ヴァルキュリア・サーガ~The End of All Stories~

琉奈川さとし

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闘技大会開幕

第百五十七話 初戦の難しさ

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「メリッサ、開戦の合図を!」
「相分かった、構え……放て!」

 僕の合図にメリッサが指示をする、訓練の通り、エイミア以外全員で制圧射撃を行い、相手の行動を制限する、なかには相手に当たった弾もあるようで、最初のエイミアの無双もあって、敵は面食らっていた。

 相手の動きを止まった……! 僕はAKMを使っていたが、あらかじめメリッサと打ち合わせして、近接戦闘用にMP7A1に持ち替える。短機関銃はこれまでの戦いどおり、近距離でも十分戦闘に有用だからだ。

 僕は自分たちに厄介になりそうな光線を出した相手の能力者に狙いを定める。遠距離攻撃能力者は早め潰したほうが良い、それは銃をメインウェポンとしている僕たちはよくわかることだ。遠くから攻撃されると、予想外に被害が出やすい。

 そしてセミオートに切り替えて僕は相手の心臓部を狙撃した。

「ぐはっ⁉」

 ──どうやら即死だったようだ、あっさりと一人目のエインヘリャルを始末できた。まずは上々の仕上がりだ。

 だが僕には気になることがあった、最初に張った弾幕が一部薄かったような気がした。一瞬相手が動揺して思考が停止した間に後ろを振り返る、すると、レイラが呆然ぼうぜんとして棒立ちしていた。

 会場の雰囲気に飲まれて舞い上がってしまったのか、ただひたすら傍観ぼうかんしていたのだ。

「レイラ! なにをやってる、伏せ撃ちの態勢に入れ、相手が来るぞ!」

 僕の掛け声にレイラは「は、はい!」と返事をしたが、目が泳いでいる、まずいな……!

 相手も冷静さを取り戻し、こちらが敵だと再認識をした後、一人が死んだおかげで僕たちに向かって戦う決心がついたようで、炎のサーベルの男がチームに向かって、

「このままだと殺される! おい、お前らやるぞ!」

 その叱咤しったに、一斉にこちらに向かって襲いかかってきた! 死に物狂いで襲ってくる敵たち。炎のサーベルの男はシェリーのもとに向かい彼女が相手する。またその援護にエイミアへの攻撃にまごついていた天から雷を落とすエインヘリャルがつく。

 氷使いの敵は、僕に向かってきた。僕は凍らされたらたまらないと避けた、僕にはエイミアみたいな能力を無効化して見せたようなことはできない、当たったら行動不能で致命傷ものだ、厄介なことに奴にはわりと身体能力があり、巧みに僕の銃の狙いを外す動きをする。

 僕はMP7A1で相手の動きを制限しつつ機会を待つ。しかし困ったことにユリアやメリッサなどヴァルキュリアはシェリーの援護に手がいっぱいで、しかも弾を当ててはいけないため一向にらちが明かない。

 どうしたものか……! シェリーも援護を受けながらも手いっぱいだ。僕は戦闘をしながら考えをめぐらす、だがしかし少し疑問が浮かび上がった、僕らの5バックのブライアンとレイラとアデルはどうしている? 

 どうやらあまりにも弾幕が薄い、その負担分が僕とシェリーに向かっていると思われ、ふとちらりと後ろの方を見ると、その三人は狼狽ろうばいして、固まっている。まずい……!

 あいつら、本番になると、うろたえてしまっているのか、くそ、彼らは戦闘経験がほとんどないのが裏目に出たか。メリッサがそれに気づいて、

「ブライアン、レイラ、アデル何をやってる! 戦闘中だぞ!」

 と、叱咤するものの余計混乱してしまったのか、僕らが戦っている姿をただぼんやりしていた。

 その間隙かんげきをついて、風をまとった槍使いが僕の横のスペースを突破してきた、こっちは氷使いの相手で対応のしようがない! 僕はエイミアに向かって言った、

「エイミア! 槍使いの相手を頼む!」

 と、頼んだが、エイミアは不機嫌そうにふてくされていた。何を考えているんだ、彼女は……!

「エイミア! このままだとバックラインが危ない、何をしている!」

 メリッサの指示に彼女はこうしかったが、

「いや、私十分働いたじゃん、これ以上、手を貸すのってさ、フェアじゃないと思うのよね、まあ、後ろの奴らの経験を積むためにも私、休んでるわ、私の方に敵が来たら相手するけどね」

 エイミア……! くっ、もうすでに彼女は功労者なだけに、今は強く言えない、また、さらに機嫌をそこねるのはまずい……。あまりにも予想外の出来事が多すぎる、どうする……?

 槍使いはエイミアを一瞥いちべつした後、警戒をしてか、中盤の底の左サイドから周り込み、ミーナの方に向かってくる、だが彼女は銃を置いて、剣を抜きヴァルキュリアらしく、幼さを残す少女でありながらも戦う姿勢を見せた。

「おおっ──!」

 掛け声とともに剣を構えた。いささか迫力不足ではあるが、彼女が立派な戦士である心意気は伝わった。だが、それを敵はよく観察をしていた。

「……おそらくこいつはヴァルキュリアか……!」

 しまった、ミーナの行動があだになった。相手には現在ヴァルキュリアがいないためエインヘリャルを見分ける手段がない。

 だが、ヴァルキュリアは戦士だ、本来、剣を持って戦う。それなら、剣を持っているとすると、エインヘリャルであれば近接戦闘用の能力のため、バックラインでわざわざ待ち構えているのは不自然だ、警戒されるのは当然だ。

 皮肉にも戦う姿勢を見せたことでミーナをヴァルキュリアと判断して、狼狽し、茫然ぼうぜんとしていたレイラの方に向かっていく。レイラは相変わらず、伏せ撃ちの姿勢すら取らず、立ちすくんでいる。──僕は彼女に向かって大声で叫んだ!

「レイラ! 逃げろ──!」

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