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見えない敵
第二十三話 森は笑わない③
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「佑月! よけろ!」
剣戟が襲い掛かってくる! メリッサの掛け声のおかげで瞬時に身をひるがえし、僕の肉を食らおうとした刃は空を薙ぐ。その中にメリッサが割り込んできた。
「何をやっているのかわかっているのか! 金髪のヴァルキュリア!」
それは威風堂々で、吊された裸の少女はそこにはなく、さっきの金髪のヴァルキュリアが衣服を整え、剣を構え、僕を襲ってきのだ。
「殺させはしない。私は人間になる! 人間になるんだから」
冷静さを失っている……! 金髪のヴァルキュリアが剣を振り上げ、二筋の剣筋が舞い交差する。メリッサの剣圧に負けて相手の女が後ろに下がると、その瞬間だった──。カチッと音がし。ビュッ! と音を立てて仕掛け弓の雨あられが敵の男のエインヘリャルを襲ってきた。
「があ!」
矢たちは足に刺さり血で真っ赤に染まってしまい這いずりながら叫ぶ、
「ばかやろおおぉぉぉっ──‼ 何をやってる! ヴァルキュリアがエインヘリャルの戦いに介入すると、俺に被害が来るのがわからないのか!?」
それは悲鳴に近かった。彼の言葉の圧力によって冷静さを取り戻した金髪のヴァルキュリアは自分の過ちに気づいたようだ。戦闘意欲を失うとあっさりメリッサに剣を奪われた。
「ばかなやつ」
メリッサは吐き捨てた、しかし、金髪のヴァルキュリアは焦点が定まらない目をして深く落ち込んでいた。
「だって負けたら終わり、終わりだから……」
ふう、とりあえず危険はなかったらしい。気を取り直して僕は敵のエインヘリャルに銃を向け直した。
「で、何か言い残すことはあるか?」
「へへ……、別に何もないが、どうせならさあ、俺は死ぬなら女を抱きながら死にたかったんだ……。俺のヴァルキュリアみたいな、あほな姉ちゃんじゃなくて、あんたのヴァルキュリアみたいな良い女がいい。どうせ殺すんだろ。一回ぐらいあんたのヴァルキュリアを抱かせてくれないか、へへへ……」
敵のエインヘリャルがそう笑うと、メリッサは髪の毛を逆立てたように眉をつり上げて激怒した。
「早くそいつを殺せ! 出ないと私が首をはねるぞ!」
そうだな、僕はメリッサの気持ちを考えてしゃべってないで早く終わらせることにした。
「……そうもうないな、なら終わらせるぞ」
「最後に一つだけ──」
男はゆっくりとかみしめるように僕に告げた。
「く・た・ば・れ、クソやろう──!」
金髪の男は後ろほうの草陰に隠されていたロープを切った! 僕の足にロープがかかってしまう。しまった! ロープに引きずられ僕は上空へ逆さづりにされてしまった。
「くっ、まずい!?」
そして僕に向かってとげ付きの巨大な丸太が襲いかかってきた──! 丸太は大きく弧を描き地面すれすれにやってくる! そのときだ――。
――メリッサが僕をかばうためその場所に立つ。
……ほんの僅かの間だったが、僕の方へ振り返り少し彼女は微笑んでみせた。
――丸太はメリッサの小さな体を突き上げる! とげは鋭く、彼女の柔らかい体を深々と貫き、メリッサともども丸太は、巨木にぶつかりメリッサの身体はぐちゃりと押しつぶされてしまった。
「メリッサ!」
僕は腹から叫んだ! 急いで腰に下げていたショートソードで僕を吊していたロープを切り、地面にたたきつけられる。足がふらつくが、視線を恐る恐る彼女のほうに向けた。
……メリッサはぶら下がった丸太のとげに刺さり力なく人形のように動かない──。
大地が赤く染まる。メリッサの艶やかな白い肌が赤い海に沈み、光り輝き妖しく美しく煌めく。
「ハハハ――!」
金髪の男は高笑いを始めた。
「何がおかしい!!?」
気がふれたかのように僕は叫んだ。
「笑うしかないだろこっちのバカ女は俺の邪魔をしやがって、お前の女は身をもって男をかばって罠を潰しやがった! くはは! 何が選定の儀式だよ、結局ヴァルキュリアの能力しだいじゃねえか、ははは──」
選定の儀式なんのことだ? それよりもコイツ、金髪のヴァルキュリアはコイツをかばって僕に剣を振るったのがわからないのか! 確かに愚策だったがヴァルキュリアがその魂をかけてこの戦いに賭けているのがわからないのか……!
