上げて落とすおつもりですね?

12時のトキノカネ

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「おまえが異世界より訪れるという聖女か?」

結子に皮肉気な笑みも似合う男が尋ねる。その姿は若いながらも王者そのもの。結子がもう少し冷静に相手を見ることができたなら普通の女性としてうっとりしていたこと間違いなしのすらりとした無駄のない筋肉を供えた細身でも筋肉はついてますの所謂細マッチョに皮肉気に笑う姿はよくアニメで見る意地悪げなガキ大将的雰囲気にきゃーと喜べたかしれないところだが、容姿は少女マンガか乙女ゲーに出てきそうな主役を晴れそうなまさに王子様といった顔だが今は恐ろしいだけの脅威にしか結子にはならない。
ただ一見やさしげな風貌のザ・王子様なルイとは違い、こちらは狙った獲物には食いつきそうな獰猛な猛獣。赤い髪が鬣のまるで獅子のようにみえる。迫力があった。常に人をひれ伏させる威圧のオーラが全身から発せられているかのようだ。

そして聖女としらないまでもその可能性が高いだろう、女性。自分よりも力の弱い人間でも躊躇なく自分の牙を向けるタイプだ。紳士的など鼻で笑って横暴に振舞うことをいとわない危険な人間にも思える。

実際、結子を後ろから襲い、どこかもわからぬ部屋へ放り込んだという現状がある。結子がおびえ警戒するのも当然といえる。

結子は目の前の青年とも呼べる男性に恐怖からぶるりと体を震わせて身を守るように両手で体を抱きしめた。

「はい…。」

男から視線をはずした結子は素直に聖女であることを認めた。
下手な嘘は簡単に見抜かれて男の機嫌が急降下しそうだと思ったからだ。
急な状況の変化にまだ完全には頭も心も適応してはいないが結子なりに必死に考えていた。

「ほーう」

認めた結子に男がやはりかと目を細めて笑う。しかし、その眼光がさらに力を強めたように見えた。つまり腹では表情で見えないことを考えたということだ。

「おまえが忌々しい、神木の癒し手か…」

吐き捨てる
声に含まれる怒気に結子の肩が揺れる。

しばらくの沈黙が周囲を支配してその息苦しさに耐えられないと
様子を伺うように顔を上げた結子と男との視線がばっちりと合う。
まさに檻なしの猛獣と視線が合ったと同じ気分だ。

「おまえごときどこにでもいそうな端女が似合いな女が神木の選ぶ聖女か笑わせてくれる。偽者でももっといい女を俺なら選ぶだろう。…どこまでも俺を苛立たせてくれる」

見下しきった瞳以上に、馬鹿にされた言葉を投げつけられているのは結子にも分かる。だがこの狭い部屋には結子とその男のみ。力の差は歴然。相手は何をするかもわからない危険な男。強者は決まりきった上で結子が男に反論などできない。

「…すぐ泣いてわめかないところだけは認めよう。女、何かお前も言え」

結子の外見を見てあらかた自分の分析を言うのには飽きたのか、感情の変わりが早いのか、ふと思いついたように会話を求められる。

結子は何を言っていいか結子の中の全知能を一生懸命使って

『なんか言えって』
『なにをいえばいいわけっ?!』
『とりあえず、無難なことじゃない??』
『ぜったい怒らせちゃだめーー!!』

と脳内会議を一人で光の速さで行い、男を待たせて怒らせる前に答えを出した。

「あ、あなたのお名前は?お年は?」

…。

どこの迷子受付ですかーーー??
知らないわけだけど。気になる部分ではあるけど、今の状況で時間をたっぷり使って出た言葉の一発目がそれ?
…、悪いとは言わない。男は怒りはしなかったのだから。

「ウィルトゥース、22だ」

答えはすんなり返された。

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