記憶がないっ!

相馬正

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第1話 記憶がないっ!

記憶がないっ!④

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「おっはよっ! 二人とも」
 また一人、今度は明るめの女子が現れた。
「おっす!」
 タケルが挨拶を返した。この子も5人の中の一人なのか? それとも、もしかしてこの子が……ユウ?
 いかんいかん意識するな。とにかく挨拶だ。
「お、おう」
「な~にキリオ、何か変だぞー?」
「だろー」
 当たり前だ! お前は誰なんだ? ユ、ユウなのか、違うのか?
 そうだ、ユウなら見た目はギャル風の……ん、んん? 黒い髪は長くも短くもなく普通くらい、セミロングっていうのか? 化粧っ気もないし、ギャルといわれれば何とか見えなくもないが……いや、本当にそうか?

「キリオとヒロはいっつも遅刻組なのに、今朝はどうしちゃったの?」
 ヒロ?
「だろ、コイツ言わねーんだよ。俺はてっきりユウと付き合い出したのかと思ってよ」
「ああ、ユウ真面目だもんね。でも、ないない、キリオって相手にまるタイプじゃないじゃん」
「そういやそうだな。カオルお前、頭いいなー」
 カオル!?
「まーねー」
 いかんいかん、聞き役に徹しちゃ駄目だ。
「勝手に言ってろ」
 顔と口では平静をよそおっていたが、心の中では思わず「ナイスだタケル!」と、叫んでいた。
 この得意にしてる女子が《カオル》か、どうりでユウの特徴とは一致しない訳だ。

「それじゃ勝手に言うけどさー、二人ともお互いのことどう思ってんだろね?」
「カオル……そーゆーのは本人がいないとこで言わねぇか?」
 タケルの的確なツッコミ、まったくその通りだ。
「あそっか、今朝は珍しくキリオがいるんだった。じゃあユウの方はどうかな?」
 コイツ、わざとやってんだろ。
「あー、俺はいい線いってると思うぜ。ユウって素直だから感情とか隠しきれないっていうか、やっぱキリオがいると違う気するもんな」
「お、タケルもなかなかするどいね。つーかアンタ、意外にユウのことよーく見てるのね」
「バッカ、誤解まねくような言い方すんな! キリオ、違ぇーからな」
「なーに言い訳してんのよ」
 何ていうかこの二人、息が合い過ぎてて全然会話に割り込めねぇ。つーか、さっきから人の恋路こいじばっか好き勝手言いやがって、お前らこそどーなんだっての。
 あと、さらっと《ヒロ》の話も出てたな。俺と同じ遅刻常習犯とか言ってたけど、あれ、それじゃ俺って遅刻ばっかしてたのか? ま、まあいいだろう、過ぎたことだ。今日からは違う。

 とにかくこれで、例の5人のうち残るは《シン》だけになった。まあ、《ユウ》も《ヒロ》も名前が出ただけで、まだ会ってないけどな。どうせ学校へ行けば全員に会えるはずだ。

 それにしても、タケルとカオルがずっとあの調子でしゃべり続けるからヤバイ。記憶喪失だとさとられない程度に相槌あいづちは打ってるつもりだけど、ちょっと口数少な過ぎるか? まあ、ほとんど他愛たわいもない話だし、たぶん大丈夫だろ。
 ただ、学校に着いたら、さすがにこうはいかない。せめて名前が出た奴のことはおさらいしておこう。

 《タケル》は、黒のロンゲでガッチリ系と一見いかにもチャラ男だけど、意外に社交的だ。登校中に会った他の奴等との絡みからも交友関係が広いのが分かった。俺とは親友のようだが、少しミスマッチな気がする。まあ、とにかく話し易いし、気のいい奴だから、誰とでも合うんだろうな。

 《カオル》は、黒のセミロング以外これといった特徴がない。顔立ちはまあ普通って感じだ。タケルと同様に交友関係は広そうで、登校中よく声を掛けられていた。しかも男女へだてない。ユウとは親友らしいから、俺とタケルの関係もこの二人に絡んだものかもしれない。

 《ユウ》は、一見ギャル風だけど真面目らしい。今日は俺が一緒に登校しているせいもあってか、タケルとカオルの話はユウに絡んだものが多かった。何をもって真面目というかは人それぞれだけど、陸上部に所属して、朝から練習に出てるってだけで十分真面目だと思う。

 《ヒロ》は、まだ会ってないけど、話を聞いた感じだとタイプ的には俺に近いみたいだ。ちょっと前まではタケルよりもヒロとつるんでることの方が多かったらしい。まあ、いつも昼過ぎに学校に来るらしいから、詳しいことは本人と会って話そう。

 そういや《俺》を見てビックリしてる奴が結構いたな。朝から登校してるのがそんなに珍しいか? しかもタケルやカオルにばっか声掛けやがって。あれ、待てよ……よく考えたら、俺に話し掛けてきたのって、この二人以外にいないんじゃないか? しかも二人との会話も俺、相槌しか打ってない。。。
 これじゃただのコミュ障じゃないか! そういや今朝の母さんと妹の態度もアレだったな。もしかすると俺は、ちょっと絡みづらい奴なのかもしれない。
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