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魔族大戦
第百十二話 ワックスリバー降伏勧告②
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私は、レクス隊たちと一緒にワックスリバー王城グリンランドの城下街に侵入することに成功した。変装して街を歩く中、周りを見るとまだ、魔王軍は到着してないようだが、籠城の準備をしていたため、ピリピリとした空気感で、街の人々はおろおろしていた。
私たちは調略した、有力者の家のもとに身を寄せて、動向ををうかがうことにした。ここはレクス隊の仕事だ、彼らは特殊任務を数々こなしただけあって手慣れている。しばらく時間がたつと隊員が静かに報告しに来て、レクスは私に言った。
「どうやら、魔族軍の先兵がついたようだ、ミサ、どうする?」
「まず、この城の貴族たちと接触したいわ、連絡のやり取りをしてくれない?」
「わかった、レミィ、そっちのほうはお前が指揮をとれ」
「了解だ。レクス」
そう言って、レクスはレミィに命令をした。そして隊員が行動する。しばらくすると、レミィは私に報告をした。
「城内の者と接触することに成功した。こちらの準備が整い次第、潜入の手引きをするそうだ」
「わかった。魔族だってばれないように」
「もちろんだ」
「レクス、魔族軍の包囲はどう?」
「ずいぶん手早いな、一日かかると思ったが、どうやら、攻城兵器を見せるようにすることで、相手を委縮させようとしている。で、補給施設は後回しのようだ」
「こっちが早めに行動できるために配慮してくれているようね。時間がかかると、私たちの潜入がばれるし」
「みたいだな。どうする?」
「攻城兵器がでそろって、あらかた包囲したなら、突入するわ。そのときはよろしく」
「了解だ」
とレクスと打ち合わせをした。そうして時間が過ぎると、朝になり、レミィが起こしてくれた。
「おはよ、ミサ」
「ありがとうレミィ。手筈は万端?」
「ええ、もちろん、どれもいい感触だわ」
「そうそれはよかった」
そのなか、レクスが私のところにやってきて言った。
「どうやら、包囲があらかた終了したらしい。いくか?」
「待ってたわよ、準備はオーケイ、でしょレミィ?」
「バッチシ!」
私たちはみんなが完全に起きる前に、手引き通り、城に侵入することに成功した。そして、ある程度城の中を探索し、途中見つかりそうになるものの、慎重に行く。続いて、別に工作した、貴族たちの使いをどんどん伝っていって、王がいるという、謁見室に侵入することに成功した。
ワックスリバー王は魔族が侵入していることに、たいそう驚き、周りの騎士にすぐさま警戒態勢を命じながら動揺を隠せない。
「まさか、魔族がこの城に侵入するとは……いったい、警備はどうなった!?」
それにレクスは平然とした態度で言った。
「ふっ、まるでかかしのようだな、ここの騎士たちは」
「なんだと!?」
その言葉に騎士たちが剣を抜いた。それに向かって、私は大声で返す。
「静まれい、ワックスリバーの勇敢なる騎士たちよ! 私は、魔王様の元、使者として遣わされた。すみやかに剣を引け!」
「使者だと……!?」
その瞬間私はフードをとり、顔を騎士たちの下にさらした。おのおのが慌てふためき、つぶやいた。
「こ、こども……!?」
「いや、ちがう! あのブラックサファイヤの瞳。怜悧なる顔つき。そのたたずまい。あの者はもしや……」
「まさか、統一宰相、ミサ・エチゴ・オブ・リーガン!?」
私が認識できたようで、静かな口調で、ワックスリバー王に言った。
「お久しぶりです。ワックスリバー王陛下」
「……」
王は無言だった。そして、冷たく、騎士たちに言った。
「……ミサ殿はいま行方不明だ。これはおよそ、魔王軍の計略だ。皆の者、この者どもを斬って捨てよ!」
英明なワックスリバー王が、私の目的に感づいて、騎士たちに命令した。だが、周りは混乱をするばかりで、動こうとしない。それを確かめた後、私は遠回しに冷たく言った。
「ずいぶんと、ご挨拶ですね、陛下。まさか私の顔をお見忘れとは」
「委細存ぜぬ」
「なるほど、弱りましたね。我ら、大陸大同盟で、ともに、このヴェスペリアのために立ち上がったというのに、いまはどうやらお心が定まらぬ様子」
「何が言いたい?」
「陛下なら、この魔王軍の軍勢を見て、敗北が確実だとご理解できるはず。すでに魔王は、ウェストヘイムにおり、現在このワックスリバー国境付近で待機中。準備が出来次第、このグリンランドに攻め込む手はず。
騎士たちの無駄死にがお望みでしょうか?」
「……聞く耳を持たん」
「ではご存じでしょうか。先のウェストヘイム王城、フェニックスヒルの最後を」
「!?」
「わたくしはウェストヘイムの援軍として、王城に立てこもったところ、あっさり魔族軍に城を抜かれ、落城の憂き目にあいました。現在、魔王様のとりなしで、私はこのようにぴんぴんしておりますが、あのウェストヘイム国王陛下と、王妃殿下がどうなったか。
ここに集まる、お歴々の方々もよくご存じのはず」
「……これ以上無駄な討論は無用だ。構わん斬れ!」
あたりが殺気立つ瞬間、私は声を荒げて、威風堂々と言った。
「静まれい! われが、ネーザン王家に連なる、先の宰相と存じてのふるまいか! この王家の剣を見よ! 控えよ!」
その時切り札であった、ウェリントンからもらっていた、王家のみが手にできる獅子の紋章の守りの剣を皆に見せる。瞬間辺りがざわめき立ち、騎士たちは剣をしまった。
「これは……まさしくネーザンの獅子の紋章! これを持つ者はネーザン王家の一員と認められた証、貴女はまちがいなく、統一宰相、ミサ殿下……!」
ワックスリバー王は私の身分が確定したところで、ため息をつき、そしてあきらめたように私に言った。
「久しぶりだな、ミサ殿」
「ええ、さっき知らないふりをされましたが、全然私気にしませんから。まあ、そういう意地悪する人、嫌いです」
「……すまぬ。だが、私は……」
「陛下、お話しをしましょ、じっくりと……」
私たちは正式に対面を果たし交渉に入れるようになった。でも、私の策略はこれからだけど……。
私たちは調略した、有力者の家のもとに身を寄せて、動向ををうかがうことにした。ここはレクス隊の仕事だ、彼らは特殊任務を数々こなしただけあって手慣れている。しばらく時間がたつと隊員が静かに報告しに来て、レクスは私に言った。
「どうやら、魔族軍の先兵がついたようだ、ミサ、どうする?」
「まず、この城の貴族たちと接触したいわ、連絡のやり取りをしてくれない?」
「わかった、レミィ、そっちのほうはお前が指揮をとれ」
「了解だ。レクス」
そう言って、レクスはレミィに命令をした。そして隊員が行動する。しばらくすると、レミィは私に報告をした。
「城内の者と接触することに成功した。こちらの準備が整い次第、潜入の手引きをするそうだ」
「わかった。魔族だってばれないように」
「もちろんだ」
「レクス、魔族軍の包囲はどう?」
「ずいぶん手早いな、一日かかると思ったが、どうやら、攻城兵器を見せるようにすることで、相手を委縮させようとしている。で、補給施設は後回しのようだ」
「こっちが早めに行動できるために配慮してくれているようね。時間がかかると、私たちの潜入がばれるし」
「みたいだな。どうする?」
「攻城兵器がでそろって、あらかた包囲したなら、突入するわ。そのときはよろしく」
「了解だ」
とレクスと打ち合わせをした。そうして時間が過ぎると、朝になり、レミィが起こしてくれた。
「おはよ、ミサ」
「ありがとうレミィ。手筈は万端?」
「ええ、もちろん、どれもいい感触だわ」
「そうそれはよかった」
そのなか、レクスが私のところにやってきて言った。
「どうやら、包囲があらかた終了したらしい。いくか?」
「待ってたわよ、準備はオーケイ、でしょレミィ?」
「バッチシ!」
私たちはみんなが完全に起きる前に、手引き通り、城に侵入することに成功した。そして、ある程度城の中を探索し、途中見つかりそうになるものの、慎重に行く。続いて、別に工作した、貴族たちの使いをどんどん伝っていって、王がいるという、謁見室に侵入することに成功した。
ワックスリバー王は魔族が侵入していることに、たいそう驚き、周りの騎士にすぐさま警戒態勢を命じながら動揺を隠せない。
「まさか、魔族がこの城に侵入するとは……いったい、警備はどうなった!?」
それにレクスは平然とした態度で言った。
「ふっ、まるでかかしのようだな、ここの騎士たちは」
「なんだと!?」
その言葉に騎士たちが剣を抜いた。それに向かって、私は大声で返す。
「静まれい、ワックスリバーの勇敢なる騎士たちよ! 私は、魔王様の元、使者として遣わされた。すみやかに剣を引け!」
「使者だと……!?」
その瞬間私はフードをとり、顔を騎士たちの下にさらした。おのおのが慌てふためき、つぶやいた。
「こ、こども……!?」
「いや、ちがう! あのブラックサファイヤの瞳。怜悧なる顔つき。そのたたずまい。あの者はもしや……」
「まさか、統一宰相、ミサ・エチゴ・オブ・リーガン!?」
私が認識できたようで、静かな口調で、ワックスリバー王に言った。
「お久しぶりです。ワックスリバー王陛下」
「……」
王は無言だった。そして、冷たく、騎士たちに言った。
「……ミサ殿はいま行方不明だ。これはおよそ、魔王軍の計略だ。皆の者、この者どもを斬って捨てよ!」
英明なワックスリバー王が、私の目的に感づいて、騎士たちに命令した。だが、周りは混乱をするばかりで、動こうとしない。それを確かめた後、私は遠回しに冷たく言った。
「ずいぶんと、ご挨拶ですね、陛下。まさか私の顔をお見忘れとは」
「委細存ぜぬ」
「なるほど、弱りましたね。我ら、大陸大同盟で、ともに、このヴェスペリアのために立ち上がったというのに、いまはどうやらお心が定まらぬ様子」
「何が言いたい?」
「陛下なら、この魔王軍の軍勢を見て、敗北が確実だとご理解できるはず。すでに魔王は、ウェストヘイムにおり、現在このワックスリバー国境付近で待機中。準備が出来次第、このグリンランドに攻め込む手はず。
騎士たちの無駄死にがお望みでしょうか?」
「……聞く耳を持たん」
「ではご存じでしょうか。先のウェストヘイム王城、フェニックスヒルの最後を」
「!?」
「わたくしはウェストヘイムの援軍として、王城に立てこもったところ、あっさり魔族軍に城を抜かれ、落城の憂き目にあいました。現在、魔王様のとりなしで、私はこのようにぴんぴんしておりますが、あのウェストヘイム国王陛下と、王妃殿下がどうなったか。
ここに集まる、お歴々の方々もよくご存じのはず」
「……これ以上無駄な討論は無用だ。構わん斬れ!」
あたりが殺気立つ瞬間、私は声を荒げて、威風堂々と言った。
「静まれい! われが、ネーザン王家に連なる、先の宰相と存じてのふるまいか! この王家の剣を見よ! 控えよ!」
その時切り札であった、ウェリントンからもらっていた、王家のみが手にできる獅子の紋章の守りの剣を皆に見せる。瞬間辺りがざわめき立ち、騎士たちは剣をしまった。
「これは……まさしくネーザンの獅子の紋章! これを持つ者はネーザン王家の一員と認められた証、貴女はまちがいなく、統一宰相、ミサ殿下……!」
ワックスリバー王は私の身分が確定したところで、ため息をつき、そしてあきらめたように私に言った。
「久しぶりだな、ミサ殿」
「ええ、さっき知らないふりをされましたが、全然私気にしませんから。まあ、そういう意地悪する人、嫌いです」
「……すまぬ。だが、私は……」
「陛下、お話しをしましょ、じっくりと……」
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