136 / 211
ウェディングロード
第百三十六話 三人目の仲間
しおりを挟む
ナオコは荷物を背負っているというか、荷物に背負われているというか、リュックを重そうにフラフラとした足取りで山道を登っていく。足が絡まって倒れそうになったところ、ナオコを僕が支えた。
「大丈夫かい?」
「うん! ありがとう、パパ!」
アデルは地面につばを飛ばしながら「ガキなんておいてくればいいのに」とつぶやいた瞬間、それを聞いてしまったメリッサはずいぶんと激怒してしまった。
「私と佑月の結婚式に娘のナオコを出席させるのは当たり前だろ! お前何言ってるんだ⁉」
すごい剣幕でアデルの元に突っかかっていくので彼はたじたじとなり居心地が悪そうに明後日の方向に向く。身長30センチほど差があるのに、メリッサのほうが大きく見えたほどだ。
「ストープ、ストップ。ケンカはなしね」
僕が二人の中に入る前に、エイミアが仲介に入っていく。
「アデルは決まったことをグジグジいわないこと。メリッサちゃんもプリプリしないこと、ほら笑顔笑顔」
にこやかに笑うエイミアに対しメリッサとアデルはお互い逆方向に顔を向ける。はあ……まだ登山して一日もたっていないぞ。先行きが不安だ。
日が徐々に落ちていき、僕たちは疲れた体を休める場所を探し出す。開けた場所に一同が背荷物を下ろすと大きく手足を伸ばした。
「ん~疲れた、疲れた」
気持ちよさそうに軽い運動をしたかのようなエイミアに対し、サラは言いづらそうに言う。
「あと……何日登ればいいの?」
「三日、四日かな?」
アデルとレイラがため息をついた。なんだそれくらいで辛そうにするなよ。僕はほぼ不眠不休でさらにほふく前進で四日ぐらい山に登ったぞ。あれは人生最大の困難だった、本気で死ぬ死ぬと思いながら戦ったからな。ふと突然メリッサが山の上の方へ向く、何かを感じた様子だ。
「敵が降りてくる」
僕はすぐに戦闘準備に入った、メリッサからSG552アサルトライフルをもらって、迎撃態勢をとる。
どうやら相手も感づいたらしく息を潜めてこちらに近づいてくる。他のみんなはエイミアに任せて僕とメリッサが敵を探りに行った。……何の音だ。
「矢だ!」
上を向いたメリッサが空に見える矢を指さし、僕たちは上半身を伏せ敵に近づいていく。ふと異物が茂みから見えた瞬間、僕はSG552のセレクターを連発に変えてバースト射撃を行う! 血が跳ね飛び肉が散った。
どうやら敵の肩にでも当たったらしい、感触がそう言っている。大体の位置はわかった、後は仕留めるだけ。フルオートで弾をどんどんばらまく!
けたたましい音と共に流れ出ていく鉄の銃弾……だが、――何だと? 地上から氷の壁が生えていき弾を防いでいく! これが相手の能力か……! 僕はメリッサに合図を送ると、茂みの中メリッサが相手に近づいていき、メリッサのほうに矢が放たれていく。だがさっと彼女は優雅にかわす。
僕は慎重かつ冷静に逆回りに相手に近づき、敵を捕らえた。……男か――それを確認したとき横から何かが飛んできた! それは蹴りだった、武装した女の子が必死で僕を敵から離そうと殴りかかる、なんだ、なんだ。
「ちょっと待て、ミーナ! そんなことしたら!」
男がミーナと呼ばれた女の子へと叫んでいる、横からゴゴッと木が倒れ込んできたので、僕が男から離れたところを木が覆い被さった! ズズっと大きな音を立てて男を潰す巨木。それにあわててミーナと言われた娘が叫んだ。
「うわあ、ブライアン! 大丈夫!?」
木の下から男の手が出て、力なさげに地に突っ伏した。……駄目だこりゃ。
それから僕たちはブライアンと言われた男、美青年で淡い碧い髪でどこか影のある雰囲気を持っていた、彼をロープで縛った。ミーナは抵抗する気がないらしい、力なさげに体育座りをしていた。
「おーいミーナとやら、ヴァルキュリアが敵のエインヘリャルを攻撃すると因果律がねじ曲がって、パートナーに不幸が起こるって知らなかったのか?」
メリッサがジト目でミーナをさとしていく。……楽しそうだな。
「だって、あのままじゃあ……ブライアンやられちゃうじゃん……」
ブツブツ言うミーナにメリッサはさじを投げ、アデルが近づいてくる。
「さて、この男どうしてやろうかね……!」
何故かにやにやと笑うアデル。別にお前が捕まえたわけじゃないだろ、何もしてないし。ブライアンは動揺した様子だった。
「た、助けてください! 僕は山に登っている最中に敵に襲われて仲間が二人もやられたんです。でも、戦うのはあまり僕は好きじゃないし、命のやりとりなんて僕はできません! 僕は自分の命が惜しくて仕方なく……お願いです、どうか見逃してください!」
「嘘つけこっちを攻撃してきただろ」
アデルがイヤラシそうに痛いところを突っつく。
「だって、敵が来たら攻撃するしかないじゃないですか! そうじゃないと殺されるし! 第一僕は防御型の能力で、相手のエインヘリャルを攻撃する能力はありません。だから、必死で矢を放って――」
「言い訳だな」
「違います!」
「待った」
僕がアデルを止める。なんでだと言った様子で「すぐ殺せばいいのによ」と悪態をつくが、僕は気にしない。
「パーティーを組んでいたということは結局のところ戦う意思はあるということだな」
僕の問いに困った様子のブライアン。茶髪の少女であるミーナは胸を張った。
「ブライアンはね、パーティーでみんなの壁を作って守っていたんだよ」
「ミーナ、余計なことを言わないでくれ!」
慌てるブライアン。彼を縛っているロープのひもを僕は解く。ブライアンは「えっ」とつぶやき、アデルはチッと舌打ちをした。
みんなが騒めき始めた。そして、僕が一言。
「うちはね、子ども連れなんだ、壁になってくれる人材はありがたい」
それに賛同するメリッサ。
「確かに男手は必要だな、また佑月は中距離から遠距離特化の戦い方が得意だ、壁になれる人材は正直相性がいい」
珍しく仲間に入れようとする僕に賛同する。守備特化なら寝首かかれる心配もだいぶ減るだろうしね。その状況を理解したブライアンは大喜びをした。
「──本当ですか! このままだと、にっちもさっちもいかないので、仲間になってくださる方を探していたんです! ありがとうございます! 一生懸命働きますんでよろしくお願いします!」
その言葉にエイミアとナオコが頷いた。
「まあ、いいんじゃない、佑月が決めたことなら」
「私、ナオコっていうの、よろしくね、お兄ちゃん!」
自分で決めたことだがつくづく良い仲間に巡り会える運はないらしい。苦笑しながらも、夕食の準備に取りかかった。まあ男手が増えたことで狩りは十分はかどったけど。
「大丈夫かい?」
「うん! ありがとう、パパ!」
アデルは地面につばを飛ばしながら「ガキなんておいてくればいいのに」とつぶやいた瞬間、それを聞いてしまったメリッサはずいぶんと激怒してしまった。
「私と佑月の結婚式に娘のナオコを出席させるのは当たり前だろ! お前何言ってるんだ⁉」
すごい剣幕でアデルの元に突っかかっていくので彼はたじたじとなり居心地が悪そうに明後日の方向に向く。身長30センチほど差があるのに、メリッサのほうが大きく見えたほどだ。
「ストープ、ストップ。ケンカはなしね」
僕が二人の中に入る前に、エイミアが仲介に入っていく。
「アデルは決まったことをグジグジいわないこと。メリッサちゃんもプリプリしないこと、ほら笑顔笑顔」
にこやかに笑うエイミアに対しメリッサとアデルはお互い逆方向に顔を向ける。はあ……まだ登山して一日もたっていないぞ。先行きが不安だ。
日が徐々に落ちていき、僕たちは疲れた体を休める場所を探し出す。開けた場所に一同が背荷物を下ろすと大きく手足を伸ばした。
「ん~疲れた、疲れた」
気持ちよさそうに軽い運動をしたかのようなエイミアに対し、サラは言いづらそうに言う。
「あと……何日登ればいいの?」
「三日、四日かな?」
アデルとレイラがため息をついた。なんだそれくらいで辛そうにするなよ。僕はほぼ不眠不休でさらにほふく前進で四日ぐらい山に登ったぞ。あれは人生最大の困難だった、本気で死ぬ死ぬと思いながら戦ったからな。ふと突然メリッサが山の上の方へ向く、何かを感じた様子だ。
「敵が降りてくる」
僕はすぐに戦闘準備に入った、メリッサからSG552アサルトライフルをもらって、迎撃態勢をとる。
どうやら相手も感づいたらしく息を潜めてこちらに近づいてくる。他のみんなはエイミアに任せて僕とメリッサが敵を探りに行った。……何の音だ。
「矢だ!」
上を向いたメリッサが空に見える矢を指さし、僕たちは上半身を伏せ敵に近づいていく。ふと異物が茂みから見えた瞬間、僕はSG552のセレクターを連発に変えてバースト射撃を行う! 血が跳ね飛び肉が散った。
どうやら敵の肩にでも当たったらしい、感触がそう言っている。大体の位置はわかった、後は仕留めるだけ。フルオートで弾をどんどんばらまく!
けたたましい音と共に流れ出ていく鉄の銃弾……だが、――何だと? 地上から氷の壁が生えていき弾を防いでいく! これが相手の能力か……! 僕はメリッサに合図を送ると、茂みの中メリッサが相手に近づいていき、メリッサのほうに矢が放たれていく。だがさっと彼女は優雅にかわす。
僕は慎重かつ冷静に逆回りに相手に近づき、敵を捕らえた。……男か――それを確認したとき横から何かが飛んできた! それは蹴りだった、武装した女の子が必死で僕を敵から離そうと殴りかかる、なんだ、なんだ。
「ちょっと待て、ミーナ! そんなことしたら!」
男がミーナと呼ばれた女の子へと叫んでいる、横からゴゴッと木が倒れ込んできたので、僕が男から離れたところを木が覆い被さった! ズズっと大きな音を立てて男を潰す巨木。それにあわててミーナと言われた娘が叫んだ。
「うわあ、ブライアン! 大丈夫!?」
木の下から男の手が出て、力なさげに地に突っ伏した。……駄目だこりゃ。
それから僕たちはブライアンと言われた男、美青年で淡い碧い髪でどこか影のある雰囲気を持っていた、彼をロープで縛った。ミーナは抵抗する気がないらしい、力なさげに体育座りをしていた。
「おーいミーナとやら、ヴァルキュリアが敵のエインヘリャルを攻撃すると因果律がねじ曲がって、パートナーに不幸が起こるって知らなかったのか?」
メリッサがジト目でミーナをさとしていく。……楽しそうだな。
「だって、あのままじゃあ……ブライアンやられちゃうじゃん……」
ブツブツ言うミーナにメリッサはさじを投げ、アデルが近づいてくる。
「さて、この男どうしてやろうかね……!」
何故かにやにやと笑うアデル。別にお前が捕まえたわけじゃないだろ、何もしてないし。ブライアンは動揺した様子だった。
「た、助けてください! 僕は山に登っている最中に敵に襲われて仲間が二人もやられたんです。でも、戦うのはあまり僕は好きじゃないし、命のやりとりなんて僕はできません! 僕は自分の命が惜しくて仕方なく……お願いです、どうか見逃してください!」
「嘘つけこっちを攻撃してきただろ」
アデルがイヤラシそうに痛いところを突っつく。
「だって、敵が来たら攻撃するしかないじゃないですか! そうじゃないと殺されるし! 第一僕は防御型の能力で、相手のエインヘリャルを攻撃する能力はありません。だから、必死で矢を放って――」
「言い訳だな」
「違います!」
「待った」
僕がアデルを止める。なんでだと言った様子で「すぐ殺せばいいのによ」と悪態をつくが、僕は気にしない。
「パーティーを組んでいたということは結局のところ戦う意思はあるということだな」
僕の問いに困った様子のブライアン。茶髪の少女であるミーナは胸を張った。
「ブライアンはね、パーティーでみんなの壁を作って守っていたんだよ」
「ミーナ、余計なことを言わないでくれ!」
慌てるブライアン。彼を縛っているロープのひもを僕は解く。ブライアンは「えっ」とつぶやき、アデルはチッと舌打ちをした。
みんなが騒めき始めた。そして、僕が一言。
「うちはね、子ども連れなんだ、壁になってくれる人材はありがたい」
それに賛同するメリッサ。
「確かに男手は必要だな、また佑月は中距離から遠距離特化の戦い方が得意だ、壁になれる人材は正直相性がいい」
珍しく仲間に入れようとする僕に賛同する。守備特化なら寝首かかれる心配もだいぶ減るだろうしね。その状況を理解したブライアンは大喜びをした。
「──本当ですか! このままだと、にっちもさっちもいかないので、仲間になってくださる方を探していたんです! ありがとうございます! 一生懸命働きますんでよろしくお願いします!」
その言葉にエイミアとナオコが頷いた。
「まあ、いいんじゃない、佑月が決めたことなら」
「私、ナオコっていうの、よろしくね、お兄ちゃん!」
自分で決めたことだがつくづく良い仲間に巡り会える運はないらしい。苦笑しながらも、夕食の準備に取りかかった。まあ男手が増えたことで狩りは十分はかどったけど。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
御機嫌ようそしてさようなら ~王太子妃の選んだ最悪の結末
Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。
生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。
全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。
ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。
時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。
ゆるふわ設定の短編です。
完結済みなので予約投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】貴方の望み通りに・・・
kana
恋愛
どんなに貴方を望んでも
どんなに貴方を見つめても
どんなに貴方を思っても
だから、
もう貴方を望まない
もう貴方を見つめない
もう貴方のことは忘れる
さようなら
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる