記憶がないっ！

第２話 恋がしたいっ！

恋がしたいっ！⑦

　家に着くと、待っていたかのように妹のサヨがリビングから出てきた。
「おかえりお兄ちゃん。さっき森戸さんって女の人から電話があったよ」
　森戸って……ああ、ユウからか？
「そっかサンキュ」

　なんで家に？　スマホにかけりゃいいのに、と思いつつスマホを見ると、ユウからの着信が二件。ついでにタケルからも一件入っていた。
　しまった、それで家にかけてきたのか。アレだよな、昨日はユウからの誘いを断っちまった訳だし……やっぱ、かけ直した方がいいよな？

　自分の部屋に行き電気をつけた。

　ブブブ　ブブブブッ

　着信だ。ユウ、それともタケル？
「もしもし……」
　電話に出る瞬間、ディスプレイに映った《非通知》の文字が目に入った。
　しまった！！

『今回は早かったね』
　この高い声のトーン、やっぱりあの女だ！　早く電話を切らないと。
『ユウは……』
　！？
　なんでコイツからユウの名前が出てくるんだ！？　すぐに電話を切った方がいい。だけど……コイツは俺が知っている誰かなのか？

『ユウは今日、ずっと駅前でアンタを待ってたんだよ』
　駅前？　どうして？
　俺との約束じゃない。コイツまさか……俺だけじゃなくユウにまでちょっかい出してんのか！？

「お前は誰だ！」
『アタシ？　あっはっはっは！』
　女は受話器の向こう側で高らかに笑っている。
『アンタどうせ忘れちゃうのに聞いてどうすんのさ！』
　この声のイントネーション……

『耳を澄すまして考えても判わからないよ！　特別な電話使ってんだから。それと……アタシの声は電話越ごしだと妙な力があってね』
　もう少し……この感じ、何か思い出せそうなのに。

『……記憶を消すことができるの』
　！？
「なっ！」
　記憶を消すだと？　ふざけてるのか！？

『もっと別の力だったら良かったのに、記憶を消すだけなんてさー。しかも都合よく操作することもできやしない』
　く、惑まどわされるな。とにかく話を延のばさないと。
「何言ってるんだ？　そうだ、秘密！　秘密って何だったんだ？　どうせ記憶が消されるなら最後に教えてくれよ！」
『ダーメ』
「なんで！？」

『アンタ今、メモとってるでしょ？　サヨナラ』
　マズい！　電話を切らないと……

『リセット』

（三話に続く）