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罪悪感からの展開
しおりを挟む「リラ!お疲れ様!どこか店に入る?ご飯は食べた?」
仕事終わり、待っていたトームに店を出た瞬間に出迎えられる。それに驚きながらも、何故か肩を抱かれて足を進められる。
「ちょ、早いって。いや、俺さ、言わなきゃいけないことがあんだけど…。」
「うんうん、そうだよね、じゃあ俺の家に行こうか?」
…うん?
何かさっきから全然俺の話聞いてない感じするんだけど。何でこの流れでトームの家に行くんだよ。
「トーム、ちょっと落ち着けって。俺、話があんだって。」
「分かってるよ。リラは仕方ないな、そんな急がなくてもちゃんと聞くよ。」
…いや、何で俺が宥められてんの?
話を聞かないトームに、半分諦めながらまぁいいかと促されるまま歩いて行く。
歩いている間、トームはずっとご機嫌な様子で話し掛けてくる。しかし、俺は俺でどうやって切り出そうか考えており、返答が適当になっていた。そんな俺に怒ることもなく話し続けるトーム。
「すげぇ機嫌良いけど、何かあったのか?」
あまりにも上機嫌なトームに、ブレスレットの話をして機嫌が急降下したら落差が大きいため、ちょっと落ち着いて欲しいんだけど、と考えている俺。
「あぁリラ。俺はこの日を待ち望んでたんだよ。すごく嬉しいんだ、やっと手に入ったんだから。」
「…何の話だ?」
訳が分からない話をするのは止めて欲しい。俺にも分かるように話してくれ。そもそも、こっちはブレスレットの件を話すのに気を揉んでんだよ。何ならさっきからずっと気を遣ってんだよ。
「リラ、もうちょっとで俺の家だからね。そこでゆっくり話を聞くよ。」
俺を見下ろしながら、肩を抱いている手に力が込められ、スルッと指先で身体を撫でられる。それに少しゾッとした時。
…あれ、これ、ちょっとまずい感じ?
さすがに、トームの俺を見る目や触れ方で、まずい流れなのではと考え始める。何かがまずい気がする。だが、もうトームの家に着いてしまうらしい。
…とりあえず、着いてから考えるか。
もう着いてしまうのなら、着いてから考えよう。どっちにしろ、ブレスレットは貰った物だし、言わないといけないのだからと、促されるまま歩き、恐らくトームの家らしき建物の前まで来た時。
「…おい、止まれ。」
聞いたことのある声が俺の耳に届いた。
「お前、トームだな。一緒に来てもらう。」
クラウドが、他の騎士と共に待ち構えており、トームを見てそう言い放った。
…何事?
「っ何だ!俺は何もしていない!リラ、行こう!」
焦りながら叫ぶようにそう言い、急いで家に入ろうとするトームに、俺は首を傾げた。
「何言ってんだ。何もしてねぇなら堂々としてろよ。」
今がどういう状況か分からねぇけど、逃げるようなことしたらそれこそ痛くない腹を探られるようなもんだろ。急ごうとするトームを止まらせて、クラウドの方へ体を向けた。
「こいつに何の用?」
「禁忌魔術の使用を確認している。」
…うん、やってんじゃねぇか!
「おいトーム!てめぇやってんじゃねぇか!」
捕まるようなことしてんじゃねぇか!と目を見開きトームを問い質す。
「ち、違う!ちょっとだけだ!やってない!信じてリラ!」
焦りながらそう言ってくるトームに呆れる。ちょっとだけって。しかも禁忌魔術って…。
「いや、ちょっとやったんじゃねーか。禁忌魔術って…。それは駄目だろ。」
「リラ、俺はリラのために…。」
「俺のため?俺に関係あんの?」
「え、あ、いや、リラは俺がいた方が幸せだし…。」
意味が分からない発言から、何故かハッとしたようにしどろもどろになるトーム。俺の幸せってなんだ。トームが居ても居なくても俺は自分で幸せになるが?
とりあえず、どういうことか聞こうとすると、
「連れて行け。」
クラウドの一声で、騎士二人がトームの両脇を抱えて持ち上げた。トームは悲鳴を上げた後、睨みつけて口を開こうとするが、俺を見て止まり、口を噤んだ。
「あ、トーム、ごめん、貰ったブレスレット失くしたんだ。それが言いたかったんだよ。」
連れて行かれそうなトームに、慌ててそう言った。これはさすがに言っておかないと、と伝えたのだが、それを聞いたトームは何故か脱力し、特に抵抗することもなく連れて行かれてしまったのだった。
「…トームってやばいやつだったんだな。」
これは家に行かなくて良かったかも、と呟くと、
「いだっ!」
「お前は何してやがる!あれだけ近付くなって言っただろーが!」
頭を叩かれ、痛みに蹲った。
「いってー…。叩くことねぇだろ、そんなやばいことしてるなんて知らなかったし!」
「散々言っただろ。はぁ、本当にお前は…。」
「おいおい、俺に紹介してくれや。この子が例の?」
クラウドと言い合っていると、それに割り込んできた人がいた。
「…あぁ、リラだ。」
「そんだけかよ。リラちゃん、よろしく。君のためにクラウドがめっちゃ頑張ったんだよ。」
…うん?
「どういうこと?」
その騎士が言うには、トームは調べたら禁忌魔術を使用していたことが過去にも何件かあったらしく。ただ、取り締まるにも物を確保できなかったと。今回は、俺が付けていたブレスレットから、それを販売していた所を割り出して、大元も捕まえることができたらしい。
「え、あのブレスレット!?」
「そうだよ。だから、リラちゃんのおかげでもあるんだけどね。」
…あの、ブレスレット!?
俺は、バッとクラウドを見て口を開けるが、何をどう言えばいいのか分からない。
…そんな危険な物だったら、早く言えよ!ってか、それって被害者じゃん俺!
「とりあえず、帰るぞ。」
ため息をつくクラウドだが、ため息をつきたいのはこっちなんだが?!
「はいはい、後はやっとくからいいよ。リラちゃん、色々ありがとね。クラウドのことよろしく。」
その騎士には礼を言われたが、俺はクラウドに言いたいことが山ほどあります。よろしくしません。
だが、俺がそう返す間もなく、クラウドは俺の首根っこを摑まえると、さっさと帽子を被されて連れて帰られた。
―――
「あのブレスレットに禁忌魔術使われてたって何!」
「そのままだ。だから聞いただろ、何もねぇのかって。」
「いやいや、それ以前に説明しろよ!」
「お前には効かないことは分かったし、言ったら絶対そのままにしておかねぇだろ。」
…そんなことある!?当事者じゃん俺。何なら被害者じゃん。もうちょっと詳しく説明してくれても良くねぇ!?それに、あの時俺が怒られた意味!
言いたいことがあり過ぎて、口を開きパクパクする俺。ちょっと待ってくれ、どこから何を言えばいいのか、整理するから。
「お前、あんだけ言ったのに、ついて行こうとしてたな。」
…怒ってるのは俺のはずなのに、クラウドが見下ろしながら睨み付けてくるのは何故?
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