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神木、サクラに会った。
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ブーーゥンってあの独特の羽音が聞こえて思わず空を見上げた。
昔、ドラマや映画で見たことしかない旅客機ではないもっと小さな機体。
どうして?と思う。あれは私の生まれた時代にはないものだった。
警報が鳴った。空ばかり見ていた私はけたたましいその音に本能的に
怖くなってキョロキョロとあたりを見渡す。
夜なのかあたりが暗くてよく見えない。
どちらに行っていいか分からなくてでも止まることもできなくて
やみくもに走り出す。
どこへ行くかわからない暗い道。
だけど雲と雲の合間から月明りを背に見えた戦闘機から逃げるように
そちらが見えた方向とは真逆へとにかく逃げた。
これは夢?きっと夢。
私の時代にはない。ここはもっと昔の…。
「桜」
走った先に満開の薄紅色の花弁の花が咲く桜並木に当たった
視界を覆い尽くすほどの桜の波
日本人なら誰でもその美しさに見とれてしまいそう。
一番、郷愁とも懐かしさともつかないその花を見て
何故か安堵して、嬉しくなって知らず涙があふれていた。
どうして泣いているのかわからない
そして、同じように誰かが泣くのが聞こえた。
私はその声を聴くように耳を澄ませ辺りを探った。
そして声のする桜が咲き並ぶその奥へ誘われるように歩いて行った。
いつの間にかあのサイレンも喧騒もない静かな場所についた。
少年が一人膝を抱えていた。
「貴方、何を泣いているの?」
傍に寄りその泣き顔を覗き込もうとして同じ目線になるように屈んだ。
そしてハラハラと泣くその顔を覗き込む。
同じくらいの年齢に見えた。こんな年にもなって大泣きする人を私はほとんど見たことがない。
「ケガしてるの?!」
どうやって慰めていいか考えあぐねて彼の顔から視線を外せば
来ている着物のわずかな場所に赤く血ににじんだ跡が見えた。
「治療しなきゃっ」
「…大丈夫だから」
ケガしてると思われる腕を取って脱がせようとすると少年はいやがて
首を振ってそれを押しとどめる。でもすぐには「はい分かった」と納得できなくて
少年に「だめだ」と注意すると「もう治療はしてもらった」と少年が答える。
それに全身に走っていた緊張がほどけてその場にへなへなと私は座り込んでしまった。いらぬ世話だったらしい。
「びっくりした…。」
「ごめん」
「ああ、いいよ。大事ないみたいだから」
「ごめんなさい」
「いいって」
「僕が傷ついてしまったから、君を呼んでしまった。
ごめんなさい、異世界の少女」
「は?」
「君もあの子とおんなじ黒い瞳と髪なんだね。そして僕の花を見て「サクラ」って同じように君たちは言うんだね」
髪を一房梳かれ撫でられる。
彼が何を言ったか理解できなかった。
ふと眠りにつく前のことが何故か蘇った。
異世界トリップ。まるで夢のようなこと。それが立て続けに起こっている。
美形な男の人に手を握られて
きれいで豪華な部屋に案内されて
疲れただろうと言ってふかふかなベッドに寝かせてもらってたんだ。
ブーーゥンってあの独特の羽音が聞こえて思わず空を見上げた。
昔、ドラマや映画で見たことしかない旅客機ではないもっと小さな機体。
どうして?と思う。あれは私の生まれた時代にはないものだった。
警報が鳴った。空ばかり見ていた私はけたたましいその音に本能的に
怖くなってキョロキョロとあたりを見渡す。
夜なのかあたりが暗くてよく見えない。
どちらに行っていいか分からなくてでも止まることもできなくて
やみくもに走り出す。
どこへ行くかわからない暗い道。
だけど雲と雲の合間から月明りを背に見えた戦闘機から逃げるように
そちらが見えた方向とは真逆へとにかく逃げた。
これは夢?きっと夢。
私の時代にはない。ここはもっと昔の…。
「桜」
走った先に満開の薄紅色の花弁の花が咲く桜並木に当たった
視界を覆い尽くすほどの桜の波
日本人なら誰でもその美しさに見とれてしまいそう。
一番、郷愁とも懐かしさともつかないその花を見て
何故か安堵して、嬉しくなって知らず涙があふれていた。
どうして泣いているのかわからない
そして、同じように誰かが泣くのが聞こえた。
私はその声を聴くように耳を澄ませ辺りを探った。
そして声のする桜が咲き並ぶその奥へ誘われるように歩いて行った。
いつの間にかあのサイレンも喧騒もない静かな場所についた。
少年が一人膝を抱えていた。
「貴方、何を泣いているの?」
傍に寄りその泣き顔を覗き込もうとして同じ目線になるように屈んだ。
そしてハラハラと泣くその顔を覗き込む。
同じくらいの年齢に見えた。こんな年にもなって大泣きする人を私はほとんど見たことがない。
「ケガしてるの?!」
どうやって慰めていいか考えあぐねて彼の顔から視線を外せば
来ている着物のわずかな場所に赤く血ににじんだ跡が見えた。
「治療しなきゃっ」
「…大丈夫だから」
ケガしてると思われる腕を取って脱がせようとすると少年はいやがて
首を振ってそれを押しとどめる。でもすぐには「はい分かった」と納得できなくて
少年に「だめだ」と注意すると「もう治療はしてもらった」と少年が答える。
それに全身に走っていた緊張がほどけてその場にへなへなと私は座り込んでしまった。いらぬ世話だったらしい。
「びっくりした…。」
「ごめん」
「ああ、いいよ。大事ないみたいだから」
「ごめんなさい」
「いいって」
「僕が傷ついてしまったから、君を呼んでしまった。
ごめんなさい、異世界の少女」
「は?」
「君もあの子とおんなじ黒い瞳と髪なんだね。そして僕の花を見て「サクラ」って同じように君たちは言うんだね」
髪を一房梳かれ撫でられる。
彼が何を言ったか理解できなかった。
ふと眠りにつく前のことが何故か蘇った。
異世界トリップ。まるで夢のようなこと。それが立て続けに起こっている。
美形な男の人に手を握られて
きれいで豪華な部屋に案内されて
疲れただろうと言ってふかふかなベッドに寝かせてもらってたんだ。
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