もっと異世界の話を聞こうか-連載版-

12時のトキノカネ

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やってしまった

部屋を出て直ぐ、閉めたドアを背にレンは崩れ落ちるように座り込んだ。
父親を殴った。レンにとってそれは初めての事だった。キレて取り返しのつかないことをした。反省する気持ちはあるが、すぐにむくりと沸く反骨心が芽生える。

悪いのは父であるシャルもだ。
せっかくレンが必死に見つけてきた手がかりを無碍にするようなことをした。

すごくショックだった。
レンはシャルも喜んで直ぐ快諾してくれると思っていた。
そこに疑いの余地なんかなかった。

でも

「本当の聖女を知らないか…」

聖女が何者であるかってなんだよ。

レンは頭を掻き毟る。

聖女は異世界からこの世界に望まれてやってくる乙女。

この国を正しく導くものも要れば、世界に脅威となるものを打ち払う手助けになったり、歴史上何度も人々を救ってきたり恩恵をもたらしたり
尊い存在だと一般的には教えられる。

レンの母も世界の脅威。魔王を倒すため異世界から呼ばれたと言う。
事実、父シャルを母は勇者として選び、魔王は倒された。
父は英雄だ。レンはそれを誇りに思っている。
だが父はその英雄と民衆に崇められるのを嫌い、身分も国も捨て
母がいなくなってしまってからは本名も捨てて名を変えて冒険者になった。

それは身軽になったほうが国の重要人物として国に使えなければならない身分ではできない母探しを自由にするためだとレンは勝手に理解していたけれど…。


「わからねえ…」

今まで考えなかったことを考えさせられる。

何であんなことを父は言ったのだろう。

どうして聖女への手がかりをあからさまに拒絶する行動に出た。


『聖女はお前が神聖視する母のようなものじゃない』

どうして…。

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