おとぎ姫の異種間恋愛物語

たとい

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茨姫

茨の騎士 3ページ

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城を覆っていた茨が枯れ始めたのを見て、周囲の人々は城にかかっていた呪いが解け始めいることに気が付きました。

美しいと聞いていた姫に会おうと何人もの人々や、噂を聞きつけた王子がやってきて茨に剣を突き立てました。

騒動に気が付いた姫が慌てて茨の騎士に駆け寄ると、彼の体の一部が枯れ始めているのが見えました。

外にいる者が茨に攻撃しているせいだと思い、慌てて止めに行こうとした姫に茨の騎士は全てを話しました。




「魔法をかけていた私に限界がきただけのことです。ですがこれで、あなたは死の呪いから免れた。」

「そんな。あなたを犠牲にして生きたいだなんて望んでいないわ。」

「これで良いのです。これからは普通の幸せな人生を生きてほしい。これは、私も望んだワガママです。」

「それなら私のワガママも聞いてちょうだい。どうか生きて。これからも私のそばにいて。」

「どうか気に病まないでください。多くの祝福を授かったあなたに100年も使えられただけで私は満足なのです。」

「祝福なんて、あなただけで十分です。元々身に余るものでした。呪いを受けるのも当然のことでしょう。」

「そのようなことは、おっしゃらないでください。」

「いいえ。あなたが助かるなら祝福が無くなってもかまいませんの。私の呪いを引き取ったというのなら、どうか祝福も受け取ってくださいませ。」




姫が枯れゆく茨の騎士を抱きしめるように包み込んだ時、姫の霊体は光りながら散りました。

それに驚いた彼は、急いで姫の眠る部屋へと向かいました。

眠る姫の顔を覗き込むと、彼女の唇にバラの欠片が舞い降りました。

そのとき、彼女が目を覚ましたのでした。










その後、茨の消えた城から姫が見つかることはありませんでした。

姫は茨の騎士と共に城を抜け出して旅に出たのです。

呪いは少しだけ残りました。祝福を騎士に分け与えたからでした。最期の祝福も、全て受け取らずに騎士に命を残しました。

ですが姫は気にしておりません。寿命だって、長寿ではなくなっただけのことなのです。

残りの人生を茨の騎士と過ごすことに決めたのでした。




「姫、もうかつてのような生活はできません。文字通り、茨の道になるやもしれませんよ。」

「既に決めたことではありませんか。なにより、あなたとなら茨の道さえ愛おしく思うことでしょう。」

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