184 / 211
二つの死闘
第百八十四話 誘拐
しおりを挟む
僕たちは館に戻った、とりあえず皆に待機命令を出した後、僕とメリッサは次の戦闘について話し合った。
「メリッサ、率直に聞くけど、アメリーは次、どう出ると思う?」
「そうだな、予想はつかないが、さっきのやり取りを見る限り、アメリーも余裕がないということだ」
「余裕がない?」
さっき戦いに完勝して、僕たちにプレッシャーをかけていたのに、アメリーが焦る理由が思いつかない。メリッサは僕に何かを隠しているんじゃないだろうか。やんわりと婉曲的に彼女に尋ねる。
「どういうことだい、僕たちは全力で戦ったつもりだけど、アメリーにとって不都合なことがあるのかい?」
「詳しくはお前といえども言うつもりはないが、エイミアがアメリーにとって不都合すぎるんだ。あいつの強さは、私とアメリーはよく知っている、エイミアがその気になれば状況を軽々覆すほどの実力があるし、その能力がある。
エイミアはあれで気位が高い。自分が認めた相手でない限りその力はわざと使わないでいる。お前も前の戦いのときに見ただろう、一瞬で地面を分かつほどの破壊力を、あれを彼女は指を動かすように簡単にできる。
正直あいつの扱いには私も困っている、機嫌を損ねると何するかわからない、せいぜいお前もエイミアと親しくしておけ、神階第一階層は伊達ではない、神すらその扱いに手を焼いているほどだからな」
作戦を共に考えている僕に、エイミアのその能力とやらを詳しく説明しない理由はよくわからないが、考えてみれば、一発ですべてのヴァルキュリアの半数を消し飛ばしたと言っていた。どれほどの強さか見当もつかない。
まあ、直接戦ったメリッサはそれを痛感しているだろうし、僕に知らせなくても彼女が補佐するつもりだから余計なことは言わないつもりだろう。僕もエイミアのことを詳しく理解したつもりはないし、変なことをして彼女の機嫌を損ねるなという意味と僕は察した。
確かにエイミアが敵に回ると厄介この上ない相手だ。
なら次に考えられるのは──
「アメリー側から仕掛けてくるということかい、メリッサ?」
「その通りだ、このままだとアメリーにとって不安要素が多い、確実に勝利するために、策が必要になってくる、あっちから動き出すだろう」
「なら僕たちはそれを逆に利用して、次の試合を有利に進めるのが得策ということか」
「そうだな、それを皆に伝えておこうか」
「ああ、そうだね」
僕は部屋から出てユリアに言って、皆を客室に集めるように指示した。僕とメリッサが客室で待っていると、みんなが集まってきたけど、すでに僕の予想外のことが起きていることに気づく。
「あれ、エイミアがいないけどどうしたんだい? 誰か知らないか」
「あい? ミーナは知ってるけど、エイミアお姉ちゃん、アメリーのおばはんにむかついたから、甘い物でも食べに行くって言ってたよ」
「また勝手なことを……」
メリッサはミーナの答えに頭を抱える、待機命令を出しているのに……。エイミアはホント扱いづらい。だがもっと重要で危険なことがすでに起きているのを理解するのに、時間はかからなかった。
「なあ、ナオコがいないのを誰か知らないか?」
僕の問いに皆がざわつき始めた、まさか……。その状況に恐る恐るだが、ダイアナが済まなさそうに衝撃的なことを告白し始めた。
「あの……すみません、エイミアさんが出かけるということでナオコちゃんが、私も行きたいと言い始めて、エイミアさんがそれを許可して一緒に外出しました」
「ちょっと待て! ダイアナ、お前はそれをむざむざ行かせたのか!」
メリッサが慌て始めた。状況を察したダイアナは頭を下げながら言った。
「すみません! 私止めたんですけど、エイミアさんが、私がついているから安心なので大丈夫って言って、制止を振り切って、出かけてしまいました。私では止めようがなかったんです、すみません」
「まずいことになったぞ……」
僕のつぶやきに皆が動揺し始めた。嫌な予感を皆も察しているのだろう。僕は今からアメリーに対して、隙を見せないよう館で引きこもって、相手の動向を見ながら対応しようとしていたことを詳しく話すと、シェリーですら口元を拳で抑え始めた。
「まずいな、たぶん、ナオコが狙われる。リーダーがやったように人質という策もかんがえられる」
「ああその通りだ」
僕はシェリーの考えに同意する。しかし、ここでバラバラに捜索を始めると相手の思うつぼで各個撃破される。僕たちはエイミアの帰還を待つしか方法がなかった。エイミアが帰ってきたのは日が傾き始めたころだった。
僕はいてもたってもいられなくてメリッサとともに玄関の階段に座って待っていた。エイミアを見た瞬間、同時にその状況を理解できた。彼女は一人で帰ってきたからだ。
「エイミア! ナオコはどうした!? なぜ一人で帰ってきてるんだ!」
メリッサの問いにエイミアは暗い顔で、ぼそりと呟く。
「ごめん、途中で見失って、いろいろ探したんだけど、あの子の気配すら感じられなくて、それで……その……見つからなかった。どうしようかと思ったんだけど、人手が必要と思っていったん帰ってきた」
やはりか、いやな予感が当たった。メリッサは怒りのあまり冷静さを欠いてエイミアを怒鳴るように言う。
「バカ! 今どういう状況かわかっているのか! 戦争の最中だぞ、敵が近くにいるその中で、勝手に出かけて、他人の娘をこれまた勝手につれて行って見つかりませんだと、お前それでも神階第一階層か! 今回ばかりはお前に言いたいことを言わせてもらう、大体な──」
「メリッサ、待ってくれ、まず彼女から詳細を聞こう、喧嘩は後ですればいい、なあエイミア、ナオコを見失ったのはどういう状況だ?」
僕はメリッサを制し、エイミアに尋ねる。少しでも情報が欲しい。エイミアはなるべく冷静に思い出しながら語りだす。
「ほんの一瞬だったわ、街中で、彼女に暑いから氷を買ってあげようと思って店に注文をすると、ナオコが視界から消えてしまったの。そのあとエインヘリャルの微弱な気配を辿って行ったものの、土地勘があまりなかったせいか、どんどん距離を離されて行って、ぷつりとあの子の気配が途切れたわ。
本当にあなたたちにはなんて言っていいか、謝って済む問題じゃないのはわかっているけど、責任取って今から私一日中探すつもりだから、とりあえず行かせて。あと人手を貸してもらえば」
「また勝手なことを言うな! 状況がつかめないままバラバラで行動させるつもりか!」
エイミアにメリッサが食って掛かるので僕は冷静に彼女をなだめる。
「まあ、メリッサ待ってくれ、状況から察するにそれはヴァルキュリアを使ってナオコを誘拐したと思う、おそらくアメリーの仕業だ、エイミアが虚を突かれるくらいだからね。とても一般人が誘拐できるとは思えない。
なら、これから彼女はきっと僕たちに、要求を突きつけるだろう。その間ナオコの身は安全だ。人質は生きていなければ役に立たない。僕たちは冷静に行動するべきだ」
「しかしなあ、佑月、相手からの一方的な要求を突きつけられるなど不利な状況はない。相手が一般人ではないのは私も同感だが、教会団の手の者だって可能性はあるだろう。このまま手ぐすね引いて待つとはいかないだろう、どうするつもりだ」
「僕に考えがある」
メリッサに対して僕は自分の考えを披露する。
「もし教会団ならそのまま殺しておくのが彼らのやり口だ、無駄なエインヘリャルはいらない、無論エイミアならそれを察知できるだろう。わざわざ誘拐したのなら、アメリー以外考えられない。
だが何が起こっているのか僕たちに知る方法がない以上、予想外のことも起こり得る。そこでだ。ここで僕は、単独行動で捜索に当たることにする」
「何を言ってるんだ、佑月、お前状況もつかめないのに単独行動だと馬鹿なことを言うな!」
メリッサを慌てふためき始める、だが僕は冷徹に彼女に言い放つ。
「エイミアには土地勘がない、気配が察知できない以上、僕のほかに適任者がいない。それに僕は、まず、協力を求めようと思う、そう、クラリーナに」
「クラリーナ……なるほど」
聡明なメリッサはその言葉で僕の計画を察したのだろう、納得し始める、エイミアは状況を理解できないのか、不思議そうに「どういうこと?」と僕に尋ねた。
「クラリーナは僕に親しく、また、教会団の上部と反目しているような気配がある。彼女の思想は、教会の表向きの教えに忠実で純粋に世界を救うために、教会団に籍を置いている。
しかし、教会団の上層部は、このラグナロクを勝つために方便としてその教えを広めているだけだろう。必然クラリーナの考えと距離がある。
まず彼女にナオコの捜索を相談することで、教会団がかかわってないか僕が調べる。また、彼女が知らないのなら、クラリーナは性格からして、協力したいと言い出すだろう。なら、捜索は彼女に任せたほうがいい。僕たちが動くより安全だ。
彼女はマハロブ生まれで、ここの街並みすべてを把握しているだろう。捜索に協力してくれれば、この上ない僕たちの有利になる。
また僕たちは館に待機できて、もしもの場合の奇襲に備えることができる。そういうことだ」
エイミアはそれにうなずいたものの何だか納得いかない様子だ。
「彼女、協力してくれるかしら?」
「それは僕に任せてくれ、一応僕は、先の試合で言葉だけでエインヘリャルを殺したほどだからね、まあ、やってみるさ」
僕は苦笑しながら微笑む。それに安心したのかエイミアも静かに言う。
「そこまで言うなら任せるわ、でも、私の手が必要ならいつでも言ってちょうだい、私の責任だし、協力は惜しまないわ」
「もしもの時は頼むよ」
そう言って僕はメリッサといつもの掛け合いをして護身用にMP7A1を受け取りガンシースにしまう。だが、メリッサは複雑な表情で僕にぼそりと言う。
「クラリーナと親しくしてよかったな、下心もあるだろうが、今回ばかりは助かるな」
その皮肉に僕は苦笑する。
「信じてくれよ僕を。……行ってくる、あとは任せたメリッサ」
そう彼女に告げて僕は館から外に出る、夜になる前にクラリーナを見つけないと、もう夕方だ時間がない。僕は急ぎ足でクラリーナを探し始めた。
「メリッサ、率直に聞くけど、アメリーは次、どう出ると思う?」
「そうだな、予想はつかないが、さっきのやり取りを見る限り、アメリーも余裕がないということだ」
「余裕がない?」
さっき戦いに完勝して、僕たちにプレッシャーをかけていたのに、アメリーが焦る理由が思いつかない。メリッサは僕に何かを隠しているんじゃないだろうか。やんわりと婉曲的に彼女に尋ねる。
「どういうことだい、僕たちは全力で戦ったつもりだけど、アメリーにとって不都合なことがあるのかい?」
「詳しくはお前といえども言うつもりはないが、エイミアがアメリーにとって不都合すぎるんだ。あいつの強さは、私とアメリーはよく知っている、エイミアがその気になれば状況を軽々覆すほどの実力があるし、その能力がある。
エイミアはあれで気位が高い。自分が認めた相手でない限りその力はわざと使わないでいる。お前も前の戦いのときに見ただろう、一瞬で地面を分かつほどの破壊力を、あれを彼女は指を動かすように簡単にできる。
正直あいつの扱いには私も困っている、機嫌を損ねると何するかわからない、せいぜいお前もエイミアと親しくしておけ、神階第一階層は伊達ではない、神すらその扱いに手を焼いているほどだからな」
作戦を共に考えている僕に、エイミアのその能力とやらを詳しく説明しない理由はよくわからないが、考えてみれば、一発ですべてのヴァルキュリアの半数を消し飛ばしたと言っていた。どれほどの強さか見当もつかない。
まあ、直接戦ったメリッサはそれを痛感しているだろうし、僕に知らせなくても彼女が補佐するつもりだから余計なことは言わないつもりだろう。僕もエイミアのことを詳しく理解したつもりはないし、変なことをして彼女の機嫌を損ねるなという意味と僕は察した。
確かにエイミアが敵に回ると厄介この上ない相手だ。
なら次に考えられるのは──
「アメリー側から仕掛けてくるということかい、メリッサ?」
「その通りだ、このままだとアメリーにとって不安要素が多い、確実に勝利するために、策が必要になってくる、あっちから動き出すだろう」
「なら僕たちはそれを逆に利用して、次の試合を有利に進めるのが得策ということか」
「そうだな、それを皆に伝えておこうか」
「ああ、そうだね」
僕は部屋から出てユリアに言って、皆を客室に集めるように指示した。僕とメリッサが客室で待っていると、みんなが集まってきたけど、すでに僕の予想外のことが起きていることに気づく。
「あれ、エイミアがいないけどどうしたんだい? 誰か知らないか」
「あい? ミーナは知ってるけど、エイミアお姉ちゃん、アメリーのおばはんにむかついたから、甘い物でも食べに行くって言ってたよ」
「また勝手なことを……」
メリッサはミーナの答えに頭を抱える、待機命令を出しているのに……。エイミアはホント扱いづらい。だがもっと重要で危険なことがすでに起きているのを理解するのに、時間はかからなかった。
「なあ、ナオコがいないのを誰か知らないか?」
僕の問いに皆がざわつき始めた、まさか……。その状況に恐る恐るだが、ダイアナが済まなさそうに衝撃的なことを告白し始めた。
「あの……すみません、エイミアさんが出かけるということでナオコちゃんが、私も行きたいと言い始めて、エイミアさんがそれを許可して一緒に外出しました」
「ちょっと待て! ダイアナ、お前はそれをむざむざ行かせたのか!」
メリッサが慌て始めた。状況を察したダイアナは頭を下げながら言った。
「すみません! 私止めたんですけど、エイミアさんが、私がついているから安心なので大丈夫って言って、制止を振り切って、出かけてしまいました。私では止めようがなかったんです、すみません」
「まずいことになったぞ……」
僕のつぶやきに皆が動揺し始めた。嫌な予感を皆も察しているのだろう。僕は今からアメリーに対して、隙を見せないよう館で引きこもって、相手の動向を見ながら対応しようとしていたことを詳しく話すと、シェリーですら口元を拳で抑え始めた。
「まずいな、たぶん、ナオコが狙われる。リーダーがやったように人質という策もかんがえられる」
「ああその通りだ」
僕はシェリーの考えに同意する。しかし、ここでバラバラに捜索を始めると相手の思うつぼで各個撃破される。僕たちはエイミアの帰還を待つしか方法がなかった。エイミアが帰ってきたのは日が傾き始めたころだった。
僕はいてもたってもいられなくてメリッサとともに玄関の階段に座って待っていた。エイミアを見た瞬間、同時にその状況を理解できた。彼女は一人で帰ってきたからだ。
「エイミア! ナオコはどうした!? なぜ一人で帰ってきてるんだ!」
メリッサの問いにエイミアは暗い顔で、ぼそりと呟く。
「ごめん、途中で見失って、いろいろ探したんだけど、あの子の気配すら感じられなくて、それで……その……見つからなかった。どうしようかと思ったんだけど、人手が必要と思っていったん帰ってきた」
やはりか、いやな予感が当たった。メリッサは怒りのあまり冷静さを欠いてエイミアを怒鳴るように言う。
「バカ! 今どういう状況かわかっているのか! 戦争の最中だぞ、敵が近くにいるその中で、勝手に出かけて、他人の娘をこれまた勝手につれて行って見つかりませんだと、お前それでも神階第一階層か! 今回ばかりはお前に言いたいことを言わせてもらう、大体な──」
「メリッサ、待ってくれ、まず彼女から詳細を聞こう、喧嘩は後ですればいい、なあエイミア、ナオコを見失ったのはどういう状況だ?」
僕はメリッサを制し、エイミアに尋ねる。少しでも情報が欲しい。エイミアはなるべく冷静に思い出しながら語りだす。
「ほんの一瞬だったわ、街中で、彼女に暑いから氷を買ってあげようと思って店に注文をすると、ナオコが視界から消えてしまったの。そのあとエインヘリャルの微弱な気配を辿って行ったものの、土地勘があまりなかったせいか、どんどん距離を離されて行って、ぷつりとあの子の気配が途切れたわ。
本当にあなたたちにはなんて言っていいか、謝って済む問題じゃないのはわかっているけど、責任取って今から私一日中探すつもりだから、とりあえず行かせて。あと人手を貸してもらえば」
「また勝手なことを言うな! 状況がつかめないままバラバラで行動させるつもりか!」
