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結局流されてはあいつの掌の上で転がされてる気がする
しおりを挟むき、来てしまった……。いや、でも鍵渡されたし、俺が来ないとあいつは部屋に入れないし、仕方ないというか……。それに、遠征のことも話をしておかないといけないし、うん、俺は仕方なく来ただけで、終わったら帰るし、問題ねぇはず……。
頭の中でごちゃごちゃと考えながら、ディランの部屋の前で立っている俺。だが、向こうの方から声がしてきて、こんなところで立っているのを見られたらまずい!と急いで部屋の中に入った。
以前来たことがあるため中の様子は分かってはいるのだが、何となく落ち着かない。前は余裕もなかったし、見渡すことなど出来なかった。騎士寮のため、俺の部屋と造りは同じなのだが、綺麗に片付けられているし、物もあまりないからか広く感じる。そういえば、どうしてディランは騎士寮に住んでいるんだろう。あいつの家はお貴族様らしくでかいらしいと聞いたことがある。あいつの兄が家を継ぐみたいだけど、関係は悪くないらしいし。
「絶対、自分の家の方が広いだろ。通えないぐらい遠いのか?」
「あなたが騎士寮を申し込んでいたからですよ。」
「うわっ!び、びっくりするだろ!声掛けろよ!」
考えながら、口に出ていたらしい言葉に返答があり、驚きながら振り向くとディランが可笑しそうに笑った。
「すみません。あなたが部屋にいるのが嬉しくて。ただいま戻りました。」
そう言って、背中に腕を回して抱き寄せられそうになり、慌ててその場で踏ん張る。
「さ、さっき言ってたこと、どういう意味だよ。」
甘い雰囲気を醸し出すディランに、話を切り替えてさっき言われたことを聞く。
「さっき?あぁ、寮のことですか?そのままの意味ですよ。ルイスが騎士寮への入所を申し込んでいると聞いて、俺も申し込んだんです。近い距離にいる方がいつでも会えますし。」
さらっとそう言われて目を見開く。家の方が広くて使用人たちもいるだろうし快適だろうに、俺が騎士寮に入るからって理由だけでディランも申し込んだのか?俺に会う頻度が上がるかもしれないってだけで?仲良かったわけでもないし、それまで関わりなんてなかったのに?
「さすがに、それは、嘘だろ。」
だから、咄嗟にそう言ったのだが。
「言ったでしょう。自覚はしていませんでしたが、学生の時からあなたがずっと気になっていましたし、ここの隊に入団したのも、あなたが入団希望を出していたからですよ。」
何でもないようにそう返されて唖然とする。
「そ、それだけで、俺と一緒がいいってだけで決めたのか?」
「第一の理由はそうですね。まぁ、ここの隊に入団したのは実践経験を積みたかったからというのもありますが。どちらにせよ、あなたが決定打ですね。」
そう言うやいなや、回された腕でグイッと引き寄せられ、ディランの言葉を飲み込むのに時間が掛かっていた俺は踏ん張っていた足に力を入れられず、ディランに抱き締められた。隙間がなくなるほど、グッと力強く抱き締められて、感じるディランの熱と香りに頭がクラクラしてくる。
「あぁ、ルイス、会いたかった。駄目ですね、一度触れると我慢することが難しい。仕事中も、ルイスの可愛い顔を思い出してどうにかなりそうでした。俺の部屋で待っていてくれて嬉しいです。」
ディランはそう言いながら、俺の背中から服の中に手を入れてきて素肌の腰を撫でてくる。それに対し反射的に腰が逃げて、ディランの身体に押し付けるような形になってしまい、慌てるも抱き締められているままだとそれ以上動けず。どうしたらいいか分からず、内心あわあわしながらピシッと固まる。
「ルイス、可愛いですね、そんなに俺を翻弄してどうしたいんです?」
「か、可愛いわけないだろ……。」
これでも鍛えていて服を着ているとあまり分からないかもしれないが、それなりに筋肉だってついているし、成人もしている男だ。可愛いという表現は俺には合っていないだろ、とディランの言葉に反論する。
「……自覚がないだろうとは思っていましたが、本当に分かってないんですね。」
すると、ディランはボソッとそう言ったかと思うと、抱き上げられてボスっと柔らかいシーツの上に寝転ばされた。そして、その上から覆い被さるようにディランがのしかかってくる。
「その見上げてくる大きい瞳も、小さい鼻も口も、俺を意識しては赤くなる頬も、何もかも可愛くて仕方ないんですよ。」
「なっ……んっ……!」
そのまま重なった唇に、近い距離にあるディランの顔が見れなくてギュッと目を閉じる。
「細身なのに綺麗についた筋肉も、しなやかで吸い付くような手触りも、俺が触れると白い肌が赤く染まるのも、とても綺麗です。」
首筋に顔を埋められながら話すため、ディランの熱い息がかかってピクっと身体が揺れる。ディランの手が服の裾から入ってきて、腰から上に向かって撫でられていく。それにぞわぞわと身体が逃げたくなるのを、もう片方の腕で腰を抱かれて阻止される。
「はぁ、どこもかしこも可愛い。ルイス、自覚してください。俺があなたをどういう風に見ているのか。」
「そっ、そんなっ、の、お前だけ、だろ……!」
「えぇ、俺だけがルイスの可愛い表情も仕草も反応も知っています。でも、誰とでも仲良くなりすぐに人の懐に入ることが出来るあなたを可愛がっているやつはたくさんいるでしょう。」
「…んっ、ふっ……ぁ……!」
啄む様なキスをされたかと思うと、いきなり舌が唇を割って入ってきて、強引に俺のそれを絡め取る。
「んぁっ……!」
思わず両手を伸ばしディランの服にしがみ付くと、激しくなる口付けに頭がボーっとしてくる。
「ルイス、煽らないで下さい。あなたが俺の部屋に自ら来たってだけで、もうたまらないんですよこっちは。」
ディランは唇を離してそう言うと、自身の腰を俺に押し当ててきて、ゴリっと硬いものが下半身に当たり一気に身体が熱を帯びた。
「あ、え、そ、それ……んあっ……!」
真っ赤になっているであろう自分の顔。それを見下ろされて、余計に恥ずかしくなるが、何と言えばいいのか分からなくて言葉が詰まる。そんな俺に目を細めると、俺のそれに自身の硬くなっているものを押し付けてきて、思わず声を上げてしまった。そんな俺に、ディランはまた唇を合わせてくると、下の方に手を入れてきて立ち上がりかけている俺のものを手で包んで擦り始めた。
「んぁ、はっ、あぁっ!で、でぃらん、だ、駄目だ、ぁっ、やめっ……!」
容赦なく、擦られながら先の方をグリグリと刺激され、呆気なく達してディランの手に出してしまった。情けなさと恥ずかしさでいたたまれなくて、でも身体に力も入らないから顔を背けると、
「えっ、あ、何で、あっ、俺、イッたばっか……!」
再びディランの手が俺のそれを握って刺激し出したかと思うと、はだけさせられた服の間から顔を埋めて胸の辺りを舐められる。逃げたくても腰に回された腕で逃げられず、ディランの頭を押そうとするも与えられる快感にいつの間にか抱きかかえるように腕を回していた。
何度も気持ち良くされて、もうされるがまま快感を受けていると、俺の中にズンッと圧迫感と共にディランのものが入ってくる。
「ルイス、もうここは俺の形を覚えていますか?俺だけにして下さいね、受け入れるのは。あなたの良いところを知っているのも、俺だけですよね?」
そう言われながら、ディランに突かれる度に声を上げてしまい、言葉の意味は分からないまま、聞かれる度に頷く俺。
「あっ、あっ、そこ、あぁっ!」
「ここですよね、気持ち良いですか?あぁ、可愛い。ルイス、好きです、愛しています。」
「あぁっ、はっ、はっ……んぁっ……!」
体中を弄られながら、何度も愛の言葉を囁かれ、朦朧とする中で必死にディランにしがみ付く。そしてディランの腕の中で果てるのだった。
―――
「遠征の話をするって言っただろ!」
ディランに抱き込まれている状態で目を覚ました俺が、腕の中から逃げようとすると起きたディランにまた組み敷かれそうになり、慌てて叫んだ。
「えぇ、そうですね。でも起きて好きな人が隣で裸で寝ていたら、手を出さないやつはいませんよ。」
そう言ったディランに唇を塞がれたかと思うと、上に覆い被さられてしまい、結局ギリギリまでディランのいいように弄ばれて、遠征の話し合いなど全くしないまま慌てて仕事へと向かったのだった。
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