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世界統一編

第五十二話 銀行設立

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 私はいつも通り、レオと一緒に馬車で王宮に通勤する。その途中だった、いきなり私の馬車だとわかったのか、大勢の市民が集まった。

「ザ・カウンテス・オブ・リーガン! ザ・カウンテス・オブ・リーガン! ザ・カウンテス・オブ・リーガン!」

 と叫びつつ、男も女も服を脱いで馬車を追っかけてくる。へっ⁉ なに、どういうこと! レオがおどろいて外を見ようとしたので、私はあわてて、「見ちゃダメ!」と言って目をふさぐ、子どもにはまだ早い。

 しかしこの世界のこの国のノリはわからない、すぐ脱ぐんだからもう、はあ……。おっさんのアソコとか見たくなかった。ひどく残念な気持ちになって、王宮にたどり着いた。

 私は王宮内府でいつも通り仕事をこなす、今の主な仕事は紙幣の流通量の把握だ。無駄に刷ると、インフレになって経済が大混乱する。経済庁が最近できて、この国にも経済という概念が出来たものの、まだ、浸透したとは言えない。

 私はジャスミンに言った。

「こうなったら、銀行を作って、政府直轄の民間組織を作るよ」
「はい? 銀行ですか。商人ギルドですか?」

「ええ、彼らを雇用して、紙幣の流通量をコントロールさせるのよ、内府で経済のすべて把握するのは難しい。銀行で専門家を育成し、またそれぞれの都市に銀行を作って、金の流通、投資を管理する必要があるの。

 今現在、どんどんネーザンは経済規模が大きくなっていく、中央政府だけで管理するのは不可能。これから土地開拓に行政だけでなく民間と調整が必要だわ、金融ギルドそのものを呑み込むわよ」

「それはよろしいのですが、王宮外の平民をつかうとなると、法整備が必要になりますが」

「ええ、もちろん銀行法を制定するわよ、最近忙しいけど、ここが改革を軌道に乗せる踏ん張りどころよ、頑張りましょう」
「かしこまりました。貴女のご随意ずいいのままに」

「感謝するわ」

 そして経済庁の官僚と綿密な打ち合わせをして、経済の専門家を集めていく。それを拡大した、経済開拓省が数か月後にはできる予定だ。そうしてあわただしく時間が過ぎていく。そんなとき、メアリーに久しぶりに昼食を一緒にしないかと誘われたのだ。

 もちろん私はOKだ。最近メアリーの方から、全然話しかけてくれないので、気になっていた。そう言えば私をモデルにした彼女の『幼女救世主伝説』の小説が売れているとかなんとか。

 私とメアリーとレオは一緒に食事をしながら、そのことについて談笑した。

「ね、私が聞いた話だと、メアリーの小説評判良いって話だけど、どうなの?」
「ええ、ミサをモデルにした『幼女救世主伝説』はめっちゃめっちゃ、売れまくって売れまくって、私は王宮貴族たちにドヤって威張り散らして遊んでいたのよ最近。

 まあ、劇場化したので、そのあいさつ回りとか、出版関係でいろいろ忙しかったのもあるけどね」

 彼女の小説をリーガン紙幣の印刷機の試しずりとして、どんどん発行して、印刷機も貴族が欲しがって、同じものを売り渡して、メアリーのパトロンとなって最近では出版商売がはじまったらしい。レオはひどく驚きながら言った。

「え!? 『幼女救世主伝説』って作者はメアリー姫殿下なんですか! アレックス・D・D・マートンって人が作者じゃないんですか!」

 それに対してメアリーはにこやかに言った。

「ええ私が作者よ、アレックス・D・D・マートンは私のペンネーム、知り合いの名前をもじってね。貴方も読んだことあるの? 私の小説」

「はい! 大ファンなんです! ミサ様が主役の小説。うわあ、作者の方と直接お会いできるなんてとても嬉しいです。あ、あの僕、レオって言います。父上は国王内閣の首相マンチェスターです。

 ミサ様のお世話とお勉強をさせていただいてるものです、どうぞよろしくお願いします!」

 レオは顔を真っ赤にしながら言った。それに対してメアリーは上機嫌で言った。

「メアリー・リリー・エリザベス・オリント・オブ・ウェストミンスターよ。社交界じゃ見なかった顔だけど、貴方お披露目がまだみたいね。私、姫やりながら、小説家よ。

 よろしくね、レオ君」

「はいよろしくお願いします!」

 と言って二人は握手した。その微笑ましい光景に私は嬉しくなった。メアリーはこそっと、私に言った。

「なかなか、貴女も趣味がいいじゃない、この! うらやましい!」
「べ、べつに、彼から私のもとで働きたいと言ってきただけで、やましい気持ちは……」

「何言ってんの! めっちゃっ、可愛い男の子じゃない、これ数年すると凄い美形になるわよ、この! この!」

 と言ってメアリーは膝打ちしてくる、私はただ「ははは……」と笑っていた。それをきょとんと見ていたレオは不思議そうに言った。

「すごく仲良しなんですねお二人」
「ええそうよ、レオ。メアリー姫殿下と私は親しくさせてもらっているわ」

「ちょっと、なに他人行儀なのよ、私とミサは親友じゃない。レオ君、実はね、ミサを道端で見つけて、王宮に連れてきたのは、この私なのよ!」

「ええっ! そうなんですか!」
「ええそうよ、私がいなかったら、ミサは宰相になってないし、大陸同盟戦争に勝っていないし、ネーザンがここまで発展しなかったのよ!」

「すごいです! メアリー姫、よく、ミサ様をお見つけになられましたね!」
「ええそうよ、あれは神の信託があったの、レスター市に救世主が現れ……」

 メアリーはクリエイター気質なのか、話しを10倍に盛って、私との出会いの話と活躍を、延々と語る。あれから長かったなあ、宰相になっていろいろあった。この世界に来て、メアリーに会って、ウェリントンに会って、ジェラードに会って、ほんと来てよかった。

 こんな充実した日々が暮らせるなんて日本では考えられなかった。毎日がハラハラドキドキで飽きないし、おもしろいし、周りが私を認めてくれる。

 こんな日が来るなんて思ってもみなかったよ……。

 いつの間にか、休み時間が過ぎていき、食事を終えて、私とメアリーとレオは食後の運動に、王宮内を散策していた。その時だった。

「おおあれは、ミサ宰相閣下、例の……」

 おっ、貴族たちで、うわさになってるな、なんだろう、私の誉め言葉や、悪口なんて聞き飽きたけど。

「おおそうだ! あの大ダコとベッドインするのが好きな、ミサ宰相閣下だ!」
「はい!?」

 私は驚いて声のもとに振り向いた。そうするとその男性は赤い顔をして顔をそむける。ちょっと、なになに、なんなのよ! けしからんうわさに私は声を大にして聞いた。

「私がなんだって!?」
「ああ、ミサきっとあれよあれ」

 と、メアリーが笑いながら、言った。あれってなによ。

「どういうこと?」
「最近あなたが王宮で活躍してるのと、小説で有名になったからね、貴方をモデルにしていろんな小説を書くのが流行ってるの、いろんなのあるわよ、私とベッドインするとか、ウェリントンとベッドインするとか。

 最近の流行は、貴方と獣を交わらす──」

「ちょっと待ちなさい! それって肖像権の侵害じゃない!」
「はい? 肖像権ってなによ、どうせ、憂さ晴らしに書いてんでしょ、そういうのたまにあるのよね、それが出版できるようになって、最近人形劇になってちまたであふれているとか。

 私としては、原作の私の本を読んで欲しいんだけどね、そういうのアレでしょ、ネタは流行りやすいから」

「児童ポルノ法違反じゃない! 許さん!」

「あっちょっと、どこ行く気よ」
「ミサ様! 僕は持ってませんからね!」

 メアリーとレオの制止を振り切って、国王内閣のマンチェスター卿のもとへ怒ったまま乗り込んだ。

「マンチェスター首相! 話しがあるわ!」
「はあ、どうかなさいましたか宰相閣下」

「私のエロ同人誌を取り締まりなさい!」
「な、なんです? それ?」

「私がアーンするとかアハーンするとかの小説や人形劇など全部よ!」
「ああ、あれでしたか。不快でしたか?」

「不快に決まってるでしょ、勝手に私の性癖が決められるなんて最悪だわ! 私は未婚の女よ! 考えなさいよ!」
「はあ……何と言いますか、有名になるのも大変ですなあ。馬とベッドインしながら、クマとするとか」

「ちょっとまって、どうして貴方がそんなことまで知ってるのよ!」
「えっ、いや、その……」

 すぐさま私はマンチェスター首相の本棚をどんどんあさっていくと、出るわ出るわ、ヘンタイ本が! しかも絵付きで。当然すべてを没収した。

「これ全部燃やします、一か月後こんなスケベロリコン本を持っているものみんなは逮捕します! いいですね!」

「そ、そんな!」
「い・い・で・す・ね」

「……はい」

 このロリコンどもめ! 許さん! 私は内府に戻って、緊急に著作権、肖像権、子どもの権利、児童ポルノに対する刑罰などの法案をまとめた。

 徹夜だったが、そんなもの知るか! 私のみさおがかかってるのよ! こっちは! ナマモノに手を出したことを後悔させてやる。

 とういうことで、銀行法と、著作、肖像権法と、子どもの権利に関する法案をどんどん通していった。よしこれで世の中綺麗になる! と思ったらエロ同人マフィアができたらしい。

 この色情魔どもめ! ヘンタイ! 絶対許さないんだから! 新たな敵を滅亡させるよう、私は知恵を巡らす日々が続いたのだった。
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