もっと異世界の話を聞こうか-連載版-

12時のトキノカネ

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「黙れこのエロフが。俺が聞いたことにだけ答えろ」

「あははは。その言いザマ。久しぶりに聞いたな。俺をそう未だに呼ぶやつはお前だけだ。まだ根に持っているのか?聖女様の寝所に夜這いに行ったのを」

鳩は陽気に渋い顔をするシャルとは対極的に話す。羽を手のように身振り手振り動かすのがなんとも人間くさい。それをシャルが睨みながらその動きがまったく旧友のそれと同じ動作で苛立ちを浮かべていく。

「三回も忍んで行っただろう」

「その三回ともお前が中にいて失敗したな。そのうち一回はいい雰囲気だったみたいだが、未だに俺は聖女様の男の趣味だけは解せない。お前よりこのエルフである俺様のほうが何倍も美しく麗しく優美であろうに。聖女様は見る目がない」

「…。よく喋るな、ダークエルフの負け犬。」

「今は聖女様に呪いを解いていただき、ただの動物を愛するエルフだよ」

「この似非ケモナーめ」

「ああ、いいなー。その罵り。最近有名になりすぎて俺を罵る人間がいなくてね。新鮮でゾクゾクスルヨ。」

鳩が羽を使って体を抱きしめて身震いする。それにシャルがおぞましいものを見たように引いた。言葉を失って気持ち後ろに引いた。

「…。お前と無駄話は疲れる」

盛大なため息をついたシャルがこの鳩との無駄な掛け合いを終わらせる。

「お前に頼みたいことがあって連絡をとった」

「だろうさ。じゃなければお前が連絡するわけがない。」

トーンを下げたシャルに相手も今までの軽口をやめて応じる。

「で、何があった?俺に何をさせるつもりだ?」



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