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魔族大戦
第百四十七話 ティンタジェル要塞包囲戦
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次の戦争に必要なすべての時間が与えられた。物資の充填率は140%を超え、数か月、数万の大軍を動かせるほどの量が要塞の倉庫に収まっている。
私たちテットベリー軍団は、目下、この地方で相手の輸送経路を断つための補給基地であったティンタジェル要塞を攻略することとなった。というのも現在、西部方面本軍はチチェスタ―地方で足止めを食らっていると報告があった。
そこへの兵站の重要地点を我々の司令官ジェラードの指揮のもと、港からの輸送路を切る。文字通り、チチェスタ―へ血を送り込む心臓部となっているティンタジェル要塞を。
私が考え込んでいた中、作戦会議室で士官たちのもとジェラードは今後の作戦行動を説明していくのだった。
「まず、我々の攻略目標はティンタジェル要塞だ。これは周知の事実だと思う。しかしながら、ここを落とすためには足がかりとなる東側に位置するイーストサセックスの出城を陥落させる必要がある。
ここいらは別に地形的に大した苦労もなく、我らの手中に収めることが出来るだろう。問題は南方からのティンタジェルの命綱となっている、コルチェスター方面だ。森に囲まれており、攻めるのに一苦労するだろう。
砲兵を運ぶには道が狭く、また、高低差が激しいため、地図と照らし合わせて、要地へと人力で大砲を設置しないとならない。想定以上に兵力と練度の高い兵を連れて行かなければならないだろう。
よって私が作戦士官と決めたことは、イーストサセックスをノーリッジ伯爵殿が指揮を執り、傭兵たちを連れて平定して、来るティンタジェル包囲戦のためにここストラトフォード要塞からの輸送路を確保してもらいたい。
同時に私は本軍を率いて、難関となっているコルチェスター地方の制圧に向かう。何か質問は?」
私は宰相であるため軍事には必要以外口を出さなかった。彼に応えたのは、元傭兵たちの有力者として麾下へと加わった、ダスティン大佐だった。
「司令官、おっしゃる意味は分かったが、何故、本軍をコルチェスターに向かわすのか。補給路を考えると、大軍を動かしやすい東部のイーストサセックスを本軍とし、南部はこの軍団に加わることを許された我々、もと傭兵たちに任せていただきたい。
我々は戦闘経験が豊富だ。司令官のご期待に沿えるかと思う」
「ん。もっともな意見だ。実はこのように分けたのは、ティンタジェル要塞を攻略を確実にするためだ。
戦略に基づき要塞包囲戦になる以上、相手が戦闘態勢を万全にする前に包囲を終えたい。とれるものなら有利な地点を制圧しておきたくもある。兵は神速を貴ぶらしい。行動にスピードが求められている。
相手側により動揺を与えるために、長年連携のとれている我がテットベリー本軍を困難なコルチェスター地方に向かわしたい。
対し軍団を分けて一個師団を指揮するに値する士官は、最近ウェストヘイムから来たばかりのノーリッジ伯爵だけであるが、かといって作戦通りコルチェスター地方を迅速に攻略するよう差配をするというのは無茶があるというもの。
テットベリーの兵卒たちと慣れ親しんだ私直々に指揮するのがより確実だろう。これがそんなに不思議なことか、ダスティン大佐?」
「いや、そうじゃねえ。ああ、そうじゃありません。しかし……。そうか、仕方ないか、我々元傭兵はノーリッジ伯爵に従います」
「それでいい、よろしく頼む」
と言って、作戦会議が終わった。このやり取りを眺めていた私はダスティンが口ごもったことに疑問を感じてしまう。廊下で彼を追っかけた私はその問いをぶつけてみた。
「ダスティン、テットベリー本軍がコルチェスター地方を攻略することの何が悪いの? この地方で転戦していた貴方しか知らない情報があるとでも」
「そうじゃねえ、宰相閣下。そうだな、なんだ、少し落ち着いた場所で話をしないか」
