう言って自分がうずめた胸を見た、すげえよなあ、これに、今、僕の顔が……。あったけえな……! あはっはは。
「ちょっとじっと見すぎです!」
「ご、ごめん!」
「……触りたいです?」
「え! いいの!?」
「どうしよっかなあ……」
うわあ、彼女が髪の毛をいじりながら、女性の顔をし始めて色っぽいよ、つやっぽく頬を染めてパープルアイの瞳を輝かせて。いやあ、これは……! 僕は自然と彼女の肩をつかんでいた──
「クラリーナ……!」
「はい……!」
「お酒……他にないかい? もう、空なんだ……」
「──ああ……はいはい、わかりました……」
そう言ってクラリーナは他のワイン瓶を持ってきた。
「このワインはですね、クマ殺しという異名がある、すっごい酒の強いワインなんですよ……」
「ええ、そうかい! 飲んでみたいな!」
「もちろん飲んでいってくださいね……!」
そう言って彼女は僕の杯になみなみと酒を注ぐ。
「かんぱーい!」
「かんぱーい!」
そして僕は一気にワインを飲んだ! うわあ、これは来るねえ!
「かあっ!」
「どうです、クマ殺しの飲み心地は」
「最高だよ! うんうん! あっつうう!」
「そうですね……、熱いですよね。何だか私、ほてってきちゃった……!」
そうして彼女は胸元のドレスをパタパタと引っ張ったりした。ち、乳首がみえ……!
「……なーに見てんです……!?」
「いや、その……!」
やばい、にやけ顔が止まらない、あはは、いいねえ。彼女も熱っぽくこちらを見ながら、何度も足を組み替える。うわ、うわっ、見え……!
「気になります……? この先が……」
「この先……だと……!」
そして僕は杯に酒を自分で注いで一気飲みをした!
「くはあっ!」
「まあ、佑月さんたら、たくましい……!」
「クラリーナ……!」
「はい……!」
そのまま、彼女の肩をつかみそして──
「いけないことだとはわかっている……」
「はい!」
「……でも、好きなんだ……!」
「……はい!」
「──日向さんのことが……!」
「……はあ?」
「彼女はね……僕の母親だったんだ……」
「……はあ……」
「僕はね、家庭環境に恵まれていなかった、愛されていなかったんだ、親に……」
「……そ、そんなことないですよ」
「いや、本当なんだ! 僕は人の愛情を感じたことはなかった。……そう、日向さんと会うまでは……」
「そう……ですか」
「日向さんは僕に教えてくれたんだ、命がどれだけ尊いか、人生がどんなに楽しいか、世界がどんなに喜びであふれていたか……」
「……そうですか」
「彼女は太陽だった、僕の光だった、女神だった。彼女を僕は本気で愛していたんだ……」
「……なるほど」
「でも、僕にはつらかった、彼女と一緒にいることが……」
「──えっ!?」
「彼女があまりにもまばゆかったからだ。僕にはとても手の届かない存在だった。彼女の側にいると、どれだけ自分が小さくて弱い人間か思い知らされた」
「そんなことないですよ、だって……」
「いや、そうなんだ! だから彼女の気持ちにこたえることはできなったんだ、どうしても……!」
「あれ、日向、ひゅうが……日向直子さんの事でしょうか?」
「そうだ、彼女だ」
「でも、その人って……!」
「ああ……、僕が殺したよ……」
「えっ!?」
「彼女は健気でね、一人ぼっちで戦っていたんだ。途方もない時間だったろう。優しい彼女が、こんな孤独な世界で生きてきたなんて、あまりにも可哀そうだった。すぐさま抱きしめてやりたかった。二人で昔の話を語り合いたかった、でもね……僕には……」
「……メリッサさんがいたんですね、貴方には」
「そうだ! すでに僕はメリッサを選んでしまったんだ! 日向さんよりも先に! 本当は彼女を救いたかった、でも、彼女はそれを望まなかった! 僕に殺してくれって言ったんだ! 僕に! この手で!」
「佑月さん……!」
「彼女を失ってから思い知ったよ、どれだけ彼女を愛していたか、求めていたか……。でも、ダメなんだ! 彼女をこれ以上ラグナロクなんて辛い戦いの道を進んでほしくない! もう休んでほしかった。彼女は疲れてたんだ、戦いに! それを僕は慰めることはできず……ただ……首をしめる……ことしかできなかった……」
「佑月さん涙が……!」
「馬鹿な男だろ、僕は……。人を愛する資格なんてないんだ!」
「そんなことないですよ、そう、そんなことないですよ、貴方は立派です……」
「クラリーナ、少し泣いていいかい……?」
「はい……」
そうして彼女の豊かな胸に顔をうずめた。クラリーナは僕の頭をそっと抱きしめてくれた。
「う……日向……さん……!」
「はい……佑月さん……」
そう言いつつクラリーナは僕の頭を優しくなで始めた。それが気持ちよくて心地よくて、そして──
「ぐー」
「……あっ──」
彼女の深いため息が聞こえた後、僕は眠りに落ちてしまった。
──────────────────────────────────
主人公が寝てしまったので視点を移す。クラリーナは佑月の頭を抱きしめながらひたすら彼の頭をなでていた。ぐずってしまった赤ん坊をあやすように。
そこに様子を見に来たメイドが中に入ってきた。
「──しっ!」
クラリーナの言う通りにメイドは静かにクラリーナに近寄ったのだった。
「想いは遂げられましたか……?」
「いえ、残念ながら……」
「そうですか……」
だがクラリーナは母のように微笑んだ。
「でもいいんです。彼が私の胸で泣いてくれたから、それだけで十分なんです。もうこれ以上、神様にわがままは言いません」
「クラリーナさま……」
「……ほんと、馬鹿な私……、でもしょうがないですよね、愛してしまったのだから……佑月さんを……」
そうやって佑月の頭を抱えながら、静かに二人の時が流れた。時間が経ち、日が昇り始めた。彼女は召使いに馬車を用意させた。それに佑月を乗せたあと、静かに召使いは言った。
「お嬢様、夜が明けてしまいます……」
「ええそうですね……」
佑月を名残惜しそうに見つめるクラリーナ、召使が馬に出発を伝えた瞬間、クラリーナは言った。
「待って!」
そして彼女は、馬車へと乗り込み、佑月の唇へと彼女の柔らかな唇を押し付けた──!
「ん……んん……」
彼女は少し胸の恋の切なさに酔いしれた後、不意に我に返った。
「いけない……!」
クラリーナは急いで手袋を脱ぎ棄て、それで口紅が付いた佑月の唇を拭いた。
「……貴女からは想い出だけをもらいます。だから、今日だけは、ごめんなさい……メリッサさん……」
「よろしいですか?」
召使の言葉にクラリーナは寂しそうに言った「ええ、行って……!」そう告げた後、彼女は馬車が自分のもとから去るのをただ眺めることしかできなかった。
「──ばいばい、佑月さん……」
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