1 / 1
入れ替わったJKが真面目すぎる
しおりを挟む
「困ったなぁ…。」
僕は小説家である。儲けてはいない。
書きたいものが書けるような立場ではなく、「入れ替わりものでも書いてくれ」と頼まれてネタを考えているところだった。
これがなかなか、定番すぎて斬新な話が浮かばない。
男と女。親と子供。金持ちと貧乏。人間と動物。
もっと違うものが書きたくて、試行錯誤をしたものである。
双子。老人と幼子。ロボットと人間。
どうも話が上手く構成できない自分に苛立っていた。
おっと、今困っているのはその件ではなく…。
目の前にいるのが僕で、今の私が女子高生になってしまったことに対してだ。
「うわぁ。」
こんなことが実際に起こるとは。
ちょうど入れ替わりネタを考えていたタイミングで、こうなってしまうとは。
夢でも見ているかのような気分だ。
というか、ネタを考えるあまりに周囲を見てなかった僕が女子高生とぶつかったのだから、全面的に僕が悪いので申し訳ない。
一瞬でも、小説のネタに使えるかな?と思ってしまった自分が情けない。
「あの…。」
それにしても、先ほどから私が何も喋ってくれないんだがどうしたものか。
え?入れ替わってるよね?君の中身は女子高生なんだよね?
まさか中身が空っぽだとか、中身の私が残ってるとかじゃないよな!?
え、違うよね!?なんだか怖くなってきたんだが!?
「ぼ、僕たち…入れ替わってるん、ですよね?」
震える声で訪ねると、返事が返ってきた。
「あなたがそう言うなら、たぶんそうだと思います。」
よかったーー!!中身は無事だーーーー!!
「私の気が狂ったのかと思いました。もしくは記憶喪失とか。」
「君、入れ替わりものとか読んだことないの!?」
「ありますけど…実感なくて。」
互いの状況を確認したところで、今後の相談をすることにした。
もう一度、同じことをやれば元に戻れることを期待して実行してみたが成功しなかったことだし。
「定番からしてみても、誰も信じてくれないかもしれないし、精神の病と思われて外に出してもらえなくなるのも困るから…ここはやはり秘密にするべきかな?」
「それなんですけど、私は公表するべきだと思います。」
なんかすっごい目付きで睨まれた。
僕ってそんな顔できるの?
「現実的に考えてください。家族を騙せると思いますか?結果的におかしいと思われて病院行きですよ。」
「僕もそれなりに現実的に考えてるんですけど!?」
「第一、入れ替わりは世間に認知させるべきだと昔から思ってたんです。秘密にする必要あります?」
「いや、だから言ったじゃないか。信じてくれるかわからないし、精神の病だと思われたら面倒なことになるし。」
「信じられないのは、そういう実例が証明されてないからです。」
相手は僕に向かって強く言い放った。
「私たち以外にも、同じような入れ替わりになった人がでるかもしれない。もう既にいてもおかしくない。だからこそ主張しないと、ありえないものとして否定され続けるんです。」
言われてみると、マイノリティに近いようなものに思えてきた。
「実例があれば、他にも同じ人が見つかるかもしれない。相談ができるかもしれない。対策もできるだろうし、戻り方がわかるかもしれないんですよ。」
たしかに。
入れ替わりがどれだけ面倒なのかは読書でよく知っている。
だがもしも世間が事実だと認めてくれるようになったとしたら、どれだけ救われるだろう。
僕はともかく、女子高生だった彼女は不安なことだろう。見ず知らずの男なのだから。
そんな彼女の姿が変わっていても、彼女の家族が認めてくれて、同じように生活できたなら…。
「まぁ、そうだよね。秘密にするのは物語を面白くするためでもあるだろうし。」
「とはいえ信じてくれると期待はしてないですけどね。さっき、私も自分が狂ってると思いましたし。」
あ、そういえば言ってたっけ。
「でもバレるのを恐れながら、嘘をついて自分を偽りながら生きるよりは良いと思いませんか?」
ここまで言われてしまったら、もうどうしようもない。
あとは僕が決断するだけなのだ。
秘密にするのも面白そうだが、ここは彼女の意見も尊重したい。
「わかったよ。入れ替わりのことは公表してみよう。」
その後、男が女子高生に絡んでいるとの通報で一悶着あったのはまた別の話である。
そうだよな。知らんおっさんから説教されてる女子高生の図とか完全に通報ものだったな。
警察はさすがにやばいから適当にごまかしたが。
「まずは家族に相談して、医者にも相談してみましょう。」
「大丈夫かなぁ。」
「なんだったらテレビ出演でアピールすれば一発ですよ。」
「え、テレビでるの!?」
僕は小説家である。儲けてはいない。
書きたいものが書けるような立場ではなく、「入れ替わりものでも書いてくれ」と頼まれてネタを考えているところだった。
これがなかなか、定番すぎて斬新な話が浮かばない。
男と女。親と子供。金持ちと貧乏。人間と動物。
もっと違うものが書きたくて、試行錯誤をしたものである。
双子。老人と幼子。ロボットと人間。
どうも話が上手く構成できない自分に苛立っていた。
おっと、今困っているのはその件ではなく…。
目の前にいるのが僕で、今の私が女子高生になってしまったことに対してだ。
「うわぁ。」
こんなことが実際に起こるとは。
ちょうど入れ替わりネタを考えていたタイミングで、こうなってしまうとは。
夢でも見ているかのような気分だ。
というか、ネタを考えるあまりに周囲を見てなかった僕が女子高生とぶつかったのだから、全面的に僕が悪いので申し訳ない。
一瞬でも、小説のネタに使えるかな?と思ってしまった自分が情けない。
「あの…。」
それにしても、先ほどから私が何も喋ってくれないんだがどうしたものか。
え?入れ替わってるよね?君の中身は女子高生なんだよね?
まさか中身が空っぽだとか、中身の私が残ってるとかじゃないよな!?
え、違うよね!?なんだか怖くなってきたんだが!?
「ぼ、僕たち…入れ替わってるん、ですよね?」
震える声で訪ねると、返事が返ってきた。
「あなたがそう言うなら、たぶんそうだと思います。」
よかったーー!!中身は無事だーーーー!!
「私の気が狂ったのかと思いました。もしくは記憶喪失とか。」
「君、入れ替わりものとか読んだことないの!?」
「ありますけど…実感なくて。」
互いの状況を確認したところで、今後の相談をすることにした。
もう一度、同じことをやれば元に戻れることを期待して実行してみたが成功しなかったことだし。
「定番からしてみても、誰も信じてくれないかもしれないし、精神の病と思われて外に出してもらえなくなるのも困るから…ここはやはり秘密にするべきかな?」
「それなんですけど、私は公表するべきだと思います。」
なんかすっごい目付きで睨まれた。
僕ってそんな顔できるの?
「現実的に考えてください。家族を騙せると思いますか?結果的におかしいと思われて病院行きですよ。」
「僕もそれなりに現実的に考えてるんですけど!?」
「第一、入れ替わりは世間に認知させるべきだと昔から思ってたんです。秘密にする必要あります?」
「いや、だから言ったじゃないか。信じてくれるかわからないし、精神の病だと思われたら面倒なことになるし。」
「信じられないのは、そういう実例が証明されてないからです。」
相手は僕に向かって強く言い放った。
「私たち以外にも、同じような入れ替わりになった人がでるかもしれない。もう既にいてもおかしくない。だからこそ主張しないと、ありえないものとして否定され続けるんです。」
言われてみると、マイノリティに近いようなものに思えてきた。
「実例があれば、他にも同じ人が見つかるかもしれない。相談ができるかもしれない。対策もできるだろうし、戻り方がわかるかもしれないんですよ。」
たしかに。
入れ替わりがどれだけ面倒なのかは読書でよく知っている。
だがもしも世間が事実だと認めてくれるようになったとしたら、どれだけ救われるだろう。
僕はともかく、女子高生だった彼女は不安なことだろう。見ず知らずの男なのだから。
そんな彼女の姿が変わっていても、彼女の家族が認めてくれて、同じように生活できたなら…。
「まぁ、そうだよね。秘密にするのは物語を面白くするためでもあるだろうし。」
「とはいえ信じてくれると期待はしてないですけどね。さっき、私も自分が狂ってると思いましたし。」
あ、そういえば言ってたっけ。
「でもバレるのを恐れながら、嘘をついて自分を偽りながら生きるよりは良いと思いませんか?」
ここまで言われてしまったら、もうどうしようもない。
あとは僕が決断するだけなのだ。
秘密にするのも面白そうだが、ここは彼女の意見も尊重したい。
「わかったよ。入れ替わりのことは公表してみよう。」
その後、男が女子高生に絡んでいるとの通報で一悶着あったのはまた別の話である。
そうだよな。知らんおっさんから説教されてる女子高生の図とか完全に通報ものだったな。
警察はさすがにやばいから適当にごまかしたが。
「まずは家族に相談して、医者にも相談してみましょう。」
「大丈夫かなぁ。」
「なんだったらテレビ出演でアピールすれば一発ですよ。」
「え、テレビでるの!?」
0
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
hypocrisy[偽善]
calm
青春
白牙 銀 (びゃくが ぎん)
今作の主人公。
引きこもったせいで弱々しい語りになってしまったが、元々の根はしっかりとしている。
ある出来事がきっかけで登校拒否になってしまった。
金剛 魁真 (こんごう かいま)
主人公の数少ない友人。
主人公のことを心配しているが、なかなか誘い出せないことに少しやきもきしている。
主人公の身内以外で唯一、主人公の登校拒否の理由を知っている。
明るい性格だが、たまに闇に墜ちる。
真川 琥珀 (さながわ こはく)
主人公や金剛のクラスの学級委員。
はっきりと物を言う性格で、なよなよと部屋にこもっている主人公にイライラしている。
しかし、優しいところもあるようで、金剛からは「ツンデレ」と言われている。
野球の王子様3 VS習志野・練習試合
ちんぽまんこのお年頃
青春
聖ミカエル青春学園野球部は習志野に遠征。昨年度の県内覇者との練習試合に臨むはずが、次々と予定外の展開に。相手方のマネージャーが嫌味な奴で・・・・愛菜と取っ組み合い?試合出来るの?
余命三ヶ月、君に一生分の恋をした
望月くらげ
青春
感情を失う病気、心失病にかかった蒼志は残り三ヶ月とも言われる余命をただ過ぎ去るままに生きていた。
定期検診で病院に行った際、祖母の見舞いに来ていたのだというクラスメイトの杏珠に出会う。
杏珠の祖母もまた病気で余命三ヶ月と診断されていた。
「どちらが先に死ぬかな」
そう口にした蒼志に杏珠は「生きたいと思っている祖母と諦めているあなたを同列に語らないでと怒ると蒼志に言った。
「三ヶ月かけて生きたいと思わせてあげる」と。
けれど、杏珠には蒼志の知らない秘密があって――。
通学路
南いおり
青春
幼なじみの瀬川一華と野上哲也は中学生の頃から付き合っている。高校3年生になる直前の春休みにある事件が起こる。そのことが2人の歯車を狂わせ始めた。
私が執筆している、「通学路の秘密」の別バージョンです。
君に出会って、おれの「冷たさ」で誰かを笑顔にできると知った
ふくろう
青春
おれは人から「冷たい」「ロボットのようだ」と言われる。
子供には泣かれるし、犬には無駄に吠えられる。
当然、友達も彼女もいない。
一人ぼっちの閉ざされた暗い世界にいた。
でも、そんなおれが、今、ステージの上で脚光を浴びている。
君に出会えて、運命が変わったんだ。
どうして、その子なの?
冴月希衣@商業BL販売中
青春
都築鮎佳(つづき あゆか)・高1。
真面目でお堅くて、自分に厳しいぶん他人にも厳しい。責任感は強いけど、融通は利かないし口を開けば辛辣な台詞ばかりが出てくる、キツい子。
それが、他人から見た私、らしい。
「友だちになりたくない女子の筆頭。ただのクラスメートで充分」
こんな陰口言われてるのも知ってる。
うん。私、ちゃんとわかってる。そんな私が、あの人の恋愛対象に入れるわけもないってこと。
でも、ずっと好きだった。ずっとずっと、十年もずっと好きだったのに。
「どうして、その子なの?」
——ずっと好きだった幼なじみに、とうとう彼女ができました——
☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆
『花霞にたゆたう君に』のスピンオフ作品。本編未読でもお読みいただけます。
表紙絵:香咲まりさん
◆本文、画像の無断転載禁止◆
No reproduction or republication without written permission.
間隙のヒポクライシス
ぼを
青春
「スキルが発現したら死ぬ」
自分に与えられたスキルと、それによって訪れる確実な死の狭間で揺れ動く高校生たちの切ない生き様を描く、青春SFファンタジー群像劇。「人の死とは、どう定義されるのか」を紐解いていきます。
■こだわりポイント
・全編セリフで構成されていますが、なぜセリフしかないのか、は物語の中で伏線回収されます
・びっくりするような伏線を沢山はりめぐらしております
・普通のラノベや物語小説では到底描かれないような「人の死」の種類を描いています
・様々なスキルや事象を、SFの観点から詳細に説明しています。理解できなくても問題ありませんが、理解できるとより楽しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる