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第4話 真実がわからないっ!
真実がわからないっ!①
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「ほら、ユウはあそこだよ」
カオルに促され、高架下に目をやると、そこには学校の制服を着た女子がいた。日曜なのに制服っていう真面目さがユウらしい。
そして腕には黒い猫を抱いていた。
一瞬、誰かと見間違えたような感覚が襲った。
気のせいか? いや、このシチュエーション、前にもどこかで……
河原、高架下、少女、猫……
「ほらキリオ、ユウを待たせるなって」
カオルが俺の背中を押した。
「お、おうっ」
押された勢いのまま、河原まで下りてゆく。
「きゃっ」
俺の足音に驚いたのか、さっきの猫がユウの腕から逃げ出してしまった。
「ご、ごめん」
ユウは首を振った。
「ううん、いいの。本物が来たから隠れちゃったのかな」
ん?
「本物?」
「あ、あの子、《キリオ》って名前なの、だから」
「なーる……って、俺の名前つけたの!?」
「やっ、私じゃないよ!」
ユウが慌てて手を振った。
確かに、ユウにしては大胆な気がする。
「まだ付き合ってもない人の名前つけるなんて……ね? ホントに偶然、《キリオ》って呼ばれてるのを聞いて、それから気になっちゃったの」
「そーなんだ……」
ん?
「今のまだって……」
「あ、や、それはあのっ……」
ユウは否定も肯定もできず、それが却って言わんとしていることを強調してしまう。
「これからっ……じゃなくって! あああ、私なに言ってんだろ?」
「ユウ!」
「えっ、は、はいっ」
「俺と付き合ってくれない?」
自分でも驚くほどスッと言葉が出た。でも言われたユウの方がビックリしたようで、しばらく固まってしまった。
そして少しして動いたかと思うと、俺の顔をじっと覗き込んできた。
つーか、目! だから目ぇ恐いって!
ただでさえ目がでかいのに、さらに見開いてる。
「うんっ!!」
え、今「うん」って?
そう言った瞬間、ユウは首を縦に振ってそのまま俯いた。
そしてまた急にユウが顔をあげたと思ったら……
「うん! うん! うん!」
おおっ、なんだなんだ?
いや、返事はOKってことみたいだけど、凄いテンパってるっぽい。
「あ、や、分かった。1回でいいから」
「うん、うれし……」
素直だなぁ、ユウは。
「俺も……」
「そこでちゅーっと……」
二人だけのやり取りに、突然の乱入者が。
「え!? おわっ! カオル!」
「カ、カオル? なんで?」
そういやコイツがいたのを忘れてた。ユウもビックリしてる。
「おまっ、ずっと見てたのかよ! そこはハズすだろフツー!」
「ごめんごめん、いい雰囲気だったのにお邪魔しちゃった」
両手を合わせて謝ってるが、舌が微妙に出てる。なんだその茶目っ気は、確信犯だろ!
だけど……そんな態度とは裏腹に、カオルの顔は寂しそうに見えた。なんか目も微かに潤んでないか?
