28 / 29
第4話 真実がわからないっ!
真実がわからないっ!⑧
しおりを挟む
チクチクと胸が痛む。まるで締めつけられるような痛み。
チクリ
くっ、また。なんだこの胸の痛みは?
俺は何も間違っちゃいない。今以上に大切なものなんてあるか? 何を気にしてる? もしかして本心では過去が知りたくてウズウズしてるってのか?
いや、そんなことはない、散々考えた答えだ。迷うな!
もしかすると、これは罪悪感なのか? って、何のだよ!? そんなものでもない。じゃあ……何なんだよ?
モヤモヤと自問自答を続けているうちに、この痛みと似た感覚について思い当たってしまった。これはそう……恋愛にみるような感覚。恋人達の仲を引き裂くような、そんな痛み。
なんでアイに対してそんなこと思うんだ? 俺は間違いなくユウのことが好きなのに、この想いはいったい何だ? まさかこれが……これが過去の記憶だっていうのか?
遠ざかってゆくアイをずっと目で追いながら、言いようのない感情に戸惑っていた。
その時、河原から猫のキリオが飛び出してきた。お世辞にも人なつっこいとはいえない奴だが、ここにいる俺でもなく、あれから世話を続けているユウでもない、アイの足元にすりよった。
俺は、何か大事なことを見落としてないだろうか。
ふとユウとの会話が頭に思い浮かんだ。
『やっ、私じゃないよ!』
あの猫の名前について聞いた時のことだ。
『ただの偶然だろうけど、たまたま《キリオ》って呼ばれてるの聞いて……』
ユウではない誰かが猫に俺の名前をつけていた。まさか……アイだったのか?
頭の中で何かが繋がるように、アイから目が離せなくなる。そこに、ついさっき自分が口にした言葉が重なった。
― 過去を断ち切れ ―
なんてこと言っちまったんだ俺は!
駄目に決まってる。
これまで俺が関わってきた人との繋がりはどこにも消えちゃいない。全部残ってるんだ。ただ、俺がその繋がりを認識できてないだけ。目の前に見えてるはずなのに、それに気付かず壊してしまう。それだって痛みだ! 過去を知らなくていいワケなんてねぇ!
気が付くと勝手に足が動いていた。アイの元へ。
「待ってくれ!」
アイはこちらに振り向くことなく足を止めた。
「まだ何か用?」
「話を……話を聞かせてくれ!」
その言葉に反応してアイは振り向いた。
ブブブ ブブブブブ……
同時にスマホのバイブが振動する。俺の様子を見て、アイもそれに気付いたようだ。
「出たら?」
「ワリィ」
画面にある着信はユウからだった。まだ部活が終わるには早いよな?
「もしもし?」
『キリオ! キリオ! カオルがっ……!』
悲鳴に近い声がスマホから漏れるほど響いた。
「ユウ、どうしたんだ?」
『うぅ……ぁ』
発せようとした言葉が声になる前に詰まっていく。たぶんユウは……泣いていた。
「ユウ、そっと、ゆっくりでいいから」
なだめるように声を落とし、ユウが落ち着いて話せるまで待った。
電話の内容は《カオルが突然いなくなった》という連絡だった。
アイは何だかやりきれないといった表情を見せながら、「また日を改めましょう」と言った。今は俺もそれに了解し、ユウの元へ急いだ。
チクリ
くっ、また。なんだこの胸の痛みは?
俺は何も間違っちゃいない。今以上に大切なものなんてあるか? 何を気にしてる? もしかして本心では過去が知りたくてウズウズしてるってのか?
いや、そんなことはない、散々考えた答えだ。迷うな!
もしかすると、これは罪悪感なのか? って、何のだよ!? そんなものでもない。じゃあ……何なんだよ?
モヤモヤと自問自答を続けているうちに、この痛みと似た感覚について思い当たってしまった。これはそう……恋愛にみるような感覚。恋人達の仲を引き裂くような、そんな痛み。
なんでアイに対してそんなこと思うんだ? 俺は間違いなくユウのことが好きなのに、この想いはいったい何だ? まさかこれが……これが過去の記憶だっていうのか?
遠ざかってゆくアイをずっと目で追いながら、言いようのない感情に戸惑っていた。
その時、河原から猫のキリオが飛び出してきた。お世辞にも人なつっこいとはいえない奴だが、ここにいる俺でもなく、あれから世話を続けているユウでもない、アイの足元にすりよった。
俺は、何か大事なことを見落としてないだろうか。
ふとユウとの会話が頭に思い浮かんだ。
『やっ、私じゃないよ!』
あの猫の名前について聞いた時のことだ。
『ただの偶然だろうけど、たまたま《キリオ》って呼ばれてるの聞いて……』
ユウではない誰かが猫に俺の名前をつけていた。まさか……アイだったのか?
頭の中で何かが繋がるように、アイから目が離せなくなる。そこに、ついさっき自分が口にした言葉が重なった。
― 過去を断ち切れ ―
なんてこと言っちまったんだ俺は!
駄目に決まってる。
これまで俺が関わってきた人との繋がりはどこにも消えちゃいない。全部残ってるんだ。ただ、俺がその繋がりを認識できてないだけ。目の前に見えてるはずなのに、それに気付かず壊してしまう。それだって痛みだ! 過去を知らなくていいワケなんてねぇ!
気が付くと勝手に足が動いていた。アイの元へ。
「待ってくれ!」
アイはこちらに振り向くことなく足を止めた。
「まだ何か用?」
「話を……話を聞かせてくれ!」
その言葉に反応してアイは振り向いた。
ブブブ ブブブブブ……
同時にスマホのバイブが振動する。俺の様子を見て、アイもそれに気付いたようだ。
「出たら?」
「ワリィ」
画面にある着信はユウからだった。まだ部活が終わるには早いよな?
「もしもし?」
『キリオ! キリオ! カオルがっ……!』
悲鳴に近い声がスマホから漏れるほど響いた。
「ユウ、どうしたんだ?」
『うぅ……ぁ』
発せようとした言葉が声になる前に詰まっていく。たぶんユウは……泣いていた。
「ユウ、そっと、ゆっくりでいいから」
なだめるように声を落とし、ユウが落ち着いて話せるまで待った。
電話の内容は《カオルが突然いなくなった》という連絡だった。
アイは何だかやりきれないといった表情を見せながら、「また日を改めましょう」と言った。今は俺もそれに了解し、ユウの元へ急いだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
Bグループの少年
櫻井春輝
青春
クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
ほのぼの学園百合小説 キタコミ!
水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、青春学園物語。
ほんのりと百合の香るお話です。
ごく稀に男子が出てくることもありますが、男女の恋愛に発展することは一切ありませんのでご安心ください。
イラストはtojo様。「リアルなDカップ」を始め、たくさんの要望にパーフェクトにお応えいただきました。
★Kindle情報★
1巻:第1話~第12話、番外編『帰宅部活動』、書き下ろしを収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4
2巻:第13話~第19話に、書き下ろしを2本、4コマを1本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP
3巻:第20話~第28話、番外編『チェアリング』、書き下ろしを4本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3
4巻:第29話~第40話、番外編『芝居』、書き下ろし2本、挿絵と1P漫画を収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P
5巻:第41話~第49話、番外編2本、書き下ろし2本、イラスト2枚収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL
6巻:第50話~第55話、番外編2本、書き下ろし1本、イラスト1枚収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ
Chit-Chat!1:1話25本のネタを30話750本と、4コマを1本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H
★第1話『アイス』朗読★
https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE
★番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読★
https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI
★Chit-Chat!1★
https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34

俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる