86 / 178
魔族大戦
第八十六話 ウェストヘイム王城戦
しおりを挟む
私とジョセフは親衛隊を率いて、ウェストヘイム王城フェニックスヒルに行くことにした。緊急事態ということで、ウェストヘイム王は王都の王宮から離れ、防衛設備の整った、王城に着座することとなったようである。
私は城の中で、ウェストヘイム騎士たちに案内され、謁見室に行った。
「お久しぶりでございます。ウェストヘイム国王陛下、統一国宰相、ミサ・エチゴ・オブ・リーガンでございます」
「ん、ご苦労であった。こたびの魔族との戦いでお疲れであろう、このフェニックスヒルで、ゆるりと体を休めるがよい」
「はっ、して、現在のウェストヘイムの状況をお尋ねいたしたいと思います」
ウェストヘイム王の騎士が軍事状況を説明し始める。
「現在、魔族の主力はワックスリバーで釘付けになっております。今だレッドヴァレイ要塞の統一軍は粘り強く抵抗を続け、魔族どもは制圧に苦しんでおります。また、魔族の先兵はこちらウェストヘイムにも侵入を続けておる状況です。
まだ小規模でありますが、いずれ、本格的にこのウェストヘイムに侵略を試みるでしょう。ここは我ら統一軍が一致団結して、魔族に当たることが肝要かと存じます」
「まだ持っておりますか、レッドヴァレイは?」
「報告によると宰相閣下の迅速な指示で、指揮系統が統一して、ゲリラ戦法に切り替えることで、うまく、魔族との戦いが繰り広げられたとのこと。流石はミサ様ですな」
「いえ、統一国の宰相でありながら、騎士たちと戦えず、己の無力さを恥じております」
私の答えにウェストヘイム王妃であるミシェル妃が私を慰めた。
「そなたのせいではあるまい。女子でありながらよく気丈に、かつ、冷静に判断を下せた。ウェリントンも喜んでいるであろう」
「はっ、もったいなきお言葉」
大体の話し合いをして最後にウェストヘイム国王が私に言った。
「いずれ、魔族がこの国にも本格的に襲来する恐れがある以上、この城にて宰相殿も私を助言してくれないか。戦線を引き直す意味でも、そうしてもらうとありがたい」
「ははっ、統一王陛下と連絡を取り、そう致すよう、調整します」
「うむ、頼むぞ、ミサ殿」
「ははっ」
私は謁見室を後にして、この城の豪華な客室に泊まることになった。ジョセフと今後の事と、現状を話し合う。
「ジョセフ、どう? ルーカスの様子は、耳に入ってる?」
「まあ、なにせ、装備面で不利ですからね。隊長は上手くやってますよ、器用に時間を稼いでいます」
「感想じゃなくて報告が聞きたいのだけど」
「ああ、今入ってきた情報によると、レッドヴァレイ要塞を他の士官たちに任せて、ウェストヘイムに入ったそうです、ひと段落ついたそうなので」
「それを早く言ってよ、で、どう、段落ついたの?」
「要塞は落ちますね、でも時間を稼いだのと、魔族との戦闘経験が出来て、ワックスリバーおよび、ウェストヘイム戦で、長時間戦えるのではないかとのことです。まともに戦っては惨敗ですからね。今のままだと」
「どうにか装備技術を発展させる必要がありそうね」
「そうですね、いずれ兵からも詳細な戦闘記録が上がってきて、まあ、そこら辺もクリアできるでしょう、だから今は……」
「──時間を稼ぐ、そうね?」
「ええ、私も今回はウェストヘイムのレディたちと、夢のひと時を楽しめそうです」
「そんな暇与えないわよ、私」
「暇は作るものですよ、軍人的にね」
「あっそう、ルーカスに何とかここウェストヘイムに来てくれないか伝えて」
「ええ、いいですが、どうしてです?」
「戦線を引き直すのよ、さっきの話聞いてたの? 親衛隊隊長の指揮が必要でしょう?」
「ああ、伝えておきます」
「それと、陛下たち、アレキザンダー様ね。東部戦線どうなの?」
「どうやら、エジンバラ王と合流して、エジンバラ国境に戦線を引き直すそうです。何か伝える必要あります?」
「私はどうすればいいか聞いておいて。ネーザン国内に戻った方がいいか、このままウェストヘイムで戦いを分析するか」
「それなら、ここで魔族の情報が集まるまで、とどまった方がいいんじゃないんですか、後々政治的に大掛かりに動かさなきゃならないでしょ、ネーザンがキーですから、この大戦争は」
