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世界統一編
第十八話 カールトン会戦終焉
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戦況は一進一退、伝令が行きかい、ウェリントンは細かい指示を送る。しかし、何とか耐えていた。逆Vの字陣形も破られることなく、敵の迂回騎兵も諸国連合でねばって対応していた。私たちの下準備とウェリントンの演説のおかげで士気が高い。
こういう時は兵たちの戦いの心構えで崩れるかどうかが決まる。しかし、どうなる……? どうなる……? 私は勝っているのか負けているのかわからない。それはウェリントンやギルバートも同じだった。
二人の感想は今どっちに転ぶかわからないという状況だそうだ、反同盟軍も動かなかった。……たぶん動けなかったのだろう。お互い切り札は手元に残している。情勢が傾いたときに一気に決めるつもりだろう。まさに名将同士の戦いだと私は思った。
──その時だった。
にわかにテットベリー軍が動いたのだ……! 逆Vの字陣形のほうに向かって……!
「──説得は無駄であったか……」
ウェリントンは落胆しながらも静かに笑っていた。ジェラード、それがあなたの答えなの……?
テットベリー軍の動きを私たちはじっと眺めていた。その時だった──、一人の騎士の私たちのもとに伝令がやってきたのだ──!
「──何だ!?」
ウェリントンが驚くのも無理はない、明らかにわが軍の騎士ではなかった。どう見てもネーザンゆかりものと違い、見知らぬ紋章と旗を掲げている。私たちが何事かと怪しんでいると、その騎士は言い放った。
「──我はテットベリー軍の騎士なり! 義をもってわが軍はネーザン同盟にお味方いたす!!」
瞬間、私たちは隣にいた騎士たちと抱き合っていた。やったあ! 勝った! まわりで歓喜の声が上がっていく。一気に状況が一変して、ウェリントンは静かに硬く拳を握りしめた。
「……風が吹いたか……!」
言葉の通り、テットベリー軍は逆V字の陣を半包囲した敵軍に突っ込んだ! 虚を突かれ後ろを取られた敵軍はむしろ反対に半包囲される形となった。相手は不意を突かれ、最初は抵抗をしたものの、いかんせん態勢が悪い。
時期にみるみる敵は降参し、どんどん兵数が減っていく。そして、……あんま言いたくないけど、オズモンド子爵が敵歩兵の戦線を突破し殲滅しだした。
「よし! 敵陣に穴が開いた、サンダーランド公爵に伝えよ! 空いた穴に突っ込み我が騎兵をもって相手本陣を強襲せよと!」
「はっ!」
伝令は馬に乗って陣を駆け巡る。この部隊はウェリントンが温存していたわが軍きっての精鋭騎兵、切り札だ。
──それは歴史が動いた瞬間だった。我が重装騎兵はやすやすと敵を突破していき、どんどん相手の陣に迫る。後のウェリントンの采配もさすがだった。
「敵重装歩兵が出てきた、やってきた歩兵に騎兵で突撃をかけるよう角笛を鳴らせ!」
「はっ」
ブォオオオ──!
「突撃───!!!」
瞬きする暇もなかったと言っても良かった。タイミング良く騎兵突撃を行ったので、移動中だった歩兵は身構える暇もなく斜めから突撃を受け、不意打ちになったため、まるでトラックがひき潰すように一瞬で壊滅した!
「よし、いいぞ! くっはははっはは──!!」
いきなり、まるで悪役のように高笑いを始めたウェリントンに私はびっくりした。──えっ、君そんなキャラだったの!? なんか、闇落ちしそう……。変な不安を少し感じながらも、まあ、戦さで気持ちが高ぶっているので仕方ないよねってことで私は納得したのだった。
そのまま騎兵は敵本陣に突撃していき、相手の抵抗の終わった。敵迂回軍の騎兵は傭兵だったため、負けが濃厚となるとあっさり逃げ始めた。逆Vの字に突っ込んできた歩兵は殲滅され、むしろわが軍は陣から出て敵本陣を逆に包囲したのだ!
「……ん、エジンバラ王や上級貴族たちの旗が下げられたぞ!」
「逃げましたな。もはや、勝敗は決しました。これ以上の戦闘は無用だと思ったのでしょう」
ウェリントンが漏らした言葉にギルバートは答えた。ついにウェリントンは最後の命令を出す。
「全軍突撃の命を出せ、敵の戦力をできる限り削ぐぞ! 掃討戦だ!」
彼の言う掃討戦が行われたあとは一方的だった。どんどん相手は降伏し逃げる間もなく殲滅されていった。
のちにわかった数字はわが軍の被害、死傷者4千ほどに対し、相手の損害は死傷者3万5千、捕虜3万、逃げ延びられたのも速めに逃亡した傭兵ばかりだ。まさに未曾有の大勝利だった……。
──高まる勝利への昂奮、にわかに上がる勝利への雄叫び。私たちは自然と小高い丘の周りに集まった。ネーザン王旗が掲げられていたからだ。その丘を一人の男が勇ましく馬に乗って駆け上っていく。
ウェリントンだった。夕日に濡れた黄金の髪の毛と白銀の鎧にマントをなびかせて、白馬の力強い蹄の音。皆の前で手綱を引き、馬が足を高く掲げ、銀色の輝く王家の剣を金色に沈む夕日に捧げた。輝かしい我らの王、ウェリントン! 皆が勇ましい王の姿を心に刻み、歓声を上げた!
「ザ・キング・オブ・ネーザン! ザ・キング・オブ・ネーザン!」
兵士たちは勝ち鬨を上げる。なかには、
「統一王! 統一王!……」
と叫ぶものもいた。アレクサンダーは統一王の名だ。ウェリントンを統一王と認めるほどの賞賛であり、それに値する活躍だった。私は彼が歴史の中心の躍り出たことを誇りに思い、温かな気持ちで彼の雄々しき姿を心に深くしみこませた。
……マイ・キング・ウェリントン……
──かくして、カールトン会戦は大陸同盟軍の大勝利で終わった。
こういう時は兵たちの戦いの心構えで崩れるかどうかが決まる。しかし、どうなる……? どうなる……? 私は勝っているのか負けているのかわからない。それはウェリントンやギルバートも同じだった。
二人の感想は今どっちに転ぶかわからないという状況だそうだ、反同盟軍も動かなかった。……たぶん動けなかったのだろう。お互い切り札は手元に残している。情勢が傾いたときに一気に決めるつもりだろう。まさに名将同士の戦いだと私は思った。
──その時だった。
にわかにテットベリー軍が動いたのだ……! 逆Vの字陣形のほうに向かって……!
「──説得は無駄であったか……」
ウェリントンは落胆しながらも静かに笑っていた。ジェラード、それがあなたの答えなの……?
テットベリー軍の動きを私たちはじっと眺めていた。その時だった──、一人の騎士の私たちのもとに伝令がやってきたのだ──!
「──何だ!?」
ウェリントンが驚くのも無理はない、明らかにわが軍の騎士ではなかった。どう見てもネーザンゆかりものと違い、見知らぬ紋章と旗を掲げている。私たちが何事かと怪しんでいると、その騎士は言い放った。
「──我はテットベリー軍の騎士なり! 義をもってわが軍はネーザン同盟にお味方いたす!!」
瞬間、私たちは隣にいた騎士たちと抱き合っていた。やったあ! 勝った! まわりで歓喜の声が上がっていく。一気に状況が一変して、ウェリントンは静かに硬く拳を握りしめた。
「……風が吹いたか……!」
言葉の通り、テットベリー軍は逆V字の陣を半包囲した敵軍に突っ込んだ! 虚を突かれ後ろを取られた敵軍はむしろ反対に半包囲される形となった。相手は不意を突かれ、最初は抵抗をしたものの、いかんせん態勢が悪い。
時期にみるみる敵は降参し、どんどん兵数が減っていく。そして、……あんま言いたくないけど、オズモンド子爵が敵歩兵の戦線を突破し殲滅しだした。
「よし! 敵陣に穴が開いた、サンダーランド公爵に伝えよ! 空いた穴に突っ込み我が騎兵をもって相手本陣を強襲せよと!」
「はっ!」
伝令は馬に乗って陣を駆け巡る。この部隊はウェリントンが温存していたわが軍きっての精鋭騎兵、切り札だ。
──それは歴史が動いた瞬間だった。我が重装騎兵はやすやすと敵を突破していき、どんどん相手の陣に迫る。後のウェリントンの采配もさすがだった。
「敵重装歩兵が出てきた、やってきた歩兵に騎兵で突撃をかけるよう角笛を鳴らせ!」
「はっ」
ブォオオオ──!
「突撃───!!!」
瞬きする暇もなかったと言っても良かった。タイミング良く騎兵突撃を行ったので、移動中だった歩兵は身構える暇もなく斜めから突撃を受け、不意打ちになったため、まるでトラックがひき潰すように一瞬で壊滅した!
「よし、いいぞ! くっはははっはは──!!」
いきなり、まるで悪役のように高笑いを始めたウェリントンに私はびっくりした。──えっ、君そんなキャラだったの!? なんか、闇落ちしそう……。変な不安を少し感じながらも、まあ、戦さで気持ちが高ぶっているので仕方ないよねってことで私は納得したのだった。
そのまま騎兵は敵本陣に突撃していき、相手の抵抗の終わった。敵迂回軍の騎兵は傭兵だったため、負けが濃厚となるとあっさり逃げ始めた。逆Vの字に突っ込んできた歩兵は殲滅され、むしろわが軍は陣から出て敵本陣を逆に包囲したのだ!
「……ん、エジンバラ王や上級貴族たちの旗が下げられたぞ!」
「逃げましたな。もはや、勝敗は決しました。これ以上の戦闘は無用だと思ったのでしょう」
ウェリントンが漏らした言葉にギルバートは答えた。ついにウェリントンは最後の命令を出す。
「全軍突撃の命を出せ、敵の戦力をできる限り削ぐぞ! 掃討戦だ!」
彼の言う掃討戦が行われたあとは一方的だった。どんどん相手は降伏し逃げる間もなく殲滅されていった。
のちにわかった数字はわが軍の被害、死傷者4千ほどに対し、相手の損害は死傷者3万5千、捕虜3万、逃げ延びられたのも速めに逃亡した傭兵ばかりだ。まさに未曾有の大勝利だった……。
──高まる勝利への昂奮、にわかに上がる勝利への雄叫び。私たちは自然と小高い丘の周りに集まった。ネーザン王旗が掲げられていたからだ。その丘を一人の男が勇ましく馬に乗って駆け上っていく。
ウェリントンだった。夕日に濡れた黄金の髪の毛と白銀の鎧にマントをなびかせて、白馬の力強い蹄の音。皆の前で手綱を引き、馬が足を高く掲げ、銀色の輝く王家の剣を金色に沈む夕日に捧げた。輝かしい我らの王、ウェリントン! 皆が勇ましい王の姿を心に刻み、歓声を上げた!
「ザ・キング・オブ・ネーザン! ザ・キング・オブ・ネーザン!」
兵士たちは勝ち鬨を上げる。なかには、
「統一王! 統一王!……」
と叫ぶものもいた。アレクサンダーは統一王の名だ。ウェリントンを統一王と認めるほどの賞賛であり、それに値する活躍だった。私は彼が歴史の中心の躍り出たことを誇りに思い、温かな気持ちで彼の雄々しき姿を心に深くしみこませた。
……マイ・キング・ウェリントン……
──かくして、カールトン会戦は大陸同盟軍の大勝利で終わった。
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