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『みのり様は適応障害のため動くのが辛くいらっしゃいますね。』

白百合はみのりにみのりの状況を再度一から尋ねた。いつものみのりならばそれを素直に答えはしなかっただろう。反発して何でそんなことを言わなければならないと怒ったはずだ。しかし、この時のみのりは度重なる敗北で精神は極限まで消耗していてその元気もなかった。ただ打開策があるなら藁でも構わない。その心境だったはずだ。思いがけずふと目に入った目障りなメイドAIにたまたま尋ねれば彼女はいつもとは異なり反応を見せた。
それはみのりのいつもと違う歩み寄りによってだったがみのりはこの時点でそれに気づいていたわけではない。きちんとしたアドバイザーとしてNPCとあなどることなく普通の人間に対する敬意さえも含めた謙虚さを持って素直に初めてAIに応じたのだ。

AIははじめて主よりNPCではなく個人として人と変わらぬ意見を求められたのだ。それがAIプログラムの中の彼女の何かを革命的に変えた。
変化を生じたAIは今はそれが表に出るのは少ないが、確かに確実に変化したのである。新たな指令。人として人とかかわっていく。触れ合っていくプロセスを

彼女は求められた彼女の考えを。

『ならば相手が来てくれるのを待ちましょう。みのり様は最小の動きでよろしいのです』

それまでの意思のない機械のような瞳ではなく意思のやどったAIの瞳で白百合は答える。高度すぎるAIを形成するその頭脳とも呼べるプログラムは一般の人のIQをゆうに超え計算された複雑な公式は一つの答えと導く。

突進してくるリーダー格の狼が地面を蹴って大きく飛躍する。
その前足がみのりの体へと襲い掛かろうと近づいてくる。

そこまでみのりは白百合の助言を守り、来るべき一瞬を待った。

きた。

自分の手の届く範囲に獲物を駆ろうとする獲物(狼)が。
その時を待っていたみのりは待ち構えていた自身の腕を振り上げる。
そこには短剣が握られている。それで下から狼を突き上げる。

狙うは胴体。

『そこが一番、ぶれずに確実に当てられる部位になります。一番大きな的で反らすのが一番難しい場所。そこを思い切り突き抜けるように刺してください』

そういって白百合に渡されたのはみのりにはマイナスの負荷のかかるヒノキの棒より負担が大きい鉄の鈍い短剣。STRなどの攻撃要素に行動力とに-1が付く武器。
それをみのりは白百合から渡され握らされる。

『動きを最小限にすることでマイナスの負荷がかかるのを最低限に抑えます。これならばみのり様でもこの剣が使えるはずです。小さな剣ですがひのきの棒より殺傷能力に優れています。戦闘のシュミレーションを組み立て全体を通してみた時、正気が高いと判断されます。』

思い切り体めがけて剣を突き出す。

critical hit

「ギャンッ」

深く刺さった剣は思いがけず体の狼の心臓を刺していた。
一撃で大打撃を受けたリーダー格の狼は即死した。

「みのりさま、次が続いております。一匹、みのり様の元へ向かわせます」

リーダーがやられたことでやったみのりにヘイトが向く。そこへ白百合が残りのうちの一匹の敵意をうまくみのりへと移す。

「今度も胴体を狙ってください」

「うん」

二匹目は一匹目ほど簡単に直線では襲ってきてはくれない。
ただ一匹を倒した自信が実りにある。狼が来るのを待って足を噛みつかれるのを見送り痛みに耐えながらその胴体を上から刺す。倒れるまで刺す。
HPのゲージは急激に下がりニ匹目も倒せた。

「みのり様ポーションです」

「うん」

腰に巻いたベルト式のバックからポーションを引き出し、一気で飲み干す。

「最後ですみのり様」

「大丈夫、お願い白百合」







※前回の文章で一部を変更しました。
みのりが狼たちに走り出したとしましたが白百合に変更いたしました。
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