「なら、陛下に許可をとって頂戴、あくまで私はテットベリーの視察で北方に出向いただけだから、成り行き上要塞で責任者になったけど、本来宰相がしゃしゃり出るべきではないから、統帥権のある陛下にきかないといけないわ」
「了解しました」
そう言って、ジョセフは部屋から出ていった。次の日、報告と同時にウェストヘイムのご婦人の良さを伝えられた。夜的な意味で。いらんわ、そんな情報。
のちにルーカスがこちらにやってきた。私は笑顔で迎えた。
「おつかれさま、よくやってくれたわ、こんな状況で」
「いえ、我が親衛隊は陛下にも、閣下にも十二分に恩恵を受けております、それに細やかなご恩返しができて誇らしいです」
「頼もしい言葉ね、どう魔族との戦いは」
「勝つことは難しいでしょう、今の状況では。だがいつの日か宰相閣下が道を開いていただけると信じております」
「わかったわ、最善を尽くして。とりあえず戦況報告にウェストヘイム国王陛下に共に謁見しましょう」
「かしこまりました」
私はルーカスとジョセフを連れて、謁見室におもむいた。
「ウェストヘイム国王陛下、こちら親衛隊隊長、ルーカス・マンレイクです。我がネーザンきっての騎士です」
「ウェストヘイム国王陛下、ルーカス・マンレイクです。お初にお目にかかり光栄でございます。この度は──」
その時だった。にわかに叫び声が聞こえてきた。ウェストヘイム王が「なんだ、騒がしい!?」と騎士たちに尋ねたところ、兵が謁見室に入ってきた。ウェストヘイム王は苦々しそうに言った。
「なんだ、ミサ宰相殿との会見中だぞ、無作法ではないか」
「申し訳ございません。魔族が……魔族が現れました……!」
「何だと!?」
私たちが城の空洞の窓に集まると、うっすらと遠くに、魔族たちと獅子に乗った大男が確認できた。私は思わず口に出してしまう。
「あれは……! ヴェルドー!?」
なぜ、この王城までやってこれたの、しかも兵を連れて、いったいどうやって……!?
私は城の中で、ウェストヘイム騎士たちに案内され、謁見室に行った。
「お久しぶりでございます。ウェストヘイム国王陛下、統一国宰相、ミサ・エチゴ・オブ・リーガンでございます」
「ん、ご苦労であった。こたびの魔族との戦いでお疲れであろう、このフェニックスヒルで、ゆるりと体を休めるがよい」
「はっ、して、現在のウェストヘイムの状況をお尋ねいたしたいと思います」
ウェストヘイム王の騎士が軍事状況を説明し始める。
「現在、魔族の主力はワックスリバーで釘付けになっております。今だレッドヴァレイ要塞の統一軍は粘り強く抵抗を続け、魔族どもは制圧に苦しんでおります。また、魔族の先兵はこちらウェストヘイムにも侵入を続けておる状況です。
まだ小規模でありますが、いずれ、本格的にこのウェストヘイムに侵略を試みるでしょう。ここは我ら統一軍が一致団結して、魔族に当たることが肝要かと存じます」
「まだ持っておりますか、レッドヴァレイは?」
「報告によると宰相閣下の迅速な指示で、指揮系統が統一して、ゲリラ戦法に切り替えることで、うまく、魔族との戦いが繰り広げられたとのこと。流石はミサ様ですな」
「いえ、統一国の宰相でありながら、騎士たちと戦えず、己の無力さを恥じております」
私の答えにウェストヘイム王妃であるミシェル妃が私を慰めた。
「そなたのせいではあるまい。女子でありながらよく気丈に、かつ、冷静に判断を下せた。ウェリントンも喜んでいるであろう」
「はっ、もったいなきお言葉」
大体の話し合いをして最後にウェストヘイム国王が私に言った。
「いずれ、魔族がこの国にも本格的に襲来する恐れがある以上、この城にて宰相殿も私を助言してくれないか。戦線を引き直す意味でも、そうしてもらうとありがたい」
「ははっ、統一王陛下と連絡を取り、そう致すよう、調整します」
「うむ、頼むぞ、ミサ殿」
「ははっ」
私は謁見室を後にして、この城の豪華な客室に泊まることになった。ジョセフと今後の事と、現状を話し合う。
「ジョセフ、どう? ルーカスの様子は、耳に入ってる?」
「まあ、なにせ、装備面で不利ですからね。隊長は上手くやってますよ、器用に時間を稼いでいます」
「感想じゃなくて報告が聞きたいのだけど」
「ああ、今入ってきた情報によると、レッドヴァレイ要塞を他の士官たちに任せて、ウェストヘイムに入ったそうです、ひと段落ついたそうなので」
「それを早く言ってよ、で、どう、段落ついたの?」
「要塞は落ちますね、でも時間を稼いだのと、魔族との戦闘経験が出来て、ワックスリバーおよび、ウェストヘイム戦で、長時間戦えるのではないかとのことです。まともに戦っては惨敗ですからね。今のままだと」
「どうにか装備技術を発展させる必要がありそうね」
「そうですね、いずれ兵からも詳細な戦闘記録が上がってきて、まあ、そこら辺もクリアできるでしょう、だから今は……」
「──時間を稼ぐ、そうね?」
「ええ、私も今回はウェストヘイムのレディたちと、夢のひと時を楽しめそうです」
「そんな暇与えないわよ、私」
「暇は作るものですよ、軍人的にね」
「あっそう、ルーカスに何とかここウェストヘイムに来てくれないか伝えて」
「ええ、いいですが、どうしてです?」
「戦線を引き直すのよ、さっきの話聞いてたの? 親衛隊隊長の指揮が必要でしょう?」
「ああ、伝えておきます」
「それと、陛下たち、アレキザンダー様ね。東部戦線どうなの?」
「どうやら、エジンバラ王と合流して、エジンバラ国境に戦線を引き直すそうです。何か伝える必要あります?」
「私はどうすればいいか聞いておいて。ネーザン国内に戻った方がいいか、このままウェストヘイムで戦いを分析するか」
「それなら、ここで魔族の情報が集まるまで、とどまった方がいいんじゃないんですか、後々政治的に大掛かりに動かさなきゃならないでしょ、ネーザンがキーですから、この大戦争は」
「なら、陛下に許可をとって頂戴、あくまで私はテットベリーの視察で北方に出向いただけだから、成り行き上要塞で責任者になったけど、本来宰相がしゃしゃり出るべきではないから、統帥権のある陛下にきかないといけないわ」
「了解しました」
そう言って、ジョセフは部屋から出ていった。次の日、報告と同時にウェストヘイムのご婦人の良さを伝えられた。夜的な意味で。いらんわ、そんな情報。
のちにルーカスがこちらにやってきた。私は笑顔で迎えた。
「おつかれさま、よくやってくれたわ、こんな状況で」
「いえ、我が親衛隊は陛下にも、閣下にも十二分に恩恵を受けております、それに細やかなご恩返しができて誇らしいです」
「頼もしい言葉ね、どう魔族との戦いは」
「勝つことは難しいでしょう、今の状況では。だがいつの日か宰相閣下が道を開いていただけると信じております」
「わかったわ、最善を尽くして。とりあえず戦況報告にウェストヘイム国王陛下に共に謁見しましょう」
「かしこまりました」
私はルーカスとジョセフを連れて、謁見室におもむいた。
「ウェストヘイム国王陛下、こちら親衛隊隊長、ルーカス・マンレイクです。我がネーザンきっての騎士です」
「ウェストヘイム国王陛下、ルーカス・マンレイクです。お初にお目にかかり光栄でございます。この度は──」
その時だった。にわかに叫び声が聞こえてきた。ウェストヘイム王が「なんだ、騒がしい!?」と騎士たちに尋ねたところ、兵が謁見室に入ってきた。ウェストヘイム王は苦々しそうに言った。
「なんだ、ミサ宰相殿との会見中だぞ、無作法ではないか」
「申し訳ございません。魔族が……魔族が現れました……!」
「何だと!?」
私たちが城の空洞の窓に集まると、うっすらと遠くに、魔族たちと獅子に乗った大男が確認できた。私は思わず口に出してしまう。
「あれは……! ヴェルドー!?」
なぜ、この王城までやってこれたの、しかも兵を連れて、いったいどうやって……!?
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
夫のかつての婚約者が現れて、離縁を求めて来ました──。
Nao*
恋愛
結婚し一年が経った頃……私、エリザベスの元を一人の女性が訪ねて来る。
彼女は夫ダミアンの元婚約者で、ミラージュと名乗った。
そして彼女は戸惑う私に対し、夫と別れるよう要求する。
この事を夫に話せば、彼女とはもう終わって居る……俺の妻はこの先もお前だけだと言ってくれるが、私の心は大きく乱れたままだった。
その後、この件で自身の身を案じた私は護衛を付ける事にするが……これによって夫と彼女、それぞれの思いを知る事となり──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる