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第2話 恋がしたいっ!
恋がしたいっ!③
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ユウはたぶん、俺に好意を持ってくれている。まだ彼女の中でもボンヤリした状態のようだけど、それは俺の態度がハッキリしてないせいもあると思う。
俺はというと、勿論、ユウのことは気になってる。だけど、じゃあ付き合いたいかっていうと、そういうのとはちょっと違う気がする。もしも記憶を失っていなければ……いや、俺がもっとユウのことを見ていれば、二人は付き合ってたんだろうか?
「なーに言ってんだ俺」
思わず吹きそうになった。ユウのことといい、河原の子といい、俺、記憶喪失だぜ? なのに「好き」とかってなんだよ、おかしいだろ。
!?
「えっ、あ……」
ウワサをすれば、例の河原にいた子がすぐ目の前にいた。
マジか、同じ学校だったのか! しかも彼女のいる下駄箱は三年生の場所だ。年上! どうりで大人っぽいと思ったんだ。
すぐに名前も分かった。「アイ」と、彼女の友達が彼女をそう呼んでいた。ピッタリのいい名前だ。
まあ、彼女が同じ学校で、三年生で、名前がアイだと分かったところで、俺とは何の接点もないんだけどな。頭ではそう解っていても、昨日見かけた彼女の印象が頭から離れない。
どうにも落ち着かず、休み時間の度に校内をうろついてしまった。
なんでもいいから何か話したい、キッカケがほしい。そう思った矢先、前からアイが歩いてきていた。
「!」
咄嗟に体が隠れようとする。
何やってんだ俺! 今「キッカケがほしい」って思ったばかりだろ! 逃げるな! それに……一度記憶をなくしてるんだ、これ以上失うものなんてないだろ!
俺は近付いてくるアイに勇気を出して声を掛けた。
「あの……すいません」
「はい?」
「よ、よく河原の高架下にいますよね? 俺もあそこよく通るんで……」
だぁー! 何言ってんだ俺は!? 「よく」って、一度しか見かけたことないし、しかも、よく通ってたから話し掛けるってなんだ!? これじゃ不審者じゃねーか。
アイは驚いた顔で俺を見ていた。信じられない、といった表情だ。
やばい、なんか俺、まずいこと言ったのか?
「……まさか、君の方から声を掛けてくるなんてね」
「えっ?」
アイは俺を知ってる?
いやでも、それをそのまま聞く訳にもいかない。な、何て切り返せばいいんだ?
「えっとそれは、どういう意味ですか?」
濁してしまった。
「ふーん」
アイから驚いた様子は消え、こちらを覗き込むような表情に変わった。
「ねえ、それじゃ明後日のお昼に改めてあそこの高架下で話さない?」
「へ? あっ、はい!」
予想外の内容に、間の抜けた返事が出てしまった。
「決まり。じゃあ日曜のお昼2時に、高架下に来てね」
「は、はいっ!」
アイは足早に行ってしまったが、ひいき目にみても嬉しそうだった。
俺はというと、勿論、ユウのことは気になってる。だけど、じゃあ付き合いたいかっていうと、そういうのとはちょっと違う気がする。もしも記憶を失っていなければ……いや、俺がもっとユウのことを見ていれば、二人は付き合ってたんだろうか?
「なーに言ってんだ俺」
思わず吹きそうになった。ユウのことといい、河原の子といい、俺、記憶喪失だぜ? なのに「好き」とかってなんだよ、おかしいだろ。
!?
「えっ、あ……」
ウワサをすれば、例の河原にいた子がすぐ目の前にいた。
マジか、同じ学校だったのか! しかも彼女のいる下駄箱は三年生の場所だ。年上! どうりで大人っぽいと思ったんだ。
すぐに名前も分かった。「アイ」と、彼女の友達が彼女をそう呼んでいた。ピッタリのいい名前だ。
まあ、彼女が同じ学校で、三年生で、名前がアイだと分かったところで、俺とは何の接点もないんだけどな。頭ではそう解っていても、昨日見かけた彼女の印象が頭から離れない。
どうにも落ち着かず、休み時間の度に校内をうろついてしまった。
なんでもいいから何か話したい、キッカケがほしい。そう思った矢先、前からアイが歩いてきていた。
「!」
咄嗟に体が隠れようとする。
何やってんだ俺! 今「キッカケがほしい」って思ったばかりだろ! 逃げるな! それに……一度記憶をなくしてるんだ、これ以上失うものなんてないだろ!
俺は近付いてくるアイに勇気を出して声を掛けた。
「あの……すいません」
「はい?」
「よ、よく河原の高架下にいますよね? 俺もあそこよく通るんで……」
だぁー! 何言ってんだ俺は!? 「よく」って、一度しか見かけたことないし、しかも、よく通ってたから話し掛けるってなんだ!? これじゃ不審者じゃねーか。
アイは驚いた顔で俺を見ていた。信じられない、といった表情だ。
やばい、なんか俺、まずいこと言ったのか?
「……まさか、君の方から声を掛けてくるなんてね」
「えっ?」
アイは俺を知ってる?
いやでも、それをそのまま聞く訳にもいかない。な、何て切り返せばいいんだ?
「えっとそれは、どういう意味ですか?」
濁してしまった。
「ふーん」
アイから驚いた様子は消え、こちらを覗き込むような表情に変わった。
「ねえ、それじゃ明後日のお昼に改めてあそこの高架下で話さない?」
「へ? あっ、はい!」
予想外の内容に、間の抜けた返事が出てしまった。
「決まり。じゃあ日曜のお昼2時に、高架下に来てね」
「は、はいっ!」
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