煮えきらない彼に「わかったわ」と返事をして、客間で話を聞くことにした。少し雑談をした後、ダスティンはわけを語り始めた。
「なんというか、俺の経験上、あそこ、コルチェスター地方を主に守っているのは、おそらく傭兵だ」
「傭兵? 魔族が傭兵に防備を任せているの」
「補足が必要みたいだな。ややこしいんだ、これは。コルチェスター地方の地形は特殊でね、ジェラードのあんちゃんが本軍として出向くは当然だとは思う。
とはいえ、あそこは特殊な地域なんだ。ああ、なんて言っていいか、まあアンタなら大丈夫だろう、宰相。あそこはなあ、王宮から差別を受けていた村落の集まりなんだ。ウェストヘイムのお貴族たちとは血筋の違う、別の人種が住んでいる。
そりゃ今までウェストヘイムのお偉いさんから煮え湯を飲まされた奴らだ。あそこでは反乱がおこることがしばしば。何せ気性が荒いからなあいつらは。
で、ウェストヘイム本城が落とされた聞いて、日ごろの恨みから真っ先に魔族側に付いたんだ。なら、この地方はそいつらに任せた方が統治に役立つと、魔王とやらは考えたのだろう」
なるほど、歴史的にウェストヘイムに恨みがある地方なんだ。言いたいことがなんとなくわかってきた。
「つまり、そこは地形が険しく、独立機運が高い地方だってあなたは言いたいわけね、ダスティン。力攻めで落としたら、統治に支障が出そうな地域だと。輸送路の確保ができなくなり、進軍が滞る可能性があると。
そこの防備を任されている傭兵は縁のものなの?」
「ああそうだ。オークニー男爵って言うが、奴の家は代々コルチェスター地方の統治を許されている一族だ。不遇を買ってる領民を養うため、領地持ちの貴族ながら傭兵業を代々営んでいる。
俺とはけっこう顔見知りだ。とういうわけでさ、できれば俺を南部方面軍に加えてくれないか。アンタにとって、この情報は必要だったろ。ジェラードのあんちゃんと違って」
「ふふ、貴方の読みは正しいわ。それを聞いたら、私はジェラードに貴方を加えるよう言ってる。とはいえ、うかつよ、ダスティン。
賢すぎる軍人は政治屋に嫌われるわよ。官僚とかは貴方にいい顔しないわ。組織の内に収まらない男は」
「肝に銘じておくよ。どうも世渡りというのが苦手らしい。軍人になった以上、そこら辺の指南頼むよ、宰相閣下」
「ええ、しごいてあげるわ、たっぷりとね」
と言って笑い合った。理由を私から聞いたジェラードは首を縦に振った。かといって、彼はダスティンの気づかいを心地いいと思わなかった。組織のトップ抜きで、周りの人間に人事異動を要望すればそりゃそうだ。
でも、私とジェラードは固い絆で結ばれている。事を荒立てることもなく、ダスティンを加えて、私たちテットベリー本軍はコルチェスター地域へと向かった。
ダスティンが口ごもったのは私自らが働くよう配慮したのだろう。そういうところは好みがわかれる人物だと思う。
私は男のわがままに慣れているから平気。事務員大変なんだよ、ほんと。
コルチェスター地方攻略の足掛かりになるい小さい城塞を攻略した後、この地方の有力者である、例のオークニー男爵に私とダスティンは会いに行った。
宰相の私が直接行くと角が立つため、一応ダスティンのお供としてあいさつというわけだ。オークニーは赤毛で、髪を短くきり、イヤリングをつけている。この地方の民族の風習なんだろう。他の人種と違うということがすぐに分かった。
ダスティンは彼に会うなり、握手しに行き、オークニーはそれに応え、ハグを交わす。
「ダスティン、十人刺しのダスティンか! 久しぶりだな!」
「その通り名はよしてくれ、貴族の連中が嫌がる」
「相手は貴族連中だったか、東部の。もうそれ以来会ってない気がするが、私の記憶は正しいか?」
「ああ、合ってるぜ。あの時は頼りになる仲間だったが、今度は敵同士ってわけか」
「傭兵稼業をやっていればそうなることもある。構わんさ、慣れている。しかし、お前はそれを嫌になったって聞いたぞ」
「ちょっとな、そろそろ落ち着こうかと思ってな。鶴の一声があって、今ではネーザンのへたれ野郎どもをしごいてる」
「ふん、お前がな。まあ、お前もいい年だしなダスティン。嫁をもらえ。子どもを作れ。帰る家があるのはいいぞ。一人が寂しくなる年頃だろ」
「そういうこった。残念ながら、ネーザンにはいい女が多いらしい。退屈はしなくて済みそうだ」
「ははは……」
「そっちはどうだ、順調か? ウォレム」
ウォレムはオークニー男爵の名だ。オークニーはこの地方にある名称で、それを家名にしているらしい。オークニーは少し苦々しく言った。
「魔王というやつはいい女だ。がな、ここの司令官はどうも堅苦しいじじいだ。窮屈な暮らしさ。魔族にも色々いるんだぞ、知ってたか、ダスティン」
「みたいだな、聞く限り」
「ところで私の知る限り、お前は独身だと聞いたが、どこかで子供を作ったのか、お前」
オークニー男爵は私の方に視線を合わす。私が微笑みを返すと、彼は少し戸惑っているようだ。ダスティンはうなずきながら私を紹介する。
「さっき言った、俺の鶴だ。ネーザン宰相、ミサ閣下だ」
「はじめまして、オークニー男爵。私はミサ・エチゴ・オブ・リーガン。ネーザンと統一国の宰相をしているわ」
「おいおいダスティン……!?」
「まあ話を聞け、ウォレム。話はそれからだ」
といったやり取りの後、私たちはテーブルを囲む。オークニー男爵は私を警戒ながら、なるべく威厳を持ちながらも、少しへりくだった言い方をする。
「わたくしは、この地方の領主をしているウォレム・シュレッダー・オブ・オークニーです。宰相閣下、お初にお目にかかります」
「はじめまして、ご丁寧なあいさつありがとう。でもここで魔族側についている傭兵もやっている……といった文言が抜けているわよ、オークニー男爵」
「これは手厳しい。宰相閣下は私を人間たちの裏切り者として糾弾しに来たのですかな?」
「まさか。ネーザンは自由を愛する国家。他人のやることに口出しするほど、私は暇ではないわ」
「自由を愛するね……。ウェストヘイムではなかなか聞かない言葉だ」
「この地方では特にその言葉は禁句となっていたそうじゃない。魔族が来るまで」
「なるほど、ある程度ご承知の上で私に会いに来た。違いますか、宰相閣下?」
「正しい言い方ね。私好みの言い方よ。貴方、ネーザンの女にモテそうだわ。もしかしたら、貴方独身かしら?」
「若いときに死に別れています。どうやら貴女は私を口説きに来たようだ」
「それも正しい言い方だわ。私好みでね。ねえ、貴方たち傭兵団はこの後どうするつもり?」
「どうするも何も、貴女の大事なネーザン国の兵と一線を交える覚悟ですが。……傭兵として」
「私がききたいのはもっと先の話。このまま魔族側について、このコルチェスター地方をどうやって守るのかしら。ぜひ聞きたいわ、参考意見として」
「さあ。しかし、魔王は私がここら一帯を治めることに賛成するとは申してくれましたよ」
「それは朗報ね、ここの領民は安心するでしょう。少しの間はね」
「どういった意味ですかな?」
「人間たちを敵に回して、そのあと衣食住が賄えるようになれるのかしら。貴方は良いでしょうけど、領民たちは裏切り者扱いよ。子々孫々まで」
「……この地方は先祖代々長らく私たちが住んできた。そろそろ自由になってもいい頃でしょう」
「それはウェストヘイムから? 統一国から?」
「おっしゃる意味がわかりかねます」
「貴方が独身なら縁談を持ってきたのよ。ネーザン貴族とのね……!」
「っ、なっ……!? そんなことをすれば、ウェストヘイムの貴族たちを敵に回すことになるでしょう! 御冗談もほどほどに」
「私はこんな時に冗談を言うほど軽薄ではないわ。貴方が望むならこのまま自由でいてもいいのよ、ネーザン国は口を出さないし、むしろ交易を再開してもいい。だってネーザン貴族と縁続きになるもの。
こんな戦争の時代、未亡人はいっぱいいるわ、ネーザンに。できれば、貴方が気の利いた言葉で慰めてくれると私は助かるわ」
「ふっ、はっは、あっは、ははは。おい、ダスティン。このネーザン宰相はすごいな。大戦争のうちに、ここコルチェスター地方を抱き込みたいらしい」
その言葉にダスティンは「なっ、鶴だろ。しかもとびっきりの良い女だ。勝利の女神らしいぞ」と返したことにオークニー男爵は、
「そうだな、確かに鶴だな。ただし羽の色は黒いらしい」
などとおどけて言うので私は笑みを浮かべた。
「どうやら私をお気に召していただいて結構なことだわ。で、返事を聞かせてもらえないかしら?」
「傭兵である以上、もらった金の分は働かないといけない。そういう生業ですから。ただし……」
「ただし?」
「もらった金以上のことは、何も面倒を見る必要はない。それが傭兵ですからな」
「良かったわ、商談成立ね」
「ああ、良い取引ができました。感謝いたします。宰相閣下」
「そうね、ははは……」
「ははは……」
と笑い声が部屋中に響く。調略成功。難地であるこのコルチェスター地方を楽に攻略する下準備が整った。幸先良くて南無阿弥陀仏を唱えたくなったわ。
ジェラードに報告すると彼は、「信用できるのか?」と聞いてきたので私はこう答えた。
「かなりいい方向に向かうと思う。とはいえ、司令官は貴方よ、ジェラード。どうするかはあなたが判断して。もし、オークニー男爵が上手く使えそうにないカードなら、わざわざ持っておく必要はないわ」
「それは助かる。戦争はまさかの連続だ。指揮権があるものに委ねると言ったお前の判断が正しい。さて、どうなるかな……」
結果だけを言うと、私たちはどんどんとコルチェスター地方を攻略することに成功した。というのも、オークニー男爵が率いていた傭兵が戦いに負けそうになるとさっさと持ち場を放棄していく。
こういうのは私の世界の傭兵でもよくあったことらしい。命を懸けるほどのない戦いなら、傭兵たちは勝手に戦闘中止とかざらだ。
ルネッサンス期のイタリア諸国が傭兵に頼りっきりの軍事状況を嘆いて、常備軍を設立するようマキャベリが君主論を書いたのはそのためだ。当時としては画期的な思想で、反発も大きかったのかカトリックからいらぬ風評被害を浴びている本だ。
内容を見てみればわかるが、リーダーは現実的に判断しろっていう内容で、彼の理想論とか思想はあまり重要ではない。元官僚のマキャベリから見て、厳然としているリーダーが君臨していれば下のものは働きやすいと考えたのだろう。
これをそっくりそのまま現実に行ってしまえば、いろいろと問題が起こってしまう本ではあるという補足を私はするけどね。
ともあれ、予想外の勝利の連続にジェラードは唖然としていた。
「まさか、これほど容易にコルチェスター地方を攻略できたとは……!」
「何か問題でも?」
「問題がなさすぎるのが問題だ。想定以上より早くティンタジェル要塞に迫っている。ナターシャは近くにいるか?」
と、ロリータ伯爵を探し始めたので、兵が彼女を連れてきた。
「なんですの? ジェラード司令官。私はアーノルドをしばくので忙しいんですわ」
「それはいいが、地図を作り直すつもりでね、君の意見も聞きたかったのだ」
「はい? この大陸の地図は専門外ですわ」
「いや、砲兵の配置とかを考えるのに君の意見を聞きたい。ティンタジェル要塞を攻略するにあたって、押さえられる要地は押さえておきたい」
「ああ、なるほど。了解ですわ」
ジェラードは彼女と軍事的な話をした後、終わったようなので、オークニー男爵のことを尋ねてみた。
「どう思う? オークニー男爵のこと」
「冷静すぎるといった感想だ。ここまでドライな判断ができるなら、ぜひ使いこなしたい人物だ。ミサ、彼をこちらの味方に付けるよう説得できないか。ティンタジェル要塞攻略のアドバイスが欲しい」
「そう来ると思ったわ、ダスティンのこと悪く思わないでね。彼のおかげでもあるから」
「ふっ、奴にも借りができたな。今度礼を言っておく、お前はとりあえずここら一帯の平定に力を貸してくれ」
「お安い御用よ!」
私は官僚と軍吏を使って、すぐさま、ここいら周辺の治安を安定化するよう、有力者たちに声をかけネーザン派に取り込んだ。テットベリー本軍が攻略していることもあって、難地なのにオセロのように一気に勢力図が変わっていく。
不必要な戦闘はしなくていい。戦うだけが戦争じゃないのが難しいところだよね。
私たちテットベリー軍団は、目下、この地方で相手の輸送経路を断つための補給基地であったティンタジェル要塞を攻略することとなった。というのも現在、西部方面本軍はチチェスタ―地方で足止めを食らっていると報告があった。
そこへの兵站の重要地点を我々の司令官ジェラードの指揮のもと、港からの輸送路を切る。文字通り、チチェスタ―へ血を送り込む心臓部となっているティンタジェル要塞を。
私が考え込んでいた中、作戦会議室で士官たちのもとジェラードは今後の作戦行動を説明していくのだった。
「まず、我々の攻略目標はティンタジェル要塞だ。これは周知の事実だと思う。しかしながら、ここを落とすためには足がかりとなる東側に位置するイーストサセックスの出城を陥落させる必要がある。
ここいらは別に地形的に大した苦労もなく、我らの手中に収めることが出来るだろう。問題は南方からのティンタジェルの命綱となっている、コルチェスター方面だ。森に囲まれており、攻めるのに一苦労するだろう。
砲兵を運ぶには道が狭く、また、高低差が激しいため、地図と照らし合わせて、要地へと人力で大砲を設置しないとならない。想定以上に兵力と練度の高い兵を連れて行かなければならないだろう。
よって私が作戦士官と決めたことは、イーストサセックスをノーリッジ伯爵殿が指揮を執り、傭兵たちを連れて平定して、来るティンタジェル包囲戦のためにここストラトフォード要塞からの輸送路を確保してもらいたい。
同時に私は本軍を率いて、難関となっているコルチェスター地方の制圧に向かう。何か質問は?」
私は宰相であるため軍事には必要以外口を出さなかった。彼に応えたのは、元傭兵たちの有力者として麾下へと加わった、ダスティン大佐だった。
「司令官、おっしゃる意味は分かったが、何故、本軍をコルチェスターに向かわすのか。補給路を考えると、大軍を動かしやすい東部のイーストサセックスを本軍とし、南部はこの軍団に加わることを許された我々、もと傭兵たちに任せていただきたい。
我々は戦闘経験が豊富だ。司令官のご期待に沿えるかと思う」
「ん。もっともな意見だ。実はこのように分けたのは、ティンタジェル要塞を攻略を確実にするためだ。
戦略に基づき要塞包囲戦になる以上、相手が戦闘態勢を万全にする前に包囲を終えたい。とれるものなら有利な地点を制圧しておきたくもある。兵は神速を貴ぶらしい。行動にスピードが求められている。
相手側により動揺を与えるために、長年連携のとれている我がテットベリー本軍を困難なコルチェスター地方に向かわしたい。
対し軍団を分けて一個師団を指揮するに値する士官は、最近ウェストヘイムから来たばかりのノーリッジ伯爵だけであるが、かといって作戦通りコルチェスター地方を迅速に攻略するよう差配をするというのは無茶があるというもの。
テットベリーの兵卒たちと慣れ親しんだ私直々に指揮するのがより確実だろう。これがそんなに不思議なことか、ダスティン大佐?」
「いや、そうじゃねえ。ああ、そうじゃありません。しかし……。そうか、仕方ないか、我々元傭兵はノーリッジ伯爵に従います」
「それでいい、よろしく頼む」
と言って、作戦会議が終わった。このやり取りを眺めていた私はダスティンが口ごもったことに疑問を感じてしまう。廊下で彼を追っかけた私はその問いをぶつけてみた。
「ダスティン、テットベリー本軍がコルチェスター地方を攻略することの何が悪いの? この地方で転戦していた貴方しか知らない情報があるとでも」
「そうじゃねえ、宰相閣下。そうだな、なんだ、少し落ち着いた場所で話をしないか」
煮えきらない彼に「わかったわ」と返事をして、客間で話を聞くことにした。少し雑談をした後、ダスティンはわけを語り始めた。
「なんというか、俺の経験上、あそこ、コルチェスター地方を主に守っているのは、おそらく傭兵だ」
「傭兵? 魔族が傭兵に防備を任せているの」
「補足が必要みたいだな。ややこしいんだ、これは。コルチェスター地方の地形は特殊でね、ジェラードのあんちゃんが本軍として出向くは当然だとは思う。
とはいえ、あそこは特殊な地域なんだ。ああ、なんて言っていいか、まあアンタなら大丈夫だろう、宰相。あそこはなあ、王宮から差別を受けていた村落の集まりなんだ。ウェストヘイムのお貴族たちとは血筋の違う、別の人種が住んでいる。
そりゃ今までウェストヘイムのお偉いさんから煮え湯を飲まされた奴らだ。あそこでは反乱がおこることがしばしば。何せ気性が荒いからなあいつらは。
で、ウェストヘイム本城が落とされた聞いて、日ごろの恨みから真っ先に魔族側に付いたんだ。なら、この地方はそいつらに任せた方が統治に役立つと、魔王とやらは考えたのだろう」
なるほど、歴史的にウェストヘイムに恨みがある地方なんだ。言いたいことがなんとなくわかってきた。
「つまり、そこは地形が険しく、独立機運が高い地方だってあなたは言いたいわけね、ダスティン。力攻めで落としたら、統治に支障が出そうな地域だと。輸送路の確保ができなくなり、進軍が滞る可能性があると。
そこの防備を任されている傭兵は縁のものなの?」
「ああそうだ。オークニー男爵って言うが、奴の家は代々コルチェスター地方の統治を許されている一族だ。不遇を買ってる領民を養うため、領地持ちの貴族ながら傭兵業を代々営んでいる。
俺とはけっこう顔見知りだ。とういうわけでさ、できれば俺を南部方面軍に加えてくれないか。アンタにとって、この情報は必要だったろ。ジェラードのあんちゃんと違って」
「ふふ、貴方の読みは正しいわ。それを聞いたら、私はジェラードに貴方を加えるよう言ってる。とはいえ、うかつよ、ダスティン。
賢すぎる軍人は政治屋に嫌われるわよ。官僚とかは貴方にいい顔しないわ。組織の内に収まらない男は」
「肝に銘じておくよ。どうも世渡りというのが苦手らしい。軍人になった以上、そこら辺の指南頼むよ、宰相閣下」
「ええ、しごいてあげるわ、たっぷりとね」
と言って笑い合った。理由を私から聞いたジェラードは首を縦に振った。かといって、彼はダスティンの気づかいを心地いいと思わなかった。組織のトップ抜きで、周りの人間に人事異動を要望すればそりゃそうだ。
でも、私とジェラードは固い絆で結ばれている。事を荒立てることもなく、ダスティンを加えて、私たちテットベリー本軍はコルチェスター地域へと向かった。
ダスティンが口ごもったのは私自らが働くよう配慮したのだろう。そういうところは好みがわかれる人物だと思う。
私は男のわがままに慣れているから平気。事務員大変なんだよ、ほんと。
コルチェスター地方攻略の足掛かりになるい小さい城塞を攻略した後、この地方の有力者である、例のオークニー男爵に私とダスティンは会いに行った。
宰相の私が直接行くと角が立つため、一応ダスティンのお供としてあいさつというわけだ。オークニーは赤毛で、髪を短くきり、イヤリングをつけている。この地方の民族の風習なんだろう。他の人種と違うということがすぐに分かった。
ダスティンは彼に会うなり、握手しに行き、オークニーはそれに応え、ハグを交わす。
「ダスティン、十人刺しのダスティンか! 久しぶりだな!」
「その通り名はよしてくれ、貴族の連中が嫌がる」
「相手は貴族連中だったか、東部の。もうそれ以来会ってない気がするが、私の記憶は正しいか?」
「ああ、合ってるぜ。あの時は頼りになる仲間だったが、今度は敵同士ってわけか」
「傭兵稼業をやっていればそうなることもある。構わんさ、慣れている。しかし、お前はそれを嫌になったって聞いたぞ」
「ちょっとな、そろそろ落ち着こうかと思ってな。鶴の一声があって、今ではネーザンのへたれ野郎どもをしごいてる」
「ふん、お前がな。まあ、お前もいい年だしなダスティン。嫁をもらえ。子どもを作れ。帰る家があるのはいいぞ。一人が寂しくなる年頃だろ」
「そういうこった。残念ながら、ネーザンにはいい女が多いらしい。退屈はしなくて済みそうだ」
「ははは……」
「そっちはどうだ、順調か? ウォレム」
ウォレムはオークニー男爵の名だ。オークニーはこの地方にある名称で、それを家名にしているらしい。オークニーは少し苦々しく言った。
「魔王というやつはいい女だ。がな、ここの司令官はどうも堅苦しいじじいだ。窮屈な暮らしさ。魔族にも色々いるんだぞ、知ってたか、ダスティン」
「みたいだな、聞く限り」
「ところで私の知る限り、お前は独身だと聞いたが、どこかで子供を作ったのか、お前」
オークニー男爵は私の方に視線を合わす。私が微笑みを返すと、彼は少し戸惑っているようだ。ダスティンはうなずきながら私を紹介する。
「さっき言った、俺の鶴だ。ネーザン宰相、ミサ閣下だ」
「はじめまして、オークニー男爵。私はミサ・エチゴ・オブ・リーガン。ネーザンと統一国の宰相をしているわ」
「おいおいダスティン……!?」
「まあ話を聞け、ウォレム。話はそれからだ」
といったやり取りの後、私たちはテーブルを囲む。オークニー男爵は私を警戒ながら、なるべく威厳を持ちながらも、少しへりくだった言い方をする。
「わたくしは、この地方の領主をしているウォレム・シュレッダー・オブ・オークニーです。宰相閣下、お初にお目にかかります」
「はじめまして、ご丁寧なあいさつありがとう。でもここで魔族側についている傭兵もやっている……といった文言が抜けているわよ、オークニー男爵」
「これは手厳しい。宰相閣下は私を人間たちの裏切り者として糾弾しに来たのですかな?」
「まさか。ネーザンは自由を愛する国家。他人のやることに口出しするほど、私は暇ではないわ」
「自由を愛するね……。ウェストヘイムではなかなか聞かない言葉だ」
「この地方では特にその言葉は禁句となっていたそうじゃない。魔族が来るまで」
「なるほど、ある程度ご承知の上で私に会いに来た。違いますか、宰相閣下?」
「正しい言い方ね。私好みの言い方よ。貴方、ネーザンの女にモテそうだわ。もしかしたら、貴方独身かしら?」
「若いときに死に別れています。どうやら貴女は私を口説きに来たようだ」
「それも正しい言い方だわ。私好みでね。ねえ、貴方たち傭兵団はこの後どうするつもり?」
「どうするも何も、貴女の大事なネーザン国の兵と一線を交える覚悟ですが。……傭兵として」
「私がききたいのはもっと先の話。このまま魔族側について、このコルチェスター地方をどうやって守るのかしら。ぜひ聞きたいわ、参考意見として」
「さあ。しかし、魔王は私がここら一帯を治めることに賛成するとは申してくれましたよ」
「それは朗報ね、ここの領民は安心するでしょう。少しの間はね」
「どういった意味ですかな?」
「人間たちを敵に回して、そのあと衣食住が賄えるようになれるのかしら。貴方は良いでしょうけど、領民たちは裏切り者扱いよ。子々孫々まで」
「……この地方は先祖代々長らく私たちが住んできた。そろそろ自由になってもいい頃でしょう」
「それはウェストヘイムから? 統一国から?」
「おっしゃる意味がわかりかねます」
「貴方が独身なら縁談を持ってきたのよ。ネーザン貴族とのね……!」
「っ、なっ……!? そんなことをすれば、ウェストヘイムの貴族たちを敵に回すことになるでしょう! 御冗談もほどほどに」
「私はこんな時に冗談を言うほど軽薄ではないわ。貴方が望むならこのまま自由でいてもいいのよ、ネーザン国は口を出さないし、むしろ交易を再開してもいい。だってネーザン貴族と縁続きになるもの。
こんな戦争の時代、未亡人はいっぱいいるわ、ネーザンに。できれば、貴方が気の利いた言葉で慰めてくれると私は助かるわ」
「ふっ、はっは、あっは、ははは。おい、ダスティン。このネーザン宰相はすごいな。大戦争のうちに、ここコルチェスター地方を抱き込みたいらしい」
その言葉にダスティンは「なっ、鶴だろ。しかもとびっきりの良い女だ。勝利の女神らしいぞ」と返したことにオークニー男爵は、
「そうだな、確かに鶴だな。ただし羽の色は黒いらしい」
などとおどけて言うので私は笑みを浮かべた。
「どうやら私をお気に召していただいて結構なことだわ。で、返事を聞かせてもらえないかしら?」
「傭兵である以上、もらった金の分は働かないといけない。そういう生業ですから。ただし……」
「ただし?」
「もらった金以上のことは、何も面倒を見る必要はない。それが傭兵ですからな」
「良かったわ、商談成立ね」
「ああ、良い取引ができました。感謝いたします。宰相閣下」
「そうね、ははは……」
「ははは……」
と笑い声が部屋中に響く。調略成功。難地であるこのコルチェスター地方を楽に攻略する下準備が整った。幸先良くて南無阿弥陀仏を唱えたくなったわ。
ジェラードに報告すると彼は、「信用できるのか?」と聞いてきたので私はこう答えた。
「かなりいい方向に向かうと思う。とはいえ、司令官は貴方よ、ジェラード。どうするかはあなたが判断して。もし、オークニー男爵が上手く使えそうにないカードなら、わざわざ持っておく必要はないわ」
「それは助かる。戦争はまさかの連続だ。指揮権があるものに委ねると言ったお前の判断が正しい。さて、どうなるかな……」
結果だけを言うと、私たちはどんどんとコルチェスター地方を攻略することに成功した。というのも、オークニー男爵が率いていた傭兵が戦いに負けそうになるとさっさと持ち場を放棄していく。
こういうのは私の世界の傭兵でもよくあったことらしい。命を懸けるほどのない戦いなら、傭兵たちは勝手に戦闘中止とかざらだ。
ルネッサンス期のイタリア諸国が傭兵に頼りっきりの軍事状況を嘆いて、常備軍を設立するようマキャベリが君主論を書いたのはそのためだ。当時としては画期的な思想で、反発も大きかったのかカトリックからいらぬ風評被害を浴びている本だ。
内容を見てみればわかるが、リーダーは現実的に判断しろっていう内容で、彼の理想論とか思想はあまり重要ではない。元官僚のマキャベリから見て、厳然としているリーダーが君臨していれば下のものは働きやすいと考えたのだろう。
これをそっくりそのまま現実に行ってしまえば、いろいろと問題が起こってしまう本ではあるという補足を私はするけどね。
ともあれ、予想外の勝利の連続にジェラードは唖然としていた。
「まさか、これほど容易にコルチェスター地方を攻略できたとは……!」
「何か問題でも?」
「問題がなさすぎるのが問題だ。想定以上より早くティンタジェル要塞に迫っている。ナターシャは近くにいるか?」
と、ロリータ伯爵を探し始めたので、兵が彼女を連れてきた。
「なんですの? ジェラード司令官。私はアーノルドをしばくので忙しいんですわ」
「それはいいが、地図を作り直すつもりでね、君の意見も聞きたかったのだ」
「はい? この大陸の地図は専門外ですわ」
「いや、砲兵の配置とかを考えるのに君の意見を聞きたい。ティンタジェル要塞を攻略するにあたって、押さえられる要地は押さえておきたい」
「ああ、なるほど。了解ですわ」
ジェラードは彼女と軍事的な話をした後、終わったようなので、オークニー男爵のことを尋ねてみた。
「どう思う? オークニー男爵のこと」
「冷静すぎるといった感想だ。ここまでドライな判断ができるなら、ぜひ使いこなしたい人物だ。ミサ、彼をこちらの味方に付けるよう説得できないか。ティンタジェル要塞攻略のアドバイスが欲しい」
「そう来ると思ったわ、ダスティンのこと悪く思わないでね。彼のおかげでもあるから」
「ふっ、奴にも借りができたな。今度礼を言っておく、お前はとりあえずここら一帯の平定に力を貸してくれ」
「お安い御用よ!」
私は官僚と軍吏を使って、すぐさま、ここいら周辺の治安を安定化するよう、有力者たちに声をかけネーザン派に取り込んだ。テットベリー本軍が攻略していることもあって、難地なのにオセロのように一気に勢力図が変わっていく。
不必要な戦闘はしなくていい。戦うだけが戦争じゃないのが難しいところだよね。
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