120 / 211
宿命と対決
第百二十話 開戦
しおりを挟む
アウティスは静かに右手を掲げ青き光の球体を生み出す。小さな光の球たちが部屋中に浮かび上がり光り輝いた。
──その時僕はぞっとした。アウティスの頬がこけ痩せ細っており、髪が折りくねっている。黒い法衣に身を包まれてまるで目は地獄から天国を見つめるように羨望のまなざしをしていた。
「女とは度しがたい。恋人が来ることを信じてると何度もつぶやきながら、いざ男が来ると、来るなと言う。理解しがたい生き物だ」
「それをいじらしいと思うのが男の特権だ。理屈じゃあ人間を語れないんだ」
「神の前で他人を欺くとは罪だ。許しがたい」
「人間は全て罪人さ。それを知っているか知らないかの違いがあるだけで」
「私に哲学論をふっかけるつもりか、ずいぶんと博識なのだな、佑月?」
「少なくてもお前よりはね、アウティス」
アウティスは口角を上げいやらしくにやつき始めた。
「貴様とはテーブルを挟みワインを転がしながら語り合いたいものだが、それも叶わぬことだ」
「すまないが、僕は酒が飲めないんだ。語る言葉は銃弾だけでね」
「……ほう、よかろう、貴様の正義を私に見せてみろ」
右手にある光の球体が輝き青き光を放つ。……別に僕は正義の味方じゃないって言ってるだろ、本当に話を聞かない奴だ。
光の球体から閃光が生まれ、小さな光がそれを跳ね返し曲がりくねって、幾多の光線が襲ってくる! 眩い光のいななき! ドオンと大きな音を立てて僕の居場所を石の残骸へと変えていく。
倒れながら右手側の地につく僕。クロスボウはアウティスの右手を狙い定めていた、後はトリガーを引くだけ。ビュンと風切り音を立てて矢が奴の右手を貫く。すかさず腰に下げているMP7A1がセミオートで火を噴いた!
ドドドとけたたましく音を立てて飛び出す金の弾丸、奴の体が跳ね飛び胸が真っ赤に染まった。──その瞬間奴の姿は消え、右手方向に無傷で現れる。やはり時間変革能力か……!
アウティスが右手で空をなぎ払うと風の刃が地上から生み出され、すさまじいスピードで僕を襲ってきた!
僕は礼拝堂の中走り出す、風の刃から、身を守らなければならない、アウティスは右手を払いどんどん風の刃を生み出していく! ……ふん、小技に頼るとはどうやらさすがに自分の館を壊すのは嫌らしいな。
僕は走り込んで中央の奥に張り付けにされているメリッサの元に急ごうとする。
「させるか!!」
アウティスは、僕の進路に風の刃を待ち伏せさせる。僕は足を止め、銃で制圧射撃行い弾を丁寧にばらまいていく。
狙ってはいないが幸運にもアウティスの右腹を撃ち抜いた、しかし、アウティスはかまわず風の刃でこちらの動きを封じる! ──くそっ! 奴の前でメリッサと合流するのは難しいか、こいつが堂々とメリッサを見せている理由がわかった。
──なるほど僕がメリッサを目標に行動するのを目の前で防ぐためだ、見ている前では合流は叶うまい、なかなかやってくれる。アウティスは撃ち抜かれた傷を瞬く間に再生能力で治していく。
「さて、どうするかな佑月、このままで済ますお前でもあるまい……?」
鼻で笑いながらこちらをじっと見つめる、アウティス。いやな笑い方だ。話しながらクロスボウの弦をハンドルで巻き取っていった。
「さて、どうかな、前回みたいに上手くはめればお前を倒せる可能性はあるし、はまらなかったら僕の負けじゃないかな?」
「ずいぶんと余裕があるではないか、前回は私は鐘楼塔を思うあまり、能力を制限していたつもりだが、それに気づかぬお前でもあるまい?」
「自分の館を壊したいならそうするんだな。別に僕はその点、興味がない。そんなことよりもエイミアを殺せと何故命令した。ヴァルキュリアだからお前が死なない限り死ぬことはないが、はいそうですかとうなずく女ではないだろう」
「別に私にはもうヴァルキュリアなど不要なものだ。現地の人間と意思疎通出来るし、感知出来る能力も必要ない。敵から奇襲を受けても時間変革能力でなかったことにすればいいだけのことだ」
それを聞いた瞬間、突如、僕は笑い出した。
「どうして、お前が日向さんに負けた理由がわかったよ」
「……何だと!?」
見るからに動揺するアウティス。ふっ、だんだんコイツのことがわかってきた。
「他人の気持ちを理解出来ない奴が、相手の心を読めるはずがないな。そりゃあ、複製という優れた能力があればお前より弱い敵は倒せるさ。
でも、本当に強い相手は能力で勝つんじゃない、頭と精神で勝つんだ。僕は見ての通り貧弱な男だ。でも駆け引きなら自信がある。だからお前は日向さんに追い詰められたんだ。本当の強い相手とは対等に戦っていない、だからお前は負けたんだよ」
その言葉に静かに声を上げ笑い出すアウティスだった。
「私が強敵と対等に戦っていないだと……! お前に何がわかる。私は常に周囲の期待に応えてきた、そこら辺の奴と一緒にされては困るな」
「なら何故、人質など意味の無い方法をとった? 何故、僕にとどめを刺さず見逃した?
わざわざそんな手間のかかる方法をとったのは、お前が自分と同等のレベルの奴と戦ってみたかったからだ。……お前は飽いたんだよ、自分より弱い奴と戦うことを」
「……ほほう面白い仮説だ。お前を始末した後じっくり検討してみよう、本一冊分書けそうだ……!」
言葉を交わす間、装填の準備が整ったので僕はクロスボウを構えた。奴は光の球体を出し数々の球たちを生み出していく。──だが僕のほうが速かった。深々とアウティスの胸に突き刺さる矢! しかし、アウティスはひるまず閃光が手から解き放たれる!
光に反射して曲がりくねって襲ってくる光線たち。……この攻撃は四方八方から光が飛んできてどこから来るかわかりづらい。隙間を見つけて体を閃光からかいくぐったつもりだが、僅(わず)かに動きを見逃した一筋の光が球体に反射して、こちらの顔に迫ってくる。
しまった──!
……そのときだった。自然と急に頭の中に浮かび上がる文字! ──この一度味わった久しぶりの感覚に僕は高揚してしまった。
── The LOST TECHNOLOGY just starts on……
──その時僕はぞっとした。アウティスの頬がこけ痩せ細っており、髪が折りくねっている。黒い法衣に身を包まれてまるで目は地獄から天国を見つめるように羨望のまなざしをしていた。
「女とは度しがたい。恋人が来ることを信じてると何度もつぶやきながら、いざ男が来ると、来るなと言う。理解しがたい生き物だ」
「それをいじらしいと思うのが男の特権だ。理屈じゃあ人間を語れないんだ」
「神の前で他人を欺くとは罪だ。許しがたい」
「人間は全て罪人さ。それを知っているか知らないかの違いがあるだけで」
「私に哲学論をふっかけるつもりか、ずいぶんと博識なのだな、佑月?」
「少なくてもお前よりはね、アウティス」
アウティスは口角を上げいやらしくにやつき始めた。
「貴様とはテーブルを挟みワインを転がしながら語り合いたいものだが、それも叶わぬことだ」
「すまないが、僕は酒が飲めないんだ。語る言葉は銃弾だけでね」
「……ほう、よかろう、貴様の正義を私に見せてみろ」
右手にある光の球体が輝き青き光を放つ。……別に僕は正義の味方じゃないって言ってるだろ、本当に話を聞かない奴だ。
光の球体から閃光が生まれ、小さな光がそれを跳ね返し曲がりくねって、幾多の光線が襲ってくる! 眩い光のいななき! ドオンと大きな音を立てて僕の居場所を石の残骸へと変えていく。
倒れながら右手側の地につく僕。クロスボウはアウティスの右手を狙い定めていた、後はトリガーを引くだけ。ビュンと風切り音を立てて矢が奴の右手を貫く。すかさず腰に下げているMP7A1がセミオートで火を噴いた!
ドドドとけたたましく音を立てて飛び出す金の弾丸、奴の体が跳ね飛び胸が真っ赤に染まった。──その瞬間奴の姿は消え、右手方向に無傷で現れる。やはり時間変革能力か……!
アウティスが右手で空をなぎ払うと風の刃が地上から生み出され、すさまじいスピードで僕を襲ってきた!
僕は礼拝堂の中走り出す、風の刃から、身を守らなければならない、アウティスは右手を払いどんどん風の刃を生み出していく! ……ふん、小技に頼るとはどうやらさすがに自分の館を壊すのは嫌らしいな。
僕は走り込んで中央の奥に張り付けにされているメリッサの元に急ごうとする。
「させるか!!」
アウティスは、僕の進路に風の刃を待ち伏せさせる。僕は足を止め、銃で制圧射撃行い弾を丁寧にばらまいていく。
狙ってはいないが幸運にもアウティスの右腹を撃ち抜いた、しかし、アウティスはかまわず風の刃でこちらの動きを封じる! ──くそっ! 奴の前でメリッサと合流するのは難しいか、こいつが堂々とメリッサを見せている理由がわかった。
──なるほど僕がメリッサを目標に行動するのを目の前で防ぐためだ、見ている前では合流は叶うまい、なかなかやってくれる。アウティスは撃ち抜かれた傷を瞬く間に再生能力で治していく。
「さて、どうするかな佑月、このままで済ますお前でもあるまい……?」
鼻で笑いながらこちらをじっと見つめる、アウティス。いやな笑い方だ。話しながらクロスボウの弦をハンドルで巻き取っていった。
「さて、どうかな、前回みたいに上手くはめればお前を倒せる可能性はあるし、はまらなかったら僕の負けじゃないかな?」
「ずいぶんと余裕があるではないか、前回は私は鐘楼塔を思うあまり、能力を制限していたつもりだが、それに気づかぬお前でもあるまい?」
「自分の館を壊したいならそうするんだな。別に僕はその点、興味がない。そんなことよりもエイミアを殺せと何故命令した。ヴァルキュリアだからお前が死なない限り死ぬことはないが、はいそうですかとうなずく女ではないだろう」
「別に私にはもうヴァルキュリアなど不要なものだ。現地の人間と意思疎通出来るし、感知出来る能力も必要ない。敵から奇襲を受けても時間変革能力でなかったことにすればいいだけのことだ」
それを聞いた瞬間、突如、僕は笑い出した。
「どうして、お前が日向さんに負けた理由がわかったよ」
「……何だと!?」
見るからに動揺するアウティス。ふっ、だんだんコイツのことがわかってきた。
「他人の気持ちを理解出来ない奴が、相手の心を読めるはずがないな。そりゃあ、複製という優れた能力があればお前より弱い敵は倒せるさ。
でも、本当に強い相手は能力で勝つんじゃない、頭と精神で勝つんだ。僕は見ての通り貧弱な男だ。でも駆け引きなら自信がある。だからお前は日向さんに追い詰められたんだ。本当の強い相手とは対等に戦っていない、だからお前は負けたんだよ」
その言葉に静かに声を上げ笑い出すアウティスだった。
「私が強敵と対等に戦っていないだと……! お前に何がわかる。私は常に周囲の期待に応えてきた、そこら辺の奴と一緒にされては困るな」
「なら何故、人質など意味の無い方法をとった? 何故、僕にとどめを刺さず見逃した?
わざわざそんな手間のかかる方法をとったのは、お前が自分と同等のレベルの奴と戦ってみたかったからだ。……お前は飽いたんだよ、自分より弱い奴と戦うことを」
「……ほほう面白い仮説だ。お前を始末した後じっくり検討してみよう、本一冊分書けそうだ……!」
言葉を交わす間、装填の準備が整ったので僕はクロスボウを構えた。奴は光の球体を出し数々の球たちを生み出していく。──だが僕のほうが速かった。深々とアウティスの胸に突き刺さる矢! しかし、アウティスはひるまず閃光が手から解き放たれる!
光に反射して曲がりくねって襲ってくる光線たち。……この攻撃は四方八方から光が飛んできてどこから来るかわかりづらい。隙間を見つけて体を閃光からかいくぐったつもりだが、僅(わず)かに動きを見逃した一筋の光が球体に反射して、こちらの顔に迫ってくる。
しまった──!
……そのときだった。自然と急に頭の中に浮かび上がる文字! ──この一度味わった久しぶりの感覚に僕は高揚してしまった。
── The LOST TECHNOLOGY just starts on……
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる