幼女救世主伝説-王様、私が宰相として国を守ります。そして伝説へ~

琉奈川さとし

文字の大きさ
上 下
64 / 178
世界統一編

第六十四話 ブルーリリィの誓い

しおりを挟む
 私たちは国民の願いを背負っている、それは単に暮らしが良くなりたいとか、そういった俗物的なものではない。もっと根幹的にこの国の未来に対して希望を手繰り寄せたいのだ。

 私たち政治家はそれを実現するために税金を食んでいるのだ、自分の懐を肥やすためではない、そうでなくては、政治家になってはいけない。政治は国民の夢をかなえるためのものだ、これは人類の知恵の実である。

 私の国を一つにすると言った宣言に、この場に集まった与党代表たちがざわめく、カーディフ侯爵は私に尋ねた。

「三部会ではご不満ですか?」
「ええ、不満ね、あなた方には悪いけど、本当に国民の意思をくんだ議会ではない、身分による権力者に得になるように仕組まれた選挙よ、本当の国の代表ではない。

 私には構想がある、王宮貴族による国王議会、地方貴族、聖職者による貴族議会。そして平民たちの代表である、平民議会の普通選挙によって代表が選ばれるべきよ。

 その三院の権力の三権分立のバランスで国家安寧の政治を執り行うべきだわ、それが民主的というもの」

「三院制……!」

「今はこの国家の政治はばらばらのまま、このままではいつ国が崩壊するかもわからない、法にのっとった、安定した民主政治がこの国には必要。

 国民には権利と義務がある。政治はそれにこたえる使命がある。私事で国政をかき回すなど、もってのほか。それは腐敗だわ」

「しかしどうするミサ、そのような先例はないぞ、どうやってこの国の制度を根幹から変える気だ?」

 ジェラードは言った。私はそれに堂々と答える。

「国民のための政治、なら国民からの政治的行動が必要よ。明日、平民議会で税制一本化法案が可決される。その時、ウェル・グリードが国民の意思を示そうと、デモ行進を始める、あなた方は、聖職者代表と貴族議会代表として、税制改革を可決し、三部会の意思を示した後、デモに参加して欲しい。

 あとは私が国王陛下から勅許を得る手はずを整えてる。常時国会の設置、権利の法文化、法治国家の完成のためのね」

「なんと……!」
「流石ミサ様、そこまでお考えとは、いやー私オリヴィアちゃんも震えてきましたよ-」

 そしてグリースは簡潔に尋ねた。

「で、合流する場所は?」
「──約束の地、ブルーリリィ広場」

「ブルーリリィ広場!」

 伝統あるこの場所の名が出たことに、代表たちの身が引き締まる。歴史は動く、いや、動かすのよ。

 次の日、平民議会が開かれた。最後の質疑応答としてウェル・グリードが立った。そして彼は歴史に残る演説をする。

「以上の通り、税制改革は等しく、国民に利益があり、貧困にあえぐ者たちを救う法案だと我々共和党は判断いたします。

 これは国家にとって重要なことです。この国を根本から変える、腐敗と、搾取から解き放つ、理性によって導き出された、救世主であります。

 ──しかし、しかしだ! 現在貴族議会で、行われている、王国党の審議拒否、これが国民に対する誠意か! 国家安寧のため、国民のために働くべき国民の代表が、私事で、国家を左右していいものか!

 これは重大なる背徳だ! 国民に対する侮辱だ! 我々平民はこのような横暴を、許すわけにはいかない。国家とは国民のためにあり、国家のために国民があるのではない!

 権力の腐敗を許してはならない、我々は国民の代表として彼らを弾劾する! 我らはこれから、国民の総意を問う! 我らが命を張って、国民の代表として、この国を担うのだ!

 改革の歩みを止めてはならない! いやもっと歩みを進めるべきだ! それは、国民の手によってだ! 権力者によってではない!

 我ら共に手を取り合って声を上げるべきだ、国民の代表として! そして我らの意思をブルーリリィ広場にて、国王陛下に届けようではないか!」

「おお──!」
「グリード! グリード!」
「我らもウェルと共に行くぞ!」

 そうして平民議会は拍手と熱気に包まれたまま、法案の採決が行われる。賛成193票、圧倒的多数によって、平民議会は決した。そして、平民議員たちは列をなして、議会場から出ていく、そうブルーリリィ広場に向かって。

 私は親衛隊隊長であるルーカスに命じた。

「国王陛下の代理として命じる、議員たちを守れ!」
「ははっ!」

 手はず通り、親衛隊が議員のデモ行進を守る。これからが正念場だ……!

 平民議員たちの行進は続く、口々に「我々の権利を守れー!」「国民の声を聞け―!」と叫んでいる。私は少年姿に変装してそれを見守っていた。

 その中ジョセフが私のもとに近寄ってくる。彼は言った。

「やはり動きましたね、王党派と、王国党の一味が」
「テロによる、政治の妨害、あいつらが良くやる手よ、親衛隊は何としても議員を守りなさい。これはネーザンのためよ」

「わかりました」

 そう言って彼はウインクをして立ち去る。民衆たちは議員たちに賛同し、追従ついじゅうする。私はそれを見届けた後、ブルーリリィ広場の民家を借りて、作戦本部とした。議員たちはブルーリリィ広場にたどり着き、民間人の女性から青百合を渡される。

 そしてグリードは言った。

「我らはこのブルーリリィに誓う! この歴史ある場で、我らの権利が認められぬ限りこの場を決して動かぬと!」

 オリヴィアは大きな言葉で言った。

「えー、そう! 私たちには財産を持つ権利があります! それは誰にも侵害されない権利です! 貴族たちに従う必要はありません!」

「おお──!!」
「グリード! グリード! オリヴィア! オリヴィア!」

 私は民家の窓からそれを見つめた後、木の窓を閉じ、作戦会議に入る。私はルーカスに命じた。

「この広場に続く、カウス街道は封鎖して、道が広すぎるわ、敵が混じってもわからない、民衆が合流したそうにしていたら、持ち物を検査して、通すように」
「はっ!」

「あと裏街道に当たる、タリア通りは警備を重視して、あそこは治安が悪い、ごろつきどもがうようよいる。敵が混じってもわからないわ、厳重警戒を」
「はっ!」

「それと、わき道に入る、ティリア道は広場に向かう出口を親衛隊でふさいで、カウスと同じように、持ち物検査を怠らないように、民衆を通しなさい」
「はっ!」

「あとジョセフ、この広場における議員、民衆の警護を頼むわ。流血は避けなければならない。革命に血は必要ない。これはネーザンの夜明けよ、決して汚名を残してはならない」

「わかりました!」

「行って!」
「はっ!」

 私が陣頭指揮をしながら、時間がどんどん過ぎていく、この日は何としても乗り切らなければならない。明日、明日は貴族議会と、聖職者議会で改革法案が可決される。それと同時に、各議員が合流する。

 そして私が勅許をもらって、この革命を国王の元、成し遂げる。一歩間違えれば国が亡ぶ。私は神経をとがらせながら、時間を刻一刻と送っていく。どんどんと、妨害しようとして、逮捕者が出てくる。

 だが、騒乱となることはない。国民たちはこの国初めての熱気と狂気で、ブルーリリィ広場に集まる。その数およそ10万人。三部会に興味があった地方民からもどんどん集まってる。

 この歴史的な夜は私のコントロールの元上手く動いている。むしろ、デモは一時休憩といったかんじで、議員は民衆たちと、仲良く食事をしている。想像したより穏やかな夜。だが本番は明日。

 ジョセフは私に言った。

「宰相閣下お休みください。明日が控えております。休息も必要です」
「そうね、今のところ順調、明日、全てが決まる。この国の未来が……」

 そう言った後私は民家で固いベッドの上で眠りにつく、革命の夢は昔の私が老いていた時の苦い思い出のものだった。この国は決して、間違った道に進ませはしない。この私が……!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

悪役令嬢に転生した俺(♂)!

satomi
ファンタジー
悪役令嬢に異世界転生してしまった神宮寺琉翔。ずっと体が弱く学校は病院内にある院内学級。 転生を機に健康体を満喫したいところ、しかし気づいた。自分は悪役令嬢という事に!このままでは冤罪で死刑もありうる。死刑は免れたい。国外追放を希望するがその生活はどうすればいいんだ?

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

処理中です...