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のんきな兎はぺったりする

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「ウルル、もうそれはいいだろ…。」

そう言われるが、僕はふるふる首を振ってロイのローブを被る。ロイと住む家に帰ってきて、僕はロイのローブを被ったままロイのベッドで丸まっている。そんな僕を見て、ロイはローブを返せと言ってくる。全身を安心する匂いで包まれている今、僕はここから抜け出したくなくなり断固拒否している状況。

「……じゃあ、ギュってして。」

ローブは返すから、代わりにロイに抱き締めて欲しいと言うと、

「……分かった、そこから降りたら抱きしめてやるから……。」

そう返される。どうして?ここはロイの匂いがいっぱいだから、ここで抱き締めてくれたらもっともっとポカポカするのに。さっきから、この問答を繰り返している僕たち。

「いや駄目だろベッドの上は……。」

ボソボソとロイが何かを言っているが、抱き締めてくれる気配はない。何が駄目なんだろう、さっきはしてくれたのに。もぞもぞと良い位置を探して丸まっている僕に、

「ウルル、飯は。」

そう言われてピョコンと顔を出す。

「ご飯!そうだ、僕お昼ご飯食べてないんだった。何も持ってなくて、帰り方も分からなくて、泣いてたら攫われて……。」

思い出してジワジワ涙が出てくる。そんな僕に、

「悪かったな、うちのやつがお前を追い出したって聞いた。丁度、張っていた人身売買グループが予想していたより早く動き出して、待機するように言おうと思ったらお前はいないし。本当に無事で良かった。」

ベッドに腰掛けて優しく頭を撫でられる。僕はその手に擦り寄って、もっともっとと頭を押し付ける。

「一応、雑用といっても騎士団所属になるんだ。その証の申請をしていたんだが、時間が掛かっててな。それを持っていなかったから勘違いしたんだろう。俺の落ち度だ、悪かった。」

謝られるが、それよりもちゃんと頭を撫でて欲しい僕。兎耳を倒して撫でて撫でてとグイグイ前に出る。

「ロイ、もっと撫でて。あとギュッてして。」

どうしてもあの安心感を得たい僕に、ロイは話を聞いてないな?と呆れた顔をした。そして、一度深呼吸をしたロイは、腕を掴んで僕をベッドから引っ張り出した。そしてロイの大きな身体で包み込まれると、そのまま抱き上げられてスタスタ歩き始める。

「飯作ってやるから、ちょっと待ってろ。」

と椅子に下ろされてしまう僕。さっさと離れてキッチンに行くロイに、僕は椅子から降りるとテテテと近付いて、ピタッと背中に張り付いた。

「……ウルル。」

顔に手を当てて天を仰ぐロイに、僕は背中にグリグリ頭を擦り付ける。

「ちょっと待ってろ、すぐ作ってやるから。」

首だけ後ろを振り向いて、僕を見下ろしてそう言われる。僕は頬をぺったりとロイの背中に付けたまま見上げて、コクンと頷く。

「……。聞いてるよな?」

動かない僕にロイは眉を寄せるが、聞こえてるよと再度頷く。そして、ぷいっと顔を背けて逆の頬をぺったり付けて引っ付く。

「分かった分かった、もう好きにしてろ。」

諦めた様子のロイが、僕を背中に張り付けたままゴソゴソと動いてご飯を作り始める。あまり大きく動かないところをみると、僕に気を使ってくれていることが分かり、さり気ない優しさに僕はぽわぽわと嬉しくなる。

「ロイ、何を作っているの?」

「あ?野菜がいいんだろ?サラダと肉団子のパスタだ。」

「おいしそ~。」

「まだ出来上がってねぇぞ。」

聞いただけで美味しそうなご飯だったから言ったら、ロイは笑ってそう返してきた。出来上がったご飯をテーブルに置くと、

「ほら、食え。もう夕方だから晩飯になるけどな。」

そう言われ、僕はロイから離れる。自分の分も作ったロイが席についたため、僕はそのまま、

「ちょっ、おい、何してんだ!」

ロイの膝の上に登ろうとすると焦ったように止められる。

「……?膝に乗ろうと思って。」

そしたら一緒に食べられるでしょ?と首を傾げる僕に、ロイは顔を引き攣らせる。

「ウルル、あのな、そんな簡単に男の膝に乗るんじゃねぇ。いいから、そっちに座って食べろ。な?」

「じゃあギュッてして寝てくれる?」

「……俺をどうしたいんだお前は。」

片手で顔を覆ったロイはそう言って項垂れてしまった。そこから押し問答をしつつ、結局僕は一人で座らせられてしくしく泣きながら食べた。そんな僕を見て苦笑していたロイは、入浴時に浴室までついてくる僕を見てまたしても頭を抱えることになったのだった。

そして次の日、ロイについて職場へと行く僕。入った途端、昨日会った騎士の人たちと遭遇する。朝の挨拶をしようと口を開くと、それより先に、

「「申し訳ありませんでした!!」」

「ぴゃあっ!」

何故か勢い良く頭を下げられて飛び上がる僕。

「あ~、ウルル。昨日お前を追い出したことに対して責任感じてんだよ。」

ロイの後ろに隠れた僕を見てそう説明されるが、この人たちのせいだとは思っていなかったため、突然大きな声で謝られてびっくりした。

「僕もちゃんと説明できなかったから、こちらこそごめんなさい。」

兎耳を垂らしてそう言い、お互い謝り合戦になりそうだったがロイにキリがねぇと止められる。そして、僕がいつも書類整理している部屋に行くと、ソニーがいてそこでも謝られる。そして僕も謝る。ロイが止める。とさっきと同じようなやり取りをするのだった。

「ウルル君、そんな寂しそうにしなくても、また迎えに来てくれるっすよ。」

ロイと別れて、ずっと兎耳を垂らしながら書類整理をする僕に、苦笑してソニーが言った。

「うぅ、寂しい……。」

手は何とか動かしており、もうあの山のように積まれていた書類はほとんど分けることが出来た。

「ほら、もう終わりっす。丁度キリがいいんでお昼食べに行きましょう。」

ソニーに連れ出されて、僕たちは食堂へと向かう。ちなみに、ロイが言っていた証は今朝受け取って胸元に付けている。小さいバッジのようなもので、失くせば1万ゴールドの罰金らしい。怖い。

食堂ではサラダのみの注文はないらしく、僕は悩みに悩んで、野菜炒め定食にした。野菜がいっぱい入っていたのと、トマトスープが付いていたのが決めてだ。しかし、主に騎士の人たちが利用するためか、ご飯を大盛入れられてしまい、お腹がはち切れそうになってしまったのだった。

「うぅ、苦しい……。もう動けない、歩けない……。もうここに住む……。」

しくしくと泣きながら動けなくなった僕に、焦ったソニーがロイを呼んできた。そして、急いで来てくれたロイは、僕の状況を理解した後、

「腹いっぱいで苦しい!?お前はガキか!この馬鹿うさぎ!」

緊急事態かと思っただろーが!と怒られ、しくしく泣く僕を抱えて医務室まで連れて行かれると、しばらく寝かされる羽目になったのだった。





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