メリッサ……。
自分のバカさ加減に腹が立つ。コイツの話をグダグダ聞いて、何故隙を見せた? メリッサの言うとおり早く殺せばよかったのに。余裕見せて悦に入っていたのか、それとも人殺すのにためらっていたのか? バカめ、今更何を考えてるんだ、僕は……。
──すべて、僕の責任だ。
メリッサを傷つけたのも僕のせいだ、自分の甘えがこの事態を呼んだんだ。
メリッサすまない……!
「――お前が話していい言葉は一つもない。メリッサを傷つけた罪、その身であがなえ」
静かな怒りのまま、フルオートで全弾を奴にたたき込んだ。金髪の男の体は無残にも吹き飛び、ヴァルキュリアと男だったものは光に包まれる。そしてすぐさま、僕は急いでメリッサを貫いている丸太のロープを切り、彼女を抱き起こす。
「メリッサ……! すまない僕がちゃんとしなかったせいで……」
メリッサは光を失った目で口を動かした。その痛々しい姿に僕は思わず顔をそむけてしまった。
「甘えるな……もっと私を……大切にしろといったろ……バカ者め……!」
メリッサ……! 僕は取り返しのつかないことをしてしまった、メリッサに何言われようとかまわない。全部僕のせいだ!
──僕は罰を受けるつもりで彼女の言葉を待った。
剣戟が襲い掛かってくる! メリッサの掛け声のおかげで瞬時に身をひるがえし、僕の肉を食らおうとした刃は空を薙ぐ。その中にメリッサが割り込んできた。
「何をやっているのかわかっているのか! 金髪のヴァルキュリア!」
それは威風堂々で、吊された裸の少女はそこにはなく、さっきの金髪のヴァルキュリアが衣服を整え、剣を構え、僕を襲ってきのだ。
「殺させはしない。私は人間になる! 人間になるんだから」
冷静さを失っている……! 金髪のヴァルキュリアが剣を振り上げ、二筋の剣筋が舞い交差する。メリッサの剣圧に負けて相手の女が後ろに下がると、その瞬間だった──。カチッと音がし。ビュッ! と音を立てて仕掛け弓の雨あられが敵の男のエインヘリャルを襲ってきた。
「があ!」
矢たちは足に刺さり血で真っ赤に染まってしまい這いずりながら叫ぶ、
「ばかやろおおぉぉぉっ──‼ 何をやってる! ヴァルキュリアがエインヘリャルの戦いに介入すると、俺に被害が来るのがわからないのか!?」
それは悲鳴に近かった。彼の言葉の圧力によって冷静さを取り戻した金髪のヴァルキュリアは自分の過ちに気づいたようだ。戦闘意欲を失うとあっさりメリッサに剣を奪われた。
「ばかなやつ」
メリッサは吐き捨てた、しかし、金髪のヴァルキュリアは焦点が定まらない目をして深く落ち込んでいた。
「だって負けたら終わり、終わりだから……」
ふう、とりあえず危険はなかったらしい。気を取り直して僕は敵のエインヘリャルに銃を向け直した。
「で、何か言い残すことはあるか?」
「へへ……、別に何もないが、どうせならさあ、俺は死ぬなら女を抱きながら死にたかったんだ……。俺のヴァルキュリアみたいな、あほな姉ちゃんじゃなくて、あんたのヴァルキュリアみたいな良い女がいい。どうせ殺すんだろ。一回ぐらいあんたのヴァルキュリアを抱かせてくれないか、へへへ……」
敵のエインヘリャルがそう笑うと、メリッサは髪の毛を逆立てたように眉をつり上げて激怒した。
「早くそいつを殺せ! 出ないと私が首をはねるぞ!」
そうだな、僕はメリッサの気持ちを考えてしゃべってないで早く終わらせることにした。
「……そうもうないな、なら終わらせるぞ」
「最後に一つだけ──」
男はゆっくりとかみしめるように僕に告げた。
「く・た・ば・れ、クソやろう──!」
金髪の男は後ろほうの草陰に隠されていたロープを切った! 僕の足にロープがかかってしまう。しまった! ロープに引きずられ僕は上空へ逆さづりにされてしまった。
「くっ、まずい!?」
そして僕に向かってとげ付きの巨大な丸太が襲いかかってきた──! 丸太は大きく弧を描き地面すれすれにやってくる! そのときだ――。
――メリッサが僕をかばうためその場所に立つ。
……ほんの僅かの間だったが、僕の方へ振り返り少し彼女は微笑んでみせた。
――丸太はメリッサの小さな体を突き上げる! とげは鋭く、彼女の柔らかい体を深々と貫き、メリッサともども丸太は、巨木にぶつかりメリッサの身体はぐちゃりと押しつぶされてしまった。
「メリッサ!」
僕は腹から叫んだ! 急いで腰に下げていたショートソードで僕を吊していたロープを切り、地面にたたきつけられる。足がふらつくが、視線を恐る恐る彼女のほうに向けた。
……メリッサはぶら下がった丸太のとげに刺さり力なく人形のように動かない──。
大地が赤く染まる。メリッサの艶やかな白い肌が赤い海に沈み、光り輝き妖しく美しく煌めく。
「ハハハ――!」
金髪の男は高笑いを始めた。
「何がおかしい!!?」
気がふれたかのように僕は叫んだ。
「笑うしかないだろこっちのバカ女は俺の邪魔をしやがって、お前の女は身をもって男をかばって罠を潰しやがった! くはは! 何が選定の儀式だよ、結局ヴァルキュリアの能力しだいじゃねえか、ははは──」
選定の儀式なんのことだ? それよりもコイツ、金髪のヴァルキュリアはコイツをかばって僕に剣を振るったのがわからないのか! 確かに愚策だったがヴァルキュリアがその魂をかけてこの戦いに賭けているのがわからないのか……!
メリッサ……。
自分のバカさ加減に腹が立つ。コイツの話をグダグダ聞いて、何故隙を見せた? メリッサの言うとおり早く殺せばよかったのに。余裕見せて悦に入っていたのか、それとも人殺すのにためらっていたのか? バカめ、今更何を考えてるんだ、僕は……。
──すべて、僕の責任だ。
メリッサを傷つけたのも僕のせいだ、自分の甘えがこの事態を呼んだんだ。
メリッサすまない……!
「――お前が話していい言葉は一つもない。メリッサを傷つけた罪、その身であがなえ」
静かな怒りのまま、フルオートで全弾を奴にたたき込んだ。金髪の男の体は無残にも吹き飛び、ヴァルキュリアと男だったものは光に包まれる。そしてすぐさま、僕は急いでメリッサを貫いている丸太のロープを切り、彼女を抱き起こす。
「メリッサ……! すまない僕がちゃんとしなかったせいで……」
メリッサは光を失った目で口を動かした。その痛々しい姿に僕は思わず顔をそむけてしまった。
「甘えるな……もっと私を……大切にしろといったろ……バカ者め……!」
メリッサ……! 僕は取り返しのつかないことをしてしまった、メリッサに何言われようとかまわない。全部僕のせいだ!
──僕は罰を受けるつもりで彼女の言葉を待った。
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