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のんきな兎の仲直り
しおりを挟む「ウルル君、君はこの者につき飛ばされて、頭を打った挙句意識を失ったのですよ。」
「うん?うーん、でもあれは僕がお菓子を守ったからだよ。ロイにもね、ちゃんと自分を守れって怒られたよ。だから、狐さんのせいだけじゃないよ。」
「……思っていたよりちゃんとした返答で驚きました。」
トレイル様に言われてそう返したら、何故か驚いたように僕を見てきた。
「ごほん。しかしですね、それでも非戦闘員であるウルル君に手を出したとなると、それは騎士としてしてはいけない行為なのです。それは分かりますね?」
「うん、分かる……。」
「そして、私情混じりの感情だけで突っ走り怪我をさせるなど、騎士の名を汚す行為です。そのような者がいるとなると、信用に関わりますし、騎士全体がそういう風に見られるのですよ。」
「うーん、分かった。でもどうして辞めるの?」
「それが、責任です。第1騎士団は処罰を与えたに過ぎません。」
さっきから、狐さんは俯いて何も言わない。
「第1騎士団に居づらくなっちゃったの?じゃあ第2騎士団に来るのは駄目なの?」
「えーっと……。駄目という訳ではありませんが……。」
「そうなの?じゃあ第2騎士団に来ればいいよ!みんな優しいよ!」
「……ちょっと、ロイを呼んで来て下さい。」
何故かトレイル様は、傍を通りがかった騎士にそう言うと、頭を掻いてため息をついた。
「ウルル君、君はコリンについて何か思うことはないのですか?」
「コリンって言うの?僕はウルルだよ、よろしくね。」
「えっ、あ、あぁ、よ、よろしく……。」
名前は聞いたような気がするが、覚えていなかったため、呼び方に困っていたのだ。だから挨拶したのに、トレイル様はずっと困ったように僕を見る。
「えっとね、思うこと……。いっぱい喋ってたよ。あとね、美人さん。目が大きいね。あ、トレイル様も美人。あれ、デリック様も美人……。親戚だとみんな美人になるの?あ、狐獣人は美人になる……?」
「……そうですね、ウルル君が毛ほども気にしていないことが良く分かりました。」
そう言ったトレイル様に首を傾げる。すると、
「おい、何してる。」
怖い顔してそう言いながら来たロイは、僕の前に立ってコリンを見下ろした。
「ぁ……も、申し訳……っ。」
すると、震えた声を出して頭を下げるコリン。
「ロイ、怖い……。どうしたの、何もしてないよ。」
何もしていないのに、どうして怒っているのと前に立つロイの背中の服を引っ張る。
「ウルル、お前な、こいつに何されたか覚えてるだろ。自分を襲ったやつだぞ、お前に何かあったらこいつ殺すからな。」
僕を振り返ってそう言うロイに、僕は目を見開く。
「えっ、僕もう何ともないよ?」
「そういう話じゃねぇ。一方的に怪我させられたんだぞ、腹の虫も治まってねぇんだよこっちは。」
「えぇ、だって僕も悪いってロイ怒ってたよ。僕も悪かったんでしょ?だからロイは怒ったんでしょ?コリンだけが悪いの?僕怒られたのに!」
怒られ損だ!と兎耳でロイをぺちぺち叩く。
「あぁ?そうじゃねぇ、身を守るより菓子を優先したから怒ったんだろーが!」
「うぅ、怒った……。やっぱり僕も悪いんだ……。」
「だから、そもそも……。」
「ロイ、少しいいですか?」
僕とロイが言い合っていると、トレイル様が割って入って来た。そして、何故か僕の発言をロイに説明し始めた。
「あぁ?うちに?」
「ウルル君にきちんと説明してあげて下さい。」
「何を説明するんだよ。そもそも、処罰を決めたのはデリックと団長だろーが。俺は口出ししてねぇよ。」
「しかし、そうは言ってもウルル君が納得しませんよ。」
「俺は納得しているみたいな言い方だな。」
「……どういうことです。」
顔を顰めるトレイル様。僕は言い合う二人からそっと離れてコリンの傍にいく。さっきからずっと俯いていて身体を小さくさせているから、どうしたのだろうと首を傾げる。
「コリン、震えてるよ、どうしたの?お腹空いた?」
「えっ、え、い、いや……。」
「あのね、僕もロイに怒られたんだよ。一緒だね。」
「い、一緒…?では、ないと思う……。えっと……。」
コリンはトレイル様と話しているロイをチラチラ見ながら困惑したような表情で僕にそう返してきた。
「一緒だよ、僕も悪かったんだって。でもコリンも悪いんだよ、ごめんなさいは?」
「ご、ごめんなさい……。」
コリンは目に涙を溜めてそう言った。僕はコリンの頭をよしよしと撫でてあげる。可愛い。コリンが第2騎士団に入ったら、こっちでは僕の方が先にいたから、コリンは後輩だ!
「えへへ。じゃあ僕がお兄ちゃんだね!」
「へ?」
ぽかんとして僕を見るコリン。
「おい、ウルル。一人で暴走するな、こっち来い。」
そんな僕たちに、呆れたようにそう言うロイ。
「お話終わった?」
「さぁな。」
「コリン、こちらへ。第1騎士団へ行きますよ。ロイ、そちらのことは任せました。ウルル君、ありがとうございます。」
「どういたしまして?」
何故かトレイル様にお礼を言われたが、何のことか分からない。でも一応返す僕。そんな僕に笑ったロイが頭を撫でてくる。トレイル様は、コリンを連れて行ってしまった。
「お話しに行ったの?」
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「うん?僕良いことしたの?」
「ふっ、あぁ。人の顔色伺って蜥蜴の尻尾切りするしか判断できねぇようなやつらが、どう動くか見物だな。」
意地悪く笑うロイに、ちょっとときめく僕。それから、僕は門番騎士に伝えることがあったんだと思い出して行こうとすると、何故かロイも付いて来る。
「ロイ、お仕事は?」
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「誰のせいだ。」
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「コリン?」
「分かってんじゃねーか。」
「うん!仲直りしたよ!」
少し驚いた様子のロイに嬉しくなって元気良く答えると、
「あぁ、まぁそうだよな。」
苦笑してそう言われてしまった。そして、もう一度門へと戻ると、門番騎士が僕らを見て目を丸くした。
「あれ、隊長。もしかして殺ったんですか?
「馬鹿言うな。トレイルが連れて行った。」
「あのね、お昼からお休みだよ~。」
「……気が抜けるんですけど、ウルルと話していたら。」
「可愛いだろーが。」
「いや、それ可愛いって言ったら俺殺されません?」
伝えることは伝えたが、何やら二人だけの会話のようで、入っていけない僕。仲間に入りたいと二人の間をうろうろして見上げると、ロイに抱き寄せられた。
「何してんだお前は。戻るぞ。」
ロイにそう言われ、門番騎士に手を振った時。
「隊長!今、第1騎士団のデリック隊長が……。」
「早かったな。ウルル、お前はどうする?一緒に来るか?」
「うん?まだお仕事残ってるから、終わったら迎えに行くね。扉は開けておいてね。」
「ふっ、分かった。じゃあな。……一人で何処にも行くなよ?」
お決まりになりつつある言葉を言われて、僕はちゃんと頷いたのに、何故か溜め息をついたロイは呼びに来た騎士に返事をすると行ってしまった。
そして、僕もお仕事だ~と自分の今日の持ち場へと戻ったのだった。
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