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世界統一編

第四十七話 リヴィングストンの陰謀③

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 長期間の休みとなったので、私は屋敷でごろごろしていた。だってやることないし、周りが勝手にやってくれるし、屋敷から外に出られないもの。

 そんな状態を見てレオが眉をひそめた。

「ミサ様、そんなにごろごろしてると太りますよ!」
「えっ、私太った!?」

「ちょっとふっくらしてきましたね。ミサ様は肉が好きなのと、脂っこいものが好きですから」
「ふぎゃー、やめてよ、幼女でデブなんて! お断り案件じゃない!」

「そこまで太ってはいませんけど、外に出て運動が出来ない以上、食事を脂っこいものから、野菜類に変えたほうがいいですね。幸いネーザン国は農作物が豊富ですから。農家の料理は結構ヘルシーな食事メニューがありますよ」

「ふぎゅ、わかった。市民の食事生活は悲惨だけど、意外と農家って、税逃れにこっそり蓄えてたりするものだからね」
「まあ、あまり大っぴらに言うべきではありませんが」

「それくらい許してあげて欲しいんだけど、税の取り立て厳しいからね、かなり野蛮な仕打ちまでするし」
「我が領ではそんなことはないと父上は言ってましたが、徴税人に委任するものだから、わからないですけどね。そういう人たちのためにミサ様の改革が必要です。

 そう言えばこの事件いつ頃解決しそうですか、もう一週間になりますが」

「仕方ないわよ、カンビアスと言えども、強硬に上級貴族を裁くなんてできないし、時間はかかるでしょう。まあ、もうちょっと態度を明確にすれば、少しは私も安全に外に出掛けられるんだけど」
「そうですか、僕も体がなまってきて、庭で軽く運動してるんですけど、ミサ様の屋敷は狭いですから」

「だって領地ないもん、貧乏だもん」
「はあ、清廉潔白もいいですけど、少しは自分のためになることもしてみたらどうです?」

「やり始めたら切りがないわよ、贅沢なんて。あれも欲しいこれも欲しいと思いだしたら、いくら金があっても足りないし、余るほど金があってもろくな使い道ないし、なかったらないですっきりするもんよ」
「ミサ様なら領地を上手く切り盛りすると思いますが、僕は」

「今は、国の事で精一杯。下手に領地をもってごたごたに巻き込まれるのはごめんよ。よく宰相はみんなの注目を浴びるからね。引退したら考えるわ。というか、国に必要がなくなったら、私もそこら辺の領地を与えられて左遷されるでしょう。

 下手に権力を握った奴が長らくいると政治の腐敗が始まるし。そのくらいになったら、私自身が身の振り方を考えてるわ」
「流石ですね、ミサ様、未来のことまで考えているなんて。僕なんか大人になりたいしか考えてないのに」

「まあ、いろいろあったからね。それなりに」

 六十年も生きれば、人生のことがわかってくる。若い時は今の事しか考えられないけど、歳をとると、もっとうまくやればよかったと後悔するもの。私も歳重ねてから、世の中を知って、何かやろうとしても体が動かないとか、わびしい状況だったからね。

 阿弥陀様がもう一度機会を与えてくれて感謝だ。

 レオとそんなやり取りをしているとドアをノックされた。レオがそれを開くとジョセフだった。

「閣下、続々と閣下の御威光に預かりたい者たちが集まってきてますね」
「そう、騎士はどれくらいになった?」

「およそ2000名ですね。一応閣下のおっしゃったとおり、見どころある騎士はこちらに迎えていますが、こんなちっこい屋敷じゃあ、とてもじゃないですが、人が入りきりませんので、屋敷外に配置しています。

 しかし、物資は大丈夫ですか、今のところ、尽きたとかそういう話聞きませんが。どこで調達してるんです?」

「ああ、懇意にしてる商人ギルドがあってね、支援を取り付けたのよ、私自身はそんな財産ないけど、彼らはこの財政改革に非常に賛成してるから。財産権を確保することは彼らの長年の夢だからね。貴族とか、平気で権力で金の踏み倒しするし、財産没収とか当たり前だから」

「なるほど、そうでしたか、最近ひっきりなしに屋敷に人が行き来しているのはそのせいですか。まあ、その心配がないなら、騎士たちをひっぱたいて、使えそうなやつは親衛隊に推薦しときます」

「それも目的の一つだからね、常備軍の拡大は、国王の権力を確かにするから。おいそれと地方大貴族も背くような真似をされないために。ありがとう、面倒かけるね、ジョセフ」
「これも仕事ですからね、では」

 軽く胸を叩いてあいさつした後、彼は出ていった。その後レオは言った。

「最近、いろんな人が屋敷に出回って、いろいろ、家人とトラブルが起きていて、文句が上がってますよ、ミサ様」
「まあ、それは仕方ないことよ、こうなった以上。あとで私が言っとくから」

 その後、外を見ると、屋敷の外の騎士たちが騒いでいた。その視線の方向を見ると、市民たちが、騒ぎを聞きつけて、見に来ているようだ。まあ、目立つからね。そのときだ、ある若い女性が、興奮していきなり服を脱いで全裸になった。

「え、わ!?」
「どうされましたか、ミサ様?」

「ダメ見ちゃダメ、あなたにはまだ早い」

 私はレオの目を隠す。騎士たちは口笛を吹きながら、踊っている。それにつれられて全裸の女性も踊り始め、側にいた女性も脱ぎ始めた。ノリがよくわからないよ……私。

 だが突然、市民がごった返す中、馬車が入ってこようとしてるのをみた。あれは……。

「レオ、家の者に、屋敷への道を開けるようにして。王宮の馬車が入ってこようとしてるみたい」
「は、はい!」

 玄関で客人を迎えると、ジャスミンだった。彼がうやうやしく私に礼をすると、私はさらりと言った。

「どうしたの?」
「ここでは……」

「わかった屋敷に客室があるから、そこへ召使に案内させましょう」

 私たちが客間に入ると、そこでジャスミンは困った様子だった、視線の先はレオだった。

「閣下、内密な話が……」
「陰謀事件の方の始末が進んだんでしょう? 心配しないで、この子は信頼できるし、私の未来に継ぐものとして勉強中よ。もしかしたらのためにね。こういうことに慣れさせておきたいから」

「僕は口はさみませんよ」

 とレオが言うと、ジャスミンは納得した様子で、

「かしこまりました、では、カンビアス卿が今回の件をどう仕置きするつもりか詳細が明らかになりました」

 と答えた。私はワイン転がしながら、それを聞いた。

「まず謁見えっけんで名前の上げられたものは、国家反逆罪に問われそうです。カンビアス卿は極刑も辞さないと強硬姿勢でした」
「スタンスを明らかにしたいわけね、自分が嫌疑をかけられているから、潔白を示すために。これはもめるわね」

「そして残りの王宮貴族たちですが……」
「どうかしたの?」

 すこし暗い顔をしたジャスミンに対して私は表情をうかがった。彼は少し戸惑いながら、言った。

「関係のない下級貴族たちが一斉に検挙されました。それはカンビアス卿に遠いものです。おそらく、自分の勢力がそがれるのを考えて巻き添えを食らった形でしょう」
「上級貴族からは逃げたわね、しかし、しめた……!」

「どうかなさいましたか、ミサ様?」
「虚偽の罪で、このような乱暴な裁きで殺されるとなると、貴族たちも黙ってないわ。せいぜい利用させてもらうわよ、この件」

「しかし、大ごとになってしまいましたね、カンビアス卿の思惑とは裏腹に」
「いや、それで良い!」

「というと?」
「税制改革するには、権利者側の了承が必要、そうじゃないと政権が揺らぐもの。前言った話、そう──国会を作るわよ」

「国会! 本気でございますか……!」
「どう、国の根本が変わる感想は?」

「震えますね、歴史の生き証人として、政治を預かるものとして」
「これからネーザンは変わる、強く、豊かに、そして、人々が幸福になるように」

「私は貴方に従います、ミサ宰相閣下」
「ぼ、僕も!」

 レオも加わって私に礼をする。それを私は眺めながら、

「……ええ、素晴らしいわね、今日というこの日が」

 と言って、西の空に向かって私は杯を捧げ、阿弥陀様に礼を心の中で言った。
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