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魔族大戦
第百六話 ハープの音
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昨日、エターリアと、ミリシアの関係にびっくりした。でも、私は黙っていた。だって、言えるわけないじゃん、プライバシーの侵害だし。ということで、私はいつも通り、エターリアとミリシアとともに紅茶を飲んでいた。優雅なひと時を楽しんでいると、エターリアはミリシアに言った。
「せっかくだし、何か音楽を奏でてくれないか?」
「ええ、いいわ。いま、母子との優しいひと時って感じね、そう、この曲とかどお?」
そうミリシアは言って、調弦だろう、ハープの音を確かめようとすると、ぴきーんと鼓膜に刺さる高い音をして、弦がちぎれた。うわー耳が痛―い!! 思わずミリシアは「あ、やば……」とつぶやく。私が「どうしたの?」と聞くと、ミリシアは困った風に言った。
「うん、ハープってね、意外と弦が切れるのよ。特に高い音は細い弦だし、ぴんと張っているから。夏とか、気温や湿度の関係で、わりとこういうことよくあるのよ、でも困ったわ」
「困ったって何が?」
「ここウェストヘイムは暑いでしょ、南方だから。だから最近よく弦が切れちゃって、予備の弦がもうないのよ」
「え、ど、どうするんだ!?」
とミリシアの言葉にエターリアが戸惑った。それにため息をつきながら、頬に手を当てるミリシアが、憂鬱げな美人で綺麗。そして、彼女はあきらめた風に言った。
「というのもね、ハープって種類によって、張る弦が違うの。このハープはあっちの大陸で仕入れたものだから、ここら辺の弦を使うと、音が変わっちゃうかもしれないし、ほんと、どうしたものか……」
「ちょっとまって、私の睡眠音楽が聴けなくなるじゃないか! 最近忙しくて、寝つきが悪いのに、それは困る! 何とかならないかミリシア!?」
エターリアはかなり動揺してる。睡眠は大切だからね。眠らないと、動けない。私は考えを巡らせた後、ミリシアに尋ねてみた。
「ねえ、ナターシャに相談してみない? 彼女なら、素材とか、知識とか豊富だし、何か手助けになるかも」
「ああ、いいアイディアだわ、ちょっと、一緒に行きましょうか、ミサ」
そんなこんなで、私とミリシアはロリータ伯爵であるナターシャを訪ねた。
「あら、ミリシア様、ミサ。ごきげんよう」
「今日も暇そうだね、ナターシャ」
「誰がじゃ! わたくしは日々研究にはげみ、時に休憩をし、この世界のありようを考えていたのですわ」
「だったら暇じゃん」
「違うゆうとるやろ! 話聞いとったんか! まあいいですわ、今日は何の御用かしら」
「今日はね、私があなたに用事があるの」
と、ミリシアがナターシャにハープを見せた。ナターシャは興味深く細かく観察して、感想を述べた。
「ずいぶん使い込んでいらっしゃるけど、さすがミリシア様、手入れが行き届いていますわ。でも弦が一本切れてらっしゃいますね」
「ええ、そうなんだけど、これあっちの大陸産だから、こちらに合う弦がないか調べているの、予備がなくって」
「それは大変ですわ、ちょっと調べてみますわね」
とナターシャは言い、顕微鏡で細かに調べて、いろいろ機材を使って、弦を調べていた。一時間ぐらいたった後、調査が済んだようで、彼女は言った。
「ええ、このハープの弦は特殊で、この大陸では珍しいタイプですわね。なかなか手に入れるのは難しい素材をしてますわ」
「そう、残念ね、困ったわ」
とミリシアは頬に手を当てる。それにたいして、ナターシャは明るく言った。
「でも心配なさらないで、幸運でしたわ。この地方の楽器職人なら、似た弦を持っているでしょう」
「そう、それは良かったわ」
「ちょっと待ってナターシャなんでそんなことわかるの?」
やけに詳しいので、私が不思議に思って聞いた。
「まあ、ミサ、私は天才学者で、天才科学者のロリータ伯爵ですのよ、研究には費用が必要、素材も必要、日々熱心に学問にはげむ中、世界のために、私の技術を皆様に役立てて、はば広い知識を探求しているのですわ」
「つまり研究成果や発明品を売って、商売をしているから、顔が広いと」
「ちょっと、もうすこし、雅な言い方をなさいな。まあ、いいですわ。この王城の郊外にありますので、だれか護衛をつけて、私がミリシア様をご案内いたしましょう」
そのとき、アッーッ! といいことを思いついて、魔王ちゃんに護衛役にしてほしい人物を願い出た。魔王ちゃんである、エターリアは少し渋い顔したけど、ミリシアのためだから、仕方ないかということで承諾してくれた。
「レミィ! 久しぶり! 元気してた?」
「ミサ、大丈夫だった? 私は元気だったよ。魔王様は謹慎中の私たちでも、よく計らっていただいていたから」
「そうそれは良かった!」
私はレミィを護衛につけるようエターリアに言ったのだ。彼女らレクス隊は軍律違反で謹慎処分だし、かといって、何の功績もなしに軍に復帰するというのは、周りから理解を得るのは難しい。だから、私はレミィを護衛役に願い出て、彼女らの処分を解除できるよう、こういう雑務が得意な、レミィを呼んだ。
レミィを見た、ロリータ伯爵は目を細めて言った。
「あら、護衛は女ですの? 一人では心配ですわ」
「私はこうみえても、ヴェルドー軍の特殊任務についていた部隊の副隊長なんだがな。ちびっこ」
「ちび言うな! 幼いと言え!」
「なんだこいつ」
それをほほえましく見ていた。ミリシアは言った。
「こう見えて、この娘、ナターシャは五魔貴族の一人、女魔伯の位を持っているのよ、たしか、レミィちゃん」
「み、ミリシア様!? お久しぶりでございます。私、小さい時から遠くから眺めて尊敬しておりました。すばらしい、音楽を奏でていらして……。えっ、このちび、五魔貴族なのですか?」
「だから、ちびいうな! 幼い言え!」
「でもちびだろ、ミサより小さい」
「むー」
「むー」
とツッコんだナターシャにレミィはにらみ合った。なんか二人可愛いなあ。いいなあこの風景。可愛い女の子に囲まれ、美人のミリシア様が微笑んでいて、私ハーレム状態だー! やっほーい!
そんななか、街中でヴェルドー軍が出征するのに鉢合わせをしてしまった。レミィが鋭くにらむ中、ヴェルドーは悠々とライオンに乗って、出立をしようとしていた。町中恐怖で、住民が硬直する中、一人の小さな少年が、ヴェルドーに駆け寄る。
私が何だと思って、目を凝らしていると、なんとその少年はナイフを持っていた。ちょ、ちょっとまって、少年、無謀すぎだよ、あぶない!
ヴェルドーはそれをじっくり見ながら、よけるそぶりなく、そのままナイフを足に受けた。ミリシアが、あぜんとして、それを見て、
「ヴェルドー……」
とつぶやいた。ヴェルドーは血の付いたナイフを持った少年の腕を持ち上げて、言った。
「ふん、つまらぬことを。ガキが、こんなちっぽけなナイフで俺が死ぬと思ったか!」
「くそ! くそ!」
「なんだ、ずいぶんと勇ましいじゃないか、この俺がヴェルドーだと知っての事か」
「おまえは! おまえは、僕のお兄ちゃんを殺した! お兄ちゃんはこの城の兵士だった! でも、お前のせいで、お兄ちゃんが死んだ! お前は仇だ!!」
「兄……」
その言葉に微妙に表情を崩したヴェルドー、そして少年にこう言った。
「ナイフを刺すなら、腹にしろ。腹を刺せば出血が多く内蔵に届きやすい。こんなちっぽけなナイフでも、時間はかかるが、大人の男でも死ぬ」
「なっ……!?」
私はびっくりした。その言葉はミリシアとともに発せられた。そして、ヴェルドーの周りの兵士に少年は取り押さえられると、ヴェルドーは兵士に言った。
「こいつはいい目をしている。いずれ、面倒を見れば役立つこともあるかもしれん。貴様らがしごいてやれ!」
私たちはびっくりして、状況が理解できなかった。レミィは、
「な、何を言ってるんだヴェルドー、お前を刺した子どもだぞ!?」
といい、ナターシャは、
「子供がナイフを持つなんて……」
といい、ミリシアは悲しげに言った。
「まだ、貴方は縛られているのね……」
私はミリシアのことが気になったが、ヴェルドー軍は少年を連れて去って行った。東部戦線に行くのだろう。それを見送り、恐怖が去ったと、住民たちは喜んだ。私たちは気を取り直して、楽器職人のところに行った。
道中、盗賊に襲われそうになったが、レミィが、魔王軍にあだなすのか! というと、ふるえあがって、逃げて行った。
楽器屋に到着すると、ロリータ伯爵は言った。
「あら、ご主人ひさしぶり、お元気かしら?」
「おお、嬢ちゃん。おかげで商売繁盛だよ。嬢ちゃんが作った、眼鏡で、字も見えるようになったし、年寄りにもってこいじゃ」
「まあ、うれしいわ、ところで、貴女に仕事の依頼がありますの」
「なんじゃね?」
話がトントン拍子に進んだので、ミリシアは言った。
「ご主人、このハープの弦を探しているのですが、この店で何とかならないでしょうか?」
「どれどれ……」
ハープを見た店の主人は言った。
「ほう! 珍しい素材のハープじゃ。だがこれは、プリンストン産の弦でも、代用可能じゃの、ちょっとまっておれ……」
といって、ハープの弦を持ってきて、それを張ってくれた。ミリシアが調律をして、音を調べると、満足げに笑った。
「ええ、素晴らしいお仕事ですわ、ご主人。ありがとうございました」
「なんのなんの、いいハープじゃの、少し弾いてくれるかの?」
「ええ、わかりましたわ」
と練習がてら、ミリシアはハープを奏でた。美しい音色にレミィは感激し、ロリータ伯爵も音に酔いしれた。私は、ミリシアに、
「すごーい! これで元通りね!」
「ええ、ありがとう、ミサ。貴女の機転で、うまくいったわ。一時はどうなるかと思ったけど。ナターシャもありがとう、レミィも」
「もちろんですわ!」
「当然です、ミリシア様!」
と二人も一緒に喜んだ。それで帰りは四人一緒に、最近できたカフェで、女子会を開いた。おだやかなひとときで、女の子に囲まれて、私、し・あ・わ・せ。
「せっかくだし、何か音楽を奏でてくれないか?」
「ええ、いいわ。いま、母子との優しいひと時って感じね、そう、この曲とかどお?」
そうミリシアは言って、調弦だろう、ハープの音を確かめようとすると、ぴきーんと鼓膜に刺さる高い音をして、弦がちぎれた。うわー耳が痛―い!! 思わずミリシアは「あ、やば……」とつぶやく。私が「どうしたの?」と聞くと、ミリシアは困った風に言った。
「うん、ハープってね、意外と弦が切れるのよ。特に高い音は細い弦だし、ぴんと張っているから。夏とか、気温や湿度の関係で、わりとこういうことよくあるのよ、でも困ったわ」
「困ったって何が?」
「ここウェストヘイムは暑いでしょ、南方だから。だから最近よく弦が切れちゃって、予備の弦がもうないのよ」
「え、ど、どうするんだ!?」
とミリシアの言葉にエターリアが戸惑った。それにため息をつきながら、頬に手を当てるミリシアが、憂鬱げな美人で綺麗。そして、彼女はあきらめた風に言った。
「というのもね、ハープって種類によって、張る弦が違うの。このハープはあっちの大陸で仕入れたものだから、ここら辺の弦を使うと、音が変わっちゃうかもしれないし、ほんと、どうしたものか……」
「ちょっとまって、私の睡眠音楽が聴けなくなるじゃないか! 最近忙しくて、寝つきが悪いのに、それは困る! 何とかならないかミリシア!?」
エターリアはかなり動揺してる。睡眠は大切だからね。眠らないと、動けない。私は考えを巡らせた後、ミリシアに尋ねてみた。
「ねえ、ナターシャに相談してみない? 彼女なら、素材とか、知識とか豊富だし、何か手助けになるかも」
「ああ、いいアイディアだわ、ちょっと、一緒に行きましょうか、ミサ」
そんなこんなで、私とミリシアはロリータ伯爵であるナターシャを訪ねた。
「あら、ミリシア様、ミサ。ごきげんよう」
「今日も暇そうだね、ナターシャ」
「誰がじゃ! わたくしは日々研究にはげみ、時に休憩をし、この世界のありようを考えていたのですわ」
「だったら暇じゃん」
「違うゆうとるやろ! 話聞いとったんか! まあいいですわ、今日は何の御用かしら」
「今日はね、私があなたに用事があるの」
と、ミリシアがナターシャにハープを見せた。ナターシャは興味深く細かく観察して、感想を述べた。
「ずいぶん使い込んでいらっしゃるけど、さすがミリシア様、手入れが行き届いていますわ。でも弦が一本切れてらっしゃいますね」
「ええ、そうなんだけど、これあっちの大陸産だから、こちらに合う弦がないか調べているの、予備がなくって」
「それは大変ですわ、ちょっと調べてみますわね」
とナターシャは言い、顕微鏡で細かに調べて、いろいろ機材を使って、弦を調べていた。一時間ぐらいたった後、調査が済んだようで、彼女は言った。
「ええ、このハープの弦は特殊で、この大陸では珍しいタイプですわね。なかなか手に入れるのは難しい素材をしてますわ」
「そう、残念ね、困ったわ」
とミリシアは頬に手を当てる。それにたいして、ナターシャは明るく言った。
「でも心配なさらないで、幸運でしたわ。この地方の楽器職人なら、似た弦を持っているでしょう」
「そう、それは良かったわ」
「ちょっと待ってナターシャなんでそんなことわかるの?」
やけに詳しいので、私が不思議に思って聞いた。
「まあ、ミサ、私は天才学者で、天才科学者のロリータ伯爵ですのよ、研究には費用が必要、素材も必要、日々熱心に学問にはげむ中、世界のために、私の技術を皆様に役立てて、はば広い知識を探求しているのですわ」
「つまり研究成果や発明品を売って、商売をしているから、顔が広いと」
「ちょっと、もうすこし、雅な言い方をなさいな。まあ、いいですわ。この王城の郊外にありますので、だれか護衛をつけて、私がミリシア様をご案内いたしましょう」
そのとき、アッーッ! といいことを思いついて、魔王ちゃんに護衛役にしてほしい人物を願い出た。魔王ちゃんである、エターリアは少し渋い顔したけど、ミリシアのためだから、仕方ないかということで承諾してくれた。
「レミィ! 久しぶり! 元気してた?」
「ミサ、大丈夫だった? 私は元気だったよ。魔王様は謹慎中の私たちでも、よく計らっていただいていたから」
「そうそれは良かった!」
私はレミィを護衛につけるようエターリアに言ったのだ。彼女らレクス隊は軍律違反で謹慎処分だし、かといって、何の功績もなしに軍に復帰するというのは、周りから理解を得るのは難しい。だから、私はレミィを護衛役に願い出て、彼女らの処分を解除できるよう、こういう雑務が得意な、レミィを呼んだ。
レミィを見た、ロリータ伯爵は目を細めて言った。
「あら、護衛は女ですの? 一人では心配ですわ」
「私はこうみえても、ヴェルドー軍の特殊任務についていた部隊の副隊長なんだがな。ちびっこ」
「ちび言うな! 幼いと言え!」
「なんだこいつ」
それをほほえましく見ていた。ミリシアは言った。
「こう見えて、この娘、ナターシャは五魔貴族の一人、女魔伯の位を持っているのよ、たしか、レミィちゃん」
「み、ミリシア様!? お久しぶりでございます。私、小さい時から遠くから眺めて尊敬しておりました。すばらしい、音楽を奏でていらして……。えっ、このちび、五魔貴族なのですか?」
「だから、ちびいうな! 幼い言え!」
「でもちびだろ、ミサより小さい」
「むー」
「むー」
とツッコんだナターシャにレミィはにらみ合った。なんか二人可愛いなあ。いいなあこの風景。可愛い女の子に囲まれ、美人のミリシア様が微笑んでいて、私ハーレム状態だー! やっほーい!
そんななか、街中でヴェルドー軍が出征するのに鉢合わせをしてしまった。レミィが鋭くにらむ中、ヴェルドーは悠々とライオンに乗って、出立をしようとしていた。町中恐怖で、住民が硬直する中、一人の小さな少年が、ヴェルドーに駆け寄る。
私が何だと思って、目を凝らしていると、なんとその少年はナイフを持っていた。ちょ、ちょっとまって、少年、無謀すぎだよ、あぶない!
ヴェルドーはそれをじっくり見ながら、よけるそぶりなく、そのままナイフを足に受けた。ミリシアが、あぜんとして、それを見て、
「ヴェルドー……」
とつぶやいた。ヴェルドーは血の付いたナイフを持った少年の腕を持ち上げて、言った。
「ふん、つまらぬことを。ガキが、こんなちっぽけなナイフで俺が死ぬと思ったか!」
「くそ! くそ!」
「なんだ、ずいぶんと勇ましいじゃないか、この俺がヴェルドーだと知っての事か」
「おまえは! おまえは、僕のお兄ちゃんを殺した! お兄ちゃんはこの城の兵士だった! でも、お前のせいで、お兄ちゃんが死んだ! お前は仇だ!!」
「兄……」
その言葉に微妙に表情を崩したヴェルドー、そして少年にこう言った。
「ナイフを刺すなら、腹にしろ。腹を刺せば出血が多く内蔵に届きやすい。こんなちっぽけなナイフでも、時間はかかるが、大人の男でも死ぬ」
「なっ……!?」
私はびっくりした。その言葉はミリシアとともに発せられた。そして、ヴェルドーの周りの兵士に少年は取り押さえられると、ヴェルドーは兵士に言った。
「こいつはいい目をしている。いずれ、面倒を見れば役立つこともあるかもしれん。貴様らがしごいてやれ!」
私たちはびっくりして、状況が理解できなかった。レミィは、
「な、何を言ってるんだヴェルドー、お前を刺した子どもだぞ!?」
といい、ナターシャは、
「子供がナイフを持つなんて……」
といい、ミリシアは悲しげに言った。
「まだ、貴方は縛られているのね……」
私はミリシアのことが気になったが、ヴェルドー軍は少年を連れて去って行った。東部戦線に行くのだろう。それを見送り、恐怖が去ったと、住民たちは喜んだ。私たちは気を取り直して、楽器職人のところに行った。
道中、盗賊に襲われそうになったが、レミィが、魔王軍にあだなすのか! というと、ふるえあがって、逃げて行った。
楽器屋に到着すると、ロリータ伯爵は言った。
「あら、ご主人ひさしぶり、お元気かしら?」
「おお、嬢ちゃん。おかげで商売繁盛だよ。嬢ちゃんが作った、眼鏡で、字も見えるようになったし、年寄りにもってこいじゃ」
「まあ、うれしいわ、ところで、貴女に仕事の依頼がありますの」
「なんじゃね?」
話がトントン拍子に進んだので、ミリシアは言った。
「ご主人、このハープの弦を探しているのですが、この店で何とかならないでしょうか?」
「どれどれ……」
ハープを見た店の主人は言った。
「ほう! 珍しい素材のハープじゃ。だがこれは、プリンストン産の弦でも、代用可能じゃの、ちょっとまっておれ……」
といって、ハープの弦を持ってきて、それを張ってくれた。ミリシアが調律をして、音を調べると、満足げに笑った。
「ええ、素晴らしいお仕事ですわ、ご主人。ありがとうございました」
「なんのなんの、いいハープじゃの、少し弾いてくれるかの?」
「ええ、わかりましたわ」
と練習がてら、ミリシアはハープを奏でた。美しい音色にレミィは感激し、ロリータ伯爵も音に酔いしれた。私は、ミリシアに、
「すごーい! これで元通りね!」
「ええ、ありがとう、ミサ。貴女の機転で、うまくいったわ。一時はどうなるかと思ったけど。ナターシャもありがとう、レミィも」
「もちろんですわ!」
「当然です、ミリシア様!」
と二人も一緒に喜んだ。それで帰りは四人一緒に、最近できたカフェで、女子会を開いた。おだやかなひとときで、女の子に囲まれて、私、し・あ・わ・せ。
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