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世界統一編
第二十二話 エジンバラ降伏
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私の声にぴたりとジェラードに向けられた剣は止まった。もちろんエジンバラ王は大層怒った。
「なんだこのガキは!? 何故戦場にガキがいる!」
「私はネーザン宰相、リーガン伯、ミサ・エチゴでございます」
周りが騒めき立った。だが、横からジェラードはそれを静止する。
「ミサ、良いのだ。こうなることはわかっていた。そなたが口を出すとそなたの身まで危うくなるぞ」
「いいの、このまま黙っていては、ネーザン宰相の名が泣くから」
「ほほう、かの有名な救世主殿が、わざわざこのような辺鄙なところまでご苦労だったな。そなたもわしの剣の錆になりに来たのか……?」
エジンバラ王は私のほうに剣を向けた。
「お聞きください、エジンバラ国王陛下。あなた方はせいぜい見積もっても兵は1万5千。大陸同盟軍は10万をゆうに超えています。なぜあなたは勝ち目のない戦いをなさるのですか!」
「黙れ! お前のような女子供に戦さの何がわかる!」
「いえ、黙りません! 魔族の侵攻が始まりつつある今だからこそ、無益な戦いは避けるべきです。陛下は名誉のない戦いでその命を落とし、市民まで巻き添えにするおつもりでしょうか!」
「黙れと言っている! 先の戦いで、多くの命が散った、わしには彼奴らの死に報いなければならぬ! 戦さらしい戦さをせずにこのまま降服などしたら、我がエジンバラ国の恥だ、祖先に申し訳が立たぬ。
この期に及んでは一兵でも多くネーザンの手下どもを始末して、のちの歴史家たちにエジンバラ王ここにありと見せつけるのだ!」
「無論、降服が耐え難い屈辱だと存じております、しかし、名誉の戦いが今でしょうか⁉ のちの歴史家たちに無駄な戦いをして無益な血を流したと嘲られるのではないのでしょうか!」
「……どうやらお前は死にたいらしいな……!」
「陛下お待ちください! 女子供に手をかけるなど騎士として……」
「貴様は黙っていろ!」
ジェラードが口をはさんできたのをエジンバラ王は一蹴する。そして私に向かって剣を振り上げた。私はそれを冷静に見つめ続けていた、そして剣が下ろされようとする。その瞬間をゆっくりとまじまじと見つめそして……!
──私の目の直前で剣先は止まった。
「……まさか今から斬り殺されるのに、まばたき一つもせぬ幼女がいるとはな……!」
「ジェラード卿が死の覚悟しているのと同様に、私もそれ相応の覚悟がございます」
「……ふっ、面白い、ならお前の言いたいことを申してみよ、その時間ぐらいお前を斬るのを待ってやる」
エジンバラ王は剣をしまいどっしりと玉座に座り直した。
「現在、わが軍は魔族侵攻のために固く同盟の絆を深め、粛々と対策のためにネーザン国を始めリッチフォード、ウェストヘイム、ワックスリバー、サウザック、ホーランド、バッキンガムを主軸とし、対魔族に対する備えを固めております」
「ほう、お前はいまだに侵略の意図はないとするのか、現在我が領が攻め取られているというのに」
「それは本意ではありません、現に大同盟軍は領地に、徴税を課しておりません」
「詭弁だな、徴発をしておるではないか」
「それはエジンバラ同盟が兵を挙げたため、やむなく諸国の防衛のために必要なことでございます」
「わしのせいと申すのか、お前は」
「恐れながらその通りでございます、我々は侵略をする気など毛頭なくまた、現在滞在している領地も同盟軍の諸侯に分け与えられてはおりません、エジンバラ国王陛下、何故だかお分かりになられますか?」
「……ふむ、それはわしも不自然に思っておった、大陸同盟とやらの貴族どもが納得すまいと」
「同盟軍諸侯に固く禁じているからでございます。あくまで我らは対魔族のための同盟であり、遠征ではないと。この戦争が終われば、占有した領地は返還されるものと推察しております」
「その口ぶりだと、何か保証でもあるのか?」
「……はい、ここにエジンバラ国王陛下あての親書がございます、エジンバラ同盟の諸侯の方々の命を取るつもりはなく、兵を解散すれば、すなわち、しかるべき手続きののち捕虜とされた方々も返還するものと書かれております」
「見せよ」
「ははっ」
私は頭を下げつつ書簡をエジンバラ王に献上した。これで降服ののちの懸念も解消されるはず……! 書簡を読み終わった王は笑い始めた。
「ははは……! あくまで対魔族戦線を大義名分にする気か、ネーザン王は。ずいぶんと面白い奴だな、戦場で会った時も、変わった王だと思ったが、こんなお人よしとは、ははは……」
「ネーザン国王陛下のお心を斟酌していただけるよう、よろしくお願いいたします」
私がそう言った瞬間だった……。なんとエジンバラ王は目の前で書簡を破り始めたのだった──
「えっ……⁉」
「この書簡は必要ない」
「な、何をなさいます⁉」
私と同様にこの場にいる貴族たちも王の奇行に口々に話し始めた。どういうつもり……? まさか説得失敗……⁉ エジンバラ王は笑いながら私に告げた。
「……お前、面白いな、幼女にしては頭が切れすぎるし弁も立つ、噂によるとなかなかの辣腕の宰相と聞く。どうだ? ネーザンの小僧よりもわしに仕えぬか? 倍の俸給は出すぞ、ん?」
な、何言ってるんだこの人は……⁉
「恐れながら……私はネーザン国王陛下のご寵愛を受け、そのご威光のもとで行った職務でございます……臣下の礼を破るなど……」
「何? 無理だと申すか、はは……、大した忠臣ぶりだな、はは……」
そして王は立ち上がり外の窓から覗くことができる、王都グロスターを眺め始めた。それは穏やかな瞳だった。
「──わしはネーザンに劣る王であったか……」
「陛下!?」
「陛下!?」
貴族たちは王の発言に、動揺の声を上げた。だが、王は静かにぽつりとつぶやいた
「……よい、降服してもよい……」
「なんと!」
エジンバラ王の発言に皆が驚いた。そしてゆっくりと玉座に座り私に降伏条件を告げた。
「まず一つ、我が命および国王直轄領の事はどうでもいい、その代わり、諸侯の命、領土を安堵し、占有地は必ず返還せよ」
「はっ、必ず」
威風堂々とした降伏条件だ、これなら同盟軍諸侯も納得するはず。飲める条件だ。
「……それともう一つ」
「もう一つ……?」
「降服条約約定書はネーザン王名義で出してはならぬ。あくまでわしはネーザンに降伏したわけではない、ミサ、約定書はそなたの名前で出せ、わしはお前に降伏するとな、ネーザン王にそう伝えよ……! ははは……」
──これは意趣返し……! 降伏しながらも決してエジンバラ王はネーザン王に屈したわけではないと、しかも宰相の私の名前を使うことで、エジンバラ王は戦争で負けたから降伏するのではなく、私の外交に屈した。
そう堂々と言い張るつもりか……! 難題だが、私が同盟諸侯を納得させるしかない。これ以上血が流れるよりましだ。誇り高い御仁だ。それと共に王はまだ話し続けた。
「また、ジェラード、お前は二度と私の前、ひいては王家の者に顔を出すな、裏切り者の顔など二度と見たくない、臣下の礼も破約とする、よいな!」
「……はっ!」
これは当然の処置だ、むしろ命がとられなかっただけましで、かなり譲歩した条件だ。その瞬間すっと私の瞳を見て穏やかな顔つきになった。
「──ミサ、お前はいつでもエジンバラに来るといい、ネーザンに飽いたらそなたを召し抱えてやる、はは……」
「か、考えさせていただきます……」
「そうかそうか、これでわしの顔が立つわ、ははっは……!」
そうしてここにいる皆が笑った。この王、決して暗君ではない。むしろ癖があるけどりっぱな王だ。こんな誇り高い降服初めて知った。ジェラードは静かに物悲そうな瞳をしていた。
どうしたんだろう……。
無事グロスター正門から出て同盟軍の本陣に向かう時だった。ジェラードはぽつりとつぶやいた。
「私は陛下の事のことを何も存じてはなかったのだな……」
私は少し驚いた、彼の言葉の意味を理解が及ばなかったからだ。
「どうしたの? ジェラード、無事任務を終えたのに」
「私は二十数年、生まれた時からエジンバラ国王陛下に忠節を誓っていた、しかし今日のような穏やかで優しいお顔をしたのは初めてだった。側に仕えていながら私は……情けないものだ……これでは臣下の礼を破棄されても当然だな」
私もああいうお人柄であったことは驚いたけど、側にいたジェラードでもそう感じたんだ。私は彼の心を慰めようとする。
「たぶん、今日のことで肩の力が抜けたのだと思う。ウェリントン……ネーザン国王も人前ではああやって気丈にふるまっているけど、時には人間らしい弱さを持っていたよ。
王ってだけで大きな責任が肩に乗っているから人前では特に臣下の前では弱い部分を見せるのは難しいのだと思う、……貴方のせいじゃない」
「そうか……そうかもな。卿は不思議だな、まるで人の心を温かく包み込むようだ、エジンバラ王もそれに感化されたのであろう」
「……ちょっと、やめてよ、私はただの幼女だよ、変な属性付けないでよ」
「属性? なんだそれは、ははは……相変わらず卿といると飽きないな、ははは……」
「もう! 私をからかって! ふふ……」
私たちは談笑しながら本陣に戻った。今回の降伏条件を諸侯で会議をし、採決を行うことにした。もとより命をとったり領地を切り取るつもりはなかったが、約定書を私名義で出すことにやはり難色を示した。
だがリッチフォード王がエジンバラ王の顔も立てよと鶴の一声を出しくれたおかげで諸侯は納得した。そして無事約定書を私名義で出して、反同盟軍は降伏条件をのんだ。
かかった戦費の賠償などは後で正式に条約を交わすことにして、とりあえず反同盟と大陸同盟軍の兵は解散し、この戦争は静かに終結した。
これから魔族との戦いが始まる人類同士でいがみ合っている暇はない、その時は一刻また一刻と静かに近づいていたのだ。
でも確かに私たちはこの大戦に勝利し、しばしの間その勝利に酔いしれながら穏やかな時間が流れることになった。
「なんだこのガキは!? 何故戦場にガキがいる!」
「私はネーザン宰相、リーガン伯、ミサ・エチゴでございます」
周りが騒めき立った。だが、横からジェラードはそれを静止する。
「ミサ、良いのだ。こうなることはわかっていた。そなたが口を出すとそなたの身まで危うくなるぞ」
「いいの、このまま黙っていては、ネーザン宰相の名が泣くから」
「ほほう、かの有名な救世主殿が、わざわざこのような辺鄙なところまでご苦労だったな。そなたもわしの剣の錆になりに来たのか……?」
エジンバラ王は私のほうに剣を向けた。
「お聞きください、エジンバラ国王陛下。あなた方はせいぜい見積もっても兵は1万5千。大陸同盟軍は10万をゆうに超えています。なぜあなたは勝ち目のない戦いをなさるのですか!」
「黙れ! お前のような女子供に戦さの何がわかる!」
「いえ、黙りません! 魔族の侵攻が始まりつつある今だからこそ、無益な戦いは避けるべきです。陛下は名誉のない戦いでその命を落とし、市民まで巻き添えにするおつもりでしょうか!」
「黙れと言っている! 先の戦いで、多くの命が散った、わしには彼奴らの死に報いなければならぬ! 戦さらしい戦さをせずにこのまま降服などしたら、我がエジンバラ国の恥だ、祖先に申し訳が立たぬ。
この期に及んでは一兵でも多くネーザンの手下どもを始末して、のちの歴史家たちにエジンバラ王ここにありと見せつけるのだ!」
「無論、降服が耐え難い屈辱だと存じております、しかし、名誉の戦いが今でしょうか⁉ のちの歴史家たちに無駄な戦いをして無益な血を流したと嘲られるのではないのでしょうか!」
「……どうやらお前は死にたいらしいな……!」
「陛下お待ちください! 女子供に手をかけるなど騎士として……」
「貴様は黙っていろ!」
ジェラードが口をはさんできたのをエジンバラ王は一蹴する。そして私に向かって剣を振り上げた。私はそれを冷静に見つめ続けていた、そして剣が下ろされようとする。その瞬間をゆっくりとまじまじと見つめそして……!
──私の目の直前で剣先は止まった。
「……まさか今から斬り殺されるのに、まばたき一つもせぬ幼女がいるとはな……!」
「ジェラード卿が死の覚悟しているのと同様に、私もそれ相応の覚悟がございます」
「……ふっ、面白い、ならお前の言いたいことを申してみよ、その時間ぐらいお前を斬るのを待ってやる」
エジンバラ王は剣をしまいどっしりと玉座に座り直した。
「現在、わが軍は魔族侵攻のために固く同盟の絆を深め、粛々と対策のためにネーザン国を始めリッチフォード、ウェストヘイム、ワックスリバー、サウザック、ホーランド、バッキンガムを主軸とし、対魔族に対する備えを固めております」
「ほう、お前はいまだに侵略の意図はないとするのか、現在我が領が攻め取られているというのに」
「それは本意ではありません、現に大同盟軍は領地に、徴税を課しておりません」
「詭弁だな、徴発をしておるではないか」
「それはエジンバラ同盟が兵を挙げたため、やむなく諸国の防衛のために必要なことでございます」
「わしのせいと申すのか、お前は」
「恐れながらその通りでございます、我々は侵略をする気など毛頭なくまた、現在滞在している領地も同盟軍の諸侯に分け与えられてはおりません、エジンバラ国王陛下、何故だかお分かりになられますか?」
「……ふむ、それはわしも不自然に思っておった、大陸同盟とやらの貴族どもが納得すまいと」
「同盟軍諸侯に固く禁じているからでございます。あくまで我らは対魔族のための同盟であり、遠征ではないと。この戦争が終われば、占有した領地は返還されるものと推察しております」
「その口ぶりだと、何か保証でもあるのか?」
「……はい、ここにエジンバラ国王陛下あての親書がございます、エジンバラ同盟の諸侯の方々の命を取るつもりはなく、兵を解散すれば、すなわち、しかるべき手続きののち捕虜とされた方々も返還するものと書かれております」
「見せよ」
「ははっ」
私は頭を下げつつ書簡をエジンバラ王に献上した。これで降服ののちの懸念も解消されるはず……! 書簡を読み終わった王は笑い始めた。
「ははは……! あくまで対魔族戦線を大義名分にする気か、ネーザン王は。ずいぶんと面白い奴だな、戦場で会った時も、変わった王だと思ったが、こんなお人よしとは、ははは……」
「ネーザン国王陛下のお心を斟酌していただけるよう、よろしくお願いいたします」
私がそう言った瞬間だった……。なんとエジンバラ王は目の前で書簡を破り始めたのだった──
「えっ……⁉」
「この書簡は必要ない」
「な、何をなさいます⁉」
私と同様にこの場にいる貴族たちも王の奇行に口々に話し始めた。どういうつもり……? まさか説得失敗……⁉ エジンバラ王は笑いながら私に告げた。
「……お前、面白いな、幼女にしては頭が切れすぎるし弁も立つ、噂によるとなかなかの辣腕の宰相と聞く。どうだ? ネーザンの小僧よりもわしに仕えぬか? 倍の俸給は出すぞ、ん?」
な、何言ってるんだこの人は……⁉
「恐れながら……私はネーザン国王陛下のご寵愛を受け、そのご威光のもとで行った職務でございます……臣下の礼を破るなど……」
「何? 無理だと申すか、はは……、大した忠臣ぶりだな、はは……」
そして王は立ち上がり外の窓から覗くことができる、王都グロスターを眺め始めた。それは穏やかな瞳だった。
「──わしはネーザンに劣る王であったか……」
「陛下!?」
「陛下!?」
貴族たちは王の発言に、動揺の声を上げた。だが、王は静かにぽつりとつぶやいた
「……よい、降服してもよい……」
「なんと!」
エジンバラ王の発言に皆が驚いた。そしてゆっくりと玉座に座り私に降伏条件を告げた。
「まず一つ、我が命および国王直轄領の事はどうでもいい、その代わり、諸侯の命、領土を安堵し、占有地は必ず返還せよ」
「はっ、必ず」
威風堂々とした降伏条件だ、これなら同盟軍諸侯も納得するはず。飲める条件だ。
「……それともう一つ」
「もう一つ……?」
「降服条約約定書はネーザン王名義で出してはならぬ。あくまでわしはネーザンに降伏したわけではない、ミサ、約定書はそなたの名前で出せ、わしはお前に降伏するとな、ネーザン王にそう伝えよ……! ははは……」
──これは意趣返し……! 降伏しながらも決してエジンバラ王はネーザン王に屈したわけではないと、しかも宰相の私の名前を使うことで、エジンバラ王は戦争で負けたから降伏するのではなく、私の外交に屈した。
そう堂々と言い張るつもりか……! 難題だが、私が同盟諸侯を納得させるしかない。これ以上血が流れるよりましだ。誇り高い御仁だ。それと共に王はまだ話し続けた。
「また、ジェラード、お前は二度と私の前、ひいては王家の者に顔を出すな、裏切り者の顔など二度と見たくない、臣下の礼も破約とする、よいな!」
「……はっ!」
これは当然の処置だ、むしろ命がとられなかっただけましで、かなり譲歩した条件だ。その瞬間すっと私の瞳を見て穏やかな顔つきになった。
「──ミサ、お前はいつでもエジンバラに来るといい、ネーザンに飽いたらそなたを召し抱えてやる、はは……」
「か、考えさせていただきます……」
「そうかそうか、これでわしの顔が立つわ、ははっは……!」
そうしてここにいる皆が笑った。この王、決して暗君ではない。むしろ癖があるけどりっぱな王だ。こんな誇り高い降服初めて知った。ジェラードは静かに物悲そうな瞳をしていた。
どうしたんだろう……。
無事グロスター正門から出て同盟軍の本陣に向かう時だった。ジェラードはぽつりとつぶやいた。
「私は陛下の事のことを何も存じてはなかったのだな……」
私は少し驚いた、彼の言葉の意味を理解が及ばなかったからだ。
「どうしたの? ジェラード、無事任務を終えたのに」
「私は二十数年、生まれた時からエジンバラ国王陛下に忠節を誓っていた、しかし今日のような穏やかで優しいお顔をしたのは初めてだった。側に仕えていながら私は……情けないものだ……これでは臣下の礼を破棄されても当然だな」
私もああいうお人柄であったことは驚いたけど、側にいたジェラードでもそう感じたんだ。私は彼の心を慰めようとする。
「たぶん、今日のことで肩の力が抜けたのだと思う。ウェリントン……ネーザン国王も人前ではああやって気丈にふるまっているけど、時には人間らしい弱さを持っていたよ。
王ってだけで大きな責任が肩に乗っているから人前では特に臣下の前では弱い部分を見せるのは難しいのだと思う、……貴方のせいじゃない」
「そうか……そうかもな。卿は不思議だな、まるで人の心を温かく包み込むようだ、エジンバラ王もそれに感化されたのであろう」
「……ちょっと、やめてよ、私はただの幼女だよ、変な属性付けないでよ」
「属性? なんだそれは、ははは……相変わらず卿といると飽きないな、ははは……」
「もう! 私をからかって! ふふ……」
私たちは談笑しながら本陣に戻った。今回の降伏条件を諸侯で会議をし、採決を行うことにした。もとより命をとったり領地を切り取るつもりはなかったが、約定書を私名義で出すことにやはり難色を示した。
だがリッチフォード王がエジンバラ王の顔も立てよと鶴の一声を出しくれたおかげで諸侯は納得した。そして無事約定書を私名義で出して、反同盟軍は降伏条件をのんだ。
かかった戦費の賠償などは後で正式に条約を交わすことにして、とりあえず反同盟と大陸同盟軍の兵は解散し、この戦争は静かに終結した。
これから魔族との戦いが始まる人類同士でいがみ合っている暇はない、その時は一刻また一刻と静かに近づいていたのだ。
でも確かに私たちはこの大戦に勝利し、しばしの間その勝利に酔いしれながら穏やかな時間が流れることになった。
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