20 / 21
19
しおりを挟む
.
志村礼二は村上詩織の求めに応じるように目を瞑り自分の中にある記憶を順序だてて回想し始めた。
はじめはこの学校に入ろうと決めた理由。それは単にここが志村にとって通学が一番便利でそしてそこそこの進学校であったことと知り合いが先にこの学校に入っていて入学してからの行動が志村にとって便利に働くだろうことが予測出来るなどずいぶんと打算的なことで決められた。
志村には詩織が知らないだろう裏の顔がある。
この学校の一生徒という前というだけでなく、いや志村にとってはそちらのほうが真実の自分であるのかもしれない。
志村はある妻子ある男とその愛人をしていた志村の母親との間に生まれた。不倫関係だった二人は志村の母親が相手に内緒で勝手に志村を妊娠したことから関係が変わって行く。男は地位ある男で妻にも世間にも不倫を知られたくない。しかも子供までできたなど言語道断だった。水商売をしていた志村の母はそれも計算づくでその上で堕胎が不可能な時期になってから男に会いその事実を告げ、男を脅した。
最初から二人の間には純粋な愛など欠片もなかった。お互いを利用してやろうという邪な思いと自分勝手な支配欲のような傲慢さしか持ち得ない関係で男においては遊びでしかなかった。それを知っていた女は金払いのいい男が自分を捨てようとしているのを知って計画を実行した。
ずいぶんと長い間、母親は認知を求めない代わりに志村の父親に集り強請っていた。それも自分の容姿が年をとり衰え始めると別の男を見つけ、新婚で邪魔になった志村を家から閉め出し、一人暮らしを強要した親の風上にも置けない自分最高主義の最低な母親だった。
小学の最高学年の頃には志村にお金はくれるが家には寄り付かなくなった母親に、夜自由に外に出て歩ける志村は夜の繁華街に時間をつぶす場所を求めて俳諧をするようになる。金だけは持っている小学生。小学生だったといっても志村は人より発育がよくその当時、すでに高校生に見えるだけの身長と体格を持っていた。
そして両親どちらに似ても美形と言う甘いマスク、夜の街は自然と志村を受け入れた。
中学になってさらに志村は自由になる。母親の結婚で一人暮らしになり、完全に結婚相手が常識人であるために払ってもらえることになった養育費、その金だけの関係だけで切れたもともと希薄だった親子関係で、最低限学校だけはまじめに通うともともと頭のいい志村も了解済みの条件を押し付けただけの他はまったく干渉されない自由に志村は羽を伸ばした。
その頃には金を持っている志村の周りには使える人間が集まっていて
勝手にチームだと呼ぶものもいるたまり場もでき、そこにお気に入りの人間を集めて昼の仮面をかぶってまじめに過ごした志村のストレスを癒した。
高校に入る頃にはその生活にも若干の飽きを覚えながらも次のゲームが思いつかず無為な時間を過ごしていた。
成績も態度もまじめな昼の志村を疑うものはおらず
夜の志村は同い年の子供らの集まりでキングのように振舞いながらも一歩引いたところで実に冷静で、自分も利用し彼らに利用される側であることを利用していた。
いつでも感情よりも理性。あの母の行き方を近くで見て常に孤独を強いられてきた志村の中には感情のままだけで行動してはならないという戒めと、甘えをもって誰かに無計画に頼った先の破滅を容易に描くことのできる脳があった。
人間を斜めに見て育ってきた穿った志村は高校に入ってもそれを変えることはないと漠然と感じていた。
そして高校での人間関係にもすぐに落胆し始めていた。
志村礼二は村上詩織の求めに応じるように目を瞑り自分の中にある記憶を順序だてて回想し始めた。
はじめはこの学校に入ろうと決めた理由。それは単にここが志村にとって通学が一番便利でそしてそこそこの進学校であったことと知り合いが先にこの学校に入っていて入学してからの行動が志村にとって便利に働くだろうことが予測出来るなどずいぶんと打算的なことで決められた。
志村には詩織が知らないだろう裏の顔がある。
この学校の一生徒という前というだけでなく、いや志村にとってはそちらのほうが真実の自分であるのかもしれない。
志村はある妻子ある男とその愛人をしていた志村の母親との間に生まれた。不倫関係だった二人は志村の母親が相手に内緒で勝手に志村を妊娠したことから関係が変わって行く。男は地位ある男で妻にも世間にも不倫を知られたくない。しかも子供までできたなど言語道断だった。水商売をしていた志村の母はそれも計算づくでその上で堕胎が不可能な時期になってから男に会いその事実を告げ、男を脅した。
最初から二人の間には純粋な愛など欠片もなかった。お互いを利用してやろうという邪な思いと自分勝手な支配欲のような傲慢さしか持ち得ない関係で男においては遊びでしかなかった。それを知っていた女は金払いのいい男が自分を捨てようとしているのを知って計画を実行した。
ずいぶんと長い間、母親は認知を求めない代わりに志村の父親に集り強請っていた。それも自分の容姿が年をとり衰え始めると別の男を見つけ、新婚で邪魔になった志村を家から閉め出し、一人暮らしを強要した親の風上にも置けない自分最高主義の最低な母親だった。
小学の最高学年の頃には志村にお金はくれるが家には寄り付かなくなった母親に、夜自由に外に出て歩ける志村は夜の繁華街に時間をつぶす場所を求めて俳諧をするようになる。金だけは持っている小学生。小学生だったといっても志村は人より発育がよくその当時、すでに高校生に見えるだけの身長と体格を持っていた。
そして両親どちらに似ても美形と言う甘いマスク、夜の街は自然と志村を受け入れた。
中学になってさらに志村は自由になる。母親の結婚で一人暮らしになり、完全に結婚相手が常識人であるために払ってもらえることになった養育費、その金だけの関係だけで切れたもともと希薄だった親子関係で、最低限学校だけはまじめに通うともともと頭のいい志村も了解済みの条件を押し付けただけの他はまったく干渉されない自由に志村は羽を伸ばした。
その頃には金を持っている志村の周りには使える人間が集まっていて
勝手にチームだと呼ぶものもいるたまり場もでき、そこにお気に入りの人間を集めて昼の仮面をかぶってまじめに過ごした志村のストレスを癒した。
高校に入る頃にはその生活にも若干の飽きを覚えながらも次のゲームが思いつかず無為な時間を過ごしていた。
成績も態度もまじめな昼の志村を疑うものはおらず
夜の志村は同い年の子供らの集まりでキングのように振舞いながらも一歩引いたところで実に冷静で、自分も利用し彼らに利用される側であることを利用していた。
いつでも感情よりも理性。あの母の行き方を近くで見て常に孤独を強いられてきた志村の中には感情のままだけで行動してはならないという戒めと、甘えをもって誰かに無計画に頼った先の破滅を容易に描くことのできる脳があった。
人間を斜めに見て育ってきた穿った志村は高校に入ってもそれを変えることはないと漠然と感じていた。
そして高校での人間関係にもすぐに落胆し始めていた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる