無効の契約は継続中

おはぎ

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説明してくれ頼むから

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起きたらクラウドのベッドで、首を傾げる俺だったが、あぁ、クラウドの温かい魔力で眠気を誘われた挙句、寝ちゃったのかと思い出す。ベッドから下りて、部屋を出ると、いつものメイドたちと鉢合わせた。

「あらリラ様、お帰りなさいませ。さっそく逢引きでございますか?」

「あらリラ様、お帰りなさいませ。さっそく愛し合われたのですか?」

…どういうこと?

「ただいま?愛し合うって何で?ちょっと寝ちゃっただけだよ。ねぇ、クラウドどこに行ったか知ってる?」

もうよく分からないことを聞かれるのは慣れた。それより、寝たであろう俺を置いてクラウドはどこに行ったんだ。何もないなら、食堂に顔を見せに行きたいんだけどと考える俺。

「クラウド様は公爵様と出て行かれましたわ。」

「えぇ、何処かお出掛けですか?」

「えーっと、ちょっと食堂に行ってくるって言っといてもらっていい?」

そう言うと、了承してくれたため屋敷を出た。食堂に行くと、馴染みのおっちゃんがいて迎え入れてくれた。店の親父さんも出て来てくれた。

「おう、リラ。帰ったのか。またよろしく頼むな。隊長さんとシフトは話し合ってるからな。」

……いや何で俺とじゃなくてクラウドと話し合ってんの?確かにさ、クラウドに勝手に連れて行かれたりして色々迷惑掛けてるけどさぁ。釈然としない俺。

「リラ、今日は食っていきな。何でも作ってあげるよ。」

女将さんがそう言ってくれたため、カウンターに座ってご馳走になる。すると、隣に誰かが座ってきた。

「こんにちは。」

とりあえず挨拶をすると、相手は少し驚いたように俺を見てきて微笑んだ。

「こんにちは。見ない顔だね、俺最近ここ通うようになったんだけどさ。君、名前は?」

そう聞かれたため名乗ると、グイグイ距離を詰めて来る。

「リラだ。ちょっと休み貰ってたんだけど、ここで働いてんだよ。」

そう言うと、そうなんだねと言ってあれこれ聞いてくる。すげぇ聞いてくるじゃんとちょっと面白くなっていると、

「あー、駄目だぞ兄ちゃん。リラは隊長さんのだからな。リラ、ほいほいしてんなよ~。」

と常連のおっちゃんが野次を飛ばしてくる。

「はぁ?俺はクラウドの物じゃない!また寝てる俺を置いてどっか行くしさぁ、俺の予定だってどうしたらいいのか分かんねぇのに。いや、俺も寝ちゃったのは悪かったけどさ、気持ち良かったんだから仕方なくねぇ?」

ムッとして言い返して、クラウドのことを愚痴ると、何故か生温かい目で見られる。横に座ってグイグイ聞いてきた男は、そそくさと佇まいを直して飯を食ったかと思うと、引き攣った顔でじゃあねと出て行ってしまった。

「え、何で?俺何かした?」

さっきまでの勢いどうした!?そんなにクラウドって怖いのか?いやまぁ、確かに怒ったら怖いけどよ……。あれでも優しいところもあるし、面倒見もいいし、そんなに怖がらなくても……。

「リラ、お前すげぇな。そんな無意識に惚気るたぁ、やるねぇ。」

そうニヤニヤしながら親父さんに言われて、どの部分が惚気と捉えられたのか分からず。もう面倒臭くなってきて、まぁいいかと目の前に置かれた飯を食べた。

「あ~腹いっぱい。ありがと、親父さん。」

「おう、またよろしく頼む。」

店を出て、ふらふらしていると、いきなり後ろから首根っこを掴まれる。

「うおっ!びっくりした、何……。」

「お前は、本当に、ジッとしてねぇな。行くぞ。」

俺をこんな扱いするのなんてクラウドしかおらず。そのまま首根っこ掴まれてズルズルと王宮へと連行されてしまった。いや、起きたらいないのが悪くないか?俺何も言われてないし、そもそも家に帰らされたのも、迎えに来た理由も何も聞かされてないんだけど?

だが、そう思っていても、王宮内に入られると何も言えず。手を離された後、口を噤んでクラウドから離れない俺。何回来ても、慣れないものは慣れない!

クラウドが向かったのは魔術師団の本部。ケール様が迎えてくれた。

「やぁ、リラ君、久しぶり。帰省は楽しかったかい?」

「俺の迎えが遅いって拗ねてた。」

「おーい!それは言わなくても良くない!?いや、全然待ってなかったし!ただこのままでいいのか気にしてただけだ!」

最悪だ、さらっとクラウドがニヤニヤしながらケール様にそう返したことによって、おやまぁと生温かい目で見られる。恥ずかしい!俺が何を言ってももう手遅れだろこれ。恥ずかしがってると思われるだけだ……!思わず項垂れた。

「ふふふ。良かったねクラウド。さて、リラ君。君の魔力に関するものを無効化する力は、とても広範囲に及ぶことが分かったよ。」

世間話でもするような感じでさらっと言われたことに、俺はぽかんとしてケール様を見つめ返した。

「広範囲?どういうこと?俺、ぶつけられなきゃ分かんないんだけど……。」

そう言うと、

「もちろん、何もかも無効化するわけじゃないよ。ただ、少なからず影響を及ぼしていることが分かったんだ。クラウドが一番良く分かっていると思うけどね。」

ケール様はクラウドを見た。クラウドは眉間に皺を寄せてケール様を見返している。え、クラウド分かってんの?こいつ本当に説明しねーな!俺に先に説明してから連れてきてくれよ!俺何一つ分かってないんだけど!

クラウドの胸に頭突きすると、頭を叩かれてジッとしてろと言われる。お前は説明しろっつーの!


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