エイミアにメリッサが食って掛かるので僕は冷静に彼女をなだめる。
「まあ、メリッサ待ってくれ、状況から察するにそれはヴァルキュリアを使ってナオコを誘拐したと思う、おそらくアメリーの仕業だ、エイミアが虚を突かれるくらいだからね。とても一般人が誘拐できるとは思えない。
なら、これから彼女はきっと僕たちに、要求を突きつけるだろう。その間ナオコの身は安全だ。人質は生きていなければ役に立たない。僕たちは冷静に行動するべきだ」
「しかしなあ、佑月、相手からの一方的な要求を突きつけられるなど不利な状況はない。相手が一般人ではないのは私も同感だが、教会団の手の者だって可能性はあるだろう。このまま手ぐすね引いて待つとはいかないだろう、どうするつもりだ」
「僕に考えがある」
メリッサに対して僕は自分の考えを披露する。
「もし教会団ならそのまま殺しておくのが彼らのやり口だ、無駄なエインヘリャルはいらない、無論エイミアならそれを察知できるだろう。わざわざ誘拐したのなら、アメリー以外考えられない。
だが何が起こっているのか僕たちに知る方法がない以上、予想外のことも起こり得る。そこでだ。ここで僕は、単独行動で捜索に当たることにする」
「何を言ってるんだ、佑月、お前状況もつかめないのに単独行動だと馬鹿なことを言うな!」
メリッサを慌てふためき始める、だが僕は冷徹に彼女に言い放つ。
「エイミアには土地勘がない、気配が察知できない以上、僕のほかに適任者がいない。それに僕は、まず、協力を求めようと思う、そう、クラリーナに」
「クラリーナ……なるほど」
聡明なメリッサはその言葉で僕の計画を察したのだろう、納得し始める、エイミアは状況を理解できないのか、不思議そうに「どういうこと?」と僕に尋ねた。
「クラリーナは僕に親しく、また、教会団の上部と反目しているような気配がある。彼女の思想は、教会の表向きの教えに忠実で純粋に世界を救うために、教会団に籍を置いている。
しかし、教会団の上層部は、このラグナロクを勝つために方便としてその教えを広めているだけだろう。必然クラリーナの考えと距離がある。
まず彼女にナオコの捜索を相談することで、教会団がかかわってないか僕が調べる。また、彼女が知らないのなら、クラリーナは性格からして、協力したいと言い出すだろう。なら、捜索は彼女に任せたほうがいい。僕たちが動くより安全だ。
彼女はマハロブ生まれで、ここの街並みすべてを把握しているだろう。捜索に協力してくれれば、この上ない僕たちの有利になる。
また僕たちは館に待機できて、もしもの場合の奇襲に備えることができる。そういうことだ」
エイミアはそれにうなずいたものの何だか納得いかない様子だ。
「彼女、協力してくれるかしら?」
「それは僕に任せてくれ、一応僕は、先の試合で言葉だけでエインヘリャルを殺したほどだからね、まあ、やってみるさ」
僕は苦笑しながら微笑む。それに安心したのかエイミアも静かに言う。
「そこまで言うなら任せるわ、でも、私の手が必要ならいつでも言ってちょうだい、私の責任だし、協力は惜しまないわ」
「もしもの時は頼むよ」
そう言って僕はメリッサといつもの掛け合いをして護身用にMP7A1を受け取りガンシースにしまう。だが、メリッサは複雑な表情で僕にぼそりと言う。
「クラリーナと親しくしてよかったな、下心もあるだろうが、今回ばかりは助かるな」
その皮肉に僕は苦笑する。
「信じてくれよ僕を。……行ってくる、あとは任せたメリッサ」
そう彼女に告げて僕は館から外に出る、夜になる前にクラリーナを見つけないと、もう夕方だ時間がない。僕は急ぎ足でクラリーナを探し始めた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。

皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。


城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる