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将来の夢
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「みなさーん、将来の夢は書けましたかー?」
「「はーい!」」
幼稚園の先生の声に答えて、子供たちが元気よく返事をする。
「おれは世界を平和にする英雄になること!」
一人の男の子が声高く宣言する。
これは子供ならでは持ってもおかしくない夢だろう。
「世界征服・・・。」
対して、静かにそう呟いた子もいた。
まぁこれも、子供が思い描いてもおかしくない夢だ。
だけど互いの目標とする夢は正反対。
二人が敵対心を持って向かい合うのを見かねて近寄った。
「二人とも、おっきな夢だねー。すごいねー。」
「だって、おれ勇者だもん!」
「魔王になるからには勇者には負けられない。」
睨みっこしていた二人を誉めてあげれば、どちらも嬉しそうに笑う。
まだ幼い、かわいいかわいい子供。
普通の子供と大差ない。
だが、他と違うのは。
彼らの前世がたしかに勇者と魔王であることだった。
ある時、日本は異常なほど少子化に悩まされていた。
ところが日本の人々全員に何者かからテレパシーのようなメッセージが送られてから状況が変化する。
なんでも、子を欲する人の元へと異世界から子供を転生させて授けるという。
最初は半信半疑だったのだが、その日から少子化問題が解決するほど子供が現れるし前世の記憶があるしで信じるほかない事態になったわけだ。
それでその現象、通称【異世界のコウノトリ】から預けられた子を監視もかねて集めたの施設の一つがこの幼稚園で、私も保母さんとして働いている。
というか、勇者くんも魔王くんもうちの子なんだけどね…。
「僕も将来の夢は前世と同じ執事です。」
「大半の子がそうみたいだねぇ。」
前世が執事の子はまた大人顔負けながらの仕草で優雅に紅茶を注いでいる。
彼の一番の趣味で、隙あらばやっている。だが他の子が火傷しないように基本的にぬるめだ。
茶葉も上等という訳ではないのに、それでも美味しく思えるのは彼の技量ならではだろう。
前世ある子は本当にすごい。
「先生!ワタクシへの質問がまだですわ!」
「ごめんねー。今行くから。」
自分の番を待ちくたびれた女の子から声をかけられてしまった。
彼女の前世はプリンセスだ。だが幼いからか性格はどちらかというと、お転婆お嬢様に近い。
プリンセスが前世というのもあって両親から溺愛されており、着ている服は一段と豪華である。
「お姫様の夢何なのかな?」
機嫌を伺うように尋ねてみれば、彼女はフフンと得意げに夢を書いた紙を広げて見せた。
「庶民ですわ!」
・・・
「庶民?」
「もうお城で息の詰まるような日々を過ごすのはこりごりですの!礼儀作法にはうるさいし、お勉強は多いし、婚約者は勝手に決められてしまうし。生まれ変わったからにはワタクシ、今度こそ自由で平凡な庶民として生活するのですわ。」
はてさて、彼女の望む庶民というのが今の時代でいうとどんな人のことを言っているのかはわからないが、何にせよ。
それぞれ目指す夢は自由だ。
前世にしばられる必要なんてないのだから。
「とても楽しそうですね。」
「そうでしょう!?」
私は、この子たちの幸せを願うばかりである。
「じゃあ言葉遣いから頑張ってみようか!」
「えっそうですの!?」
だが飴に鞭は忘れずに。
「「はーい!」」
幼稚園の先生の声に答えて、子供たちが元気よく返事をする。
「おれは世界を平和にする英雄になること!」
一人の男の子が声高く宣言する。
これは子供ならでは持ってもおかしくない夢だろう。
「世界征服・・・。」
対して、静かにそう呟いた子もいた。
まぁこれも、子供が思い描いてもおかしくない夢だ。
だけど互いの目標とする夢は正反対。
二人が敵対心を持って向かい合うのを見かねて近寄った。
「二人とも、おっきな夢だねー。すごいねー。」
「だって、おれ勇者だもん!」
「魔王になるからには勇者には負けられない。」
睨みっこしていた二人を誉めてあげれば、どちらも嬉しそうに笑う。
まだ幼い、かわいいかわいい子供。
普通の子供と大差ない。
だが、他と違うのは。
彼らの前世がたしかに勇者と魔王であることだった。
ある時、日本は異常なほど少子化に悩まされていた。
ところが日本の人々全員に何者かからテレパシーのようなメッセージが送られてから状況が変化する。
なんでも、子を欲する人の元へと異世界から子供を転生させて授けるという。
最初は半信半疑だったのだが、その日から少子化問題が解決するほど子供が現れるし前世の記憶があるしで信じるほかない事態になったわけだ。
それでその現象、通称【異世界のコウノトリ】から預けられた子を監視もかねて集めたの施設の一つがこの幼稚園で、私も保母さんとして働いている。
というか、勇者くんも魔王くんもうちの子なんだけどね…。
「僕も将来の夢は前世と同じ執事です。」
「大半の子がそうみたいだねぇ。」
前世が執事の子はまた大人顔負けながらの仕草で優雅に紅茶を注いでいる。
彼の一番の趣味で、隙あらばやっている。だが他の子が火傷しないように基本的にぬるめだ。
茶葉も上等という訳ではないのに、それでも美味しく思えるのは彼の技量ならではだろう。
前世ある子は本当にすごい。
「先生!ワタクシへの質問がまだですわ!」
「ごめんねー。今行くから。」
自分の番を待ちくたびれた女の子から声をかけられてしまった。
彼女の前世はプリンセスだ。だが幼いからか性格はどちらかというと、お転婆お嬢様に近い。
プリンセスが前世というのもあって両親から溺愛されており、着ている服は一段と豪華である。
「お姫様の夢何なのかな?」
機嫌を伺うように尋ねてみれば、彼女はフフンと得意げに夢を書いた紙を広げて見せた。
「庶民ですわ!」
・・・
「庶民?」
「もうお城で息の詰まるような日々を過ごすのはこりごりですの!礼儀作法にはうるさいし、お勉強は多いし、婚約者は勝手に決められてしまうし。生まれ変わったからにはワタクシ、今度こそ自由で平凡な庶民として生活するのですわ。」
はてさて、彼女の望む庶民というのが今の時代でいうとどんな人のことを言っているのかはわからないが、何にせよ。
それぞれ目指す夢は自由だ。
前世にしばられる必要なんてないのだから。
「とても楽しそうですね。」
「そうでしょう!?」
私は、この子たちの幸せを願うばかりである。
「じゃあ言葉遣いから頑張ってみようか!」
「えっそうですの!?」
だが飴に鞭は忘れずに。
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