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前編
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わたくしのこれまでの人生はこれまで順風満帆とはいかずとも普通に平和で平穏だったと思います。
自分を振り返って、ふーとミリは詰めていた息を吐き出した。
知らず知らず体に力が入っていたようで、宥めるようにひとつ息を深く吸い込む。
ミリ、彼女はかつてないほどの鬱憤をその身に溜めていた。
その原因たるものを思い出して
「…愚かなこと」
そばに控える侍女にも聞こえないほどの小声で一言、吐き捨てた。
ミリはこれまで公爵家の長女として生まれ、身分あるものとしての
レディとしての嗜み、教養をそれに相応しいものとして磨いてきた。
さらに5歳の時に決まったこの国の第二王子との婚約で
我慢強いミリでも逃げ出したくなるような王族に嫁ぐにふさわしいものの教育も受けた。
婚約者は第二王子とはいえ王太子にもしもがあればの時のスペア。
「もしもに備えろ」が座右の銘の今の公爵である父が生半可な教育では納得しなかったためミリの求められる水準はいつの間にか王太子妃のそれを上回るのではないかと揶揄されるほど一時は苛烈を極めた。
しかしミリは持ち前の負けん気でそれを見事達成し、気難しい父親をも満足させていた。
第一王子の婚約者がいまだ空席で、他国の姫になるだろうとの噂がある中で
現時点においてこの国を代表する未婚女性でもっとも位が高いのがミリだった。
それにふさわしくあろうと振舞うミリは他の未婚女性たちにとっても憧れの女性としてあの、軽い頭ではしたないあの女が現れるまで不動の地位にいた。
何事もそつなくこなし、挑戦的な勝気な瞳が印象的な美女。
男でも遅れを取るような才女で、しかしながら前には出ずあたりを見渡すように
微笑んでいるのがミリだった。
何事も順風満帆。少し物足りないけれど輝かしい未来を保障されていた
気高く美しいミリに影が差したのは今から半年前。
ミリのいるリリディア国の王立学園にミリが入学して一年後の入学式から約一ヶ月ほど経ってからのことだった。
ミリの通う王立学園は王侯貴族のために用意された学園であったが一応は建前として
一般の庶民の生徒も募集し、学園内では身分の上下関係はないとされていた。
しかしそれは建前であり、それをよくわかっている普通の貴族の生徒たちは防犯の意味もこめて。王子やミリのような高位貴族にたやすく声をかけるようなことはせずある程度、言い方は悪いが空気を呼んで距離をもって接していた。
それは貴族なら当たり前のことで、庶民といえどこの学園に通えるほどの頭を持つ優秀な生徒ならいわずとも察するレベルの暗黙のルール。
それを軽やかに飛び越えて誰にでもタメ口オンリーなパッパラパー
人類みな友達レベルの謎なフレンドリーさを武器に独自の自分理論で相手の意思を無視する。ある意味何様、わたし様な女の出現で崩れ去る。
女が殿下に気軽に声を書けた日より長らく守られてきた学園の伝統も風紀も見る影もなく崩れた。
そして、そのとばっちりを一番に受けることになるのがミリとなった。
順風満帆。毎日が刺激がないが平穏だと微笑んでいたことが嘘のような事態に巻き込まれることになった。
わたくしのこれまでの人生はこれまで順風満帆とはいかずとも普通に平和で平穏だったと思います。
自分を振り返って、ふーとミリは詰めていた息を吐き出した。
知らず知らず体に力が入っていたようで、宥めるようにひとつ息を深く吸い込む。
ミリ、彼女はかつてないほどの鬱憤をその身に溜めていた。
その原因たるものを思い出して
「…愚かなこと」
そばに控える侍女にも聞こえないほどの小声で一言、吐き捨てた。
ミリはこれまで公爵家の長女として生まれ、身分あるものとしての
レディとしての嗜み、教養をそれに相応しいものとして磨いてきた。
さらに5歳の時に決まったこの国の第二王子との婚約で
我慢強いミリでも逃げ出したくなるような王族に嫁ぐにふさわしいものの教育も受けた。
婚約者は第二王子とはいえ王太子にもしもがあればの時のスペア。
「もしもに備えろ」が座右の銘の今の公爵である父が生半可な教育では納得しなかったためミリの求められる水準はいつの間にか王太子妃のそれを上回るのではないかと揶揄されるほど一時は苛烈を極めた。
しかしミリは持ち前の負けん気でそれを見事達成し、気難しい父親をも満足させていた。
第一王子の婚約者がいまだ空席で、他国の姫になるだろうとの噂がある中で
現時点においてこの国を代表する未婚女性でもっとも位が高いのがミリだった。
それにふさわしくあろうと振舞うミリは他の未婚女性たちにとっても憧れの女性としてあの、軽い頭ではしたないあの女が現れるまで不動の地位にいた。
何事もそつなくこなし、挑戦的な勝気な瞳が印象的な美女。
男でも遅れを取るような才女で、しかしながら前には出ずあたりを見渡すように
微笑んでいるのがミリだった。
何事も順風満帆。少し物足りないけれど輝かしい未来を保障されていた
気高く美しいミリに影が差したのは今から半年前。
ミリのいるリリディア国の王立学園にミリが入学して一年後の入学式から約一ヶ月ほど経ってからのことだった。
ミリの通う王立学園は王侯貴族のために用意された学園であったが一応は建前として
一般の庶民の生徒も募集し、学園内では身分の上下関係はないとされていた。
しかしそれは建前であり、それをよくわかっている普通の貴族の生徒たちは防犯の意味もこめて。王子やミリのような高位貴族にたやすく声をかけるようなことはせずある程度、言い方は悪いが空気を呼んで距離をもって接していた。
それは貴族なら当たり前のことで、庶民といえどこの学園に通えるほどの頭を持つ優秀な生徒ならいわずとも察するレベルの暗黙のルール。
それを軽やかに飛び越えて誰にでもタメ口オンリーなパッパラパー
人類みな友達レベルの謎なフレンドリーさを武器に独自の自分理論で相手の意思を無視する。ある意味何様、わたし様な女の出現で崩れ去る。
女が殿下に気軽に声を書けた日より長らく守られてきた学園の伝統も風紀も見る影もなく崩れた。
そして、そのとばっちりを一番に受けることになるのがミリとなった。
順風満帆。毎日が刺激がないが平穏だと微笑んでいたことが嘘のような事態に巻き込まれることになった。
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