「カオル、お前……」
決壊するようにカオルの頬を涙がつたった。
「あれ……おかしいな、あれ?」
「カオル……」
ユウも心配そうに声をかける。
「あはは、うれし涙」
「え?」
「ユウは私の親友だから……凄くうれしい。これでやっと安心できる」
「カオル……」
「あと、ちょっと寂しいのもあるかも。ユウを取られちゃって。こういうのも嫉妬って言うのかな」
「べ、別に取っちゃいねーだろ」
「そだね。でも、おめでと、二人ともっ!」
「わっ」
「きゃ」
カオルはそう言って、俺とユウをくっつけるように押し当ててその場から離れた。
「このやろっ」
俺は何とか言い返したが、ユウは顔を真っ赤にしてしまっていた。
当のカオルは道路側に駆け上がったところで振り返った。
「じゃあねユウ、また明日学校で! お昼はアタシとだかんねー! キリオもじゃあね!」
「俺はオマケか!」
カオルは手を振りながら帰っていった。
「ったく、あのおせっかいめ!」
「でも……カオルには本当に感謝してる。色々と私のこと励ましてくれたり、キリオとのことも仲直りのキッカケを作ってくれたり」
「そうだな。いい奴だよな」
「うん!」
ユウの満面の笑みにクラっとくる。つーか、これだけ可愛かったら、落ちない奴なんていないだろ。
でも確かに、カオルには感謝だな。
「ねえキリオ」
「ん?」
「明日……一緒に学校行かない?」
ユウが大きな目で覗き込んでくる。駄目だその目は、なんでも「うん」って言っちまいそうだ。
「せっかく付き合うことになったんだし、ちょっとだけ浸りたいなって。ほらっ、お昼はカオルと一緒だし、だから朝」
「ユウ、朝練は?」
「明日だけは朝練サボりっ」
あの真面目なユウがサボリって、相当うれしいんだな。
「だからキリオも」
「ん、俺? 部活入ってないぜ」
「ちがーう、キリオは遅刻ばっかりだから、明日だけは遅刻サボってよね」
「おう……っ」
やっべ、いちいち可愛いな!
この雰囲気だったら、その……そっとユウに伸ばした手が空を切った。
あれ?
いつの間にかユウは俺の隣から移動して、道路に上がってしまっていた。
「じゃ、今日は帰るね! 明日の朝、キリオの家に迎えに行くからね!」
「え、ユウ、帰るって、じゃあ送ってくよ」
「ごめん、今すっごく走りたいの! キリオも走る?」
ん? 走る? いやいや、ついてけねーだろ。
「ああっと、やめとく」
「ははは、だよね。じゃあね!」
「おう、こけんなよ」
きっと、うれしくて何かせずにはいられないんだろうな。
それにしても健康的な……邪な俺とはエラい違いだ。
一緒に登校か……思い返すと今頃うれしさが込み上げてきた。
なんだよ、青春してんな、俺!
カオルに促され、高架下に目をやると、そこには学校の制服を着た女子がいた。日曜なのに制服っていう真面目さがユウらしい。
そして腕には黒い猫を抱いていた。
一瞬、誰かと見間違えたような感覚が襲った。
気のせいか? いや、このシチュエーション、前にもどこかで……
河原、高架下、少女、猫……
「ほらキリオ、ユウを待たせるなって」
カオルが俺の背中を押した。
「お、おうっ」
押された勢いのまま、河原まで下りてゆく。
「きゃっ」
俺の足音に驚いたのか、さっきの猫がユウの腕から逃げ出してしまった。
「ご、ごめん」
ユウは首を振った。
「ううん、いいの。本物が来たから隠れちゃったのかな」
ん?
「本物?」
「あ、あの子、《キリオ》って名前なの、だから」
「なーる……って、俺の名前つけたの!?」
「やっ、私じゃないよ!」
ユウが慌てて手を振った。
確かに、ユウにしては大胆な気がする。
「まだ付き合ってもない人の名前つけるなんて……ね? ホントに偶然、《キリオ》って呼ばれてるのを聞いて、それから気になっちゃったの」
「そーなんだ……」
ん?
「今のまだって……」
「あ、や、それはあのっ……」
ユウは否定も肯定もできず、それが却って言わんとしていることを強調してしまう。
「これからっ……じゃなくって! あああ、私なに言ってんだろ?」
「ユウ!」
「えっ、は、はいっ」
「俺と付き合ってくれない?」
自分でも驚くほどスッと言葉が出た。でも言われたユウの方がビックリしたようで、しばらく固まってしまった。
そして少しして動いたかと思うと、俺の顔をじっと覗き込んできた。
つーか、目! だから目ぇ恐いって!
ただでさえ目がでかいのに、さらに見開いてる。
「うんっ!!」
え、今「うん」って?
そう言った瞬間、ユウは首を縦に振ってそのまま俯いた。
そしてまた急にユウが顔をあげたと思ったら……
「うん! うん! うん!」
おおっ、なんだなんだ?
いや、返事はOKってことみたいだけど、凄いテンパってるっぽい。
「あ、や、分かった。1回でいいから」
「うん、うれし……」
素直だなぁ、ユウは。
「俺も……」
「そこでちゅーっと……」
二人だけのやり取りに、突然の乱入者が。
「え!? おわっ! カオル!」
「カ、カオル? なんで?」
そういやコイツがいたのを忘れてた。ユウもビックリしてる。
「おまっ、ずっと見てたのかよ! そこはハズすだろフツー!」
「ごめんごめん、いい雰囲気だったのにお邪魔しちゃった」
両手を合わせて謝ってるが、舌が微妙に出てる。なんだその茶目っ気は、確信犯だろ!
だけど……そんな態度とは裏腹に、カオルの顔は寂しそうに見えた。なんか目も微かに潤んでないか?
「カオル、お前……」
決壊するようにカオルの頬を涙がつたった。
「あれ……おかしいな、あれ?」
「カオル……」
ユウも心配そうに声をかける。
「あはは、うれし涙」
「え?」
「ユウは私の親友だから……凄くうれしい。これでやっと安心できる」
「カオル……」
「あと、ちょっと寂しいのもあるかも。ユウを取られちゃって。こういうのも嫉妬って言うのかな」
「べ、別に取っちゃいねーだろ」
「そだね。でも、おめでと、二人ともっ!」
「わっ」
「きゃ」
カオルはそう言って、俺とユウをくっつけるように押し当ててその場から離れた。
「このやろっ」
俺は何とか言い返したが、ユウは顔を真っ赤にしてしまっていた。
当のカオルは道路側に駆け上がったところで振り返った。
「じゃあねユウ、また明日学校で! お昼はアタシとだかんねー! キリオもじゃあね!」
「俺はオマケか!」
カオルは手を振りながら帰っていった。
「ったく、あのおせっかいめ!」
「でも……カオルには本当に感謝してる。色々と私のこと励ましてくれたり、キリオとのことも仲直りのキッカケを作ってくれたり」
「そうだな。いい奴だよな」
「うん!」
ユウの満面の笑みにクラっとくる。つーか、これだけ可愛かったら、落ちない奴なんていないだろ。
でも確かに、カオルには感謝だな。
「ねえキリオ」
「ん?」
「明日……一緒に学校行かない?」
ユウが大きな目で覗き込んでくる。駄目だその目は、なんでも「うん」って言っちまいそうだ。
「せっかく付き合うことになったんだし、ちょっとだけ浸りたいなって。ほらっ、お昼はカオルと一緒だし、だから朝」
「ユウ、朝練は?」
「明日だけは朝練サボりっ」
あの真面目なユウがサボリって、相当うれしいんだな。
「だからキリオも」
「ん、俺? 部活入ってないぜ」
「ちがーう、キリオは遅刻ばっかりだから、明日だけは遅刻サボってよね」
「おう……っ」
やっべ、いちいち可愛いな!
この雰囲気だったら、その……そっとユウに伸ばした手が空を切った。
あれ?
いつの間にかユウは俺の隣から移動して、道路に上がってしまっていた。
「じゃ、今日は帰るね! 明日の朝、キリオの家に迎えに行くからね!」
「え、ユウ、帰るって、じゃあ送ってくよ」
「ごめん、今すっごく走りたいの! キリオも走る?」
ん? 走る? いやいや、ついてけねーだろ。
「ああっと、やめとく」
「ははは、だよね。じゃあね!」
「おう、こけんなよ」
きっと、うれしくて何かせずにはいられないんだろうな。
それにしても健康的な……邪な俺とはエラい違いだ。
一緒に登校か……思い返すと今頃うれしさが込み上げてきた。
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