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「やっぱりレンね。一人ってことはあの頭の固い人と喧嘩でもして飛び出てきたのね?」

レンの前に立ってそう笑い、手を叩いたのは先ほど分かれたイレネだった。
イレネの言葉通り飛び出してきたレンは苦笑してイレネの言葉を流せば、イレネが分かっているとばかりに噴水のレンの隣に腰掛けた。

「レンには感じが悪いかもだけれど、あの人、レンにとってあまりよくない人かもしれないわ。気に障ったらごめんなさい。だってあんなにレンが喜んだ依頼なのにすっごく雑につっけんどんに返されるんですもの。私、腹が立って、もう一度レンだけでも良いから話せないかなって考えて歩いていたところだったの。」

彼女は表情をころころ変えながらシャルに対する鬱憤を臆することなくぽんぽんと並べる。確かに初対面ではシャルの態度は失礼かもしれない。
身内のことながらそう思えてイレネの言うことにも一理あるとレンは頷いた。

「ごめんね。せっかく君に来てもらったのに良い返事できなくて」

「応えたのはレンじゃないわ、…私は、うん、レンだけでも良い答えを返してくれたらいいのよ」

「え?」

イレネの鬱憤がようやく収まったところでレンが父のことを謝ればイレネがきょとりと面食らった顔をした後、微笑んでレンに提案してきた。

「レン、あなた一人でいいの。私を助けて」

蠱惑的ともいえる笑みを浮かべて夕闇の下、イレネがレンに提案してくる。

「俺一人?」

今までにはない初めての依頼。

今までは必ず二人で受けてきた依頼だった。レンはその提案に困惑する。一人で依頼を受ける考えはなかった。でも、この依頼は喉から手が出るほど欲した聖女へと続く確かな依頼だ。

でも、シャルは断った。

でも、レンには一言も相談がなかった。

「…、少し考えさせて」

「いいわ。でも忘れないで。この依頼はあなたのためになる依頼よ。期待は裏切らないわ」

ピンク色のかわいらしい髪をした少女が、その外見に似合ったとてもかわいい小鳥のような声でレンを誘った。





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