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奇襲
第百六十五話 策略
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僕たちの館につくと、メリッサは少し買い物があると言って僕と別れた。でも彼女にうかつに外に出歩くなと言われている。用がない限り、ぶらつくとメリッサに叱られそうだ。少し日にちを空けてから外を歩こう。ここは綺麗な街なんで散歩が好きなんだ、意外と僕は。
館の周りをうろつくとエイミアに出会った。見るとヤカバと戯れている。エイミアは楽しそうにヤカバの頭を撫でていた。微笑ましい限りだ。
「その子、ルミコかい?」
「そうよ、貴方、自分のペットの顔すら覚えてないの?」
僕がエイミアに尋ねると、あきれた様子で返事をされてしまった。
「すまないが見分けがつかないんだ、特に動物は種類が同じだと」
「この子、目がクリッとして、毛並みが良くて、最近食事がいいせいか元気だもの、一瞬でわかるわ」
「君は動物が好きなのかい?」
「だってみんな私に寄ってくるんだもの、もちろん好きよ」
「襲ってくるワニやサメでもかい?」
「生き者にはすべて心と魂があるの、ええ好きだわ」
「そういえばさ、何で動物にいつも襲われてもそのまま為すがままにされているんだい、君の力なら追い払えるだろ?」
「何言ってるの、信じられない! 動物たちが可哀そうでしょ、そんなことしたら。私手加減できない時もあるのよ、そんなひどいことできるわけないでしょ」
どうやら、彼女は根っからの動物好きみたいだな。闘技場でヴァルキュリアたちを無慈悲に殺したと思えば、まあ、この世界ではヴァルキュリアは不死身なんだけど、殺したと言えるほどにやっつけたのに、動物になると彼女は優しくなるんだな。
突然嬉しそうにルミコが吠えだしたので、何かなっと思えば、「あっパパ、エイミアお姉ちゃん」と子どもの驚きの声がした、ナオコだ。
「やあ、ナオコ、今日の調子はどうだい?」
「まあまあ。ちょっとここら辺暑いから、喉が渇く」
「そうか、水分補給は大切にね。井戸から汲みに行くのは家人がやってくれているけど、この大所帯じゃあ、直ぐに切らすからね。喉が渇いたら早めに彼らに言っておいたほうが良い、時間がかかるからね。この街は井戸が管理されていて、決まった場所にしか掘ってはいけないらしいから。
……まあ、聞いた話だけど」
「そうなの、パパ誰から聞いたの?」
クラリーナからと言おうとしたが、何かまずいような気がしてちょっと口ごもって、やっぱり言うのをやめた。余計なこと言ってメリッサの耳に入ったら、面倒くさいことになりそうだから、……彼女の気性を考えて。
「とりあえずルミコはエイミアお姉ちゃんが見てくれるらしいから、ナオコ、僕と久しぶりに遊ぶか」
「うん!」
親として家族サービスは欠かせない、当然だろ? 僕は父親なんだ。ナオコが最近覚えたロハ語の、簡単な本を流暢に読むのを聞きながら僕は満足した。
子どもは好奇心旺盛で、成長が早い。もうぺらぺら話せるようになってきたんじゃないか、さすが僕の子どもだ。僕は4歳ぐらいまでまともに本が読めなかったけど、もちろん日本語でだ。
メリッサ料理長のもと、夕食が作られて僕たちは舌鼓を打った。ああ、今日もうまい飯が食えたな、メリッサに感謝だ。感想をメリッサに伝えたほうが良いと思って彼女に話しかけると少し上の空だった、どうしてかは察しが付いている。
食事が終わると僕とメリッサは自室に入りベッドで二人寝そべった。ナオコは別室だ、メリッサが自立心を芽生えさせるために子ども部屋が必要だ。
館には部屋が余ってると言い、対して僕はまだ早いんじゃないかと言ったが、話し合った結果、大会中ナオコには一人部屋を持たせることにした。
ひとしきり沈黙の時間が過ぎた後、メリッサは不安そうな顔で僕に尋ねた。
「で、どうするつもりだ?」
もちろん次の対戦相手のことだろう。彼女が興味あることは戦うことか、料理か、ナオコのことだ。僕に尋ねるのはこの三つ、他のことは全部自分独りでできるので、彼女は黙々とこなす、だからだ。
「これからみんなを集めてくれ、次の試合の対策会議だと言えばいい」
「今からか? 夜中になるぞ」
「ああ、そうだ、それがいい」
そう僕が言うと彼女は納得いったようで、静かに真剣な目で尋ねた。
「昼間のあいつらとの会話といい、大体のことは理解できた、でもお前はそれでいいんだな、いろいろ問題があるぞ」
「覚悟の上さ、僕たちは戦っているんだ、ゲームやフィクションじゃない、本当の殺し合い。なら、温いやり方で生き残ろうなんて甘い考えはとっくに捨てた」
「その言葉信じるぞ、よし今から行ってくる」
「ああ、頼む」
そう言って彼女は部屋から出ていった。そう、これは戦争だ。手段なんて選べないんだ、すべては生き残るためだ、ただそれだけを考えろ。
もう真夜中になるだろう外はもう真っ暗だ。客間に僕が入ろうとすると中から声が聴こえてくる、みんなが話し合っているのだろう。集まっているようだ。
「対策会議って何だよ、こんな夜中にやることか?」
「知らねえよ、アデル、ああ、まあいいか、お前に言っても仕方ないか、レイラ何か知らないか?」
「メリッサさんはただ会議があるからみんな集まってくれとしかいいませんでした、シェリーさんが知らないなら私に大事なことは知らせないでしょう」
「よっぽど重要なことのようですね」
そのざわめきの中、僕とメリッサはその中ドア開き速足で黙って皆の中央に座った。
「おい、佑月? どうしたんだ、急に呼び出して」
「会議って何でしょう? 次の対戦相手のことですよね」
「ど、どうしたんです?」
彼女らの動揺に対して僕は静かにかつ、冷徹に言い放った。
「みんな聞いてくれ、今からあいつらを一人残らず殺すんだ」
──その言葉に部屋中、騒然とした。
館の周りをうろつくとエイミアに出会った。見るとヤカバと戯れている。エイミアは楽しそうにヤカバの頭を撫でていた。微笑ましい限りだ。
「その子、ルミコかい?」
「そうよ、貴方、自分のペットの顔すら覚えてないの?」
僕がエイミアに尋ねると、あきれた様子で返事をされてしまった。
「すまないが見分けがつかないんだ、特に動物は種類が同じだと」
「この子、目がクリッとして、毛並みが良くて、最近食事がいいせいか元気だもの、一瞬でわかるわ」
「君は動物が好きなのかい?」
「だってみんな私に寄ってくるんだもの、もちろん好きよ」
「襲ってくるワニやサメでもかい?」
「生き者にはすべて心と魂があるの、ええ好きだわ」
「そういえばさ、何で動物にいつも襲われてもそのまま為すがままにされているんだい、君の力なら追い払えるだろ?」
「何言ってるの、信じられない! 動物たちが可哀そうでしょ、そんなことしたら。私手加減できない時もあるのよ、そんなひどいことできるわけないでしょ」
どうやら、彼女は根っからの動物好きみたいだな。闘技場でヴァルキュリアたちを無慈悲に殺したと思えば、まあ、この世界ではヴァルキュリアは不死身なんだけど、殺したと言えるほどにやっつけたのに、動物になると彼女は優しくなるんだな。
突然嬉しそうにルミコが吠えだしたので、何かなっと思えば、「あっパパ、エイミアお姉ちゃん」と子どもの驚きの声がした、ナオコだ。
「やあ、ナオコ、今日の調子はどうだい?」
「まあまあ。ちょっとここら辺暑いから、喉が渇く」
「そうか、水分補給は大切にね。井戸から汲みに行くのは家人がやってくれているけど、この大所帯じゃあ、直ぐに切らすからね。喉が渇いたら早めに彼らに言っておいたほうが良い、時間がかかるからね。この街は井戸が管理されていて、決まった場所にしか掘ってはいけないらしいから。
……まあ、聞いた話だけど」
「そうなの、パパ誰から聞いたの?」
クラリーナからと言おうとしたが、何かまずいような気がしてちょっと口ごもって、やっぱり言うのをやめた。余計なこと言ってメリッサの耳に入ったら、面倒くさいことになりそうだから、……彼女の気性を考えて。
「とりあえずルミコはエイミアお姉ちゃんが見てくれるらしいから、ナオコ、僕と久しぶりに遊ぶか」
「うん!」
親として家族サービスは欠かせない、当然だろ? 僕は父親なんだ。ナオコが最近覚えたロハ語の、簡単な本を流暢に読むのを聞きながら僕は満足した。
子どもは好奇心旺盛で、成長が早い。もうぺらぺら話せるようになってきたんじゃないか、さすが僕の子どもだ。僕は4歳ぐらいまでまともに本が読めなかったけど、もちろん日本語でだ。
メリッサ料理長のもと、夕食が作られて僕たちは舌鼓を打った。ああ、今日もうまい飯が食えたな、メリッサに感謝だ。感想をメリッサに伝えたほうが良いと思って彼女に話しかけると少し上の空だった、どうしてかは察しが付いている。
食事が終わると僕とメリッサは自室に入りベッドで二人寝そべった。ナオコは別室だ、メリッサが自立心を芽生えさせるために子ども部屋が必要だ。
館には部屋が余ってると言い、対して僕はまだ早いんじゃないかと言ったが、話し合った結果、大会中ナオコには一人部屋を持たせることにした。
ひとしきり沈黙の時間が過ぎた後、メリッサは不安そうな顔で僕に尋ねた。
「で、どうするつもりだ?」
もちろん次の対戦相手のことだろう。彼女が興味あることは戦うことか、料理か、ナオコのことだ。僕に尋ねるのはこの三つ、他のことは全部自分独りでできるので、彼女は黙々とこなす、だからだ。
「これからみんなを集めてくれ、次の試合の対策会議だと言えばいい」
「今からか? 夜中になるぞ」
「ああ、そうだ、それがいい」
そう僕が言うと彼女は納得いったようで、静かに真剣な目で尋ねた。
「昼間のあいつらとの会話といい、大体のことは理解できた、でもお前はそれでいいんだな、いろいろ問題があるぞ」
「覚悟の上さ、僕たちは戦っているんだ、ゲームやフィクションじゃない、本当の殺し合い。なら、温いやり方で生き残ろうなんて甘い考えはとっくに捨てた」
「その言葉信じるぞ、よし今から行ってくる」
「ああ、頼む」
そう言って彼女は部屋から出ていった。そう、これは戦争だ。手段なんて選べないんだ、すべては生き残るためだ、ただそれだけを考えろ。
もう真夜中になるだろう外はもう真っ暗だ。客間に僕が入ろうとすると中から声が聴こえてくる、みんなが話し合っているのだろう。集まっているようだ。
「対策会議って何だよ、こんな夜中にやることか?」
「知らねえよ、アデル、ああ、まあいいか、お前に言っても仕方ないか、レイラ何か知らないか?」
「メリッサさんはただ会議があるからみんな集まってくれとしかいいませんでした、シェリーさんが知らないなら私に大事なことは知らせないでしょう」
「よっぽど重要なことのようですね」
そのざわめきの中、僕とメリッサはその中ドア開き速足で黙って皆の中央に座った。
「おい、佑月? どうしたんだ、急に呼び出して」
「会議って何でしょう? 次の対戦相手のことですよね」
「ど、どうしたんです?」
彼女らの動揺に対して僕は静かにかつ、冷徹に言い放った。
「みんな聞いてくれ、今からあいつらを一人残らず殺すんだ」
──その言葉に部屋中、騒然とした。
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